ナーチャリングとは、 企業の売上向上や売上基盤の構築に効果的なマーケティング施策のひとつです。顧客へのナーチャリングを意識したアプローチは常識になりつつあり、多くの企業が実践しています。それをサポートするツールも登場しています。
そこで今回は、注目を集めるBtoB分野におけるナーチャリングについて、意味や手法、ツールなどをご紹介していきます。
ナーチャリングとは
ナーチャリング(nurturing)とは、「育成・養育」という意味を持つ英単語です。
ビジネスにおいて、ナーチャリングという言葉は【顧客育成】の意味で使用されます。例えば、見込み顧客を、実際に商品を購入する顧客になるよう導いたり、既存顧客をリピーターになるよう導いたりすることが、顧客育成にあたります。
特に見込み顧客を顧客へと育成する場合には、「見込み顧客」を指すリード(lead)という単語とともに、「リードナーチャリング」という言葉を用いることが多くなっています。リードナーチャリングをうまく進められれば、企業が抱える顧客数は増えていきます。
また、既存顧客のナーチャリングは新規顧客を獲得するよりも効率的であり、顧客と良好な関係を継続的に築くことによって、安定した売上の基盤を確保することができます。さらに、顧客の流出防止にも効果を期待できます。
ナーチャリングはマーケティングにおいて重要なプロセスです。実際、リードや既存顧客のナーチャリングに力を入れる企業は増加しています。
ナーチャリングが重要視される理由
ナーチャリングが重要視される背景には、時代の変化やBtoB分野ならではの傾向があります。
ここでは、ナーチャリングが重要視される4つの理由について見ていきましょう。
理由1 顧客ニーズの多様化・複雑化
近年の顧客ニーズは、多様化・複雑化しています。成約に繋げるためには、企業はその顧客ニーズに対応しなければなりません。
ナーチャリングを行えば、それぞれの顧客ニーズやアプローチに最適なタイミング、内容を把握することができるようになります。これにより、企業は各顧客に対し、最適で効果的なアプローチを行えます。
理由2 顧客は情報を自身で調べるように
インターネットの普及により、顧客は必要な情報を自身で調べ、比較するようになりました。顧客は基本的な情報を既に手に入れているため、企業に対してはさらに深く有益な情報を求めています。
ナーチャリングを意識し、各顧客のニーズに合った情報発信を行うことで、顧客の企業に対する信頼度は増し、成約率アップが期待できます。
理由3 リードタイムが長期に
BtoB分野では、リードタイム(購買決定の検討期間)が長期になる傾向があります。
長期に及ぶ検討フェーズから成約へと繋げるためには、ナーチャリングによって継続的に見込み顧客との良好な関係を築くことが有効です。
理由4 休眠顧客・失注顧客へのアプローチ
ナーチャリングは、増加する休眠顧客や過去の失注顧客の掘り起こしにも効果的です。
休眠顧客や失注顧客については、一から情報収集をする必要がありません。また、一度は商品やサービスに興味を持った顧客なので、新規顧客に対するアプローチに比べ、成約に繋げやすい傾向にあります。
休眠顧客や失注顧客の利点を活かし成約に至るには、効果的にナーチャリングを進めることが大切です。
ナーチャリングの手法
顧客のナーチャリングは、さまざまな手法によって行われています。
特に主要な手法を4つご紹介しましょう。
①メールマガジン・ステップメール
メールマガジンは企業の発信したい情報を顧客に配信するもの、ステップメールは顧客のニーズに応じた情報を最適なタイミングで配信するものです。
メールマガジンやステップメールを顧客に送ることで、そのトラッキング情報(開封率、クリック率など)をアプローチに繋げたり顧客の興味を高めたりすることができます。
②SNS
SNSは、情報発信がしやすく、またリードを獲得しやすいツールです。メールマガジンの登録を面倒に感じる人も、SNSのフォローなら手軽に感じるでしょう。
SNSの手軽さや情報の拡散性を活かしてナーチャリングを進めることで、企業は顧客数を増やしたり成約率を高めたりすることができます。
③セミナー・展示会
セミナーや展示会に来場する顧客は、既に商品やサービスに興味を持っている確度の高いリードおよび既存顧客です。
確度の高いリードや既存顧客に対し、有益なセミナーや展示会を開催できれば、リードが顧客に、既存顧客がリピーターにと、スムーズにナーチャリングを進められる可能性が高まります。
④ホワイトペーパー
ホワイトペーパーとは、顧客が抱える課題や疑問を解決するために企業が発信するWeb資料のことです。ホワイトペーパーで有益な情報を発信すれば、ホワイトペーパーをダウンロードした顧客は企業に対し興味を持つようになります。
また、ホワイトペーパーのダウンロードには顧客情報の入力が必要なので、企業はリード情報を取得し、その後のナーチャリングに活用することができます。
ナーチャリングと顧客分析
ナーチャリングをうまく進めるには、顧客情報の分析が欠かせません。顧客情報を詳細に分析し可視化することで、「この顧客にはどんなナーチャリングが有効か」という方向性が明確になります。
顧客情報の分析手法は多様ですが、ナーチャリングに役立つ手法を2種ご紹介します。
RFM分析
RFM分析とは、以下の3つの項目で顧客を分類する分析方法です。
・Frequency(購入頻度)
・Monetary(購入金額)
それぞれの値によって顧客をグループ分けし、それぞれのグループに適したアプローチを実施していくことで、効果的なナーチャリングを目指します。短期的な売上アップに効果的な手法です。
CPM分析
CPMとは顧客ポートフォリオマネジメント(CustomerPortfolioManagement)の略です。CPM分析では、購入総額や回数、在席期間、離脱期間などによって顧客を細かく分類し、分類に合ったアプローチによってナーチャリングを進めます。
前述のRFM分析と似ていますが、RFM分析では離脱した顧客へのアプローチが困難になるのに対し、CPM分析では離脱した顧客へも継続したアプローチが可能です。これにより、CPM分析では顧客との長期的な関係構築を目指せます。
顧客情報の管理・分析を効率化させるツール
顧客情報の管理・分析およびナーチャリングを効率化させるには、セールスイネーブルメントツールやMAツール、CRMツールの活用が有効です。
セールスイネーブルメントツール
セールスイネーブルメントとは、営業の売上最大化のために行われるあらゆる取り組みを総括的に設計・管理・数値化することにより、営業の強化・効率化を図る経営施策のことを指します。この施策をサポートするツールがセールスイネーブルメントツールです。
セールスイネーブルメントツールは、顧客の情報を管理・分析・可視化し、最適なタイミングでの最適な内容によるナーチャリングを可能にします。
MAツール
MAとは「マーケティングオートメーション(Marketing Automation)」のことで、MAツールとはマーケティングを自動化するツールを指します。
MAツールは、主にリード情報を管理・分析し、メール配信やコンテンツ提供を行うなどして顧客の購買意欲を向上させます。MAツールの情報を活用すれば、企業は各顧客の温度感に合わせた最適なアプローチができるため、リードを顧客にナーチャリングできる可能性が高まります。
CRMツール
CRMとは、既存顧客と継続的に良好な関係を築くことを目的にした、「顧客関係管理(Customer Relationship Management)」と呼ばれる経営手法です。CRMでは、顧客情報を管理・分析することで、既存顧客に対して最適なアプローチを継続的に行い、既存顧客をリピーターにナーチャリングしたり、流出を防いだりします。
この「顧客関係管理」という手法をサポートするのが、CRMツールです。CRMツールは顧客情報の管理や情報のトラッキングや分析をツール上で行い、可視化、共有します。
既存顧客の管理・分析がツールで一元的に行えるので、企業は効率的に顧客情報を活用することができます。
まとめ
ナーチャリングを意識したアプローチは、企業の利益向上にも、顧客の満足度向上にも繋がります。情報が溢れ、ニーズが多様化する現在において、ナーチャリングの重要性はさらに増していくでしょう。
ただし、効果的なナーチャリングには、顧客情報の分析が必要です。膨大な顧客情報を正確に分析するには、ご紹介したセールスイネーブルメントツールやCRMツールのような専用ツールの活用が必須です。ツールを使えば、情報の管理・分析は効率的に進められます。
今後ナーチャリングを強化していくなら、ツールの導入を検討するのがおすすめです。