稟議とは、自分の権限では決定出来ない事柄を申請して上層部に回覧・承認してもらうことを指します。ビジネスパーソンにとって重要な手続きであると言えますが、稟議と決裁の違いが分かりにくいと感じる方もいるようです。
今回の記事では、稟議のメリットやデメリットを含めた基本的な情報とともに、ワークフローシステムの導入について詳しく説明します。
稟議とは
稟議とは、組織の中で導入したいと考えた事柄を説明する書類を作成し、上層部に回覧・承認してもらうことを指しています。
この際に使用する書類を「稟議書」と呼び、多くの企業では定められた書式が存在します。
稟議書の役割には、稟議に必要な情報を回覧するだけでなく、決裁が完了した後に「誰が起案した稟議か」「稟議の詳細な内容」「誰が承認者として携わっていたか」などの情報を記録しておく役割があります。
例えば、何かを購入する際に決裁が下りたとしても、稟議書が残っていなければ、万が一「勝手に購入したのでは」と言われても、購入の正当性を主張することは難しくなります。また、何か問題が発生した場合に、稟議書の内容や誰が承認者であったかを把握できるようにしておく必要があります。そのため、決裁済みの稟議書の保管についても、会社の規則で定められているケースが多いでしょう。
稟議を使用する場面
稟議の種類には様々なものがあります。稟議を使用する場面を金額などの条件で明確に設定している企業もあれば、必要に応じて稟議の作成が指示される会社も存在します。
ここでは、代表的な稟議の例を説明します。
契約稟議
企業間の取引など契約を締結するために契約稟議が必要な場合があり、物件の賃貸契約・リース契約・金融機関との融資契約などに用いられます。
購入稟議
企業で購入するものに対して行われる稟議を購入稟議と呼びます。
多くの企業では稟議が必要な買い物に金額設定をしており、設定金額以上の価格のものを購入する際に、稟議を作成するのです。
人事稟議
採用の場面で用いられる稟議で、新しい人材を採用するために関係者の承認を得る目的で用いられます。
人事稟議は採用時だけでなく、昇進や部署異動、契約社員を正社員に登用する際にも必要な場合があります。
稟議と決裁の違い
稟議と決裁は、どちらも権限を持っている上層部に承認をもらう手続きですが、明確な違いがあります。
稟議は一般の従業員から上層部に向けて承認を進めていく流れ全体を指しているのに対して、決裁は管理職や役員などの決裁権を持った決裁者が承認をする行為そのものを指しています。
そのため、稟議の最終段階を決裁と呼びますが、小さな規模の企業では稟議が存在せずに決裁のみで決定が下される場合もあります。
稟議がなければ、決裁者のみによる単独でスピーディーな決定が下せますが、複数の相手から承認を得て決裁をすることは出来ません。
稟議のメリット
稟議は日本特有の手続きであり、長年多くの企業で採用されています。そのメリットには、次のようなものがあります。
メリット1 稟議承認における時間を削減出来る
稟議がなければ、判断を仰ぎたい事柄を上層部に承認してもらうために、その都度、会議や打ち合わせを開かなくてはいけません。
打ち合わせを行う時間そのものに加え、参加者の日程調整や会議場所の確保などに時間と手間がかかります。承認を得る人が多くなれば、関係者も増え、打ち合わせや会議を開くための時間と工数が必要です。
稟議があることで、人を集めずに書類の回覧のみで承認が得られるので、効率良く業務が進められるのです。
メリット2 承認までの手続きが記録出来る
稟議書を使って稟議を進められれば、稟議に必要な情報がまとめられるだけでなく、決裁に至るまでの過程の記録が残ります。
稟議書によって承認された内容や、「いつ誰が承認したのか」「決裁者は誰なのか」といったことも明確になります。
稟議書は通常一定期間保管されますので、同じような稟議を上げる時に過去の稟議書の内容を参考にでき、承認が滞りそうな内容の場合には事前に承認者に相談するなどの対応も可能になります。
また、稟議が滞ってしまったり、通らなかったりした場合にも、決裁までの過程が記録されていれば、すぐに内容や状況を確認出来るのです。
稟議のデメリット
ここでは、稟議のデメリットについてまとめました。上層部に承認を得るために欠かせない存在である稟議には、いくつかのデメリットが存在します。
デメリット1 責任の所在が分かりにくくなる
稟議には複数の承認者が存在するために、何らかの問題が起きた時の責任の所在が分かりにくくなります。
稟議とは別に、責任の所在について明らかにしておく必要があるでしょう。
デメリット2 承認までに時間がかかる
稟議は複数人の承認を得る必要があることから、すぐに決裁は下りません。決裁権のある特定の1人からの承認でよいケースに比べれば、時間がかかります。
最終承認までの人数は稟議の内容や企業によって変わりますが、スピーディーな決定が難しいのです。
残念ながら、稟議に時間がかかることでビジネスチャンスを逃してしまう恐れもあります。急ぎの稟議が必要な場合には、承認者全員のスケジュールも考慮することも必要になります。
稟議を円滑に進めるポイント
稟議は必ずしもスムーズに承認されるとは限りません。ここでは、稟議を円滑に進めるポイントを説明します。
優れた稟議書であれば、稟議がスムーズに進む可能性が高くなります。
ポイント1 伝わりやすい稟議書を書く
ビジネス文書の基本ですが、稟議書の内容は結論から記載します。つまり「何を決裁して欲しいのか」を先に書き、話を進めていくのです。
長い文章の中から結論を探すという作業は、読む人の時間を奪い、稟議が滞る原因になります。
稟議書の伝わりやすさが稟議の承認を左右することも珍しくありません。
ポイント2 抽象的な表現を使わない
稟議で申請した内容の取り組みによって期待出来る効果は、抽象的な表現ではなく具体的なデータを用います。
例えば「ツールの導入による作業効率化」ではなく「ツール導入によって◯時間程度の工数削減が期待出来る」のような書き方をしてください。シミュレーション結果などを利用し、より具体的な導入効果を提示します。
短期的・長期的な両方の期間のシミュレーション結果を提示すれば、読む人により取り組みの有益性が伝わりやすくなるのです。
ポイント3 デメリットはメリットで補う
稟議を通したいからと言って、デメリットを隠してはいけません。しかし、デメリットは承認者にネガティブな印象になるものです。
デメリットを補うメリットを記載し、嘘のない稟議書を作ってください。
メリットとデメリットが承認者に伝わり、メリットの方が大きいと理解してもらえれば、デメリットは大きな問題ではなくなります。
「稟議・決裁の効率化」と「ワークフローシステム」
ここでは、稟議と決裁の効率化を進めるためのワークフローシステムについて説明します。ワークフローシステムを導入すれば、稟議がスムーズに進められるようになるのです。
稟議・決裁の問題点
稟議には、先ほど紹介したような最終承認までに時間がかかるというデメリットがあります。
例えば、承認者の中に出張中や休暇中の者がいれば、その承認者が戻るまで稟議が止まってしまうのです。
稟議を効率化するワークフローシステムを導入することで、このような稟議のデメリットをカバーして承認業務が進められます。
ワークフローシステムを導入するメリット
稟議・決裁のデメリットや問題点を補うために、ワークフローシステムを導入することで、稟議を電子化することができます。
紙の稟議書を使用している企業もあると思いますが、紙の稟議書では手渡しでしか次の承認者に進まず、出張中など会社にいない状況では、稟議書を読むことも稟議を承認することも出来ません。しかし、稟議を電子化することで、どこにいても稟議の申請・回覧・承認が出来るようになれば、稟議が滞ることは無くなります。
テレワークが浸透した企業でも、電子の稟議であれば、どこで勤務していても問題なく手続きを進められるのです。
また、システム上で稟議の進捗を把握出来るため、稟議がどこで止まっているのか、誰に承認されたのかもすぐに分かります。急いでいる稟議や承認が滞っている場合は、対象者に連絡することで、稟議を確認してもらうことができ、進捗をスムーズにする効果が期待出来ます。
まとめ
稟議は、新たに導入したい事柄を上層部に承認してもらうための手続きです。複数人の承認を確実に得られる方法ですが、決裁までに一定の時間がかかるのがデメリットです。
それを少しでも解消できるのがワークフローシステムです。紙の稟議書でも決裁は得られますが、これまでのやり方に固執せず、働き方や時代に合わせて、より便利なツールを導入しましょう。「toaster team トースターチーム」なら、業務手順書やマニュアル、業務ワークフローを誰でも簡単に作成できます。社員・スタッフの知識・経験を見える化・仕組み化し、社内のあらゆる業務に関する情報をクラウドで一括管理できます。新人の即戦力化や業務の属人化の解消を通じて、組織の業務効率化と生産性向上につながるため、是非ご検討ください。
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