営業は、企業の利益に直結する業務です。営業組織に強い営業力があれば、企業は安定的な収益を得られます。しかし、企業同士の競争が激しくなり市場の厳しさが増す中、自社の営業力が上がらないという課題を抱えている企業は少なくないのではないでしょうか。
そこで今回は、営業力が低下する原因と営業力を強化するための方法について解説します。自社の営業体制の見直しにお役立てください。
営業力とは
そもそも、営業力とはどのようなものを指すのでしょうか。
営業力は、簡単に言うと、営業活動を遂行および成功させるためのスキルのことです。適切なアプローチをして顧客と信頼関係を築き成約へと導くこと、営業活動を通して会社の収益を上げ続けられることなどが、営業力にあたります。
この営業力は、複数のスキルから成り立っています。例えば「人間力」や「知識力」、「技術力」、「管理力」、「思考力」などが該当します。これらのどれかひとつでも欠けてしまうと、営業力は落ちてしまいます。
ここでは、営業力を構成する上記の5つのスキルについて、詳しく見ていきましょう。
①人間力
人間力とは、意思の強さや考え方、コミュニケーション能力などといった、人間性に関するスキルのことです。このようなスキルはあらゆる仕事において基本になりますが、顧客と接したり目標に向かって動いたりしなければならない営業にとっては、特に重要です。
「顧客を思いやった提案ができる」「商談中に相手を会話で楽しませられる」「責任感を持って行動できる」「目標に向け努力できる」などといったことは、すべて人間力です。
人間力が高い人は、顧客とのコミュニケーションや目標に向けた活動がうまく進められることから、強い営業力を備えられます。
②知識力
営業力の中の知識力とは、営業活動を進めるための知識のことです。
営業活動を上手く進めるには、さまざまな知識が必要です。例えば、市場の状況や競合、商品知識などです。営業のフレームワークや話術、顧客の情報も知っておかなくてはなりません。このような多様な情報を理解し、自身の営業活動に役立てられるようにしておくことが、営業担当には求められます。
また、市場や競合の情報は変動するため、常に知識力を向上させる努力を怠らないことも大切です。
③技術力
技術力とは、営業活動を進め成約を取るための技術のこと。
具体的には、知識として得た情報や効果的な話術、フレームワークなどを実際の営業活動にうまく落とし込む力や、高いコミュニケーション能力で顧客を成約へと導く力などが、営業力における技術力にあたります。
技術力は、知識を増やしながら営業経験を重ねることである程度身につけることができます。また、社内でのロープレなども、技術力アップに効果的です。
④管理力
営業の管理力とは、営業に関する案件管理や顧客管理を効果的に行う力のことです。
営業では、同時に複数の案件を扱い、複数の顧客と接触します。各案件および顧客に対し、漏れなく効果的にアプローチを行うには、管理力が必須です。全ての案件および顧客をしっかりと管理し、適したタイミングで適したアプローチを行うことで、営業成果は向上します。反対に、管理力がなければ、見込み顧客を取りこぼしてしまう恐れがあるでしょう。
管理力は、社内の営業管理の仕組みにも大きく左右されます。
⑤思考力
思考力も、営業における大切なスキルのひとつです。
ここで言う思考力とは、「課題解決にはどうすればいいのか」「目標達成には何が必要なのか」「足りないものは何か」など、課題解決のために自ら考える力のことです。この力は、自身の営業における目標達成はもちろん、顧客の課題解決にも役立ちます。
思考力は、営業の経験を積み、知識力と技術力を蓄える中でも身についていきますが、「最善は何か」自分で考えることを常に意識することも必要です。
営業力が低い原因
前述のようなスキルに秀でているとしても、組織としての営業力が低い場合は少なくありません。その主な原因として考えられるのが、以下の2点です。
原因1 情報共有がされていない
情報共有が活発に行われていない組織は、営業力が低くなる傾向にあります。
情報共有が十分に行われていないと、顧客や案件の情報は担当者が個人で管理することになり、有効な情報も個人のものになってしまいます。情報が不透明だと、組織内で営業活動をフォローし合うことができず、営業業務に関するノウハウの蓄積も行われません。効率的な人材育成も行いにくくなってしまいます。
このような状態では、一部の担当者が成果を上げられたとしても、組織のスキル水準を上げることはできません。組織全体の営業力が上がらず、業務の透明性も低下してしまいます。
原因2 プロセスのボトルネックが把握できていない
営業プロセスのボトルネックが把握できていない組織も、営業力は低下します。
ボトルネックとは、一連の営業プロセスの中で課題となっている部分のことを指します。ボトルネックが把握できていないということは、より良い成果を上げるための課題が明確にできていないということです。課題を明確化し、それに対する改善を実施しなければ、組織は成長し続けることができません。
ボトルネックを把握するには、営業プロセスの管理や分析が必要で、そのための仕組みづくりが欠かせません。
営業力の強化方法
では、組織として営業力を強化していくには、どのような方法を取ればいいのでしょうか。
営業力強化に有効な4つの方法を順に見ていきます。
方法1 情報共有の活発化
組織内で情報共有を活発に行うことは、営業力強化に効果的です。
情報共有は、各営業担当のスキルアップや営業活動の効率化に欠かせません。情報共有をすることで、全ての営業担当が営業のノウハウや勝ちパターンを学んだり、状況に応じてフォローし合えたりするようになります。これにより営業担当の水準が上がり、組織全体の営業力は向上します。
ただし、情報共有の活発化を狙うには、情報共有を無理なく行える仕組みづくりが大切です。ITツールを導入するなどして、情報共有の円滑化を目指しましょう。
方法2 営業プロセスのマネジメント強化
営業プロセスのマネジメントも、組織の営業力を左右する重要な業務です。営業の一連の流れをプロセスごとに管理、分析し、どこにボトルネックがあるのか把握できるようにしておくことで、課題に対する的確な対策が立てられ、営業活動をより良いものへと成長させていくことができます。
営業プロセスは、KPIなどを用いて数字で明確に管理することがポイントです。明確な指標があることで分析がしやすくなり、計画や目標の立案も行いやすくなります。
方法3 組織全体で営業活動を行う
かつて主流であった個人営業は、組織全体の営業力を低下させてしまう恐れがあります。個人営業では、立場や成績を保ちたいという思いから、情報が共有されにくく、営業担当同士が足の引っ張り合いをしてしまう可能性もあるためです。
組織全体またはチームでの営業であれば、情報共有は活発になり、モチベーションアップやチームワークも生まれます。結果、営業担当たちは、ポジティブに切磋琢磨しながら、営業活動を行うことができます。
また、組織およびチームでの営業では、一人で営業プロセスの全てをこなす必要がありません。各営業担当の得意分野を生かし、プロセスごとに担当者を変えることも可能です。
方法4 人材育成体制を整える
高い営業力をキープするためには、人材の育成も必要です。新人社員はもちろん、既存社員のスキルも向上させていくことで、組織の営業力は高まっていきます。
効果的に人材育成を行うには、育成プランの整備や研修、e-ラーニングなどの環境整備が求められます。また、情報共有によって蓄積された情報がまとめられているマニュアルなどがあれば、それも人材育成に役立ちます。
営業力強化には営業サポートツール
営業力の強化を効果的かつ効率的に行うには、SFAやセールスイネーブルメントツールなどの営業サポートツールの活用が有効です。
営業サポートツールでは、顧客情報や案件情報、施策情報をツール上で一元管理することができ、プロセスごとの管理も可能です。
多くのツールでは、チャットやメッセージ機能がついており、営業担当同士の情報共有も手軽に行えます。また、分析機能を利用すれば、ボトルネックの発見や戦略、目標策定もしやすくなり、その正確性も向上します。
営業サポートツールを用いれば、情報共有は活発になり、営業活動の管理も効率化できます。これにより、全ての営業担当が有用な情報を活かしながら、顧客へのアプローチに集中することができ、営業力向上が期待できます。
まとめ
営業力の強化は、企業の収益と継続的な成長を目指すために必要な課題です。近年では、ひと昔前とは異なるやり方での営業活動が活発になっています。組織全体での営業や情報共有もその方法のひとつであり、これらは競争が激化する現在では営業力を上げるための重要な要素になっています。
営業力に課題を感じている企業は、一度自社の営業体制を見直してみてはいかがでしょうか。
また、営業力強化には、セールスイネーブルメントツールや情報共有ツールなどのITツールが役立ちます。これらのツールをうまく活用できれば、効率的な営業力強化が目指せるでしょう。