営業職は大きく分けて「ルート営業」と「一般営業」に分類出来ます。ルート営業は、顧客との関係性が既に構築されていることから「楽な営業」という意見と、顧客を他社に取られないように努力が必要な「きつい営業」という全く違った意見が存在しています。
この記事では、ルート営業の基本的な業務内容とともに、ルート営業の厳しい点と良い点についてまとめました。
ルート営業の仕事内容
ルート営業とは、既に取引実績のある顧客に対して営業を続けることを言います。具体的には、顧客に提供しているサービスや商品に不具合はないか、顧客が抱える課題はないかを定期的に確認し、必要に応じて新しい商材の営業や、オプションサービスの提案などを行います。
比較的営業経験が少ない方でも取り組みやすい職種であると言えますが、構築された顧客との信頼関係をより強いものにしたり、維持したりするための努力と能力が必要です。
ルート営業と一般営業の違い
ルート営業と一般営業の違いは「新規顧客開拓をするかどうか」です。先ほどもお伝えしたようにルート営業では既存の顧客への営業を行うのに対し、一般営業では今までに取引のない新規顧客に対して営業を行って顧客数を増やします。どちらの営業も、顧客の要望をヒアリングして自社の商材を提案するという活動は同じですが、営業相手が違うと考えればいいでしょう。
また、ルート営業は一般営業よりも顧客と深い付き合いになることが多いため、きめ細やかな気配りと柔軟性が求められます。
ルート営業がきつい理由
知らない相手からの営業に抵抗感を示す方は多く、営業の進めやすさやアポの取りやすさを比べると、一般営業よりもルート営業の方が楽そうだと考える方がいる中で、「ルート営業はきつい」という意見もあります。
ここでは、ルート営業の厳しい一面を紹介していきましょう。
理由1 既存顧客を他者に奪われないための努力が必要
ルート営業で最も避けるべき事態は、既存顧客が競合他社に奪われてしまうことです。
顧客は常により良いサービスを求めており、競合他社は自社から顧客を奪うための営業活動を行っているものです。上司や先輩が新規営業によって勝ち取ったルート先を、自分が担当に変わってから奪われてしまうようなことは避けなくてはいけません。「長い付き合いだから大丈夫」「強い信頼関係があるから大丈夫」という気持ちでルート営業を続けていると、思わぬ事態になりかねません。
ルート営業では、既存顧客のニーズを把握出来ているか、既存顧客に信頼されているかだけでなく、競合他社の動きにも留意する必要があります。
理由2 既存顧客からの要望に対応しなくてはいけない
ルート営業は既存顧客から要望を受け取ることが多いです。顧客としても、融通が利くから「長く利用する」選択をしている場合があるためです。
全ての要望に応えることは出来ませんので、顧客が納得する代替案を提案したり、要望を上手くかわしたりする対応が出来なくてはいけません。
顧客との信頼関係が、ルート営業のメリットでありデメリットでもあると言えるでしょう。
理由3 評価されにくい・モチベーションの維持が難しい
ルート営業の目的である「既存顧客を維持する」ことは、一般営業のように新規成約数がカウントされるわけではないため、評価を受けにくいです。例えば、毎月商品を顧客に納品している場合、毎月発注があることは普通のこととして考えられ、ルート営業の努力の成果とは評価されません。それでも、既存顧客が競合他社に奪われて発注がなくなると、担当者がマイナスの評価を受けてしまいます。
目に見えた成果がなく評価されにくいことから、営業担当本人のモチベーションの維持も難しくなるでしょう。
理由4 一般営業に比べて給与が低いことがある
企業によって違いはありますが、ルート営業は一般営業よりも給与が低くなる傾向があります。
一般営業のように歩合給や成約ボーナスのような制度が用意されていることが少ないため、どんなに努力しても給与に反映されない場合が多いのです。
理由5 クレーム対応をしなくてはいけない
ルート営業の業務にはクレーム対応も含まれています。自社の提供している商品やサービスに問題があった場合に、まず顧客が連絡するのはルート営業の担当者です。
クレームの原因が営業担当本人の問題でなかったとしても、今後の取引を考えて常に丁寧な対応をしなくてはいけません。そのため、クレーム対応によって休日が仕事になってしまうこともあるでしょう。
理由6 接待が多い
企業の方針や既存顧客によって変わりますが、ルート営業は一般営業よりも、顧客の開催するイベントへの参加やお酒の席などでの接待が多い傾向があります。
顧客からのお誘いを毎回断ることが難しく、休日や夜間の接待で疲弊してしまう方もいるようです。
一方でルート営業をオススメする理由
ルート営業がきついと言われる理由についてお伝えしましたが、それでもルート営業には多くのメリットもあります。ここからは、ルート営業の良い点を紹介していきましょう。
理由1 営業未経験でも働きやすい
ルート営業にも多くのスキルが必要ですが、一般営業に比べると営業初心者でも取り組みやすいと言えます。
一般営業の場合は、新規顧客獲得のための知識を一から学び身につける必要がありますが、ルート営業は今まで営業先を担当していた営業担当から顧客を引き継ぐため、必要な情報をある程度手に入れた上で営業活動を進められるのです。
顧客側も初対面時に「知らない会社の営業担当」ではなく「前任者の仕事を引き継ぐ営業担当」という対応をしてくれるので、門前払いやアポが取れないということはまずないでしょう。
理由2 売上ノルマ・プレッシャーが少ない
大半のルート営業には一般営業と同じようノルマが用意されていますが、ルート営業のノルマは比較的緩いことが多いです。
ルート営業の売り上げは予測しやすいため、適切な量のノルマが設定されるためです。達成可能なノルマであれば、プレッシャーを感じずに業務に取り組めるでしょう。
理由3 スケジュールが立てやすい
ルート営業は既存顧客を回ることが営業活動なので、移動時間や滞在時間が予測しやすく、スケジュールが立てやすくなります。
計算通りに営業活動が進むことで、帰社後に一定の時間を確保することも出来るため、営業活動によって書類業務が滞ってしまう心配も少ないでしょう。
理由4 対人関係が得意でない人でも取り組める
一般営業では、毎回初対面の相手と話をしなくてはいけません。飛び込み営業やアポの取得を煙たがられて、嫌な思いをすることもあるでしょう。
ルート営業はすでに信頼関係の構築されている相手へ営業活動になるため、顧客から冷たい態度を取られたり、怪しまれたりする可能性は少ないです。
つまり、ルート営業は対人関係が苦手な方でも取り組める数少ない営業だと言えるのです。
まとめ
ルート営業の基本的な知識と、ルート営業の良い点ときつい点を紹介しました。ルート営業には「楽」「きつい」という正反対の意見があり、その意見は個人の性格や能力によって変わると考えられます。コツコツと積み重ねていくような仕事が好きな方やヒアリング能力の高い方などは、特にルート営業に向いていると言えるでしょう。
ルート営業であっても、営業活動がオンラインになったりするなど、営業手法は変化していくものです。変化に対応し、顧客を維持するためには、営業ツールやセールスイネーブルメントツールの活用もおすすめです。顧客との信頼関係の構築や顧客のニーズをより早く深く知るために、活用できるでしょう。