会社に勤めている方なら、「就業規則」を目にしたことがある方は多いでしょう。しかし、「社内規定」と聞くと、何を指すのかすぐには思い浮かばない方も少なくないのではないでしょうか。
本記事では、社内規定とは何か、そしてその必要性について確認し、作成時のポイントを解説します。
社内規定とは
「規程」とは、特定の事柄について定められた規則の単位を指します。「社内規定」とは、会社が独自に定めたさまざまな規則の総称であり、その中には「人事考課規程」や「賃金規程」などの詳細な規則が含まれています。なお、会社が定める業務マニュアルなども、規程の一つと見なすことができます。
社内規定は、社内の秩序を維持し、組織体制や会社の文化形成を促進するために作成されます。また、社内規定は、社内で周知することで労使間の合意がなくても作成が可能であり、従わなかった場合には法的制約の範囲内で会社がペナルティを設定することもできます。
社内規定に含まれる内容
では、社内規定には どういった内容が含まれるのでしょうか。
社内規定は主に次の6種類に分類されます。
- 会社運営の根幹となる規程
- 人事規程
- 組織規程
- 業務規程
- 総務規程
- その他
それぞれどういった規程が含まれるのか代表的なものを確認していきましょう。
会社運営の根幹となる規程
- 会社理念(会社の根本的な考え方。価値観や存在意義。)
- 経営理念(経営を行う上で大切にしている思いや考え方。創業者が定める事が多い。)
- 社訓(社員に向けた教訓。行動指針。)
- 株主総会議事録(株主総会決議の内容や成立過程を記した重要書類。)【取締役設置会社の場合】
- 取締役会規程(取締役会の決議事項や報告事項など、取締役会運営の為の規程。)
- 取締役会議事録(取締役会決議の内容や成立過程を記した重要書類。)
組織規程
- 倫理規程(社会や環境に対する会社の行動基準を定めた規程。)
- 組織規程(会社の業務構造や職位、職務権限といった組織運営について定めた規程。 )
- 職務分掌規程(部署や役職ごとの業務範囲を明確に定めた規程。)
- 役員規程(役員の任免、処遇、勤務条件など役員に関する事項を定めた規程。)
人事規程
- 就業規則(従業員の給与や労働時間などの労働条件、遵守すべきルールなどを定めた規程。)※ 常時10人以上の労働者を使用する場合に作成することが義務づけられている。
- 賃金規程(給与計算の方法や諸手当の明細などを明確に定めた規程。)
- 賞与規程(支給基準や算定期間などについて定めた規程。)
- 退職金支給規程(適用する範囲、計算方法や支払い方法などについて定めた規程。)
- 出張旅費規程(出張に関する旅費(出張手当、交通費、宿泊費など)などの取扱規程。)
- 人事考課規程(公正に人事考課を行うための評価について定めた規程。)
業務規程
- 販売規程(営業時間や見積・販売・請求など各種条件、対応方法などを定めた規程。)
- 購買規程(仕入れの際の見積・発注・仕入方法や条件、支払い条件などを定めた規程。)
- 経理規程(経理業務に関する基本的な考え方や処理方法などを定めた規程。)
総務規程
- 株主取扱規程(会社の株式の取得や変更、再発行などの手続について定めた規程。)
- 文書管理規程(日常業務で発生する文書の取扱や管理方法を定めた規程。)
- 規程管理規程(規程作成後の周知徹底、制定・改廃などの手続を定めた規程。)
その他
- 個人情報管理規程
- ハラスメント防止規程
- SNS利用規程
- 秘密情報管理規程
社内規定と就業規則との違い
前述のように、「就業規則」は「従業員の給与や労働時間などの労働条件、遵守すべきルールなどを定めた規程」であり、社内規定の一部です。
しかし、就業規則については、労働基準法により、常時10人以上の従業員を雇用する場合には作成が義務付けられており、行政官庁(労働基準監督署)への届け出や社内への周知も義務化されています。他の社内規定には、このような義務はありません。
さらに、社内規定は労使間の合意がなくても作成できるものですが、就業規則には労使間の合意が必要です。
以上のことから、就業規則は社内規定の一部でありながら、その特殊性から他の社内規定とは区別して考えられることが多いです。
社内規定の作成の流れ
次に、社内規定の作成手順を確認しましょう。
1. 既存の規定を集める
すでに制定されている規程やルール、マニュアルなどを集めておきます。
2. 既存の規定を分類する
集めた既存の規定を関連するものでグループ化し、分類します。
3. 制定する内容を精査する
社内規定として制定する内容は会社ごとに異なります。既存の規定を参考にしつつ、自社にとって本当に必要な内容かを慎重に検討します。そのうえで、新設する規定や変更する規定を精査します。
4. 規定の草案を作成する
関係部署がある場合は、適宜確認を取りながら草案を作成します。
5. 専門家に規定内容をチェックしてもらう
労使間の合意が不要であっても、法律に違反する内容は避けなければなりません。また、重要な内容を盛り込まなかった場合、会社にとってリスクとなる可能性があります。規程内容を周知する前に、一度弁護士などの専門家に確認してもらうことが望ましいです。
6. 周知徹底する
社内規定を作成しても「従業員がその内容を知らない」では意味がありません。就業規則のように周知が義務づけられてはいませんが、従業員全員がその内容を理解できるように周知し、内容を更新した際には必ず通知を行うよう徹底しましょう。
社内規定作成のポイント
社内規定を作成する際には、以下のポイントを意識することが重要です。
1. 目的と対象を明確にする
社内規定を作成する目的と対象を明確にすることは、規定内容を適切に定めるために不可欠です。例えば、コンプライアンス規定を作成する場合、その目的は法令遵守の徹底であり、対象は全社員となります。目的と対象を明確にすることで、規定の内容がぶれることなく、実効性のあるものになります。
2. 関係法令を調査する
社内規定を作成する際には、関連する法令を調査し、法令に違反しない内容にする必要があります。特に、労働基準法や個人情報保護法などの重要な法令については、十分に理解しておくことが求められます。法律の専門家に相談するなど、必要に応じて専門的な知識を借用することも有効です。
3. 社員の意見を反映する
社内規定は、社員が理解し、納得できる内容であることが重要です。そのため、社員の意見を積極的に収集し、規定に反映させる必要があります。意見の収集には、アンケート調査や意見交換会などを活用することが効果的です。
4. わかりやすく簡潔な表現を用いる
社内規定は、社員が理解しやすいよう、わかりやすく簡潔な表現で記述する必要があります。専門用語を避け、平易な言葉で説明することが重要です。また、文章の構成やレイアウトにも配慮し、読みやすさと理解しやすさを工夫しましょう。
5. 実行可能な内容にする
社内規定は、実際に実行可能な内容であることが重要です。現実的に守れない内容の規定は、社員の反発を招き、実効性を失う可能性があります。そのため、現場の意見を取り入れ、実行可能な範囲で規定を作成することが必要です。
6. 定期的な見直しと更新
社内規定は、時代や会社の状況に合わせて定期的に見直す必要があります。法令改正や経営方針の変更、業務内容の変化などにより、規定が陳腐化したり不適切になったりすることがあります。定期的な見直しを行い、必要に応じて内容を修正したり、新たな規定を追加したりすることで、常に最新の状態を維持しましょう。
まとめ
社内規定が会社にとって重要な意味を持つことが理解できました。作成時には法律に抵触しないよう注意し、作成後は従業員への周知徹底、そして定期的な見直しを忘れないようにしましょう。
また、社内規定を周知するには、情報共有ツールの活用が便利です。ツールを利用すれば、検索や閲覧が容易になり、更新時の通知もスムーズに行えます。社内規定の制定や見直しと併せて、周知を簡単にするためのツールの利用も検討すると良いでしょう。