顧客や社内従業員からの問い合わせに対応するコールセンターやヘルプデスクは、企業にとって重要な役割を担っています。増加する問い合わせ件数を削減し業務を効率化することは、安定した応対サポートを提供するうえで欠かせません。
本記事では問い合わせ件数を削減するメリットや具体的な施策などを解説しています。ITツールの活用事例も紹介するため、自社の問い合わせ対応業務を最適化したい方はぜひ参考にしてください。
問い合わせ対応の課題
顧客からの問い合わせに対応するコールセンターや、従業員の疑問を解決するヘルプデスクなどの担当部署は、いずれもさまざまな課題を抱えています。抱えている課題は業種や部署によって異なるものの、以下に挙げる内容は多くの企業に共通している問題点です。
課題1 慢性的な人手不足
多くの企業において、問い合わせ対応部署の人手不足は深刻な状況です。社内外いずれの問い合わせにおいても、対応人員が不足する理由は以下のようなものが挙げられます。
・問い合わせ対応部署の採用難・育成難が続いている
・過剰な業務負担による離職が多い
・チャネルの多様化により問い合わせ業務が増加している
慢性的な人手不足は、スタッフ1人あたりの業務負荷を増加させ、更なる離職率の増加を招きます。このような負の連鎖を断ち切りつつ、人手に頼らずとも問い合わせ対応を滞りなく進められるよう業務効率を改善することが急務です。
課題2 問い合わせ内容の複雑化
近年の急速なデジタル化にともない、企業が扱う商品やサービスは多様化しています。従来にはなかった新たなプロダクトが提供され、購入経路や活用方法が多様化するほど顧客や従業員からの問い合わせも高度化・複雑化するのは必然です。
このように、現在は社内外いずれの問い合わせにおいても1件あたりの対応難易度が上がっています。「人」に頼った問い合わせ対応から脱却しないかぎり、応対する人材の育成がますます困難になることが予想されているのです。
問い合わせ件数が増える理由
問い合わせ対応における課題は、すべてが「問い合わせ件数が多い」ことに起因します。ここでは問い合わせ件数が増えてしまう原因を、社外・社内それぞれに分けて解説します。
社外問い合わせは情報提供が不十分な場合に増加する
社外問い合わせが増加する原因は、主に情報提供の量・方法が不十分であることです。現代は企業へのコンタクトがオンライン上で完結するため、世界中の商品・サービスに自由にアクセスできます。
アクセスできる対象範囲の広がりに比例して、Web上の情報に疑問を持つユーザーは増加します。これまで以上に情報提供を徹底し、FAQの充実を図る必要性が高まっているのです。
顧客の自己解決を促す手段が十分に用意されているかどうか、Webサイトの分析を行い検証することが大切です。
社内問い合わせはマニュアル整備が不十分な場合に増加する
社内問い合わせが増加する主な原因は以下のとおりです。
・マニュアルの整備が十分でない
・FAQで自己解決を図る習慣がない
・求めている情報にアクセスできない
疑問が生じた際にアクセスできる情報が十分でない場合、解決手段は「担当部署への問い合わせ」に限定されてしまいます。まずはマニュアルの整備が十分か、ナレッジが属人化していないかを確認することが重要です。
そのうえで、マニュアルを活用して疑問の自己解決を図る文化を社内に浸透させていく必要があります。
問い合わせ件数を削減するメリット
問い合わせ件数を削減することで享受できるメリットは以下のとおりです。
・応対スタッフの負担を軽減できる
・人件費の削減につながる
・応対品質が向上する
・顧客満足度の向上が期待できる
問い合わせ件数を削減することは、対応部署が抱えている慢性的課題の解決に寄与します。
メリット1 応対スタッフの負担を軽減できる
問い合わせ数を削減すると、応対するスタッフの負担を軽減できます。
たとえばコールセンターにおけるオペレーターの離職率は積年の課題です。オペレーターの負担を軽減し離職を食い止めることは、安定した問い合わせ対応を提供するうえで欠かせません。社内問い合わせにおいても同様に、応対スタッフの負担軽減は業務の平準化に不可欠な要素です。
問い合わせ件数の削減を図ることで、安定したリソースの確保や業務効率化が期待できます。
メリット2 人件費の削減につながる
問い合わせ件数を削減することで、問い合わせ業務に割く人員を削減できます。残業代や通信費はもちろんのこと、応対スタッフの負担軽減により離職率を下げることにもつながるため、人材の育成費負担も軽減できます。
チャットボットをはじめとするITツールを活用することも、人件費の削減に貢献する手段です。
メリット3 応対品質が向上する
問い合わせ件数を減らすことは、以下の効果をもたらします。
・応対スタッフに余裕が生まれるため、高度な問い合わせにリソースを集中できる
・待ち時間が削減され、応対スピードが向上する
疑問解決へのサポートが十分にでき、スピーディな対応が実現すると、同じユーザーから複数回問い合わせを受ける可能性がなくなります。結果として応対品質の向上に寄与するため、従業員と顧客双方の満足度向上を図ることができます。
メリット4 顧客満足度の向上が期待できる
「問い合わせ件数を減らす取り組み」=「顧客の自己解決を促す取り組み」と言い換えることができます。
電話やメールでの問い合わせは、顧客側にもストレスがかかる行為です。問い合わせをする必要がない仕組みを構築することは、顧客満足度の向上に直結します。
疑問をスピーディに自己解決できるシステムを導入することは、企業側と顧客側双方にメリットが大きい取り組みだといえます。
問い合わせ件数を削減する方法
問い合わせ件数を削減する方法のなかで、特に効果的な以下4点を紹介します。
・Webサイトの利便性を向上させる
・FAQを充実させる
・ナレッジを共有する
・チャットボットを活用する
それぞれ具体的な施策やメリットを解説します。
方法1 Webサイトの利便性を向上させる
まずは自社のWebサイトのユーザビリティを向上させましょう。具体的には、以下のような施策が有効です。
・「カートを見る」や「お申し込みはこちら」などよく使用するボタンの配置を見直す
・パソコン・スマホ双方に最適化された構成にする
・商品やサービスの説明を詳しく記載する
・誰でも理解できる平易な言葉を用いる
トップページから詳細ページへの遷移のしやすさも重要です。顧客にとって使いやすいWebサイトになっているか、アクセスデータを分析したうえでサイト設計を見直してみましょう。
方法2 FAQを充実させる
複数回にわたって同様の内容で問い合わせを受けたことがある項目は、すべてFAQに集約しましょう。オンラインショッピングのようにWeb上で取引が完結するケースにおいて、よくある質問の具体例は以下のとおりです。
・商品やサービスへの質問
・請求内容についての疑問
・住所やメールアドレスなど登録情報の変更
・返品・交換や購入後のアフターフォロー
FAQを配置しているにもかかわらず同じような問い合わせが頻発している場合は、顧客がFAQへたどり着いていない可能性があります。導線がわかりやすいか、安易に問い合わせフォームへ誘導していないか、一度確認してみましょう。
方法3 ナレッジを共有する
従業員からの問い合わせが多い場合は、ナレッジを適切に共有することで課題の自己解決を促しましょう。
Wordや紙ベースでナレッジ管理をしている場合、情報の所有者が不明瞭になり、その情報を必要としている従業員がアクセスできなくなります。ナレッジを一元管理し「誰もが」「どこからでも」アクセスできる環境をつくることで、問い合わせ数の大幅削減が期待できるのです。
カテゴリ別の情報整理や検索機能が備わっているナレッジ共有ツールを活用すると、社内への浸透度合いは一層高まります。
方法4 チャットボットを活用する
チャットボットの導入は、問い合わせ数を削減する最も効率的かつ確実な方法です。チャットボットを活用することで得られる具体的なメリットは以下のとおりです。
・対応スタッフのリソースが不要になる
・24時間365日いつでも疑問が解決できる
・問い合わせ内容のデータを蓄積して業務の改善に生かすことができる
迅速かつコストを抑えて導入できるため、顧客と従業員双方にメリットが大きいツールです。
問い合わせ対応でチャットボットを活用した事例
チャットボットを活用することで、問い合わせ数を削減させた3つの事例を紹介します。社外向け・社内向けそれぞれの活用事例を紹介するため、自社の課題に近いケースを参考にしてください。
ウエルシア薬局の事例
ウエルシア薬局の人事部には、全国の従業員から1日あたり約250件の問い合わせが寄せられていました。担当者への電話の取り次ぎに時間を要することや、早朝や深夜帯の問い合わせ整備に課題を抱えていたことが、チャットボットの導入に踏み切った理由です。
導入後は、人事部に寄せられる問い合わせ件数を70%削減し、問い合わせにかかる対応工数を1日あたり6.25時間削減することに成功しました。従業員満足度を向上させるため、今後はさらなる対応領域の拡大を予定しています。
(参照 AIチャットボット「HiTTO」導入事例 ウエルシア薬局株式会社)
立命館アジア太平洋大学の事例
立命館アジア太平洋大学は、学費関連の繰り返し寄せられる問い合わせの自動対応化を目指し、チャットボットを導入しました。
導入後は、問い合わせ件数の4割減、顧客自己解決率87%を達成しました。定型的な問い合わせの削減により、本当に助けが必要な顧客にリソースを集中できるようになったことが最大のメリットです。
利用率のさらなる増加を目指すべく、Webサイトのアクセス分析をはじめとしたさまざまな工夫をこらして運用しています。
(参照 AIチャットボット「PKSHA Chatbot」導入事例 立命館アジア太平洋大学)
快活フロンティアの事例
「快活CLUB」をはじめとするエンターテインメント事業を営む快活フロンティアは、増加する問い合わせ数や24時間対応への課題を解決すべくチャットボットを導入しました。
出店により店舗数が増加したにもかかわらず、電話やメールの問い合わせ数は前年同値におさえられました。チャットボットが月3万件の問い合わせを処理しているからこその結果です。
人員を増やすことなく問い合わせ数の増加に対応し、顧客の潜在ニーズ分析にも役立てられている事例です。
(参照 「RICOH Chatbot Service」導入事例 株式会社快活フロンティア)
まとめ
コールセンターやヘルプデスクなどの負担軽減・業務効率化を実現するためには、問い合わせ件数の削減が欠かせません。Webサイトやマニュアル、FAQの整備に加え、チャットボットなどのITツールを導入することで応対業務の大幅削減が期待できます。
近年のデジタル化にともない、問い合わせ対応部署にも変革が求められています。ITツールを効果的に活用し、顧客と従業員双方のニーズに沿ったサポートを提供しましょう。