ISO認証とは?取得手順とメリット・デメリットを徹底解説

商品の広告や企業ホームページなどで、ISO認証という文字を目にしたことがある方は多いでしょう。しかし、ISO認証の内容についてよく知っているという方は少ないのではないでしょうか。
ISO認証は、専門機関によって認められた製品やシステムに与えられるもので、取得には複数のメリットが期待できます。
そこで、今回はISO認証について、概要や種類、取得によるメリット・デメリット等詳しくご説明しましょう。

目次

ISOとは

まずは、ISOとISO認証の内容および対象についてご紹介しましょう。

ISOとは国際標準化機構のこと

ISOとは、国際標準化機構「International Organization for Standardization」の略称です。ISOの主な活動は、国の垣根を越えた国際的な規格を決定することです。国際規格を定めることによって、円滑な国際的取引や製品の均質化を図ることが、ISOの規格決定活動における目的です。ISOに規格認定された製品は「ISO認証」を名乗ることが可能となり、多くのメリットを享受できます。

ISO認証の対象は「製品」と「仕組み」

ISOが規格認定を行う対象は、「製品」と「マネジメントシステム」の2種類に分けられます。

① 製品のISO認証

ISOによる製品に対する国際的な規格認証のことを指します。これは「モノ規格」とも呼ばれます。

例: 非常口マーク (ISO7010)、ネジ (ISO68)、クレジットカード等のサイズ (ISO/IEC7810)

② マネジメントシステムのISO認証

組織の活動を管理・運用するための仕組みに対する国際的な規格認証のことを指します。こちらは「マネジメントシステム規格」とも呼ばれます。

例: 品質マネジメントシステム (ISO9001)、環境マネジメントシステム (ISO14001)、食品安全マネジメントシステム (ISO22000)

国際規格と聞くと、世界共通の製品を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、ISO認証は「製品」だけでなく、「仕組み(マネジメントシステム)」にも適用されます。製品としてのISO認証には、非常口マークやカードのサイズなどが有名ですが、マネジメントシステムとして最も広く知られるのは、ISO9001「品質マネジメントシステム」でしょう。ISO9001は、製品やサービスの品質を維持する仕組みが認められた場合に得られる認証です。

マネジメントシステムに要求されるPDCA

マネジメントシステムのISO認証を受けるためには、要求事項として「PDCAサイクルを回すこと」が求められます。

PDCAサイクルとは

マネジメントシステムにおいて、①Plan (計画)、②Do (実施)、③Check (見直し)、④Act (改善)という4つの活動をループさせることを指します。マネジメントシステムをPDCAサイクルに基づいて構築し、このサイクルを回し続けることで、「継続的改善」が行われる仕組みが作られます。

PDCAサイクルが組み込まれたマネジメントシステムは、国際基準として通用するだけでなく、効果的な組織管理にも生かすことができます。

ISO認証のメリット

多くの企業がISO認証を目指すのは、ISO認証取得に多くのメリットがあるためです。ここでは、ISO認証取得による主なメリットを5つご紹介します。

メリット1: 企業・製品(システム)の価値が高まる

ISO認証は国際的な認証であり、認証を受けたシステムや製品は、世界で通用するものとして認められます。その結果、認証を受けた製品やシステムの評価が向上し、それらを扱う企業の信頼性も高まります。ISO認証の取得はホームページや広告などで公言できるため、ISO認証が消費者の選択の決め手になることもあるでしょう。企業や製品、システムの価値向上は、ISO認証取得の大きなメリットです。

メリット2: 事業参入機会が増える

一部の事業では、ISO認証の取得が参入条件とされることがあります。特に公的な建設事業においては、ISO認証取得が参入の必須条件となることが多いようです。つまり、ISO認証を取得することで、事業への参入機会が増えることになります。希望する事業への参入条件をクリアするためにも、ISO認証の取得は有効です。

メリット3: 質の高い効率的な作業が可能に

ISO認証を取得したシステムでは、社内管理体制の継続的改善が行われます。常により良い製品やルールを目指して改善を続ける仕組みが構築されることで、現場では質の高い効率的な作業が可能になります。これにより、顧客満足度や労働環境の向上が期待でき、より良い業務をより良い環境で実施できるようになります。

メリット4: 第三者による問題点の発見

ISO認証を受ける際には、定められた要求事項に基づき、ISOの審査員が適格・不適格を判断します。不適格とされた事項に関しては、組織が改善を行わなければなりません。このように、認証過程で専門家である第三者から問題点の発見や指摘を受けられることは、組織にとって大きなメリットです。組織内で気づけなかった問題点を改善し、より良い製品やシステムを構築できるからです。

メリット5: 責任・権限の明確化

責任や権限の明確化は、マネジメントシステムに対するISO認証の要求事項のひとつです。「誰が、何をすべきか、何をして良いか」を明確化し、各従業員の役割を周知・徹底させることで、業務の円滑化や従業員の業務意識の改善が期待できます。また、トラブル時の対応もスムーズに行えるようになります。

ISO認証のデメリット

ISO認証の取得には、前章でご紹介したメリットとは対照的に、以下のようなデメリットも考えられます。

デメリット1: 認証取得・維持に手間がかかる

ISO認証の取得や維持には、手間と時間がかかります。システム構築は長期的なプロジェクトとして進める必要があり、システム完成後も運用、改善、維持を継続して行わなければなりません。これには人員的およびコスト的な余裕が必要となるでしょう。

デメリット2: 認証取得の効果に時間がかかる

ISO認証を取得したからといって、すぐに効果が現れるわけではありません。マネジメントシステムは、長期的な運用を経て徐々に効果を発揮します。このため、手間がかかる割に即効的な効果を感じられない点が、ISO認証の取得や維持に対するモチベーションの低下に繋がる可能性があります。

デメリット3: 理想と現実のギャップによる影響

ISO認証取得の過程で、経営者の目指す理想と現場の現状との間に大きなギャップが生じ、従業員が実現不可能な改善を求められることがあります。これは従業員のやる気を損ない、作業効率の低下を招く可能性があります。また、業務の標準化によって、有能な従業員のパフォーマンスが低下するリスクも考えられます。

ISOマネジメントシステムの種類

現在認証されているISOマネジメントシステムは、複数存在します。ここではその中でも代表的なものを10種ご紹介しましょう。

ISOマネジメントシステムの種類 内容
品質マネジメントシステム(ISO9001) 顧客満足を満たす品質の良い製品・サービスを提供するための仕組み
環境マネジメントシステム(ISO14001) 組織運営の中で環境保全に関する取り組みを進めていくための仕組み
医療機器・体外診断用医薬(ISO13485) 医療機器や体外診断用医薬品の品質を維持し、リスクを低減させるための仕組み
食品安全マネジメントシステム(ISO22000) 食品衛生管理手法を基に、リスクの低い安全な食品供給を行うための仕組み
労働安全衛生マネジメントシステム(ISO45001) 安全な労働環境を整えるための仕組み
情報セキュリティマネジメントシステム(ISO27001) 情報リスクを低減し、情報を有効活用するための仕組み
ITサービスマネジメントシステム(ISO20000) 要求に応じたITサービスの効果的な提供を行うための仕組み
事業継続マネジメントシステム(ISO22301) 自然災害やシステムトラブル等の脅威に備える、事業継続のための仕組み
道路交通安全マネジメントシステム(ISO39001) 交通事故による死者や負傷者減少・撲滅を目指すための仕組み
エネルギーマネジメントシステム(ISO50001) エネルギーパフォーマンスの可視化、改善を実施するための仕組み

上記は一例です。ISO認証はあらゆる分野のマネジメントシステムにおいて行われており、各システムは厳しい要求事項の元で認証されています。

ISO認証の取得手順

ISO認証を取得するための一般的な手順は、以下の通りです。

自社でのシステム構築

ISO認証を取得するためには、まずISO認証取得を目指すシステムを構築する必要があります。自社でのシステム構築は、以下の手順で進められます。

手順1: ISO取得宣言(キックオフ)

取得するISOやその範囲を決定し、全従業員に対してISO取得を周知させます。

手順2: 必要事項の決定

大まかな取得目的、構築期間、プロジェクトメンバー、役割など、ISO認証取得に関する必要事項を決定します。この段階で、従業員のISO知識を高めるための勉強会や研修を実施します。

手順3: 現状把握と問題の明確化

現状をヒアリングや文書で把握し、問題点を明確化します。管理すべきポイントを洗い出していきます。

手順4: システム構築作業

具体的な目標を掲げ、マニュアルの作成や各問題点の是正を進めます。

手順5: 運用体制の整備

試運用の実施や、運用担当者・監査担当者の選定、ISOに基づいた従業員教育など、運用体制の整備を行います。

手順6: システムの評価・改善

レビューや内部監査により運用結果を評価し、データ分析・検証を行い、必要に応じたシステム改善を行います。

認証機関による審査

システムが構築されたら、以下の手順で認証機関による審査を受けます。審査に合格すれば、ISO認証を取得できます。

手順1: 第一段階審査

認証機関が書類審査やシステム運用状況の確認を行います。合格すれば第二段階審査へ進みます。問題点を指摘された場合は、次の段階審査までに改善が求められます。

手順2: 第二段階審査

実地審査で、ISOの要求事項に合ったシステム運用ができているかを審査します。認証登録が妥当と判断されれば、後日認証登録が決定します。問題点が指摘された場合は、1~2ヶ月程度の間に改善を行い、担当者が報告します。

手順3: 登録証の発行

第二段階審査に合格した場合、登録証が発行されます。ただし、認証登録の有効期間は3年間であり、認証を維持するためには定期的に審査を受け、合格する必要があります。

まとめ

ISO認証の取得は、より良い品質の製品やサービスを生み出すだけでなく、労働環境の改善や環境保全の向上、食品・情報・医療の安全確保など、多様な分野における有益なシステム構築を支援します。認証取得システムの構築は、企業だけでなく従業員や消費者にとっても利益となるでしょう。ただし、ISO認証は取得後の維持が重要であり、これには労力が必要です。計画的な認証取得とシステム運用、そして認証維持を図り、業務の継続的改善を続けることが求められます。

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