少し前までは、作業工程を伝えるために膨大なテキストや画像を用意する必要がありました。しかし、動画の活用が一般的になった今では、複雑な工程でも視覚的に分かりやすく作業方法を伝えることができるようになりました。
しかし、動画撮影に慣れていない方は、まず何を用意してどのように撮影すればよいのかが分からないことが多いと思います。
この記事では、作業動画を撮影するために必要な物や知識、ポイントを説明します。これから作業動画を撮影したいと考えている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
作業動画撮影に必要な物
作業動画を撮影するには、まず必要な機材を用意する必要があります。下記を参考に必要な機材を揃えましょう。
① カメラ(ビデオカメラ)
動画が撮影できるものであれば、一眼レフカメラやビデオカメラに加え、スマートフォンでも十分に撮影可能です。新しい機器を購入する必要はありません。
② 三脚
作業動画はカメラを固定する必要がありますので、三脚を用意しましょう。撮影に使用する予定のカメラの重さに対応しているものを選んでください。
③ 動画編集ソフト
動画編集ソフトは無料のものから有料のものまであります。目的や予算に合わせて選びましょう。
④ 照明
作業動画は室内での撮影が多く、明るさが不足する可能性もあるため、照明が必要です。適切な明るさを確保しましょう。
⑤ 外付けマイク
口頭で解説をする動画を作成するのなら、外付けマイクが必要です。カメラに搭載されているマイクでは聞き取りにくい仕上がりになることがありますので、より良い音質を確保するために外付けマイクを使用しましょう。
効果的な撮影技術
カメラワークの基本
カメラワークの基本として重要なのは、カメラを安定させることです。また、ズームインやズームアウトを行う際には、自分の身体を使って移動すると自然な映像が撮れます。カメラワークは、視聴者の視線を誘導し、動画の内容をより分かりやすく伝えるために重要な要素です。
カメラを固定して撮影する場合は、三脚やスタビライザーを使用することで、安定した映像を撮影することができます。
また、被写体に近づいたり離れたりする際には、ゆっくりと移動することで、視聴者に違和感を与えません。ズームインやズームアウトを行う場合も、急に拡大したり縮小したりするのではなく、ゆっくりと行うように心がけましょう。さらに、カメラの角度や高さなどを工夫することで、視聴者の興味を引きつけ、飽きさせない映像を作ることができます。
ライティングの重要性
良い照明は映像の品質に大きく影響します。自然光を利用するか、人工照明を適切に配置して、被写体が明るく、鮮やかに映るようにしましょう。照明は、被写体を美しく見せるだけでなく、動画全体の雰囲気を左右する重要な要素です。
自然光は柔らかく自然な光ですが、天候や時間帯によって変化するため、常に安定した光を得られるとは限りません。人工照明は、自然光に比べてコントロールしやすく、安定した光を得ることができます。照明の選び方としては、被写体の色温度や光量、影の作り方などを考慮する必要があります。
また、照明の配置によって映像に深みを与えることも可能です。適切な照明を使用することで、視聴者に心地よく、見やすい映像を提供することができます。
音声の収録に気を付ける
クリアな音声は動画の理解を助けます。マイクを使って音声を収録し、背景音や風切り音を防ぐ工夫をしましょう。音声は、動画の内容を理解するために非常に重要な要素です。クリアで聞き取りやすい音声は、視聴者の集中力を高め、動画への理解を深めます。
マイクは、カメラ内蔵のマイクよりも、外部マイクを使用することで、より高音質でクリアな音声を収録することができます。また、背景音や風切り音を防ぐために、防風対策や録音環境の工夫も必要です。静かな場所で収録したり、防音シートを使用したりすることで、よりクリアな音声を収録することができます。
作業動画撮影に必要な基礎知識
動画撮影を行う際には、事前に理解しておくべき基礎知識があります。
1. 伝えたい内容とポイントを整理しておく
マニュアルを通して何を伝えたいのかが明確になっていないと、作業動画の撮影はうまく進みません。撮り直しなどの手間をかけないためにも、撮影前から「何を伝えたいのか」「どのように伝えるか」を決めておきましょう。例えば、以下のような形です。
【例:レジ作業動画の場合】
- お客様への挨拶(お客様役・レジ係役を用意し、お客様の視点で撮影)
- 商品のスキャン方法(実際に商品をスキャンする様子を手元がよく映るように撮影)
- 合計金額をお客様に伝える(レジの操作方法とともに撮影)
- 現金の受け取り(お客様からの現金の受け取り方を撮影・レジ係目線)
- お釣りとレシートを渡す(お客様へのお釣りの手渡し方法を手元がわかるように撮影)
- お客様のお見送り(お客様目線でお見送りの方法を撮影)
箇条書きでも構いませんので、このように作業動画の流れや簡単な撮影方法を決めておきます。可能であれば、脚本や絵コンテのようなものを作成すると、より撮影がスムーズに進めやすくなります。
2. カメラを動かさない
作業動画の撮影には、カメラを三脚で固定する必要があります。動画撮影をしたことがない方ほど被写体を追うような撮影をしたくなりますが、それでは作業内容が伝わりにくく、映像がグラグラして視聴者が疲れてしまう可能性があります。特別な理由がない限り、カメラは三脚に固定して撮影してください。
3. 動画の前後には余白を持たせる
撮影の開始とともに作業や説明を開始する、作業や説明の終了と同時に撮影を終わる動画では、撮影した映像の前後に余白がなく非常に編集しにくくなります。動画の先頭部分が撮影できていない恐れもあります。
動画を撮影する際には、テレビの撮影現場のように、以下の流れを意識してください。
- 録画開始
- 数秒おいて作業または説明を開始
- 作業または説明の終了
- 数秒おいて録画終了
作業動画撮影の際のポイント
作業動画の撮影には、通常の動画とは異なる注意ポイントがありますので、理解しておきましょう。
ポイント1: プロの撮影した動画を真似する
動画撮影の経験がなくても、プロの撮影した動画を研究して似たものに仕上げることで、非常にレベルの高い動画が撮影できます。自分が撮影したいと考えている動画がどのようなものかを考え、参考にする動画を探しましょう。
ポイント2: 作業動画の閲覧環境・時間を配慮する
作業動画を誰がどのように閲覧するのかを考えます。具体的には、研修などで大きなスクリーンを利用するのか、スマホなど小さい画面で閲覧するのかです。閲覧方法によって字幕の文字サイズなどを配慮する必要があります。
また、作業動画に情報を詰め込みすぎて長くなると「何がポイントなのか分からない」動画になってしまいます。作業ごとに動画を分けたり、「基礎編」「応用編」という作業レベルごとに分割するようにしましょう。
ポイント3: 必要であれば動画と紙のマニュアルを併用する
作業動画を活用すれば非常に分かりやすく作業内容を伝えられますが、すべての作業が動画に適しているとは限りません。再現が難しい作業や、作業パターンが多すぎて膨大な数の動画を作らなければいけない場合は、従来のように紙を使用した説明の方が適していることもあります。
そのため、すべての作業を動画にしようと考えるのではなく、必要に応じてテキストを使った紙のマニュアルと併用するとよいでしょう。
ポイント4: 必ず字幕を用意する
動画では字幕のことを「テロップ」と呼びます。音声だけの動画は聞き取りもれや理解不足が起こりやすいため、作業動画には必ずテロップをつけるようにしてください。テロップは動画編集ソフトを活用すれば簡単に用意できます。
先ほど説明した閲覧環境も考慮して、テロップの文字サイズを決めましょう。また、字幕の背景に合わせて字幕の色を変える、背景色をつけるなどの工夫をしてテロップが見やすいようにしましょう。
作業動画撮影におすすめのカメラ
作業動画を撮影するには、どのようなカメラを用意すればよいのでしょうか?ここでは作業動画の撮影におすすめのカメラを紹介します。
ビデオカメラ
ハンディカムなどのビデオカメラを活用すると、ブレが少なく簡単に作業動画を撮影できます。5万円程度から購入可能で、価格も手頃です。機種によって異なりますが、長時間撮影が可能なものが多いため、交換バッテリーを用意しなくても済む場合が多いでしょう。また、三脚を用意できない・置けないような場所でもブレの心配が軽減されます。
一眼レフカメラ
本来写真を撮影するために利用される一眼レフカメラですが、現在では動画撮影機能が搭載されているものが多いです。非常に美しい動画が撮影でき、ボケ具合やピント合わせなど細かな調整も可能です。こだわった動画を撮影したいのなら、一眼レフカメラを導入するのもよいでしょう。
ただし、重さや形状から長時間手で持って撮影することは難しいため、三脚が必須です。費用目安はレンズ込みで10万円からとなり、少し高額です。長時間撮影時には替えのバッテリーを用意する必要もあります。
スマホ
現在、非常に画質に優れており動画撮影に適したスマホも発売されています。まずは初期費用を抑えるためにスマホで作業動画の撮影を始めるのもよいでしょう。
スマホを利用する場合には、カメラ用の三脚ではなくスマホ用の三脚が必要となるので注意してください。機種によっては録画時間の制限などがあるため、使用するスマホの動画撮影性能をよく確認しておきましょう。
まとめ
作業動画の撮り方やポイントについて分かりやすく説明しました。動画作成経験のない方にはハードルが高いと感じられるかもしれませんが、必要な機材は非常に限られており、ポイントと基本を抑えれば撮影も思っているより難しいものではありません。
ぜひ作業動画をマニュアルやビジネスの場に取り入れて、効率よく作業内容を伝えられるようにしましょう。