急速に進むデジタル化を背景に、ヘルプデスクが担う業務量は増加の一途をたどっています。多くの企業にとって、ヘルプデスクの業務効率化は目下の課題だといえるでしょう。
本記事ではヘルプデスク業務における課題を整理し、改善のための具体的な方法を解説しています。「問い合わせ対応を効率化したい」とお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
ヘルプデスクの業務内容
ヘルプデスクは、社内ヘルプデスク・社外ヘルプデスクの2種類があります。どちらのヘルプデスクも売上拡大や業務効率化に直結している、企業にとって必要不可欠な部門です。
以下ではそれぞれの業務内容を詳しく解説します。
社内ヘルプデスク
社内ヘルプデスクは、社員からの業務にまつわる問い合わせに対応する部署です。パソコンやネットワーク、社内システムなどの質問回答、トラブルシューティングなどの業務を担っています。企業の情報システム部門に設置されているケースが多く、以下のような業務にも対応します。
・OA機器の撤去・設置
・サーバーの設置
・アカウント管理
・OSのインストール
・システムマニュアルの作成
仕事内容は多岐にわたり、いずれの対応も専門知識が必要になります。社内の業務を効率化させ、社員の生産性を向上させることが社内ヘルプデスクの主な目的です。
社外ヘルプデスク
社外ヘルプデスクは、顧客をはじめとする社外ユーザーからの問い合わせに対応する部署です。コールセンター業務と兼任しているケースが多く、自社製品に関する問い合わせやトラブル対応、クレーム処理などを主に担っています。
電話やメール、チャットなど多様なチャネルへ対応し、問い合わせ管理や関連部署への引継ぎも行います。問い合わせから課題解決までの一連の流れをサポートし、顧客満足度の向上・売上創出を目指すことが社内ヘルプデスクの主な目的です。
ヘルプデスク業務の課題
ヘルプデスク業務における課題は企業にとって深刻なものばかりです。比較的発生頻度が高い課題には以下のようなものが挙げられます。
・問い合わせの件数が多い
・慢性的な人手不足
・応対スピードの鈍化
・膨大な知識量が必要
課題を整理し改善につなげるために、以下で詳しく解説します。
課題1 問い合わせの件数が多い
問い合わせ件数が多いことは、社内外問わずほとんどの企業が抱えているヘルプデスクの問題点です。件数の多さが業務を圧迫し、担当者一人ひとりの負荷が高まることで効率や応対品質を低下させています。
問い合わせ件数の増加は、デジタル化にともなうサービス内容の高度化・複雑化や、同じような内容が複数件寄せられることが主な原因となって起こります。増加する問い合わせに対し、応対品質を保ちつつ限られた人員で対応するためには業務の効率化が必要不可欠です。
課題2 慢性的な人手不足
多くの企業において、ヘルプデスクの人材不足は深刻な状況です。社内外いずれの問い合わせにおいても、人材が不足する原因には以下のようなものが挙げられます。
・専門知識を有する人材の育成難
・過剰な業務負担による離職率の高さ
・コストセンターゆえのリソース不足
慢性的な人材不足は、過大な業務負荷による離職や品質低下を招きます。「人」に頼り切った問い合わせ対応から脱却し、システマチックな業務遂行が求められているのです。
課題3 応対スピードの鈍化
迅速な課題解決が顧客・従業員満足度に直結するため、問い合わせ対応はスピードが命です。しかし問い合わせ数の増加や人材不足が続くことで、迅速なサービス提供が困難になります。
問い合わせ対応において顧客や社員を待たせることで、以下のような事態が起こります。
・商品・サービス購買の機会損失につながる
・課題解決ができないことで業務が停滞する
このような事態を防ぎ顧客・社内双方にとって望ましい環境を構築するためには、ヘルプデスクの業務改善が欠かせません。
課題4 膨大な知識量が必要
商品・サービスの多様化にともなう問い合わせ内容の高度化・複雑化が進んでいます。ヘルプデスク業務を担ううえで、担当者に求められる知識量は増加するばかりです。しかし日々の業務に忙殺されている担当者に、知識を習得するための継続的な学習を行う余裕はないでしょう。
そこで役立つのが、FAQやマニュアルなどのナレッジ整備です。問い合わせ担当者に必要となる知識(ナレッジ)を効率的に蓄積・検索できる環境を構築することで、知識の習得が効率良く進みます。
ツールを上手に活用することは、ヘルプデスクの業務改善を図る有効な施策です。
ヘルプデスクの業務改善方法
ヘルプデスクの業務改善を図る具体的な方法を以下で解説します。
方法1 問い合わせの削減
ヘルプデスクの業務改善において最優先に取り組むべき事項は、問い合わせを削減することです。問い合わせを削減するためには、ユーザーの自己解決を促す取り組みが必要になります。
ここでは自己解決手段として役立つ施策を2点紹介します。
1-1 FAQの作成
FAQがあれば、顧客や社員は簡単な質問を自己解決できます。ヘルプデスクに寄せられる問い合わせ内容を精査し、頻度の高いものをFAQに落とし込みましょう。
ユーザビリティの高いFAQを作成するポイントは以下のとおりです。
・専門用語を用いず誰でも理解できる表現で作成する
・欲しい情報にアクセスしやすいよう検索性を重視する
・精度を向上させるために情報を定期的にアップデートする
使い勝手を重視したFAQを作成することで、問い合わせの大幅な削減が見込めます。
1-2 チャットボットの導入
チャットボットはユーザーの問い合わせに自動回答を提供できるため、人手による問い合わせ対応数の減少に寄与します。ヘルプデスクの業務時間外にも、課題の即時解決が可能です。
チャットボットの大きなメリットは、求めている情報にダイレクトにアクセスできる点です。Webサイト上をあちこちと閲覧する手間が減るため、問い合わせへのモチベーションが低いユーザーにも確実に情報を提供できます。
また、チャットボットは使うほどに精度が向上します。問い合わせ削減効果を最大化するためには、アクセスしやすい導線を工夫することが大切です。
方法2 業務の効率化
ヘルプデスクの業務を改善するためには、業務そのものを効率化する施策も必要不可欠です。業務効率化に直結する具体的な方法は以下のようなものが挙げられます。
・テンプレートを活用する
・精度の高いマニュアルを作成する
・問い合わせを管理する
それぞれ詳しく解説します。
2-1 テンプレートを活用する
問い合わせ頻度の高い内容への回答をテンプレート化することで、業務効率が改善できます。電話対応用のトークスクリプト、メールやチャット用の返答文をそれぞれ作成しておくと、回答を提供するスピードが向上します。
テンプレートを用意しておくべき大まかなシチュエーションは以下のとおりです。
・クレームや要望に対する回答
・謝罪の意を伝える場合の回答
上記のシチュエーション別に回答を細分化して用意しておくことで、応対品質の均一化にもつながります。
2-2 精度の高いマニュアルを作成する
業務を効率化させるためには、業務改善に役立つ知識(ナレッジ)を蓄積してマニュアルに落とし込む作業が必要です。寄せられた問い合わせ内容とそれに対する回答を文字に起こし、部署全体で共有できるようマニュアル化します。
マニュアルを参照することで新人オペレーターも自力で応対ができるため、先輩社員へ質問をしたり指示を仰いだりする手間を削減できます。問い合わせ内容の傾向やベテランスタッフの応対例も含めて共有することで、社内における業務研修にも役立つでしょう。
2-3 問い合わせを管理する
問い合わせを適切に管理することで、対応の漏れや重複を防ぎ、業務の引継ぎをスムーズに行うことができます。問い合わせ管理を効率よく行うために、問い合わせ管理システムを導入している企業も少なくありません。
問い合わせ管理システムとは、電話やメールなど多様なチャネルから寄せられる問い合わせを一元管理し、個々の案件の対応状況を可視化するシステムのことです。業務の属人化を防ぎ迅速な対応を実現できるため、業務効率化に直結するツールとして重宝されています。
方法3 オペレーターの育成サポート
ヘルプデスクの業務改善には、オペレーターのスキルアップが欠かせません。以下ではオペレーターの育成をサポートする方法を2つ紹介します。
3-1 業務研修を定期的に開催する
オペレーターに求められるスキルは自社が提供する商品・サービスの知識、ビジネスマナーなど多岐にわたります。研修は内容によって以下のように分けて開催すると効果的です。
・業務に必要な処理を迅速に行うためのシステム研修
・正しい知識を養うための商品・サービス研修
FAQやマニュアル作成に利用できるナレッジは、研修でも役立つため積極的に活用しましょう。個々のオペレーターのスキルが向上することで、業務効率が改善し顧客満足度も向上します。
3-2 フィードバック面談を実施する
研修だけではなく、定期的に個人面談を実施することでオペレーターのモチベーション向上が見込めます。面談ではデータをもとにした現状分析と目標設定、困りごとのヒアリングなどを行うのが効果的です。
なかでも特に注力すべきはオペレーターのメンタルケアです。業務量の多さや理不尽なクレーム対応など、オペレーターは常にストレスフルな業務を抱えています。
メンタルケアを怠ると応対品質の低下や離職を招いてしまうため、面談ではオペレーターの成長を促すフィードバックとストレスケアを同時に行いましょう。
方法4 アウトソーシングの活用
ヘルプデスクの業務改善には、アウトソーシングを活用する方法もあります。ヘルプデスクの業務量が多すぎたり、本来の業務と兼任している担当者がいたりする場合はアウトソーシングするメリットが特に大きいといえます。
また、外部委託のヘルプデスクは業務の繁閑に左右されないという特徴もあります。どのようなときでも一定した応対品質を保てるため、顧客・従業員満足度が大幅に向上するでしょう。問い合わせが特定の時期に集中する場合も、アウトソーシングは柔軟な体制変更が可能なため高い費用対効果が見込めます。
業務を部分的にアウトソーシングすることもできるため、企業による活用事例が増加しています。
まとめ
ヘルプデスクの業務を改善するためには、ナレッジの活用や問い合わせ管理、オペレーターの育成などにひとつずつ取り組んでいく必要があります。しかしどの施策も効果を実感するまでには相応の労力が必要となるため「そのような余裕はない」とお悩みの方も少なくありません。
時間的・人的コストを最小限に業務を効率化するためには、ツールやアウトソーシングの活用が有効です。自社の課題に適した施策を検討し、各サービスを上手に活用することでヘルプデスクのパフォーマンス向上を目指しましょう。