稟議書とは、物品購入や人材採用などの承認を得るために作成する書類です。会議を開いて承認を得るよりも効率的に決裁を進めることができます。
稟議書の質が申請の承認可否に影響しますが、多くの時間を割くことは難しいでしょう。しかし、何度も差し戻されるような質の低い稟議書を作成すると、逆に時間がかかり、承認者からの印象も悪くなります。
この記事では、稟議書の書き方や作成時のポイントを解説し、活用しやすい例文も紹介します。稟議書作成に苦手意識がある方は、ぜひ参考にしてください。
稟議書とは
稟議書の定義と役割
稟議書とは、会社や組織内で、業務上の費用や支出、新規事業の立ち上げ、人事異動など、重要な決定事項について、上司や経営層の承認を得るための書類です。稟議書を作成し、上司や経営層に提出することで、その決定事項を実行に移すための許可を得ることができ、組織全体の意思決定をスムーズに行うための重要な役割を担っています。
稟議と決裁の違い
稟議と決裁は、どちらも組織における意思決定プロセスにおいて重要な要素ですが、それぞれ異なる意味を持っています。
稟議とは、上司や経営層に承認を求めるための手続き、つまり承認を得るための申請のことです。一方、決裁とは、上司や経営層が稟議書の内容を検討し、最終的に承認または却下する行為を指します。
つまり、稟議は承認を得るための申請であり、決裁は承認または却下を決定することです。稟議書は、決裁を受けるための書類であり、稟議書の内容に基づいて決裁が行われます。
稟議と起案の違い
稟議と起案は、どちらも組織における意思決定プロセスにおいて重要な役割を担いますが、それぞれ異なる意味を持っています。
起案とは、稟議書を作成する最初の段階であり、稟議書の内容を具体的に書き起こす作業を指します。一方、稟議とは、起案された稟議書を上司や経営層に提出して承認を得るための手続きです。
稟議書の基本的な書き方手順
まずは、稟議書の基本的な書き方についてまとめました。稟議書の作成方法は非常にシンプルな流れで進みます。
【手順①】テンプレートを準備する
稟議書はテンプレートを使用すれば、短時間で作成可能です。企業によっては、全社で指定された共通のテンプレートが存在することも珍しくありません。
テンプレートが統一されていれば、稟議書作成の手間が省けるだけでなく、承認者も稟議書の内容を確認しやすくなります。指定のテンプレートが用意されていない場合でも、チームや部署内だけでも稟議書のテンプレートを統一することをおすすめします。
稟議書のテンプレートはインターネット上で多く公開されており、ほとんどが無料です。
一度テンプレートを決めてしまえば、その後の稟議書作成にかかる時間を大幅に削減できます。
【手順②】テンプレートに必要な情報を記入する
稟議書に必要な情報をテンプレートに記入していきます。申請内容によって細かな部分は変わりますが、以下の項目は必ず記入してください。
決裁区分
最終的な承認結果を表示する部分で、決裁者は「可決」「保留」「差し戻し」「否決」などの言葉をこの欄に記入します。
申請日
申請者が申請日を記入します。
決裁日
決裁者が決裁日を記入します。
承認欄
承認者や決裁者のサインや押印をする部分で、差し戻し理由や注意事項のコメント記入欄を設ける場合もあります。
件名
稟議内容を短くまとめた件名を記載する欄です。件名を見ただけで稟議書の内容が想像できるものにしてください。
稟議の内容
稟議の内容を記載します。本文にあたる部分であり、稟議書の中で最も重要な項目です。
金額
稟議に必要な金額を記載します。すでに見積りがある場合は、一緒に添付してください。
発注先・取引先
金額の見積もり先である発注先や取引先を記載します。概要・所在地・資本金などの情報も一緒に説明する場合もあります。
稟議書の書き方のコツ
簡潔に書く
稟議書は、簡潔にまとめることが重要です。上司や経営層は、多くの稟議書に目を通す必要があるため、長文で複雑な文章よりも、短く要点が分かりやすい文章の方が、読みやすく、理解しやすいです。
- 結論を最初に述べる
- 必要な情報だけを盛り込む
- 図表などを活用して視覚的に分かりやすくする
- 専門用語を避ける
- 文章は簡潔で分かりやすい言葉を使う
具体的なデータを用いる
稟議書では、具体的なデータを用いることで、説得力のある内容にすることができます。例えば、費用に関する稟議書であれば、過去のデータや市場調査の結果などを示すことで、費用対効果を明確に示すことができます。
- 具体的な数値や根拠を示す
- データをグラフや表などで視覚的に分かりやすく表示する
- データの信頼性を確認する
会社に利益があることを示す
稟議書では、会社にとっての利益を明確に示すことが重要です。上司や経営層は、会社にとって利益になるかどうかを判断基準として、稟議書を承認するかどうかを決定します。
- 費用対効果を明確に示す
- 会社の成長に貢献する内容であることを示す
- 顧客満足度向上に繋がる内容であることを示す
承認されやすい稟議書のポイント
抜け漏れがないか確認する
稟議書を提出する前に、抜け漏れがないかをしっかり確認することが重要です。提出後に抜け漏れが発覚すると、承認が遅れるだけでなく、上司や経営層からの信頼を失う可能性もあります。
- 必要な項目が全て記載されているか確認する
- データや根拠が正しいか確認する
- 誤字脱字がないか確認する
- 提出前に上司や同僚に見てもらう
承認者に事前に口頭でも伝えておく
承認者に事前に口頭で稟議内容を伝えることで、スムーズな承認が得られます。事前に内容を説明することで、承認者が稟議書の内容を理解しやすくなり、質問や疑問点を事前に解消することができます。
- 稟議内容を簡潔に説明する
- 承認者からの質問に答えられるように準備しておく
- 承認者のスケジュールを考慮して、適切なタイミングで伝える
差し戻し・却下になった場合の対策
稟議書が差し戻しや却下になった場合は、その理由をしっかりと理解し、対応策を検討することが重要です。
- 差し戻しや却下の理由を明確に確認する
- 必要な修正を行い、再度提出する
- 承認を得るための交渉を行う
- 諦めずに、粘り強く対応する
稟議書の例文
ここでは、営業社員にノートパソコンを支給するという内容の稟議書の例を紹介します。
稟議内容やテンプレートが変わっても、基本的な書き方は変わりません。自分が使いやすいようにアレンジしてください。
【件名】
営業社員にノートパソコンを購入する件について
【詳細】
- 現在、営業部で使用しているノートパソコンは8年前に購入したものであり、バッテリーの劣化や容量不足の問題から作業効率が低下しているとの申し出がありました。
- 一部の社員は故障の可能性も指摘しており、現在は予備のノートパソコンを使用している社員もいます。
- 予備のノートパソコンは在庫が1台しかなく、早急に対応する必要があります。
【想定される効果】
- 提案書作成、見積書作成、日報作成などの営業活動が効率化し、1件の営業に必要な時間が◯分削減できます。
- 1日に営業可能な顧客数が増え、成約率の◯%向上が期待できます。
【想定されるリスクと対策】
- 新規導入したパソコンの操作に慣れるまで、一定期間作業効率が低下する恐れがあります。
- 新規導入のパソコンをシステム部門が設定する必要があります。
- 事前にマニュアル配布および研修を実施し、作業効率の低下を最小限に抑えます。
- 一斉導入ではなく、チームごとの導入を検討し、システム部門の負担を減らします。
【導入パソコン名】
〇〇社製〇〇〇〇
【数量】
営業社員30名に対して1人一台および出張者貸出を含む予備用3台:合計33台
【想定価格】
98,000円/台 × 33台 合計:3,234,000円(株式会社〇〇からの見積もりを添付します。)
まとめ
稟議書の基本的な書き方と手順、具体例や作成ポイントについて解説しました。稟議書は申請を決裁まで進めるための重要な書類であり、その内容や質が承認の可否に大きく影響します。テンプレートを活用し、必要な情報を的確に記入することで、効率的かつ質の高い稟議書を作成できます。
この記事で紹介した手順やポイントを参考に、効果的な稟議書を作成し、スムーズな承認プロセスを実現してください。質の高い稟議書は、業務の効率化と成功への第一歩です。