インターネットやSNSの普及にともない、多くの企業で取り入れられている「チャットサポート」。顧客は疑問を「素早く」「手軽に」解決でき、企業は業務の効率化を図ることができます。これらのメリットを享受するためには、チャットサポートの特徴を十分に把握したうえでカスタマーサポート業務に導入することが大切です。
本記事では、カスタマーサポートにチャットサポートを導入するメリット・デメリットやシステムの選定方法、導入時の注意点などを解説しています。
チャットサポートとは
チャットサポートとは、顧客が企業へチャットを介して問い合わせをできるシステムのことです。
顧客はWebサイト上やSNS上で、24時間365日問い合わせができます。メールや電話のように待たされることがないため「いつ回答してくれるの?」という不安が解消され、顧客満足度の向上に貢献するでしょう。
さらに、疑問の即時解決が実現するため、機会損失を防ぐ効果も期待できます。顧客の声を分析する機能を活用すればマーケティング施策にも役立つため、顧客と企業双方にメリットが大きいシステムだといえます。
チャットサポートの種類
チャットサポートは、以下の3種類に大別されます。
・有人対応型
・自動応答型
・ハイブリット型
それぞれの特徴を理解したうえで、自社に最適な仕組みを検討しましょう。
種類1 有人対応型
有人対応型は、顧客から寄せられた質問にオペレーターが回答するチャットサポートです。柔軟な対応が可能で、チャットによるコミュニケーション環境を構築できればすぐにでも運用を開始できることが特徴です。
一方で、問い合わせが多いときは顧客の待ち時間が発生します。チャットは電話やメールと異なり「素早く」「簡潔な」回答を求められるため、チャットサポートを行うためのスキルトレーニングが必要になることにも注意が必要です。
種類2 自動応答型
自動応答型は、顧客の質問に自動回答を行うチャットボットを導入したサポート体制です。チャットボットには「シナリオ型」と「AI型」の2種類があります。
シナリオ型
シナリオ型は、あらかじめ用意したシナリオに従って会話を行うチャットボットです。大枠の質問から細かな質問に移行することで、顧客が求めている回答を提供します。
たとえば、顧客が持っているクレジットカードで決済が可能かどうか知りたい顧客に、以下の選択肢を順番に選んでもらうとします。
↓
クレジットカード決済ができるか知りたい
↓
Mastercardに対応しているか知りたい
顧客は上記の回答を順番に選択することで、最終的に「Mastercardによる決済が可能です」という情報にたどり着くことができます。
シナリオ型は、設定していない質問には回答できないため、できる限り多くのパターンを用意することが適切な回答を提供するポイントです。「基本情報の変更」や「取り扱い方法」など、答えが単純で明確な問題解決に向いているシステムです。
AI型
AI型は「人工知能」が複雑な回答を導き出せるチャットボットです。過去の問い合わせ履歴を学習するため、顧客の「意図」を読み取ることができます。そのため事前に用意していない質問や、表現が異なる質問にも適切な回答を導き出すことが可能です。
一方で、学習を重ねないと精度が上がらないため、活用できるレベルに育て上げるまで手間とコストがかかります。
種類3 ハイブリッド型
ハイブリッド型は、有人対応とシナリオ対応を組み合わせたチャットサポートを指します。問い合わせの初めの段階はシナリオ型で対応し、回答できない高度な質問のみ有人で対応することが一般的です。
顧客の大まかな問い合わせ意図が判明している状態で有人対応に移行するため、オペレーターの対応時間を短縮できます。
有人対応の柔軟性を残しつつも、早朝や夜間にも問い合わせサポートが途切れない点がメリットです。
チャットサポートの導入メリット
チャットサポートを導入するメリットは以下のとおりです。
・24時間365日対応可能
・業務効率の向上
・顧客とのコミュニケーションの増加
・データの活用促進
自社が抱えている課題と照らし合わせながらご覧ください。
メリット1 24時間365日対応可能
チャットサポートを導入することで、カスタマーサポートの対応時間や休業日に左右されず24時間対応が可能になります。
チャットサポートを積極的に利用する顧客は、日ごろからインターネットの活用に慣れている傾向にあります。そのためWeb上でURLを共有すれば、ユーザーの自己解決を促せることも特徴です。
企業側の人的リソースを圧迫することなく、顧客満足度の向上が期待できます。
メリット2 業務効率の向上
電話は一回の対応につき一人の顧客しか対応できませんが、チャットサポートは、同時に複数人の顧客へ対応可能です。
さらに、よくある簡単な質問は自動応答型で対応できるため、オペレーターは高度な問い合わせに集中できます。
チャットサポートにより業務効率が向上することで、部門の負担軽減・人件費の削減につながります。
メリット3 顧客とのコミュニケーションの増加
顧客にとって、電話やメールは「受付時間まで待たなければならない」「文章の作成が面倒くさい」など、問い合わせのハードルが高いチャネルです。
手軽なチャットサポートは上記の手間や心理的負担を軽減できるため、顧客による企業へのコンタクトを促進します。
顧客の7割が「疑問や不満はあるのに、手間・負担に感じるから問い合わせはしない」というサイレントカスタマーであると言われています。チャットサポートは声なき顧客との接点になり得るため、既存顧客の離反を防ぐことに貢献します。
メリット4 データの活用促進
電話対応の履歴をデータとして活用するためには、音声データをテキストデータに変換しなければならず、多くの手間と費用が発生します。一方、チャットサポートで行われたやり取りはテキストデータとして蓄積するため、分析に手間を要しません。
蓄積したデータは、プロダクト改良・マーケティング施策や新人教育において活用できます。
チャットサポートの導入デメリット
チャットサポートはさまざまなメリットがある一方、デメリットも存在します。
・オペレーターの教育が必要
・問い合わせへの即時対応が基本
導入を検討する際は、デメリットも把握したうえで対策を講じましょう。
デメリット1 オペレーターの教育が必要
チャットサポートのオペレーターに求められるスキルの代表例は以下のとおりです。
・臨機応変かつ素早く問題解決策を導ける
・システムを的確に操作できる
一方で電話対応オペレーターは、文章を書く必要がない代わりに、丁寧かつわかりやすい言葉で説明する能力が求められます。
それぞれの役割において求められるスキルは一致しないため、電話対応とチャットサポートを1人のオペレーターが兼任するのは対応効率がよくありません。
チャットサポートを導入する場合、チャットサポート専任のオペレーターを別途育成する手間とコストが発生します。
デメリット2 問い合わせへの即時対応が基本
顧客は、チャットならではの「待たない」というメリットを享受するためにチャットサポートを利用します。そもそも問い合わせへのハードルが低いため、質問をしてすぐに回答がなければチャット画面から簡単に離脱されてしまいます。
機会損失を防ぐためには、営業時間外や休業日などに自動応答を活用し、即時回答を提供できる体制を構築する必要があるでしょう。
主要のチャットサポートシステム
以下では導入実績が多い、代表的なチャットサポートシステムを紹介します。
Zendesk メッセージング・チャット
カスタマーサポートの業務を網羅的にカバーするZendesk Chatは、全世界で10万社以上に導入されている、多言語対応の有人対応型システムです。
メールやTwitter、LINEなどあらゆるチャネルのデータをダッシュボードで一元管理できるため、データの分析・活用が容易になります。
送信するメッセージを自由にカスタマイズできる機能も搭載されており、問い合わせが発生しやすいシチュエーションにおいて先回りして情報を送信し、顧客体験の向上に寄与します。
・無料プラン:なし
・無料トライアル期間:14日間
チャットプラス
チャットプラスは、比較的安価で10,000社以上の導入実績がある豊富なAIチャットボットです。
IPアドレスやブラウザ情報など、ユーザー属性を判断できる情報が表示される機能も搭載されています。そのため、顧客ニーズにマッチした的確な対応を実現します。
運用方法にあわせて有人対応やハイブリット対応も可能なため、状況にあわせて柔軟に運用できることが特徴です。
・無料プラン:なし
・無料トライアル期間:10日間
チャネルトーク
チャネルトークは、CRMシステムが一体化したチャットサービスです。WebチャットとSNSを一元管理でき、対応効率の向上に役立ちます。顧客は好きなチャネルからアクセスできるため、顧客接点の構築にも寄与するでしょう。
オプションのシナリオ型チャットボットは、開発が不要なため導入後すぐに活用できます。
・無料プラン:あり
・無料トライアル期間:14日間
チャットサポートシステムの選び方
近年は、数多くのチャットサポートシステムが流通しています。自社の課題解決に役立つチャットサポートシステムを選択するために、重視すべきポイントを以下で解説します。
1 導入目的に合致したシステムを選ぶ
まずは、チャットサポートで「なにを解決するのか」「何を実現したいのか」を明確にしましょう。
複数のチャネルを組み合わせて運用するのか、どのチャネルに最も注力するかなど、状況は各企業によって異なります。導入効果を検証したうえで、機能が自社にマッチしたシステムを選択することがポイントです。
2 現場の使いやすさを重視する
一般的に、チャットサポートの導入は手間がかかります。自社のリソースを加味したうえで導入を検討しなければ「使いこなせない」「現場の業務がかえって圧迫される」という事態を招きかねません。現場の使いやすさを重視し、導入・活用のハードルを下げることが大切です。
具体的には、以下の観点を事前に確認しましょう。
・データの分析が容易か
・すでにFAQのデータがある場合、それを活用できるか
試験導入を行い、現場の意見を加味したうえで選択すると失敗を回避できます。
3 機能と費用のバランスを考える
機能が充実していたり、精度が高いAIが搭載されていたりするとシステムの費用は高額になります。自社に必要な機能はなにか、不必要な機能は含まれていないかを確認のうえ選択することが大切です。
4 サポート体制を確認する
多くのシステム提供事業者は、オプションで導入や運用のサポートプランを設置しています。
自社の運用リソースが足りない場合は、サポートを受けることで導入がスムーズに進むケースもあります。求めているサポートを提供してくれるかどうかを軸にシステムを選択するのもひとつの方法です。
チャットサポートシステムを導入する際の注意点
チャットサポートシステムを導入する際に考慮しておくべきポイントを以下で解説します。
注意点1 ユーザーの利用チャネルに適しているか検討する
チャットサポートを積極的に活用するのは、主にインターネット利用に慣れている顧客です。顧客のうち高齢者が多数を占めていたり、インターネットの活用率が低いユーザーが中心であったりする場合は、チャットサポートの導入コストにメリットが見合いません。
顧客の行動履歴や問い合わせ経路を分析のうえ、活用率が高いと見込まれるチャネルのサポートを充実させることが大切です。
注意点2 自社の運用リソースを加味する
チャットサポートは迅速かつ的確な対応が求められるため、チャットサポート専任オペレーターを育成する必要があります。電話やメールの担当者以外に新たなオペレーターを配置可能なのか、育成にかける時間と費用があるのかなどを十分に考慮することが大切です。
チャットサポートシステムの導入で、手放しに顧客満足度や業務効率が効率化するわけではありません。自社の運用リソースを加味したうえで、チャットサポートの導入によるメリットがデメリットを上回るのかを検討しましょう。
注意点3 AIのメリットを最大限生かせるか考える
AIは、データの学習を繰り返すことで精度の高い回答が可能になります。AIチャットボットで顧客のユーザビリティを高めるチャットサポートを提供するためには、相応の時間とコストをかける必要があるのです。
システムによっては、自社での学習が不要で導入後すぐに高度な対話ができるAIチャットボットも存在しますが、当然ながら高額です。AIが業務を効率化してくれることは間違いないものの、作業量やコストを十分に把握したうえで利用を検討することが大切です。
まとめ
カスタマーサポートにおけるチャットサポートの導入は、顧客満足度の向上や業務効率化に役立ちます。ただし、自社の顧客層や運用リソースなどを十分に加味してシステムを選定しなければ、メリットを最大限に生かすことができません。
導入や運用のサポートを受けることも検討のうえで最適なベンダーを選び、ビジネスの成長につなげましょう。





