営業リードタイムの短縮は、営業活動の効率化にとって重要な要素です。そして、営業リードタイム短縮のためには、営業活動のDX化が必須です。では、具体的には、どのようにしてDX化による営業リードタイム短縮を実現すれば良いのでしょうか。
今回は、SFAやCRM、セールスイネーブルメントツールなどを用いた、DX化による営業リードタイム短縮について解説していきます。
リードタイムとは
リードタイムという言葉の意味は、業界や職種によってやや異なります。ここでは、営業におけるリードタイムの意味とその課題について見ていきましょう。
営業のリードタイムは着手から成約まで
ビジネスにおけるリードタイムとは、「ある業務の着手から完了までにかかる期間」を指します。リードタイムという言葉は物流や製造でよく用いられ、この場合は「発注から納品までにかかる期間」の意味で用いられます。
一方、今回のテーマとして扱う営業のリードタイムは、「営業活動の着手から成約・受注までにかかる期間」を指します。
一般的な営業活動には、以下のような複数のプロセスがあります。
①アポイントメント・商談準備
②初回訪問
③ヒアリング
④提案
⑤見積もり
⑥クロージング
⑦成約・受注
営業では、これら複数のプロセスを順に進めていくことで、顧客の課題やニーズに合った提案を行い、成約を目指します。
上記プロセスで言うと、営業のリードタイムは、「①アポイントメント・商談準備」から「⑦成約・受注」までにかかる期間を指すことになります。
営業リードタイムの短縮と管理の重要性
複数のプロセスがあることに加え、顧客の検討時間も必要なことから、特にBtoB営業のリードタイムは中長期化する傾向にあります。
しかし、各案件のリードタイムが長くなると、見込み案件の管理は難しくなり、ひとつの案件にかかる労力は増えてしまいます。失注を見切れずにずるずるとリードタイムが長くなってしまっている案件もあり、この場合も営業担当者は時間や労力を無駄に使ってしまうことになります。
そこで重要視されているのが、「営業リードタイムの短縮と管理」です。
営業のリードタイムを短くすれば、ひとつの期に多くの案件を成約まで持っていくことができます。期をまたぐ案件が減ることで、見込みの管理もしやすくなるでしょう。一案件にかかる労力と時間が減ることで、より多くの案件を保有することも可能になります。
また、営業リードタイムを管理していくことにより、営業リードタイムの短縮を目指せるほか、異常にリードタイムが長い案件に気づき適切な対応を取ることもできます。
営業リードタイムの短縮は営業を効率化するために重要で、そのためには営業リードタイムの管理が必要です。働き方改革や人材不足で業務の効率化が急がれる中、多くの企業が営業リードタイムの短縮と管理に取り組んでいます。
「リードタイムの短縮」と「営業活動のDX化」
営業リードタイムの短縮および管理には、営業活動のDX化が必要です。
DX化とは、デジタルトランスフォーメーション、つまり「デジタル技術による変革」のことです。DXは時代の変化に伴いその重要性を増しており、経済産業省も社会のDX化を推進しています。
営業活動をDX化することは、営業リードタイムの短縮・管理に効果的です。ここからは、営業活動のDX化について解説していきます。
営業活動のDX化
営業活動のDX化とは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。
営業活動のDX化は、営業活動の仕組みにIT技術を活用することで実現できます。
営業活動における、顧客管理や案件管理、データの分析、DMでのアプローチなどは、IT技術を利用することでより効率的で正確になります。これらの業務にIT技術を用いれば、顧客のニーズを正確に把握でき、各顧客に適した提案を適したタイミングで行えるようになるため、成約率向上のほか、リードタイムの短縮化も期待できます。
また、ITによる案件管理によって、リードタイムの管理も行いやすくなるでしょう。
効率的な営業活動と各顧客に合ったアプローチを可能にする営業活動のDX化は、企業にとっても顧客にとってもメリットのある手段だと言えます。
営業活動DX化の背景
従来の営業活動は、営業担当者がとにかく顧客と接触するスタイルが中心でした。飛び込み営業やいきなりの電話営業も多く、効率よりも数を打つような手段が主流でした。
それでも営業活動の成果を出せたのは、情報化が発展途上だったからでしょう。顧客にとって、営業担当者から得られる情報は重要で、そこでしか得られないものでした。この情報提供による信頼関係の構築は、当時の営業成果に大きく関わっていたと考えられます。
しかし、現在では情報化が進み、ほとんどの情報はインターネットで得られるようになっています。商品やサービスを求める顧客は、ある程度の情報を自身で調べ、営業担当者がアプローチする頃には既に知識を持った状態にあります。
そこで顧客が求めるのは、プラスアルファの知識です。プラスアルファとして知りたい知識は顧客ごとに異なり、企業には各顧客ニーズを把握する必要性が生まれました。
このニーズ把握に役立つのがIT技術です。
SFAやCRM、MAなどのIT技術を活用すれば、多様化した顧客のニーズを的確に把握し、適切なアプローチを行いながら見込み顧客を育成することが可能になります。また、WEBサイトやSNSの活用による集客も重要な役割を果たすようになりました。
このように、情報化の進展により、顧客に望まれる営業スタイルが変化したことから、それに対応するIT技術の活用、つまり営業のDX化は進んでいるのです。
営業活動のリードタイムを短縮する手段
営業活動のリードタイムを短縮するための、DXの具体的な手段を5つご紹介します。
①SFA
SFAとは、Sales Force Automationの略で、日本語では「営業支援システム」と呼ばれます。簡単に言えば、営業活動を見える化するシステムのことです。
SFAの役割
SFAでは、以下のようなことが可能になります。
・顧客管理
・案件管理
・商談管理
・営業プロセスの管理
・売上予測
・スケジュール管理
・情報分析、レポート作成
営業活動に関するあらゆる情報を見える化し、データとして蓄積することで、営業活用を効率化するのが、SFAの役割です。
SFAによるリードタイム短縮
SFAは、以下のような点でリードタイム短縮に効果的です。
・ツール上で情報を部署内で共有できるため、営業先から報告のために会社に戻るなどの移動時間を短縮できる
・過去の事例や資料をすぐに探し出すことができる
・リードタイムの管理も可能
SFAを活用すれば、営業に関する情報はSFAツール内にまとめることができます。これにより、直接の報連相や資料探しによる時間のロスを防止でき、結果リードタイムは短縮されます。
②CRM
CRMとは、Customer Relationship Managementの略で、日本語では「顧客関係管理」と呼ばれます。CRMは、顧客情報の収集・管理・分析を行うことで、既存顧客に対する継続的で最適なアプローチを可能にするツールです。
CRMの役割
CRMでは、以下のようなことが可能になります。
・顧客管理
・顧客分析
・メール配信
・問い合わせ管理
・アンケート実施
・セミナー、イベント集客
CRMを活用すれば、ひとりひとりの顧客のニーズを把握し、それをアプローチに生かすことができます。顧客との良好な関係を継続的に築いていくということが、CRMの目的です。
CRMによるリードタイム短縮
CRMは、以下のような点でリードタイム短縮に効果的です
・過去の接触履歴をすぐに把握できる
・顧客情報の一元管理により、どの社員でも一定の水準で顧客対応ができる
・需要予測が正確に行える
各顧客のニーズを把握できるCRMを活用すれば、確度の高い営業活動が可能になります。
また、顧客情報が一元管理されていることで商談準備も進めやすく、顧客対応の属人化も起こりにくいため、効率的に営業活動を進められ、リードタイムは短縮されます。
正確な需要予想により、需要と供給のバランスを保てる点も、リードタイム短縮に繋がります。
③セールスイネーブルメントツール
セールスイネーブルメントとは、営業の売上最大化のためのあらゆる取り組みを総括的に設計・管理する営業施策のことです。営業に関する業務を一連の施策として捉えて管理し、可視化することで、営業の最適化を目指します。
そのための機能を備えたツールが、セールスイネーブルメントツールです。
セールスイネーブルメントツールの役割
セールスイネーブルメントツールでは、以下のようなことが可能になります。
・セールスコンテンツの拡充
・顧客行動の追跡
・人材育成機能
・情報可視化、共有
・顧客データの一元管理機能
セールスイネーブルメントツールの機能はツールによっても異なりますが、営業に関するあらゆる施策が可視化されることで、ボトルネックを把握しやすくなるのが特徴です。
SFAやCRM機能の搭載や他のツールとの連携により、SFAやCRM同様の機能を持つものもあります。
セールスイネーブルメントツールによるリードタイム短縮
セールスイネーブルメントツールは、以下のような点でリードタイム短縮に効果的です。
・最適なタイミングでのアプローチが可能
・需要予測が正確に行える
・必要な資料をすぐに探し出せる
・営業スキル平準化が可能
セールスイネーブルメントツールは、SFAやCRMが搭載されていたり連携できたりするものが多く、リードタイム短縮に対し多くのメリットがあります。
営業活動を一連のプロセスとして管理するセールスイネーブルメントツールでは、ボトルネックの可視化によって、現状の課題解決からリードタイム短縮を目指すことも可能です。
④オンライン商談
コロナ禍で主流になったオンライン商談は、以下のような点でリードタイム短縮に効果的です。
・移動時間が不要
オンライン商談では、直接訪問に比べ効率的な商談が可能です。
オンライン商談では、資料をすぐに提示できます。そのため、直接訪問では数回訪問しなければならない商談でも、相手の温度感によっては初回から詳細な資料提示に移り、提案を行うことが可能です。商談の回数が減る可能性がある上、移動時間も不要なので、オンライン商談はリードタイム短縮に効果的です。
⑤勝ちパターンのナレッジ共有
勝ちパターンのナレッジ共有は、リードタイム短縮にも成約率向上にも効果的です。勝ちパターンを共有することで、すべての営業担当者のスキルアップを図れるためです。
営業スキルが高ければ、スムーズに商談をクロージングへ持ち込むことができます。そのため、リードタイムは短縮し、成約率も上がります。
まとめ
効率的に営業活動を行うには、リードタイムの短縮を意識する必要があります。そして、そのためには営業活動のDX化が必要不可欠です。
SFAやCRM、セールスイネーブルメントツールなどを用いた営業活動は、リードタイム短縮以外に、成約率アップや社員のスキルアップ、効率的な人材育成にも効果的です。
ツール導入をはじめとしたDX化の推進は、今後の営業活動および組織をより良いものにするために必須だと言えるでしょう。