企業経営においてしばしば問題点として挙げられる「業務の属人化」。多くの企業が属人化した業務の取り扱いに頭を悩ませ、その改善を目指しています。 では、業務の属人化はなぜ改善が必要なのでしょうか。
また、属人化にはメリットがあるのでしょうか。今回は「属人化」に着目し、そのメリットやデメリット、原因についてご説明します。
属人化とは
属人化の定義
属人化とは、組織において特定の担当者にしかわからない業務のやり方や内容が存在する状態を指します。会社では、それぞれの従業員が各業務を担当して仕事を進めています。理想的には、全従業員が全ての業務のやり方や内容を把握していることが望ましいです。
しかし、実際には特定の業務のやり方や内容が特定の従業員にしかわからないケースが多く見られます。このようなケースを「その人に属すること」を意味する「属人」という言葉を用いて「業務の属人化」と呼びます。
属人化のメリット・デメリット
属人化のメリット
まずは、業務属人化のメリットを3点ご紹介します。
メリット1: 高い専門性や個性を生かせる
属人化のメリットとして、個人の持つ高い専門性や個性を業務に生かせることが挙げられます。専門的な知識や技術、センスは誰もが持っているわけではありません。そのため、秀でた能力を持つ従業員に得意な分野を担当させることで、従業員の能力を生かし、その分野の業務の質を向上させることが期待できます。
メリット2: 担当者のモチベーションアップ
業務を属人化させ特定の従業員に任せることで、「責任ある仕事を任された」と感じた従業員のモチベーションが上がることがあります。従業員のモチベーションの向上は、業務に対する責任感や能力向上につながります。ただし、業務の属人化は場合によっては特定の従業員に負担をかける可能性があるため注意が必要です。
メリット3: 業務効率が上がる場合も
業務によっては属人化させることで、業務効率が上がる場合もあります。能力の高い従業員が業務を担当し、一人でスムーズに業務を進められるからです。複数人で業務を行う場合、従業員間の能力差があると作業効率が低下する可能性があります。
属人化のデメリット
次に、業務属人化のデメリットを4点ご紹介します。
デメリット1: 業務進行が滞りやすい
属人化は業務効率の向上につながる一方で、業務進行を妨げる可能性もあります。担当者しかその業務を行えないため、担当者が不在の場合には業務が滞り、問題解決が困難になります。また、担当者に業務負担が集中し、時間内に業務を処理しきれないケースも生じます。これにより、全体の業務に支障が出る可能性があります。
デメリット2: ミスや不正を隠蔽しやすい
業務の属人化には、ミスや不正を隠蔽しやすいというデメリットもあります。特定の従業員しか行わない業務は、他人の監視の目が届かず、ミスや不正が起こっていても発覚しにくい環境が生まれやすいです。このような状況は企業の不祥事に繋がるリスクがあります。
デメリット3: 業務品質が低下
属人化によって業務品質が向上する可能性がある一方で、逆に業務品質が低下する可能性もあります。特定の従業員だけが業務を行うことでミスの発覚が遅れることや、業務に対する新たなやり方やアイディアが生まれにくくなるためです。
デメリット4: 組織全体のスキルアップが見込めない
業務を属人化させると、担当者以外の従業員はその業務に関するノウハウを得ることができません。その結果、従業員全体のスキルが限られてしまいます。また、属人化業務を担当する従業員もその業務に特化したスキルしか持てない状況になる可能性があります。
業務属人化の原因
業務の専門性
業務の専門性が高いと、特定の従業員に知識やスキルが集中しやすくなります。たとえば、高度な専門知識や技術を要するシステム開発や、特殊な法律知識を必要とする法務業務などは、特定の担当者に業務が集中しがちです。担当者が長期間にわたって経験を積むことで高度な知識やスキルを習得できますが、他の従業員がその業務を学ぶ機会が少なく、担当者以外に業務を遂行できる人が育ちにくいという問題も発生します。
対策:
- 専門知識やスキルの共有:研修や教育プログラムを通じて他の従業員に専門知識やスキルを共有します。
- マニュアルや手順書の作成:業務内容を詳細に記述したマニュアルや手順書を作成し、理解を促進します。
- 専門チームの編成:専門知識を持つ従業員を集めたチームを編成し、チーム全体で業務を遂行します。
情報共有の不足
情報共有の不足は属人化の一因です。特定の担当者しか業務内容を理解できず、他の従業員が業務を遂行することができません。
情報共有が不足する原因:
- コミュニケーション不足:部署間やチーム間での情報共有が不足している。
- 情報共有の仕組み不足:情報共有のためのシステムやプロセスが整っていない。
- 情報共有に対する意識の低さ:従業員が情報共有の重要性を認識していない。
対策:
- コミュニケーションの活性化:定期的なミーティングや情報共有会を開催し、部署間のコミュニケーションを促進します。
- 情報共有システムの導入:誰でも簡単に情報にアクセスできるシステムを導入します。
- 情報共有の意識向上:情報共有の重要性を従業員に啓蒙し、積極的な共有を促します。
マニュアルや手順書の欠如
適切なマニュアルや手順書がないと、業務が特定の個人に依存しがちです。マニュアルや手順書がないことで、業務の標準化が難しく、効率化や人材育成が困難になります。
対策:
- マニュアルや手順書の作成:業務の進め方を標準化し、誰でも業務を遂行できるようにします。
- 定期的な見直し:最新の情報に更新し、内容を常に最新に保ちます。
属人化解消のメリット
業務効率の向上
属人化を解消することで業務効率が向上します。特定の担当者に業務が集中せず、他の従業員も分担できるため、納期短縮やコスト削減が期待できます。
対策:
- 業務の可視化:業務内容を可視化してボトルネックを特定し、改善します。
- 業務の標準化:業務の進め方を標準化し、誰でも業務を遂行できるようにします。
- 情報共有の促進:従業員間の連携を強化し、業務効率を向上させます。
ナレッジの共有と蓄積
ナレッジやノウハウが共有・蓄積されることで、組織全体の持続可能性が向上します。属人化の解消により、特定の担当者に閉じ込められていたナレッジが組織全体で共有され、組織の競争力が強化されます。
対策:
- ナレッジマネジメントシステムの導入:効率的にナレッジを共有・蓄積します。
- ナレッジ共有の文化醸成:従業員が積極的にナレッジを共有する文化を作ります。
- ナレッジの活用促進:組織全体の知識レベル向上を図ります。
人材育成と柔軟な業務対応
属人化の解消により、人材育成が促進され、業務の対応力が向上します。複数の従業員が業務を遂行できるようになるため、業務の柔軟性が高まり、人材流出の防止にもつながります。
対策:
- OJTの充実:経験豊富な従業員からの指導を充実させます。
- 研修制度の充実:最新の知識やスキルを習得するための研修を提供します。
- キャリアパス制度の導入:従業員がキャリアアップを目指せるようにします。
属人化を防ぐための具体策
業務の可視化と標準化
業務の可視化と標準化は、属人化を防ぐための重要な手段です。業務を可視化することで、業務内容を明確にし、誰でも理解できる状態にします。業務の標準化は、業務の進め方を統一し、誰でも同じように遂行できるようにすることです。
メリット:
- 属人化の防止: 業務内容が明確化され、標準化されることで、特定の担当者に業務が集中することを防ぎます。
- 業務効率の向上: 標準化により業務が効率化され、作業の無駄が減ります。
- 人材育成の促進: 業務内容が可視化されることで、他の従業員も業務を理解しやすくなり、教育が進みます。
使用するツール:
- 業務フロー図: 業務の流れを視覚的に示すツール。
- 業務マニュアル: 業務内容を詳細に記述した文書。
- 業務手順書: 業務の進め方をステップごとに示す文書。
- 業務管理システム: 業務の進捗や担当者を管理するシステム。
マニュアルと手順書の作成
詳細なマニュアルや手順書を作成し、全員が理解できるように共有することは、属人化防止において非常に重要です。これにより、業務内容を誰でも理解できるようになり、特定の人に依存しない環境を作れます。
ポイント:
- わかりやすく簡潔な文章: 誰でも理解できるよう、わかりやすく書く。
- 最新の情報に更新: 情報を常に最新に保つ。
- 定期的な見直し: 定期的に内容を見直し、必要に応じて更新。
使用するツール:
- ドキュメント作成ツール: WordやGoogle Docsなどを使用。
- 図解ツール: VisioやDraw.ioなどで図解を作成。
- マニュアル作成ツール: トースターチームなどの特化ツールを使用して効率的に作成。
情報共有の仕組みづくり
継続的な情報共有のためのシステムや仕組みを整えることは、属人化を防ぐ上で不可欠です。情報が特定の担当者に集中することを防ぎ、組織全体で共有されるようにします。
方法:
- 情報共有システムの導入: 社内ポータルサイトやグループウェアなどを活用。
- 情報共有ツールの活用: SlackやChatworkなどのツールを利用。
- 情報共有のルール策定: 情報共有に関するルールを明文化し、従業員に周知。
- 情報共有の意識向上: 情報共有の重要性を啓蒙し、積極的な共有を促す。
まとめ
業務の属人化には一定のメリットがありますが、デメリットが目立ちます。業務の効率化や健全な企業運営を目指すためには、業務の標準化を進めることが重要です。しかし、デザインや特殊技術など、一部の社員にしか担当できない分野も存在します。企業には、属人化すべき業務と標準化すべき業務を的確に見極める能力が求められます。
脱属人化を実現するためには、業務の再現性が必要不可欠です。個々の経験・知識をチームや組織全体で共有・活用するために、マニュアル作成管理ツールや社内ナレッジツールを導入することが効果的です。これにより、業務の再現性を高め、短期間での社員教育の実現や指導不足による離職率の低減が期待できます。
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