顧客が商品やサービスの購入・契約を決定するまでには、認知・検討・決定といったステップがあります。企業は、自社の商品がどのように顧客の心に響き、手に渡るかを理解していなければ、適切なマーケティングを進めることができません。
この記事では、商品やサービスが顧客に届くまでの流れを考慮し、戦略を立てて行動を決定する方法である「Go to Market」についてまとめました。優れた商品を扱っているにもかかわらず、利益につながりにくいと感じている方は、ぜひ参考にしてください。
Go to Market(GTM)とは
Go to Market(GTM)とは、自社の商品をどのようにして顧客に届けるかという戦略のことを指します。特に新しい商品やサービスを新たな市場に導入する際に重要視される戦略です。
Go to Market戦略があれば、それに基づいて営業活動を進めることができ、効果的なマーケティングが実現します。逆に、Go to Market戦略を持たない企業では、的外れなマーケティングを行っている可能性もあります。
Go to Marketに含める内容
Go to Marketにはさまざまな要素が含まれますが、戦略を決定する際に検討すべき事項には以下のようなものがあります。自社の商品を顧客に届けるために、どのような活動が必要であるかも検討します。
顧客の認知
- 顧客は商品やサービスについて、どこでどのように知識を得るのか
顧客の魅力点
- 顧客は商品やサービスのどのような点に魅力を感じるのか
購入決定要素
- 顧客が商品やサービスの購入や契約を決定する要素は何か
顧客満足度
- 顧客は自社の商品やサービスを利用して満足するか
Go to Marketの指標として活用できるデータ
Go to Marketの指標として活用するデータは、自社の商品の成長率や解約率を確認できるものである必要があります。ここでは、Go to Marketの指標となるデータをいくつか紹介します。
CAC
CAC(Customer Acquisition Cost)は、ある一定の期間で新規顧客1人を獲得するために要した費用を示す指標です。以下の計算式で算出します。
CAC = 新規顧客獲得に要した費用総額 ÷ 獲得した新規顧客数
顧客生涯価値(LTV)も算出し、CACと比較することが重要です。CACよりも顧客生涯価値(LTV)が低い場合は、顧客を獲得するたびに赤字になることを意味し、逆にLTVの方が高ければ利益が出ることが見込めます。
ノルマ達成率
ノルマ達成率は、営業担当の目標がどの程度達成されているかを示す指標です。
ノルマ達成率 = 実績 ÷ 目標
ただノルマ達成率を計算するだけでなく、達成・未達の要因を探り、必要であればGo to Market戦略や営業活動の改善を検討することが大切です。
売上継続率
売上継続率は、月額制のサブスクリプションサービスで使用されることが多い指標で、毎月繰り返し発生する売上がどの程度継続しているかを示します。毎月継続的に発生する売上と、その月に増減した売上を基に計算します。
売上継続率 =(既存顧客の売上 + 既存顧客のプランアップや新規顧客獲得による売上増加 – 既存顧客のプランダウンや既存顧客離脱による売上減少) ÷ 既存顧客の売上
この指標が100%を下回る場合は、新規顧客の獲得が不足しているか、既存顧客が流出している状態だと言えます。
Go to Market戦略の手順
ここからは、Go to Market戦略を進める手順について説明します。一つ一つのステップを確実に進めることが重要です。
手順1: 市場とターゲットの選定
参入する市場とターゲット像を明確にします。また、ターゲットをより詳細に把握するためにペルソナ設定を行うと良いでしょう。自社商品を購入する顧客がどのような企業や人物であるかを具体的に決めておきます。
手順2: 商品が顧客に与える利益を考える
自社の商品が顧客の課題をどのように解決するかを具体的にまとめます。顧客は商品に価値を感じ、購入や契約に至ります。競合他社の商品ではなく自社商品を選んでもらうための付加価値も重要です。
BtoB向け商品の場合、購入決定には複数の関与者がいることを想定する必要があります。具体的には、商品を使用する担当者、財務部門の責任者、最終的な決裁権者である事業部長や代表者などが含まれます。企業の購入決定には時間がかかるため、関与するメンバーそれぞれの利益を考えることが重要です。
手順3: 顧客が商品購入に至るまでの流れを把握する
課題を認識した顧客がどのように自社商品を知り、興味を持ち、購入に至るまでの流れを「バイヤージャーニー」と呼びます。
企業は、顧客が商品をどう認識し、何を基準に比較検討するかを理解し、それぞれのステージで適切なアプローチを行う必要があります。
手順4: 具体的な営業戦略を決める
ここまでのステップで決めたターゲットとバイヤージャーニーに基づき、適切な営業手法を選択します。具体的な営業戦略には次のようなものがあります。
インサイドセールスモデル
電話やメールなどで見込み客にアプローチし、購入や契約を獲得します。少ない人員でも効率的に営業ができるモデルです。
フィールドセールスモデル
直接顧客を訪問して営業活動を行う外勤型の営業スタイルです。労力はかかりますが、顧客との信頼関係が構築しやすいモデルです。
セルフサービスモデル
BtoC向けに多く見られるスタイルで、見込み客が自ら判断し、商品の購入まで完結できるモデルです。ECサイトでの購入やサブスクリプションサービスの利用が該当します。営業担当が直接アプローチするのではなく、いかに商品やサービスを認知してもらうかが重要です。
チャネルモデル
代理店などに営業活動を委託するスタイルです。自社内に営業部門を持たず、外部に営業を委託する手段もあります。
手順5: 顧客に商品を認知してもらう
自社商品の認知度を高めるために、インターネット広告、オウンドメディア、看板やポスターなどを活用して宣伝活動を行います。手順1で決定したターゲットに対して、効果的に宣伝できる方法を検討します。
個人がターゲットの場合
顧客が個人である場合、テレビ広告やSNSを活用して見込み客の関心を集めます。あらかじめ商品を購入できるサイトなどを用意し、商品に興味を持った顧客をそのサイトに誘導します。さまざまなチャネルで商品を購入できる環境を整えることで、顧客は手間なく商品を手に入れることができます。
企業がターゲットの場合
顧客が企業である場合、営業担当によるアプローチやインターネット広告を活用します。企業の場合、購入に至るまでのステップで営業担当が説明を行い、契約内容を案内することが重要です。特に月額課金や年間契約などの場合、顧客との関係構築も重視されます。
手順6: 評価と改善
Go to Market戦略は一度作成したら終わりではありません。開始前に設定したKPIなどの目標が達成できているかを評価し、改善を繰り返してマーケティングを最適化していくことが必要です。
まとめ
この記事では、Go to Market(GTM)戦略の重要性とその手順、さらに活用できる指標データについて詳しく解説しました。GTM戦略は、ただ商品を販売するだけではなく、顧客に価値を届け、ビジネスを持続的に成長させるための基盤となります。
市場やターゲットを明確にし、顧客の購入プロセスを理解し、効果的な営業戦略を選択することで、ビジネスの成功に近づけるはずです。ぜひ、これらの手順とデータを活用して、自社のGTM戦略を構築し、さらなる成長を目指しましょう。