ヒアリングは、営業活動における最初のフェーズです。顧客の情報を聞き出すヒアリングは、その後の商談を左右するものであり、入念な準備と技術を持って取り組む必要があります。
このヒアリングによく用いられるのが、ヒアリングシートです。的確なヒアリングを行うためには、ヒアリングシートの準備が欠かせません。
そこで今回は、ヒアリングシートについて、活用理由や項目、ポイントなど詳しく解説していきます。ヒアリングの進め方やヒアリングシートの作成の参考にご活用ください。
ヒアリングシートを活用する理由
ヒアリングシートの内容に触れる前に、まずはヒアリングシートを活用する理由について知っておきましょう。
ヒアリングシートは、ヒアリング後の営業トークに繋げる以下の理由のために活用されています。
理由1 顧客への理解を深めるため
ヒアリングシートのメインとなる目的は、顧客への理解を深めることです。
顧客にとって魅力的な営業トークを行うには、まずは顧客のことを知らなければなりません。ヒアリングシートに顧客の情報を引き出す質問を入れ込んでおけば、営業担当者はヒアリングの段階で必要な顧客情報を得て、その後の営業トークに生かすことができます。
理由2 的確な内容のヒアリングを行うため
ヒアリングシートなしでは、質問内容が曖昧になったり顧客の現状に即した内容でなかったりと、的確なヒアリングが行いにくくなります。
事前に収集した情報を生かした内容でヒアリングシートを作っておき、それを活用すれば、的確なヒアリングができ、その後のアプローチに繋げやすくなります。
理由3 顧客への聞き漏れを防止するため
ヒアリングでは、顧客と対話する中で焦ったり話が盛り上がったりして、聞くべき項目を聞き忘れてしまうことがあります。必要な情報が揃っていないと営業担当者は的確なアプローチができません。また、ヒアリングで聞き漏れた項目を後日聞くと、流れが不自然になり、顧客に不信感を抱かせてしまう可能性もあります。
ヒアリングで聞いておくべき項目は少なくありませんが、ヒアリングシートに「顧客に聞くべき項目」を作っておき、確認しながらヒアリングを進められれば、聞くべき項目の聞き漏れを防ぐことができます。
理由4 ヒアリングの精度を保つため
アプローチの方向性を決めるヒアリングは、顧客が企業に対して第一印象を持つことにもなる重要な営業プロセスです。ヒアリングプロセスがその後の勝敗を左右するといっても過言ではありません。
とはいえ、ヒアリングには技術が必要で、営業経験が浅い担当者だとうまく進められないこともあるでしょう。
そこで役立つのがヒアリングシートです。ヒアリングシートを事前に作成しておけば、経験の浅い担当者でも一定の精度のヒアリングを行えます。
ヒアリングシートに入れるべき項目
ヒアリングシートには、一般的に以下のような項目を入れ込みます。
・課題や問題
・ニーズ、求めていること、実現したいこと
・商材に対する印象や疑問点
・予算感
・希望納期、スケジュール感
・意思決定の流れや検討に関わる部門、決裁者
・他社商品の検討状況
これらはヒアリングにおける基本の項目です。
より深く的確に顧客を理解できるよう、売り込みたい商品や状況に応じて、プラスアルファの項目を設定するようにしてください。
ヒアリング効果を高めるポイント
ヒアリングをより効果的に行うには、ヒアリングシートの活用以外にもポイントがあります。ここからは、ヒアリング効果を高めるための4つのポイントについて解説していきます。
ポイント1 事前の情報収集に力を入れる
ヒアリング前には、事前の情報収集が欠かせません。顧客の情報やその業界、競合の情報などを調べ、頭に入れておきましょう。
事前にある程度の情報を持っておくことは、的確なヒアリングだけでなく、顧客との会話の盛り上がりや用意した質問がうまくいかなかった場合の質問の切り替えにも役立ちます。
何も知らない場合と比べ、営業担当者も落ち着いて顧客へのヒアリングを進められるでしょう。
ポイント2 顧客が抱えているかもしれない課題の仮説を立てておく
ヒアリングの前には、顧客が抱えているかもしれない課題やニーズを仮説として考えておくことも大切です。事前に収集した情報をもとに、考えられる課題およびニーズの仮説をいくつか立てておきましょう。
この仮説は、ヒアリング後の営業トークで提示し、商品やサービスの提案へと繋げていくことになります。課題やニーズの内容と売り込みたい商品やサービスが繋がるよう、仮説を考えるようにしてください。
ポイント3 ヒアリングの順番は「現在・過去・未来」の順で
ヒアリングの基本は、「①現在②過去③未来」の順番で話を進めることです。
営業の目的は「商品やサービスを導入してもらう」という未来のことですが、顧客は未来のことを簡単に答えたり決めたりできません。そこで、答えやすい質問から話を進めていくというのがこの方法です。
「①現在②過去③未来」の順でヒアリングすると顧客は答えやすく、また頭の中も時系列で整理できます。と同時に、営業担当者もこれまでの経緯と現状を把握することができます。
ポイント4 ツールを活用する
より効果的にヒアリングを行うには、SFAやサービスイネーブルメントツールなどの営業サポートツールを活用することが有効です。
ツールを用いれば、情報をツール上に集約でき、顧客情報の管理が簡単になります。また、あらゆるデータの分析や組織内での情報共有も可能なので、それらの情報を生かして、顧客に対しより確度の高いヒアリングおよび営業アプローチを行うことができます。
営業活動全体を効率化するという点においても、ツールの活用は効果的です。
ヒアリングに役立つフレームワーク
ヒアリングには、既存のフレームワークを応用することができます。代表的なフレームワークを3つご紹介します。
BANT
営業ヒアリングで聞いておくべき項目として、BANTというフレームワークがあります。
・Authority-決裁権
・Needs-必要性
・Timeframe-導入時期
「予算はどのくらいか」「決裁権は誰が持っているのか」「課題解決の必要性の程度は」「いつ頃までの課題解決を目指すか」という4つの要素は、営業の核となる情報です。これらをヒアリングに盛り込むことで、営業担当者は顧客を理解し的確なアプローチを行うことができます。
3C分析
3C分析は、ヒアリングや分析時に活用できるのフレームワークです。3Cとは、以下の3つの要素を指します。
・Customer(顧客、市場)
・Competitor(競合)
3C分析では、市場におけるこれら3つの要素から情報分析を行うことで、課題を導き出すことができます。ヒアリングでこれらの要素の現状を顧客から聞き出しておけば、その後円滑に分析、提案へと繋げられます。
SPIN話法
ヒアリングや営業トークでは、SPIN話法を用いた質問も効果的です。
・P(Problem Questions)→問題質問(抱えている問題や不満を聞き出す質問)
・I (Implication Questions)→示唆質問(表面化していない問題を示唆する質問)
・N(Need-Payoff Questions)→解決質問(問題が解決した場合の状況やメリットを提示する質問)
SPINの順に質問を重ねていくことで、顧客の潜在ニーズを引き出すことが可能になり、顧客自身に自社の課題に気づいてもらうことができます。
まとめ
ヒアリングの精度を高めることは、営業成果の向上に繋がります。ヒアリングシートを用いれば、比較的簡単にヒアリングの精度を高めることができるでしょう。
ただし、ヒアリングシートを最大限に活用するには、事前の綿密な情報収集や効果的なフレームワークに対する理解が必要です。ヒアリングシートを用いたヒアリングを社内ロープレで練習するのも、ヒアリング精度向上に効果的でしょう。
また、ヒアリングをはじめとした営業活動をより効果的かつ効率的に行うには、営業サポートツールが役立ちます。ツールで営業活動全体の情報が管理できるようになれば、確度の高い営業が可能になり、また営業担当者の負担も軽くなるでしょう。
営業成果向上や業務効率化を目指すなら、ツールの導入も検討してみてください。