営業活動は、内勤型の営業手法として近年注目されているインサイドセールスと、外へ出て営業活動を行うフィールドセールスの2種に分けられます。
これらの営業手法は、両方をうまく使い分け、併用することで、最大の効果を発揮します。しかし、それぞれの手法の特徴や役割が正しく理解出来ていなければ、併用はうまくいかずその効果は得られません。
そこで今回は、インサイドセールスとフィールドセールス、2つの営業スタイルの違いや役割について解説します。両者を連携させるメリットやポイントについてもご紹介するので、営業活動の効率化や見直しにお役立てください。
フィールドセールスとは
まずは、外に出て活動するフィールドセールスについて、その仕事内容や役割をご紹介します。
仕事内容
フィールドセールスとは、外勤型の営業スタイルのことです。担当者は社外に出て顧客のもとを訪れ、商品・サービスの提案〜受注に至るまで、対面での営業活動を行います。
フィールドセールスは従来型の営業スタイルと類似していますが、「担当者が営業活動の全てを担うわけではない」という点で、従来型とは異なります。
従来型では、アポイントから受注まですべての営業プロセスを1人の担当者が総合的に担っていました。
しかし、フィールドセールスでは、担当者は対面での営業活動のみを行います。電話によるアポイントの獲得やヒアリングなどといった非対面での営業活動はインサイドセールス担当者に任せ、フィールドセールス担当者は外勤業務だけに集中することができます。
このように、業務を分業・限定することで、担当者はその業務により丁寧に注力して取り組めるようになります。その結果として、業務効率化や成約率アップが目指せるでしょう。
役割
インサイドセールスと分業する場合のフィールドセールスの役割は、リード(見込み顧客)に対する対面での「提案・商談・クロージング・契約・その後のフォロー」です。インサイドセールスが育成しアポイントを取ったリードに対し、課題を解決したり新たな価値を付与したりする商品・サービスを提案し、成約を目指します。
とはいえ、企業によって、フィールドセールスが担う役割の範囲は異なります。
中には案件化までをインサイドセールスが担当し、その後をフィールドセールスが引き継ぐというパターンもあるでしょうし、インサイドセールスが導入されておらず、フィールドセールスがすべての営業活動を担っている従来型のパターンもあるでしょう。
しかし、フィールドセールスの基本の役割は、顧客との対面でのやり取りです。これは、最終的な成約を左右する重要な役割だと言えるでしょう。
強み
フィールドセールスの強みは、なんといっても「顧客と直接会って商品やサービスの提案を行えること」にあります。
直接会うことで、相手との間に信頼関係が芽生えやすく、また自身の持つ疑問をその場で解決できたり、抱える問題の相談に乗ってもらったりできることから、顧客側の安心感も高まります。
相手に信頼してもらうための対応や話術など、担当者に一定のテクニックは必要ですが、互いに顔を見て会話ができる点は、フィールドセールスの大きな強みでしょう。
インサイドセールスとは
次に、近年注目され導入する企業が増えている内勤型のインサイドセールスについてご説明します。
仕事内容
インサイドセールスとは、内勤型の営業スタイルのことです。担当者は顧客とは非対面で、電話やメール、Web会議システムなどを用い、社内または自宅などから営業活動を行います。
通信手段を用いたリードの選定やそのニーズの把握、育成によって、最終的な商談時の受注確度を向上させることが、インサイドセールスの主な仕事です。中には、インサイドセールスのみで営業活動の全てを完結させている企業も存在します。
また、この活動ではデータが重要な指針となるため、見込み客のデータを持つマーケティング部と連携して、営業活動を進めることもあります。
営業活動の効率化やコロナ対策の観点から、ここ数年非対面で対応するインサイドセールスへの注目は高まりを見せています。
今後、この営業スタイルを導入する企業は、さらに増えていくでしょう。
役割
インサイドセールスとフィールドセールスで営業活動を分担している場合、インサイドセールスが目指すのは、フィールドセールスのような成約ではありません。コミュニケーションを取りながらリード(見込み顧客)を育成し、そのニーズを顕在化させたところでアポイントを取って、フィールドセールスへと引き継ぐまでが、インサイドセールスの役割です。またそれだけでなく、成約後のフォローも担います。
一方、インサイドセールスのみで全ての営業活動を行う場合には、担当者は「リードの育成・アポイント取得・商談・クロージング・契約」という全てのプロセスを担当します。Web上の施策からリードの連絡先を獲得し、それを用いてメールや電話でアプローチを続け、商品やサービスに対する顧客の興味が高まったところで契約・購入に誘導するというのが、主な流れでしょう。
このような営業スタイルは、低価格の商品・サービスで採用されることが多いです。
外に出ず会社の中から通信手段を用いて効率的な営業活動を行うことが、インサイドセールスの役割です。
強み
インサイドセールスの強みは、「効率的な営業活動ができること」にあります。
この手法の場合、ヒアリングや商談などといった顧客とのコミュニケーションにあたって、移動が発生しません。そのため、担当者は場所や移動時間を気にすることなく、1日に何件ものリードに対し、アプローチを行うことができます。さらに、求められた資料もすぐに提示したり送信したりすることができ、上司の判断もその場で仰げます。
また、非対面でのアプローチは顧客側にとってもハードルが低く、対応してもらえることが多いです。約束していた商談のキャンセルも回避しやすいため、計画通りに営業活動を進めやすい点も、インサイドセールスの強みだと言えるでしょう。
フィールドセールスとインサイドセールスの違い
次に、フィールドセールスとインサイドセールスの違いを表で確認していきましょう。
フィールドセールス | インサイドセールス | |
場所 | 社外 | 社内、自宅など |
目的・役割 | 受注獲得 | リードの育成 アポイント取得 |
業務範囲 | 提案 商談 クロージング 契約 契約後のフォローなど |
リード獲得・育成 アポイント取得 成約後のフォローなど |
手段 | 訪問 | 電話 メール Web会議システム |
顧客接触数 | 少ない | 多い |
KPI | 商談数 引き継いだリードの受注率など |
受注数 売上など |
※フィールドセールスとインサイドセールス、一般的な分業の場合
このように、フィールドセールスとインサイドセールスとでは、目的も手段も異なります。
インサイドセールスでは、非対面の通信手段でこまめなアプローチを行い、顧客との信頼関係を築き、そのニーズを高めていきます(リードの育成)。
一方のフィールドセールスでは、インサイドセールスが育成し購買意欲が高まっているリードを引き継ぎ、対面で商談をし、成約を目指します。
成約のための最初の基盤をインサイドセールスが、最後の仕上げをフィールドセールスが担っていると考えても良いでしょう。
インサイドセールスとフィールドセールスを連携させるメリット
インサイドセールスとフィールドセールスの役割・違いについて理解したところで、ここからは、これらの営業手法を連携させることで得られる4つのメリットについてご説明します。
メリット1 フィールドセールスが顧客対応に集中出来る
従来の営業手法であるフィールドセールスのみで営業を完結する場合、営業担当者の負担は大きくなります。なぜなら、担当者は顧客訪問に日中の時間を割き、リード獲得や事前調査、資料作成などの作業をそれ以外の時間で行わなくてはならないためです。
しかし、インサイドセールスがリードの獲得、課題やニーズのヒアリングを行うことでその負担は軽くなり、フィールドセールス担当者は集中して本来のコア業務である商談や顧客対応を行えるようになります。
その結果、今まで以上に顧客への細やかな対応が可能になれば、顧客満足度の向上や成約率の向上が期待できます。
また、成約の見込みが高くない顧客への訪問など、非効率な活動も避けられるでしょう。
メリット2 リードの取りこぼしを減らすことが出来る
フィールドセールスでも、リードの獲得や育成を行うことは可能です。しかし、営業担当者は見込み顧客であるリードよりも、すでに進行している商談の方に重点を置いてしまいがち。これによりリードへのアプローチが疎かになれば、やがてリードの取りこぼしが起こるでしょう。
それに対してインサイドセールスでは、フィールドセールスとの分業により、リード獲得に集中した営業活動が行えます。リード獲得に集中できる状況下では、顧客とのやりとりから相手が抱える課題を聞き出し、解決方法を提案するなどの方法によって、リードをより成約率の高いホットリードに育成することも可能でしょう。
つまり、インサイドセールスで集中的に質の高いリードの獲得や育成を行えば、その結果としてフィールドセールスが空振りに終わる可能性も少なくなるのです。
メリット3 労働力が不足していても多くの顧客にアプローチ出来る
フィールドセールスだけで営業を完結させるには多くの労働力が必要になりますが、労働力を増やしても成約率が上がるとは限りません。
しかし、少ない労働力で活動できるインサイドセールスに営業プロセスの一部であるリードの獲得を任せれば、労働力が不足している企業でも、効率的により多くの顧客へアプローチを行うことが可能になります。
つまり、営業プロセスをインサイドセールスとフィールドセールスで分担し連携すれば、限られた時間と労働力を効率良く使うことができるのです。これにより、期待する成果を手に入れることが可能でしょう。
メリット4 業務の属人化を防ぎ情報共有が徹底出来る
業務の特性上、特に営業は属人化されやすい業種だと言われています。一度属人化してしまった業務は情報共有が難しくなり、担当者の異動や退職で企業が受ける損失が増えるだけでなく、新しい人材の育成にも多くの時間を要します。
インサイドセールスとフィールドセールスの連携には、営業ツールなどを活用した情報共有が欠かせません。特にインサイドセールスからフィールドセールスでの引き継ぎ段階で情報共有が不足していると、成約率の高いホットリードを失う恐れがあります。
よって、インサイドセールスとフィールドセールスを連携させれば、必然的に情報共有も徹底されるようになります。この情報共有の徹底は、業務の属人化防止にも役立つでしょう。
インサイドセールスとフィールドセールスの連携を成功させるポイント
インサイドセールスとフィールドセールスの連携を成功させるには、次の2つのポイントに気をつける必要があります。
・役割分担の明確化
・情報共有の徹底
各ポイントについて詳しくご説明します。
ポイント1 役割分担の明確化
ご紹介してきた通り、フィールドセールスとインサイドセールスとでは、目的も業務内容も異なります。しかし、これらをうまく連携させれば、より効率的な営業活動が実現します。
そのためには、フィールドセールスとインサイドセールスの役割分担を明確にしておくことが大切です。「営業活動のどこからどこまでをインサイドセールスが担い、フィールドセールスがそれを引き継いでどこからどこまでを担う」ということをしっかり決め、組織全体で共有しておくことで、無駄のないスムーズな業務連携が叶います。
この時、それぞれの業務の範囲はできるだけ具体的に決めておくようにしましょう。また、インサイドセールスでは最初に顧客へのヒアリングを行い情報を収集しますが、その項目についてもある程度設定しておくべきです。
さらに、インサイドセールスからフィールドセールスへリードを引き継ぐタイミングについても、事前に共有しておきましょう。
ポイント2 情報共有の徹底
フィールドセールスとインサイドセールスがうまく連携して営業活動を進めるには、情報共有が重要です。情報が共有されていなければ、担当者は状況に合った行動を行うことができません。
何件もの顧客情報をフィールドセールスとインサイドセールスとの間でリアルタイムに共有するなら、SFAやCRM、MAをはじめとしたツールを用いるべきでしょう。これらのツールではあらゆる顧客情報を管理し、組織内で共有することができます。
ツールを用いれば、担当者の負担なく、徹底した情報共有ができるようになり、またそれを営業のナレッジとして蓄積していくことも可能です。ナレッジの蓄積は企業の財産となり、営業担当者のスキルアップのためのデータとしても有効でしょう。
まとめ
営業活動をインサイドセールスとフィールドセールスに分業することで、企業は多くのメリットを得ることができます。ただし、そのためには各営業手法の役割を正しく理解し、自社の商材に最適な分業の仕方を模索する必要があります。
また、営業活動全体の効率化をより推し進めるのであれば、インサイドセールスとフィールドセールスの分業だけでなく、営業ツールの導入も検討するといいでしょう。営業ツールは、インサイドセールスとフィールドセールスの情報連携はもちろん、営業活動全体の情報管理に役立ちます。これを導入すれば、営業活動の効率化を加速させることができるでしょう。