皆さんは「ナレッジ」という言葉を聞いたことがありますか?日常的に使っている方も、あまり耳にしない方もいるかもしれませんね。「ナレッジ」は主にビジネスで使われる言葉で、近年では企業経営において、その価値や扱い方が重要視されています。
この記事では、「ナレッジ」の意味や、混同されやすい「ノウハウ」との違い、その他の活用方法についてご説明します。
ナレッジとは?
辞書では、ナレッジという言葉は以下のように説明されています。
『ナレッジ』
- 知識・情報
- 企業などの組織にとって有益な知識・経験・事例・ノウハウなど、付加価値のある情報
(weblio辞書より)
ナレッジとは、「knowledge(ノウレッジ)」から派生した和製英語です。「knowledge」は「知っていること」、つまり「知識」や「知見」という意味を持つ英単語です。一般的に、ナレッジという言葉は「知識」という意味で使用されます。
ナレッジの使用例
- 化学分野のナレッジを身に付ける。
- あなたのパソコンナレッジは役に立つ。
このように使用されるナレッジという言葉は、文の中でそのまま「知識」という言葉に置き換えるとわかりやすいです。近年では、日本語の文章に和製英語を含めることが自然になり、ナレッジもその一つだと言えるでしょう。
ナレッジとノウハウの違いとは?
ノウハウとは
ナレッジと混同されやすい言葉に「ノウハウ」があります。この言葉は、ナレッジよりも日常的に使用されることが多いでしょう。まずは、ノウハウの意味を確認してみましょう。
ノウハウという言葉は、日本語のように聞こえますが、実は英語です。「know(知る)-how(方法)」から成り、「専門的知識」や「実際的知識」を意味します。辞書では、以下のように説明されています。
『ノウハウ』
- ある専門的な技術やその蓄積のこと。
- 技術競争の有力な手段となり得る情報・経験。また、それらを秘密にしておくこと。
(weblio辞書より)
ノウハウの使用例
- 仕事のノウハウは、〇〇さんから教わった。
- 経営のノウハウを学ぶために、専門書を読む。
ノウハウという言葉は自然に使用されており、その意味には知識や情報だけでなく、経験が含まれます。つまり、ノウハウは「経験を重ねることで培った知識や方法論」を指す言葉として用いられています。
ナレッジとノウハウの違い
では、ナレッジとノウハウの違いとは何でしょうか。わかりやすく表すなら、以下のように考えると良いでしょう。
- ナレッジ = 知識、情報
- ノウハウ = 知恵
ナレッジ(知識や情報)は、本やネットで得ることができますが、ノウハウ(知恵)は自身の体験を通じてしか会得できません。つまり、ナレッジを基に経験を積んで培った知識や知恵がノウハウであり、経験という意味を含むかどうかがナレッジとノウハウの違いです。有益なナレッジが整えられた環境では、人は効率的にノウハウを得ることができます。つまり、ナレッジとノウハウには深い関係性があるのです。
ナレッジのビジネスシーンでの使われ方
ここまでナレッジの意味についてご紹介してきましたが、ビジネスにおいてナレッジという言葉を使用する場合、意味が少し変わります。ビジネスシーンで使用されるナレッジは、以下のような意味を持ちます。
ビジネスにおけるナレッジ
「企業にとって付加価値を持つ情報」のこと。特に「個人が持つ知識や経験、スキル、ノウハウなどを収集し体系化した情報」を指します。
ビジネスにおけるナレッジは、ただ知識という意味で使われるものではありません。具体的には、個々の従業員が業務経験の中で培ってきた知識やノウハウを文章や数字で表し、情報としてまとめたものを指します。そしてこのナレッジは、あらゆる企業活動に活用されています。
近年、ナレッジは企業経営において重要視されるようになりました。ナレッジの蓄積によって、従業員がノウハウを効率的に会得できれば、企業価値や競争力を高めることができるためです。ナレッジ蓄積の重要性については、次章でご説明しましょう。
ナレッジを蓄積することの重要性
ここからは、ナレッジを蓄積することの重要性についてご紹介します。ナレッジの蓄積は、主に以下のような点で重要と考えられています。
業務の効率化・均質化・人材育成
蓄積されたナレッジがあり、それを従業員が活用できるツールがあれば、業務の効率化や均質化が図れます。ナレッジツールを確認することで業務に関する不明点を解決できたり、統一性を持って業務に取り組めたり、ナレッジツールを人材育成に使用したりできます。
ナレッジを蓄積し、それをツールに整理しておけば、従業員のレベルアップや人材育成のためのコスト削減も実現できます。
知的財産の蓄積・人材流出への対応
ナレッジは、従業員の知識や経験をまとめた情報であり、企業にとってかけがえのない知的財産です。これを蓄積していくことは、企業の知的財産を蓄積することと同義です。豊富な情報は、企業価値および競争力の向上に役立ちます。
また、近年は従業員の転職が多く、人材流出が激しくなっています。人材が流出すると、従業員が持つ知識や情報も流出し、業務に関する有益な情報が企業から失われてしまいます。しかし、あらかじめナレッジを蓄積し体系化しておけば、知識や情報を企業内に留めることが可能です。
ナレッジマネジメントとは
ビジネスシーンでは、ナレッジだけでなく、ナレッジマネジメントという言葉もよく用いられます。
ナレッジマネジメント
企業全体の生産性・優位性を高めるために、個人および組織が持つ企業にとって有益な知識や経験、ノウハウ等を企業内で共有・活用する経営手法のこと。
ナレッジマネジメントとは、蓄積したナレッジを企業の利益に結びつけるための活用・管理を指します。現代のナレッジマネジメントは、1990年代前半に一橋大学名誉教授で経済学者である野中郁次郎氏が「SECIモデル」を発表したことに端を発しています。
企業が有益なナレッジマネジメントを行うためには、この「SECIモデル」のプロセスに沿ったマネジメントが必要です。具体的な方法としては、マニュアル作成や業務情報検索ツールの整備、グループウェアツールの提供などがあり、多くの企業で取り入れられています。
SECIモデルの理解
SECIモデルの概要
SECIモデルは、ナレッジマネジメントにおける知識創造プロセスを4つの段階に分類したモデルです。SECIとは、Socialization(暗黙知の共有)、Externalization(暗黙知の形式化)、Combination(形式知の結合)、Internalization(形式知の習得)の頭文字をとったものです。
暗黙知の共有
Socialization(暗黙知の共有)は、経験や勘などの暗黙知を、共同作業やコミュニケーションを通じて共有する段階です。例えば、チームメンバー同士が協力して問題解決に取り組むことで、それぞれの暗黙知を共有し、新たな知識を生み出すことができます。
形式知の形式化
Externalization(暗黙知の形式化)は、暗黙知を言語化し、文書化することで、形式知に変換する段階です。例えば、ベテラン従業員の経験やノウハウをマニュアル化したり、データベースに登録したりすることで、誰でもアクセスできる形式知に変換することができます。
形式知の結合
Combination(形式知の結合)は、形式知を組み合わせることで、新たな知識を創造する段階です。例えば、複数のマニュアルやデータベースを統合したり、異なる分野の知識を組み合わせたりすることで、より高度な知識を創造することができます。
形式知の習得
Internalization(形式知の習得)は、形式知を学習し、自身の知識として身につける段階です。例えば、マニュアルを読んだり、研修を受けたりすることで、形式知を理解し、自身の知識として活用することができます。
まとめ
ナレッジについて、ビジネスシーンにおける意味や重要性を中心にご紹介しました。ナレッジという言葉は、現代では一般的に使用されています。そのため、ビジネスにおいてはナレッジに関する言葉の意味を正確に把握しておくことが重要です。また、ナレッジマネジメントの重要性は今後も増していくと考えられるため、これについての知識も高めておくと良いでしょう。