企業が顧客に対し能動的に行うサポート対応を、アクティブサポートと呼びます。多くのメリットがあることから、近年アクティブサポートに対する注目度は高まり、実際に導入・運用を始める企業も増えています。
では、このアクティブサポートには具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
今回は、メリットや導入手順など、アクティブサポートについて詳しく解説します。
アクティブサポートとは
企業による能動的なカスタマーサポートのことを、アクティブサポートと呼びます。
従来のカスタマーサポートでは、顧客からの問い合わせを企業が待つ形が一般的でした。しかしアクティブサポートでは、企業側から顕在顧客および潜在顧客に働きかけ、サポートを実施します。
「SNS上で呟かれた自社商品の不満に関するメッセージに対し、企業側がリアクションを行う」という形が、アクティブサポートの代表例でしょう。このリアクションでは、企業は顧客の不満を解消したり改善したりするための提案を行うなどして、顧客のサポートを積極的に実施します。
リアクションを受けた顧客は、「企業からリアクションが来た」という意外感とともに、「企業に大切にされている」という満足感も感じることができるでしょう。
これは、既存顧客の満足度向上や新規顧客の獲得に効果的で、長期的に見れば社会的な自社の評価を向上させることもできます。
ネットでの情報が重要視される現在の社会において、アクティブサポートは企業がその売り上げや価値を維持するための重要な手段として注目されています。
アクティブサポートを行うメリット
企業によるアクティブサポートの実施には、次のようなメリットが期待できます。
・顧客満足度を向上させられる
・新規顧客を獲得できる
・マイナスイメージを払拭しやすい
これらのメリットは、全て企業価値の向上に繋がるものです。
ここでは、各メリットについて詳しくご説明します。
メリット1 顧客離れを防止できる
アクティブサポートの実施は、顧客離れの防止に効果的です。
企業が提供する商品・サービスに不満があったとしても、ほとんどの顧客はそれをわざわざ企業側に伝えることはしません。ただ商品の購入やサービスの利用をやめるという人が大多数でしょう。
このように、積極的に企業側に意見を伝えることのない顧客はサイレントカスタマーと呼ばれ、その離反は企業にとって大きな課題のひとつです。
アクティブサポートでは、情報を随時収集していくことで、顧客が抱えるリアルな不満や意見を把握できます。また、それに積極的に応対を行っていくことで、問題を解決することも可能でしょう。
このような対応は、サイレントカスタマーの不満解消にも繋がり、その離反を防ぐ手段として有効です。
メリット2 顧客満足度を向上させられる
アクティブサポートでは、自社の商品やサービスに不満や問題を抱えている顧客を企業側が能動的に見つけ出し、解決策を提案するなどのサポートを実施します。これにより、自ら問い合わせる手間なく不満が解消されれば、顧客は企業に対して良いイメージを持つようになるでしょう。
つまり、アクティブサポートは、企業やその商品に対し不満を持っていた顧客の満足度を向上させることができるのです。
また、顧客の不満を解決するだけでなく、SNSを通じて有益な情報発信を行うことも、この手法の重要なポイントです。これも、顧客満足度アップやフォロワー増加に繋がります。
メリット3 新規顧客を獲得できる
売り上げを伸ばしていくには、企業は既存顧客のロイヤルティを高めるだけでなく、新規顧客の獲得にも力を入れる必要があります。
新規顧客を獲得するためには、まだ自社の商品やサービスを知らない潜在顧客のニーズや不安を把握しなければなりません。アクティブサポートでは、これが可能です。
SNSで発信される情報を収集することで、潜在顧客やそのニーズを見つけることができるためです。この情報をもとに、商品の提案を行ったり、ニーズを商品に反映させたりすることもできるでしょう。
メリット4 マイナスイメージを払拭しやすい
顧客が商品やサービスに不満を抱えている場合、そのことがSNSをはじめとしたネット上に書かれ、拡散されてしまうことがあります。これをそのまま放置してしまうと、企業のマイナスイメージは世間に広がってしまうでしょう。
これを食い止めるにも、アクティブサポートは有効です。
アクティブサポートとして常に情報を集めていれば、自社の商品やサービスに関する不満についてのネット上の情報にもすぐに対応できます。不満を書き込んだ顧客に、不特定多数が見るSNS上などで直接サポートを行えば、その顧客の不満が解消されるだけでなく、周囲が持つかもしれないマイナスイメージも払拭することが可能です。
この作業を地道に行えば、ネット社会で企業が警戒すべきいわゆる炎上を避けることもできるでしょう。
アクティブサポートの手順
アクティブサポートを導入する際には、次のような手順を踏む必要があります。
・SNSのアカウントを作成する
・検索キーワードを設定する
・ターゲットに対するリアクションを行う
・メッセージの確認・管理を行う
各手順の内容についてご紹介します。
手順1 アクティブサポートを実施する体制を構築する
まずは、アクティブサポートを実施できる体制を組織内に構築する必要があります。
リソースの確保はもちろん、業務の進め方や判断基準、報告フローなどについても明確に決定し、担当者がスムーズにアクティブサポートを実施できる状況を整えましょう。
ここで必ず決めておかなくてはならないのが、「どのような場合に顧客への返信を行うか」ということです。また、問題把握から改善実施までのフローについても定めておいた方が良いでしょう。
決定した内容はマニュアルなどにわかりやすくまとめ、企業内・組織内で共有します。
手順2 SNSのアカウントを作成する
SNSの運用は、アクティブサポートの核とも言えるものです。情報収集と顧客対応のため、企業の公式アカウントを作成しましょう。
アカウント作成で重要なのは、「それが公式であるということが、誰が見てもわかるようにする」ことです。近年ではなりすましのアカウントも多いですが、それらと区別できるよう、公式であるということを明示しておくようにしてください。
手順3 検索キーワードを設定する
次に、情報収集時の検索キーワードを設定します。例えば、企業名や商品名、サービス名、ブランド名、商品に関する言葉、競合の商品名などが挙げられます。
ここで適切な検索ワードを設定しておけば、その後のアクティブサポートにおいて、不満を持つ顧客を見つけやすくなります。
キーワードはリスト化しておき、運用時には順に検索をかけていくようにしましょう。
手順4 ターゲットに対するリアクションを行う
ここまで体制が整ったら、実際の運用を始めます。SNSを中心に、アクティブサポートを実施しましょう。
情報が拡散されやすいSNSのひとつにTwitterがあります。アクティブサポートでは、Twitterの動向を重視することが多いでしょう。
ここで気を付けておきたいのが、「リプライ」と「リツイート」の違いです。前者は相手のツイートに対する返信を、後者は相手のツイートを拡散する機能です。
基本的なアクティブサポートで利用するのは、リプライ機能でしょう。誤ってリツイートしてしまうと、相手のツイートが自身のフォロワーに拡散されてしまうので、ご注意ください。
手順5 メッセージの確認・管理を行う
SNSには、メッセージおよびDM機能も搭載されています。SNSアカウントを立ち上げれば、そこに顧客からのメッセージが送られてくるでしょう。
これも、企業にとっては重要な情報です。各メッセージについては然るべき対応を行い、その中の有用なメッセージは確認して管理し、自社の商品やサービスの改善に活用するようにしてください。
アクティブサポートを行う際の注意点
アクティブサポートを行う際には、次の4つの注意点を意識する必要があります。
・相手と一定の距離感を維持する
・定型的な対応は避ける
・なるべく少ないやり取りでの解決を目指す
これらの点を徹底することが、アクティブサポートをうまく運用するコツです。
各注意点について詳しく見ていきましょう。
注意点1 適切なマナーで対応する
アクティブサポートでは、企業公式のSNSアカウントから提案や情報発信を行います。ここでの発言は企業を代表した発言です。そのため、適切なマナーでの発言を徹底する必要があります。
特に重要なのが、SNS上の口調です。マナーを守った丁寧な口調で対応すべきです。
カジュアルすぎる言い回しは避け、企業の顔としてふさわしい対応を行いましょう。
注意点2 相手と一定の距離感を維持する
SNSでのやり取りは、つい相手との距離感を縮めてしまいがちです。しかし、企業の代表として行うアクティブサポートでは、相手となる顧客との間に一定の距離感を維持することが大切です。
不満を抱える顧客に対するあまりにフレンドリーな対応は、企業として不適切だからです。
また、顧客とその知人とのトークの中に無理に入るのもマナー違反です。
運用時には顧客と企業との然るべき距離感を意識するようにしてください。
注意点3 定型的な対応は避ける
顧客対応は、定型的になりやすいものです。電話対応などでは、ケースごとのテンプレートを用意している企業もあるでしょう。
しかし、アクティブサポートにあたって定型的な対応はおすすめできません。SNS上の対応は後に残るため、定型的な対応であることが顧客にわかって、手抜きだと思われてしまう恐れがあります。また、定型文では相手とのやり取りが噛み合わないこともあるでしょう。
対応にあたってある程度の枠組みは必要ですが、それが定型的になりすぎて顧客に悪印象を与えないよう注意してください。
注意点4 なるべく少ないやり取りでの解決を目指す
アクティブサポートでは、1つの案件に対し何度も顧客とやり取りするのではなく、なるべく少ないやり取りでの解決を目指しましょう。これは、業務の効率性と顧客との距離感を維持するためです。
詳しい状況を把握しないと対応ができないような場合には、SNS上で何度もやり取りするのではなく、DMやメールに切り替えて対応することも検討してください。
まとめ
アクティブサポートは、企業にとっても顧客にとってもメリットとなる取り組みです。インターネット上の情報が重視されるようになった現在において、この手法はリスク管理のひとつだとも言えるでしょう。
ただし、SNSなどでの対応は、その企業に対する世間の印象を左右します。悪いイメージではなく良いイメージを醸成できるよう、企業の顔として丁寧な対応を徹底することが、アクティブサポートでは重要です。
アクティブサポートを効果的に行うには、カスタマーサポートを管理するツールを導入するといいでしょう。ツールを活用すれば、顧客情報や問い合わせ内容を一元的に管理でき、組織内で共有することも可能です。また、多様なチャネルによる顧客対応やその分析にも活用できます。