コールセンターにおける課題点のひとつとして「人員の最適化」が挙げられます。人員過剰は人件費の圧迫を招き、人員不足は顧客満足度の低下につながるため、オペレーターの適正人数把握はどのような企業にとっても必要不可欠です。
本記事では、コールセンターにおける適正人数の計算方法やポイントなどを解説しています。「実際はどれくらいの人数を配置すべき?」とお悩みの方はぜひ参考にしてください。
コールセンターと適正人数
コールセンターの適正人数は「実働人数」と「在籍人数」双方の観点から最適な数値を検討する必要があります。
・在籍人数:在籍しているオペレーターの総数
オペレーターの実働人数のみに着目していては、コールセンター業務をスムーズに進めることができません。実際には体調不良やアクシデントなどにより、急な欠席を余儀なくされるケースがあるからです。
コールセンターの適正人数は「アクシデント時の交代要員」「顧客対応以外の業務」も考慮しつつ算出する必要があります。実働人数だけではなく、在籍人数にも着目して算出することが大前提です。
コールセンターの適正人数を把握した方がよい理由
コールセンターを適正人数で運営しない場合、以下のような事態が発生します。
・人数が多すぎる場合:無駄な人件費が発生する
上記のような問題を生じさせないためには、自社のコールセンターにおける適正人数を把握し、極力過不足ない状態で運営する必要があるのです。
適正人数を把握できていれば、その人数に対して最適な業務量を算出できるため、問い合わせ業務の効率を最適化できます。
コールセンターの適正人数の算出方法
コールセンターにおける適正人数は「アーランC式」という計算式で算出できます。以下ではアーランC式の計算式や必要となる数値を解説します。
「アーランC式」を用いて計算する
アーランC式は、コールセンターにおける「オペレーターの必要人数」を導くことができる計算式です。以下のように複雑な計算式を用いますが、式自体を理解する必要はありません。
(Wikipedia「アーラン」よりアーランC式の画像を引用)
計算が煩雑になるため、インターネット上の試算サイトを利用してみてください。「アーラン式C 自動計算」と検索し、使い勝手の良いものを活用することをおすすめします。
アーランC式に必要となるKPI
アーランC式用いて必要人数を計算するためには、以下3つのKPIが必要です。
・単位時間あたりのコール数
・ASA(平均応答速度)
事前にこれらの数値を調べたうえで、コールセンターの必要人数を算出しましょう。それぞれ詳細を説明します。
AHT(平均処理時間)
AHTとは、オペレーターが問い合わせを処理するのに要する時間の平均を指します。計算式は以下のとおりです。
単位時間あたりのコール数
コールセンターで受信する単位時間当たりのコール数を割り出します。一般的には30分を1単位として、CRM(顧客管理システム)に蓄積されたデータから算出します。
ASA(平均応答速度)
ASAとは、顧客が電話をかけてからオペレーターにつながるまでに要する時間を指します。一般的には「20秒以内に80%のコールに対応する」ことをKPIとして設定するケースが多いです。
ASAは時期や時間帯、繁閑に大きく影響を受けるため、ある程度の長期間(数カ月~1年程度)における平均値を集計する必要があります。実態とかけ離れた数値を算出させないために注意しましょう。
コールセンターの適正人数を算出する際の注意点
アーランC式を用いて算出された適正人数は、あくまで理想値です。現実のコールセンターに当てはめる際は、導き出された数値と実態の間にズレが生じることを前提として捉えましょう。
以下ではコールセンターの適正人数を算出する際、特に気をつけたいポイントを2点解説します。
注意点1 現実の必要人数と差異が生じる可能性がある
アーランC式は、電話がつながるまで顧客が待ち続ける前提で数値が算出されます。しかし現実では、顧客が待ち続けるとは限りません。一定の時間待たされた顧客は、つながる前に電話を切ってしまう(=放棄呼)ことが一般的です。
放棄率が高いことは、入電数に対してオペレーターが足りていないことを意味します。アーラン式Cは放棄率が0%である前提で導き出されるため、放棄率が高いコールセンターほど算出された必要人数よりも多くの人員確保が必要になります。
たとえば、アーラン式Cによって必要人数が50人と導き出されたとします。実際にコールセンターを50人で運用したとしても、放棄呼は改善されません。
放棄率を低減させ、つながりやすいコールセンターを実現するためには、計算結果よりも10~20人程度多い人数を用意する必要があるのです。
注意点2 実働人数と在籍人数を区別する必要がある
アーランC式では「実働人数」を前提として必要人数を算出します。つまり、導き出された必要人数は「すべてのオペレーターが100%稼働している」前提の数値です。
計算した必要人数をそのまま在籍人数に当てはめてしまうと、全オペレーターが毎日出勤することになるため現実的ではありません。トラブル時の交代要員や雑務担当など、さまざまな役割をもつ社員の人数も考慮して、実際の適正人数を割り出す必要があるのです。
アーランC式で必要人数を求める場合は、実働人数を算出したのちに必要となる在籍人数を追加で割り出しましょう。
コールセンターの適正人数を算出する際のポイント
アーランC式を用いてオペレーターの必要人数を算出することで、コールセンターの業務効率化に役立てることができます。
とはいえ、より効率化を促進するためにはもう一工夫必要です。必要人数の算出に加えて以下のポイントをおさえることで、より自社に適した理想値を割り出すことができます。
・稼働率を考える
・呼量予測をする
業務の繁閑も加味した適正人数を求めるために、ぜひ参考にしてください。
ポイント1 稼働率を考える
稼働率とは、オペレーターの就業時間のうち「どれだけ顧客対応に時間を費やしているか」を表す数値です。就業時間のすべてを顧客対応に充てた場合は稼働率100%、一度も顧客対応を行わなければ稼働率0%となります。
オペレーターの就業時間には研修やミーティング、休憩などの時間も含まれているため、稼働率100%は現実的にありえない数値です。
稼働率は一般的に80%~85%が理想値とされているため、このことをふまえて人員調整をしましょう。
稼働率が理想値より高すぎる場合は人員不足の可能性が高く、低すぎる場合は人員過剰であると考えられます。業務効率やコストパフォーマンスを最適化するためには、定期的にコールセンターの稼働率を確認・調整することが大切です。
ポイント2 呼量予測をする
呼量予測とは、季節や時間帯、トレンドによって変動するコールセンターへの入電数を予測することです。入電数を予測することで、柔軟にオペレーターの適正人数を調整できます。
たとえば、季節商品の問い合わせはシーズン中に急増しますが、オフシーズンになると激減します。
一時的に問い合わせが増加する時期は、本来の適正人数に加えて人員補充が必要でしょう。一方で閑散期は、適正人数ほどの人員が必要なくなることが予想されます。
シフトを柔軟に組むことは大切ですが、頻繁に人員を増減させることは現実的ではありません。そのため「繁忙期の放棄率をどこまで抑えるか」を考慮して、年間を通した適正人数を算出することが大切です。
まとめ
コールセンターにおける適正人数を算出するためには、データの分析や活用が欠かせません。KPIとして用いる数値を求めるには相応の手間がかかるため、必要に応じてツールを活用することも効果的です。
「人員の最適化」へ向けた改善策を講じ、応対品質と効率性を両立したコールセンターを実現しましょう。