ワークフローは、業務を円滑に進めたり改善したりするために欠かせないもので、業務フローとも呼ばれます。ワークフローが適切に機能していれば、申請・承認・決裁といった企業の意思決定がスムーズに行われます。
この記事では、ワークフローを図式化したワークフロー図の作成手順、メリット、ポイントについて解説します。ワークフロー図の作成を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
ワークフロー図とは
ワークフロー図とは、ワークフローを図式化して視覚的に把握できるようにしたものを指します。担当者や関係部署、工程が多い複雑なワークフローも、図にすることで誰にでも分かりやすくなります。
ワークフロー図には定められた書式はありませんが、左から右、または上から下に向かって業務の流れをまとめ、1ページに収めるというルールがあります。
そのため、ワークフロー図の作成自体は比較的簡単ですが、「分かりやすく実践的なワークフロー図」を作るには、ワークフローシステムツールの導入や他社の実例を参考にするなどの工夫が必要です。
ワークフロー図の導入メリット
ワークフロー図を見れば、誰もが一目で業務の進め方を理解できます。そのため、ワークフローは業種を問わず多くの企業に導入されています。ワークフロー図を企業に導入することで得られるメリットには、次のようなものがあります。
メリット1: 自分の業務への理解が深まる
ワークフロー図によって業務全体の流れが可視化されるため、社員は自分の業務内容への理解を深めることができます。また、自分が担当していない業務や他部署の業務もワークフロー図を見るだけで分かるため、自分の業務が業務全体のどの工程に位置しているのか、他部署との相互関係も把握できます。これにより、部署間の理解が進み、お互いの役割が明確になります。
メリット2: 現状の課題や問題点に気づきやすくなる
ワークフロー図を見れば、既存業務の中にある課題や問題点が見えやすくなります。どの工程を改善する必要があるのかが分かれば、効果的な業務改善が進められます。また、ワークフロー図の作成段階で複雑すぎる工程をシンプルに改善することも可能です。一度作成したワークフローは、類似の業務にも応用できます。
ワークフロー図の作成手順
ここでは、具体的なワークフロー図の作成手順を説明します。どの工程も優れたワークフロー図を作成するために欠かせないステップです。一つひとつの工程を着実に進めていきましょう。
【手順①】情報収集
ワークフロー図を作成する目的を決め、該当の業務に必要な情報を集めます。
具体的には、以下の情報を収集します。
- 業務プロセスに関わるすべての作業ステップ
- 各作業ステップの担当者
- 各作業ステップに必要な時間
- 各作業ステップで使用するツールやシステム
- 各作業ステップで発生する可能性のある問題点
- 各作業ステップの改善点
ワークフロー図完成後に業務改善を行うことも可能ですが、業務の改善点を修正した上で作成を進めれば、より早くワークフロー図の導入メリットが得られます。業務に関わる担当部署・担当者に、実際の業務工程を確認し、正確なワークフローを作成してください。
【手順②】情報整理
収集した情報から必要な情報を絞り込み、工程ごとに整理します。
関係部署や担当者が多いワークフローでは、列や枠を使って見やすくする工夫も必要です。時系列で工程ごとに担当者と処理を並べ、ワークフロー図を形にしてください。どのような書き方が最も伝わりやすいかを事例などを参考にしながら十分に検討し、試行錯誤を繰り返して分かりやすいワークフロー図を作りましょう。
例えば、複雑なワークフローも画像のようなデザインにすることで把握しやすくなります。このワークフロー図では、スムーズに工程が進まなかった場合の差し戻し先と再申請のステップも明示されています。
【手順③】改善点の洗い出し
最後にワークフロー図全体を見直し、工程内容・順序・矢印の向きに間違いがないか確認します。
また、完成したワークフロー図は関係者に共有する前に、改善の余地がないかを再度検討してください。手動で行っている業務の自動化、重複している作業の一本化、遅延の原因となる工程の削減などが代表的な業務改善の例です。既存のワークフローが最適とは限らないため、常に最新の環境に適したワークフローを意識して作成しましょう。
ワークフロー図を作成する際のポイント
ここでは、ワークフロー図を作成する際に知っておくべきポイントについて説明します。これらのポイントを把握することで、正確で分かりやすいワークフロー図を作成できます。
ポイント1: ワークフロー図を作成する目的を明確にする
何のためにワークフロー図を作成するのかを明確にしないと、実用的なワークフロー図を作成することはできません
。一般的なマニュアルとして活用するのか、部門内で業務フローを確認するために利用するのかなど、作成したワークフローの使い道を考え、ワークフロー作成の目的を明確にしてください。目的が明確であれば、情報収集や情報整理もスムーズに進められます。
ポイント2: 情報が可視化された見やすいワークフロー図を作る
ワークフロー図が見にくい、内容が分かりにくいと、ワークフロー図自体が使われなくなってしまいます。ワークフロー図は、該当の業務の知識がない社員でも業務全体の流れを理解できるようにする必要があります。
そのためには、業務の開始、時系列の流れ、条件によってフローが分岐する点を明確にすることが重要です。また、図形・記号・枠を活用して、複雑なワークフローでもごちゃごちゃとした印象にならないように注意してください。シンプルで整然としたデザインを意識し、重要な要素のみ効果的に色を使用し、読みやすいように余白を設けるなどの工夫が効果的です。
ポイント3: ワークフロー図作成ツールを活用する
複雑なワークフローになるほど、エクセルなどのソフトでは見やすいワークフロー図を作ることが難しくなります。そのため、専用のワークフロー図作成ツールを導入することも一つの手です。
ワークフロー図作成ツールは特別な知識がなくても簡単に優れたワークフロー図が作成でき、更新も容易です。作成したワークフロー図はデータとしてすぐに確認・共有できるため、テレワーク中の社員や出張中の社員でも参考にして業務を進められます。
また、申請・承認・決裁を電子化可能なシステムを導入すれば、いつでもどこでも申請や承認が行え、決裁に必要な時間の短縮ができ、承認が滞る問題も防げます。
ワークフロー図の最適化について
継続的な改善
一度作成したワークフロー図は終わりではありません。継続的に改善しましょう。業務プロセスは常に変化するため、ワークフロー図もそれに合わせて変更する必要があります。
レビューとフィードバック
定期的にレビューを行い、チームからのフィードバックを反映することで、より良い図になります。レビューは、図の分かりやすさ、正確さ、効率性などを確認する機会です。
新しい技術の導入
新しいツールや技術を積極的に導入し、最新の情報を取り入れることも重要です。例えば、AIを活用したワークフロー図作成ツールや、自動化ツールなどを導入することで、より効率的なワークフローを実現できます。
まとめ
ワークフロー図があれば、業務知識の少ない社員でも、一目で業務全体を把握することが可能です。業務全体を理解することで、他部署や他の担当者との連携もスムーズに行えるでしょう。
また、ワークフロー図を作成することは業務全体を整理することでもあり、その過程で現在の業務の改善点にも気づきやすくなります。日常的に行っている業務の改善点は見えにくいものですが、業務の効率化には、ワークフロー図の作成や専用ツールの導入など、これまで試みてこなかった方法にヒントがあるかもしれません。新しい取り組みを積極的に導入し、業務の改善に努めましょう。