現代では、多くの企業がマニュアルを導入しています。マニュアルは、単に業務を解説する文章ではなく、企業にとって多くのメリットを期待できる経営手法のひとつです。
マニュアル導入にあたり、ワードやエクセル、パワーポイントなどの書類作成ツールを利用している担当者も少なくありませんが、実はこれらのツールはマニュアル作成において万能とは言えません。
そこで今回は、マニュアルの必要性を再確認するとともに、ワードやエクセル、パワーポイントによるマニュアル作成の問題点についてご説明します。
マニュアルって必要?
まずは、マニュアルの必要性について見ていきましょう。
マニュアル導入のメリット
マニュアルの導入には、企業にとって以下のようなメリットがあります。
1. 業務の標準化
マニュアルがあれば、従業員はそれを基準として業務を実行できます。明確な基準があることで、個人によって業務の仕方や質、作業時間などに差が生じにくくなり、誰もが均質的な業務を行えるようになります。結果として、企業全体のスキルアップが図れます。
2. 業務の効率化
業務の効率化が図れることも、マニュアル導入の大きなメリットです。あらゆる業務とその情報を網羅したマニュアルがあれば、従業員は疑問点があった時に他の従業員に尋ねることなく、疑問を解決できるようになります。これにより、業務は停滞しにくくスムーズになります。また、業務の全体像がマニュアルに記されることで、無駄な業務の洗い出しが容易になり、業務全体の効率化も期待できます。
3. 人材育成
マニュアルは人材育成にも有効です。すべての業務についての情報が公開されていることで、より多くの従業員が各業務を深く理解し、実行できるようになります。また、これにより業務の属人化を防ぐことも可能です。さらに、新人教育や従業員研修にマニュアルを活用することで、教育コストを削減することができます。
企業にとってのマニュアルの必要性
上記のように、マニュアルの導入は業務の質や効率アップ、従業員のスキル向上に貢献します。これらは企業価値を向上させるものであり、企業にとってマニュアルの必要性を裏付けるものです。
また、マニュアルは、従業員が培ってきた知識やノウハウ、コツ、勘などを蓄積し、まとめた「企業の知的財産」です。これらの情報は簡単に集められるものではなく、企業経営において必須となるものです。つまり、マニュアルは形こそないものの、企業にとって重要な財産と言えるでしょう。従業員の流動性が高い現代において、各従業員のノウハウをマニュアルとして残すことは、企業の重要な使命です。
さらに、「コーポレートガバナンス」という観点からも、マニュアルの必要性は強調されています。マニュアルによって企業の方向性やコンプライアンスを徹底することで、企業を正しく運営していくことが可能になります。近年問題になることが多い企業の不祥事を防止するためにも、マニュアルは有効です。
このように、企業価値の向上だけでなく、知的財産の蓄積やコーポレートガバナンスの強化といった観点からも、マニュアル導入の必要性は非常に高いと考えられます。
ワードでマニュアル作成をするメリットと問題点
次に、ワードでマニュアルを作成するメリットと問題点について見ていきましょう。
ワードでマニュアル作成をするメリット
ワードは文書作成ソフトであり、ビジネス文書の作成に適した機能を備えています。そのため、文章中心のマニュアル作成には比較的適しています。ワードでマニュアルを作成する具体的なメリットとして、以下の点が挙げられます。
- 文章中心のマニュアル作成がしやすい
- 目次の自動作成や校閲が可能
- ネット上のテンプレートが豊富
ワードはネット上に多くのテンプレートが存在するため、それらを活用することでスムーズにマニュアルを作成できます。また、目次の自動作成や校閲機能があることも、マニュアル作成における大きなメリットです。さらに、ワードでのマニュアル作成は画面上で容易にイメージを掴めるため、編集や文書の構造確認がしやすいのもポイントです。
ワードでマニュアル作成をする問題点
ワードはマニュアル作成に向いているツールですが、以下の問題点があります。
- ワードの知識がないと使いにくい
ワードの基本操作は簡単ですが、応用レベルになると直感的な操作が難しく、思うように文書作成や編集が行えない場合があります。ワードには特有の操作方法があるため、それを理解していないと質の高いマニュアル作成は難しいでしょう。誰でも簡単に使えるわけではないという点で、ワードでのマニュアル作成には課題があります。
エクセルでマニュアル作成をするメリットと問題点
続いて、エクセルでマニュアルを作成するメリットと問題点についてご紹介します。
エクセルでマニュアル作成をするメリット
エクセルは表計算ソフトであり、関数を用いてデータを瞬時に導き出せるのが特徴です。そのため、利益計算や顧客データの取りまとめなど、データを用いたマニュアル作成に便利です。エクセルでマニュアル作成する上での具体的なメリットとしては、以下の点が挙げられます。
- データ中心のマニュアル作成がしやすい
- 数式と関数を組み合わせて複雑な処理が可能
エクセルはデータ処理に強く、数式と関数を組み合わせることで、自社特有のシステムを作り込むことも可能です。数字やデータを多用するマニュアルであれば、エクセルでの作成を検討すると良いでしょう。
エクセルでマニュアル作成をする問題点
エクセルでマニュアル作成をする際には、以下の問題点があります。
- 画面上でイメージが掴みにくい
- 運用が属人化しやすい
エクセルでは、印刷を前提とした画面表示がされないため、マニュアルを印刷する際にイメージと異なる結果になる可能性があります。また、マクロなど複雑な処理が組み込まれたエクセルは、運用が属人化しやすくなり、マニュアル作成の目的である属人化防止に反する可能性があります。
パワーポイントでマニュアル作成をするメリットと問題点
パワーポイントでマニュアル作成をするメリット
パワーポイントはプレゼンテーションソフトであり、スライド資料の作成に向いているツールです。アニメーションや装飾を加えやすいため、視覚的・感覚的に優れたマニュアルを作成するのに適しています。パワーポイントでマニュアル作成を行う具体的なメリットとして、以下の点が挙げられます。
- 作図中心のマニュアル作成がしやすい
- ページ構築の自由度が高い
パワーポイントの強みはデザインの自由度にあります。マニュアルにスライドを取り入れ、視覚的・感覚的な効果を狙う場合には、パワーポイントが役立ちます。
パワーポイントでマニュアル作成をする問題点
パワーポイントでのマニュアル作成における問題点としては、以下の点が挙げられます。
- 作成の効率が悪い
優れたパワーポイント資料を作るためには、まずどのように見せるかを考えた上で、実際の作成に取り掛からなければなりません。1ページごとの編集作業も、マニュアルの場合はページ数が多く、大変な作業となります。パワーポイントに慣れた人であっても、マニュアル作成にはかなりの時間が必要です。
ワード・エクセル・パワーポイントに共通するマニュアル作成の問題点
ワード、エクセル、パワーポイントは、「追加コストがほとんどかからないこと」「多くの人がツールとして使い慣れていること」が共通した利用メリットです。しかし、これらのツールでマニュアルを作成する際には、共通して以下の9つの問題点が生じます。
1. ファイルの重さに左右される
ファイルが大きくなると、動作が遅くなり、編集や閲覧がスムーズに行えなくなります。
2. 動画への非対応
これらのツールは動画を直接埋め込むのには不向きで、動画を活用したマニュアル作成が難しいです。
3. スマートフォンやタブレットから確認・編集しにくい
スマートフォンやタブレットでの閲覧や編集がしにくく、現場での即時利用が難しいです。
4. 担当者変更に伴う引き継ぎが面倒
担当者が変更になると、マニュアル作成や管理の引き継ぎが複雑で手間がかかります。
5. 順番(1, 2, 3など)の統一が難しい
手順や番号の統一が難しく、整然としたマニュアルが作成しにくいです。
6. フォーマット作成・レイアウト・画像編集に手間がかかる
フォーマットの作成やレイアウトの調整、画像の編集に手間がかかり、作成が煩雑になりがちです。
7. 他言語対応が難しい
多言語対応が難しく、グローバルに対応するマニュアル作成が困難です。
8. 紙マニュアルが時代錯誤、旧版新版の管理が面倒
紙ベースでのマニュアルは時代遅れで、旧版と新版の管理も面倒です。
9. データ閲覧がスムーズに行えない
データの閲覧がスムーズに行えないため、現場での即時利用が難しくなります。
総合的に見ると、これらのツールでのマニュアル作成は柔軟性に欠けると言えるでしょう。
専門ツールの活用がおすすめ
そこでおすすめしたいのが、マニュアル作成に特化したナレッジツールの活用です。専門ツールを使用すれば、マニュアル用のテンプレートが利用でき、一からフォーマットを作成する必要がありません。他のテキストツールを用いるよりも、ストレスフリーなマニュアル作成が可能になり、スムーズに質の高いマニュアルを作成できます。
まとめ
ご紹介したように、ワードやエクセル、パワーポイントを使用すればマニュアル作成は可能ですが、それぞれに問題点があるのも事実です。ツールを組み合わせて問題点を補うことはできますが、作業がより複雑になってしまいます。
マニュアル作成時には、パソコンに既存のツールでの作成に拘らず、専門ツールの導入を検討しましょう。専門ツールを使用することで、マニュアル作成だけでなく、その後の運用も効率的に行えるようになります。
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