日々成長を続ける企業は、現場の問題点に常にフォーカスし、改善を繰り返すことで競争力を維持しています。このような業務改善は、企業が時代の流れや新しいシステムに対応できるようになるための重要なプロセスです。
この記事では、業務改善の基本的な知識と、実際に業務改善を実施して成功を収めた企業の事例をご紹介します。これから業務改善に取り組みたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
業務改善とは
業務改善とは、現在行われている業務の中にある問題点を抽出し、その問題を解決するために業務や作業内容を改善し、効率性を向上させることです。その結果、サービスや商品の価値を高めたり、業務に必要な経費を削減したりする効果が期待できます。ただし、経費削減のみを目的とした仕入れ先の見直しや経費の節約は、業務改善とは異なるため注意が必要です。
業務改善は、実施するだけでなく、改善後の検証も欠かせません。もし改善の結果が期待通りでない場合は、その原因を見直し、新しい改善策を考える必要があります。こうして業務は、より良い状態へと変化していくのです。
業務改善で得られる効果
業務改善を行うことで得られる主な効果を理解しておきましょう。
1. 業務の効率化
業務改善が行われていない組織では、非効率な方法で作業が続けられることがありますが、「昔からのやり方」が正しいと認識されがちです。無駄な工程を省き、作業効率を高めることで、労力・人件費・作業時間の節約が可能になります。
2. 労働環境の改善
業務改善がなされていない業務では、作業時間や作業量にムラがあり、特定の社員に多くの負担がかかることがあります。業務改善は、社員に無理をさせず、働きやすい環境を整えることがヒントになります。労働環境が改善されれば、有能な社員の流出を防ぎ、多くのメリットが得られます。
3. 経費削減
業務改善を行い、人件費の削減や作業時間の短縮を実現することで、サービスや商品の品質を維持しながら経費を節約できます。経費削減が企業価値を損なうリスクを避けつつ、効率的な運営が可能になります。
業務改善の主な方法
業務改善には主に2つのアプローチがあります。それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるため、自社でどの方法を採用するか慎重に検討することが重要です。
1. トップダウン方式
トップダウン方式では、企業の経営層や業務改善の専門家、あるいは外部の組織が主導して業務改善を行います。現場はその指示に従って改善策を実行します。
メリット:
- 強制力: トップ主導で行われるため、企業全体で業務改善を推進しやすい。
- 迅速な実行: 決定が迅速に行われ、改善策が速やかに実施される。
デメリット:
- 現場の不満: 現場の意見が反映されにくく、指示に対して不満が生じることがある。
- 理解不足: 改善策が現場の業務内容に合わない場合、効果が薄い改善に終わる可能性がある。
2. ボトムアップ方式
ボトムアップ方式では、実際に業務を行っている現場の社員が主体となり、業務の改善を提案し、実行します。
メリット:
- 現場の知識活用: 業務を熟知した社員が改善に取り組むため、実効性の高い改善が期待できる。
- 現場の満足度: 改善策が現場の声を反映しているため、現場の満足度が高くなりやすい。
デメリット:
- 統一性の欠如: 組織全体で改善意識を統一することが難しくなることがある。
- 実施の遅れ: 全体的な方針の統一が難しいため、改善の実施が遅れる可能性がある。
業務改善の進め方
業務改善を効果的に進めるためには、計画的かつ組織的なアプローチが必要です。以下の基本的なステップに従って業務改善を進めましょう。
①問題の見える化
まず、業務中に潜んでいる問題を洗い出し、それを可視化します。具体的な手順としては以下の通りです:
- 問題の発見: 業務フローのどこに問題があるのか、ボトルネックやムダを探します。
- 原因の特定: 問題の根本原因を明確にし、それが他の業務に与える影響を考えます。
- 優先順位の設定: 問題が複数ある場合、影響度や緊急度を考慮し、優先順位をつけて対応する問題を決めます。
②改善策を検討
次に、発見された問題に対してどのような改善策が最適かを検討します。
- 目標の設定: 改善の目的と目標を明確にし、全員が共有できるようにします。
- 具体的なアクション: 具体的な改善策を考え、その内容が実現可能かを検討します。
③業務改善方法のタスク化
改善策を具体的なタスクに分解し、進捗を管理しやすくします。
- タスクの整理: 改善策を小さなタスクに分解し、担当者を決めます。
- 評価方法の設定: 各タスクの進捗や成果を評価するための基準を設定し、定期的に進捗をチェックします。
④業務改善の実施
計画したタスクを実行します。この段階では、計画通りに進めることが重要です。
- 実行: 予定通りにタスクを実施し、随時評価を行いながら進めます。
- 修正と適応: 進行中に発生した問題や変更点に対応し、必要に応じて改善策を修正します。
⑤改善の定着
改善が完了しても、それが継続的に実施されなければ、業務改善は成功したとは言えません。
- 定着化: 改善された業務が日常業務に自然と組み込まれるよう、意識づけやトレーニングを行います。
- モニタリング: 改善が維持されているかを定期的にモニタリングし、必要に応じて再調整を行います。
⑥業務改善の評価
最後に、改善策の効果を評価し、今後に活かします。
- 評価: 改善後の業務パフォーマンスを評価し、目標が達成されたか確認します。
- 次の改善: 評価結果に基づき、さらなる改善が必要であれば新たな業務改善に着手します。
企業の業務改善の成功事例として、以下のような具体例があります。それぞれの企業が直面した課題と、その解決に向けた取り組みを通じて、どのように成果を上げたかを見ていきましょう。
企業の業務改善の成功事例
1. 東日本電信電話株式会社(NTT東日本)
課題: 生産性の向上と時間外労働の削減。
改善策:
- 在宅勤務の導入: リモートワークの活用で柔軟な働き方を推進。
- 時間外労働のシフト: 従来の夜型労働を朝型にシフトする取り組みを実施。
- Web会議の導入: 移動時間の削減と効率的なコミュニケーションを図るため、Web会議システムを導入。
成果:
これらの取り組みによって、社員一人ひとりが効率的な働き方を意識するようになり、時間外労働が全体で13%減少。特に、月間45時間以上の時間外労働を行っていた社員の割合が34%も減少するなど、労働環境の改善と生産性向上に成功しました。
2. 株式会社ロイヤルホテル
課題: 多様な顧客の要望に迅速に対応するための業務効率化。
改善策:
- 5S運動の徹底: 整理、整頓、清掃、清潔、しつけ(5S)を導入し、業務環境を整備。
- 整理・整頓: 必要な物の定位置を設け、業務環境を整えた。
- 清掃: 清掃しやすい仕組みを導入し、常に清潔な状態を維持。
- しつけ: ルールや習慣を徹底することで、職場の規律を強化。
成果:
これにより、従業員の作業スピードが17%向上し、業務全体の効率化が実現。顧客対応の迅速化とサービス品質の向上に寄与しました。
3. 株式会社五味八珍
課題: 飲食店チェーンにおける味の品質の統一。
改善策:
- 調理技術のマニュアル化: ベテラン調理師の技術を詳細なマニュアルとして文書化。火加減や調味料を入れるタイミングなど、調理の要点を標準化。
- 全店舗への展開: 作成したマニュアルを全店舗で共有し、調理の品質を統一。
成果:
このマニュアル化により、パートやアルバイトでもベテラン調理師と同じ品質の料理を提供できるようになり、味の品質が全店舗で安定。結果として顧客満足度の向上と店舗運営の効率化が実現しました。
まとめ
業務改善は、企業が成長し続けるために不可欠なプロセスです。成功事例から学ぶことは多く、特に改善のアプローチとして、トップダウンやボトムアップの選択や、改善後の定着化が重要です。
また、業務改善の一環として業務マニュアルの作成も有効です。マニュアルを作成する過程で業務の棚卸を行い、業務の可視化と整理を行うことで、問題点が明確になります。業務マニュアルの整備は、業務改善の基盤となるため、まだマニュアルがない企業は、まずはマニュアル作成に取り組むことをおすすめします。