アップセルとクロスセルは客単価を向上させるための営業手法で、それぞれ異なる特徴を持っています。どちらも既存顧客にさらなる提案をするためのものですが、その方法を誤ってしまうと、客単価を高めるどころかロイヤルティの高い既存顧客からの信頼を失ってしまう恐れがあるのです。
この記事では、アップセルとクロスセルの意味や特徴とともに、それぞれのポイントと注意点を説明しましょう。アップセル・クロスセルの成果を出したいと考えているのなら、ぜひ参考にしてください。
アップセルとは
アップセルとは顧客の単価を上げるための営業手法で、簡単に言えば「既存顧客に、今の商品よりもより高額な商品、より多くの商品を購入してもらう」ことを言います。
もちろん、ただ高価な商品を売りつけるのではなく、上位モデルや高級品の提案、定期コースの提案、まとめ買いなどの提案で、顧客にメリットのある提案をした上で、顧客単価を向上させます。
・10万円のパソコンを使用している顧客に対し、より高性能な15万円のパソコンを提案する
・機能制限がある無料プランのアプリを使用中の顧客に対し、全機能が使用可能な有料プランを提案する
・毎月商品を購入している顧客に対し、年間購入の割引プランを提案する
・同商品を9個購入の顧客に対して、10個購入の割引プランを提案する
これらの提案は、結果的に顧客単価を高くしているものの、顧客が得られるメリットも多いです。そのメリットが顧客の潜在ニーズにフィットした場合、アップセルを成功させることが出来るでしょう。
クロスセルとは
クロスセルは自社の商品を購入済または検討中の顧客に対して+αの提案をする、オプション商品の販売だと考えれば良いでしょう。
・ツールを導入した顧客に対し、オプションサービスを提案する
・顧客が興味のある商品に似た商品を提案する
・その他の顧客が同時購入することが多い実績のある商品を提案する
分かりやすい商品で説明すると、スマホを購入した顧客の多くはスマホケースや保護フィルムを購入します。スマホ購入時にこれらの商品を勧めることで、顧客は何度も商品購入のために行動に移す手間が省け、企業側は客単価を向上させることが出来るのです。
客単価を向上させるための営業方法
アップセルとクロスセルは、どちらも客単価を向上させる施策であることをお伝えしました。
ユーザーのニーズが多様化している今は新規顧客を獲得する難易度が高くなっており、既存顧客へのアプローチであるアップセル・クロスセルが重要視されています。この営業手法は、既存顧客を繋ぎ止める手段としても、有効だと言えるでしょう。
また、アップセル・クロスセルを前提とすることで、初めにかかる費用を手頃な価格にすることが出来ます。例えば、商材としてツールを扱う場合、導入費用を抑えられるシンプルプランに、追加の魅力的なオプションを用意したり、利用可能な機能が増えるレギュラープランやプロプランを用意するなどの方法があるでしょう。
アップセル・クロスセルを前提とした商材は「シンプルな機能のみを手頃な価格で使用したい」「豊富な機能が搭載されたものを使いたい」など、さまざまな顧客のニーズにも合わせやすくなります。
アップセルとクロスセルを行う際のポイント
アップセルとクロスセルを成功させるためのポイントには下記のようなものがあります。ポイントを理解した上で導入を検討してみましょう。
ポイント1 ロイヤルティの高い顧客のみに実施する
アップセルとクロスセルは、自社に対するロイヤルティ(信頼・愛着)が高い顧客を対象とすることで、期待する効果が得られます。
2つの営業手法は、顕在的なニーズではなく顧客の潜在的なニーズにアプローチする営業手法なので、ロイヤルティの低い顧客や新規顧客には「押し売りされている」と感じられてしまうためです。
まずは、アップセル・クロスセルの施策を実施する対象を絞るために、顧客のロイヤルティの高低を判別して「推奨者」「中立者」「批判者」に分けましょう。施策を実施するべき対象は「推奨者」のみになります。
この際、顧客データの管理方法として最適な営業ツールを導入すれば、スムーズに顧客情報と顧客のロイヤルティの判別が出来るでしょう。
ポイント2 顧客側のメリットを具体的に提示する
アップセル・クロスセルは、費用面の結果だけを見ると顧客がより多くの費用を負担することになるため、顧客には、アップセル・クロスセルによって得られるメリットを明確に伝える必要があります。
収益増加や効率化など、可能な限り数字を使った具体的なメリットを用意しておきましょう。顧客が得られるメリットが少ない提案は、顧客のロイヤルティを下げる結果になってしまうでしょう。
ポイント3 現在検討中・契約中の商品とのつながりを示す
アップセルとクロスセルでは、顧客に全く新しい商品を提案するのではなく、すでに購入いただいている商品や、購入を検討している商品とつながりがあるものを提案します。
顧客に対して多すぎる選択肢を用意することは、顧客を混乱させてしまうだけで、成果にはつながらないでしょう。
アップセルとクロスセルの施策例
ここでは、アップセルとクロスセルの施策例を紹介しましょう。自社に適した方法はどれかを考えてみてください。
アップセルの施策例
・複数購入時や長期契約時の割引や優待制度
・より優れた機能を搭載した上位商材の提案
・アップセルを前提とした商材のお試し版・無料版の提供
クロスセルの施策例
・機能面を補強するオプションの用意
・購入者が興味がありそうな商品を提案する
・セットで利用することで、より高いサービスが受けられる商材を紹介する
アップセルとクロスセルを行う際の注意点
最後に、アップセルとクロスセルを行う際の注意点を紹介しましょう。
注意点1 押し売りをしない
アップセル・クロスセルの目的は客単価を上げることであり、ロイヤルティの高い顧客へのアプローチが有効だとお伝えしましたが、潜在的なニーズや顧客のタイミングを読み間違い、しつこい営業をすると顧客に「押し売りされた」と感じられてしまうでしょう。その結果、顧客からの信頼を失い、ロイヤルティが高い顧客が自社から離れてしまうかもしれません。
ロイヤルティの高い顧客は企業のファンと言える大切な存在で、企業が最も失ってはいけない顧客であるとも言えます。顧客を第一に考えた提案をしなくてはいけません。
注意点2 適切なレコメンドを心がける
顧客がすでに検討中の商品があった場合、その商品とかけ離れた商品を勧めてしまうと、顧客は検討を初めからやり直さなくてはいけなくなります。勧められた商品の検討が面倒に感じられることもあるでしょう。
顧客のニーズを見極め、顧客が検討している商品の延長線上にある提案が出来るようにしてください。
まとめ
アップセルとクロスセルについての基本的な知識や実施するためのポイントや注意点を紹介いたしました。新規顧客の獲得が難しくなっている今、売上向上のためには既存顧客の客単価を高めるアップセルとクロスセルが非常に有効であると言えます。
アップセルやクロスセルを成功させるためには、顧客のロイヤルティの高さを判別することが重要です。営業ツールやセールスイネーブルメントツールを利用して、顧客情報を管理すると良いでしょう。顧客のニーズを探って最適な提案を行い、顧客を第一に考えたアップセル・クロスセルを心がけてください。