「業務効率を上げたいが、どこから手をつけていいかわからない」「無駄な部分の発見が難しい」と、業務改善にあたって頭を悩ます企業は多いでしょう。
無駄を無くして業務効率を上げるには、業務の可視化が有効です。業務の可視化には多くのメリットがあり、それは業務改善に繋がります。近年では、業務可視化のための専用ツールも多数リリースされるようになりました。
そこで今回の記事では、「業務の可視化」について、メリットや方法、便利なツールとその選び方まで、詳しくご紹介しましょう。
業務の可視化とは
まずは、業務の可視化とはどのようなことを指すのかご説明しましょう。
「可視化」とは、「目に見えないことを見えるようにすること」です。目に見えない物事や情報を図表や文章を用いて視覚化し、わかりやすい状態にします。
「業務の可視化」の場合も同様で、「目に見えない業務を視覚化して、わかりやすい状態にすること」を指します。
では、「目に見えない業務」とは何なのでしょうか。
「目に見えない業務」とは、業務の全体像や業務プロセス、作業手順、各業務・部署の繋がりなどです。これらは実態がない情報であるため、文章や図表を用いて可視化しておかなければ、把握するのは難しいでしょう。
業務の可視化は業務改善に有効で、業務の効率化や生産性アップを目指す多くの企業で実施されています。
業務の可視化を行うメリット
業務の可視化には、業務改善に繋がる多くのメリットが期待できます。ここでは、業務の可視化による5つのメリットをご紹介しましょう。
メリット1 業務の無駄を排除できる
業務の可視化を行えば、業務の全体像や業務プロセス、各手順の詳細とそれらの繋がりなどが、よくわかるようになります。すると、無駄な業務や効率の悪い手順などが自然と浮き彫りになっていきます。把握できた無駄を、排除したりやり方を変えたりすることで排除していけば、業務の効率性や生産性は、業務の可視化以前よりも格段に向上します。
業務の全体像や業務プロセスは、頭の中だけで組み立てて把握するのは困難です。全体像やプロセスが視覚的に表し、関係性を的確に把握しなければ、削るべき無駄は発見できません。
メリット2 業務の属人化解消
業務の属人化とは、ある業務を特定の人しかできない、やり方がわからない状態を指します。業務の属人化が進んでいる状況にある場合、担当者の負担が大きく、担当者が不在では業務が進まないため、業務効率は落ちてしまいます。よって、創造性が強い業務以外は、属人化しないようにするのが理想です。
業務の可視化は、業務の属人化解消・防止にも有効です。業務プロセスや手順が可視化されていることによって、可視化された内容を見ながら、誰もが業務を進められるためです。
全ての業務が可視化されれば、属人化が解消されるだけでなく、幅広い業務に取り組むことで従業員の業務スキルも向上するでしょう。
可視化された情報に従って業務を進めるには、業務プロセスや手順をマニュアル化しておくと効率的です。
メリット3 従業員満足度の向上
業務の可視化には、従業員満足度の向上も期待できます。なぜなら、業務の可視化によって従業員ごとの業務を把握しやすくなれば、一部の従業員だけに業務負担が偏ってしまうようなことを避けられるためです。
また、それぞれの従業員ができる業務の幅が広がったり、管理者が「誰がどの業務をできるか」把握できるようになったりすることにより、病気や急な用事による従業員の欠席に対し、速やかで無理のない対応を行うことも可能です。
公平で待遇に不満が出ない職場では、従業員満足度は当然向上するでしょう。
メリット4 課題に対する従業員間の共通認識が生まれる
業務の課題を解決するには、従業員の協力が必須です。
業務の可視化は、業務の課題を従業員に認識させるためにも効果的です。業務とその課題が可視化され、全ての従業員が同じように理解することで、課題に対する共通認識が生まれるからです。
従業員間で課題に対する共通認識が生まれれば、全ての従業員は課題解決という目的を持ち、同じ方向性を向いて行動するようになります。バラバラの課題認識では各従業員の方向性もバラバラになってしまい効率的な業務改善はできないため、この点においても業務の可視化は大きなメリットをもたらすと言えるでしょう。
メリット5 RPA・BPM導入のベースを作れる
効率化を目指す現在の企業では、RPA(※1)やBPM(※2)の導入が進んでいます。RPAやBPMは、業務の無駄を無くしたり一部の業務を自動化したりして、業務効率を向上させます。
ただし、RPAやBPMの導入にあたっては、まず業務の実態を明確化しておかなくてはなりません。業務のどこに改善の余地があるのか、どの業務を自動化すべきなのか、業務の全体像を踏まえて把握する必要があるためです。
業務を可視化しておけば、業務実態の把握がスムーズに行え、これがRPA・BPM導入のベースとなります。
※1 RPA
ロボティックプロセスオートメーション。事業プロセスの自動化。
※2 BPM
ビジネスプロセスマネジメント。業務プロセスを最適化し、継続的改善サイクルを確立する経営手段。
業務の可視化を行う主な方法
業務の可視化を行うには、以下のような方法が一例として挙げられます。
方法1 プロセスマップを作成する
プロセスマップとは、業務の全体像やプロセス、各プロセスの関連性をマップ化したものです。図形や線を用い、誰が見ても一目でわかるような図(マップ)で、業務の全体像を表現しましょう。
また、それぞれのプロセスにおける手順や必要な人数、スキル、時間なども記載しておくと良いでしょう。
プロセスマップは、業務の実態を把握したり無駄を把握したりするのに、効果的です。
方法2 スキルマップを作成する
スキルマップとは、従業員それぞれのスキルを図表に表したマップのことです。スキルマップを確認すれば、どの従業員がどの業務を行えるのか、すぐに把握することができます。
スキルマップは、従業員のスキルに合わせた適切な配置に役立ちます。また、各従業員の苦手分野や組織として弱い部分なども把握でき、それらは人材育成に役立てられます。
方法3 専用ツールを導入する
業務の可視化を進めるには、専用ツールを導入する方法もあります。業務に役立つツールは多数あり、その中には業務の可視化をサポートするツールも存在します。
専用ツールでは、コンピューターならではのデータ機能を用いてデータを収集・分析します。例えば、各従業員のパソコン業務に関するデータを収集・分析し、可視化することで、その内容や効率の把握が可能になります。
また、大多数のツールは、インターネットを介したサービス提供を行います。これにより、可視化された情報を、場所や時間に関係なくスピーディーに確認することが可能になります。
業務の可視化に役立つツール〇選
ツールの選び方
業務の可視化を叶えるツールは多数リリースされており、それぞれ特徴が異なります。多くのツールの中から自社に導入するツールを選ぶ時には、以下の3点に注意し、慎重な選択を行いましょう。
1 目的に即したツールを選ぶ
目的が曖昧なままツールを選んでしまっては、ツール導入により期待していた効果が得られません。よって、ツール選定にあたっては、まず業務可視化の目的を明確にしたうえで、目的に即した機能を持つツールを選ぶ必要があります。
目的とツールの機能がマッチしているか確かめるためには、ツール同士の機能を比較するほか、ツールのトライアルプランを用いるのも有効でしょう。
2 操作性の高いツールを選ぶ
業務の可視化ツールは、操作性にもこだわって選びましょう。
ツールによって、操作性は大きく異なります。使いやすいツールであれば従業員に広く活用され、可視化による効果も十分に期待できますが、使いにくいツールであればそもそも従業員に活用されない恐れがあります。また、使いにくいツールは操作に時間がかかり、業務効率も落ちるでしょう。
ツール選定時には、自社の社員にとってどのツールが操作性に長けているのか、よく見極める必要があります。
3 予算に合ったコストのものを選ぶ
可視化ツールの導入には、コストがかかります。主なコストは、導入コストと毎月の運用コストでしょう。これらの金額も、ツールによって大きく異なります。
可視化ツールは長く活用していくことで、健全で効率的な業務継続を可能にするため、コストの面でも長期的に勘案する必要があります。コストと予算との兼ね合いを考えながら、慎重に判断しましょう。
まとめ
業務の可視化は、企業にとっても従業員にとってもメリットになります。業務改善を効果的に行うなら、まずは業務の可視化を実施し、課題を的確に把握することが必要でしょう。
また、業務の可視化は、専用ツールの利用によって、より効率的に行えます。もっとも一般的なのは、ツールを利用したマニュアル整備でしょう。マニュアル作成ツールを用いたマニュアル整備は、マニュアル作成も、活用、運用も行いやすいのが特徴です。
ただし、専用ツールを導入する場合のツール選定は慎重に行い、目的や操作性、コストの面で自社に合ったものを選ぶようにしてください。