採用ピッチ資料とは、人材採用のために作成される会社説明資料のことです。事業内容や企業が求める人物像が記される採用ピッチ資料は、企業のニーズに合った求職者を集めるのに効果的です。また、企業が抱える現状の課題が記されることも多いため、求職者にとっても面接に応募する企業を見極めるための情報源となります。
現在では多くの会社が採用ピッチ資料を作成し、自社ホームページ等で公開しています。では、求める人材に響くような採用ピッチ資料の作成は、どのように進めればいいのでしょうか。
今回は、採用ピッチ資料の作成方法と実例について見ていきましょう。
採用ピッチ資料の作成方法
採用ピッチ資料作成時に、すぐに資料作成に取り掛かるのはおすすめできません。良い資料をつくるには、事前準備が大切です。
採用ピッチ資料作成では、以下のような手順で、まず資料に記載する内容を詰め、そこから資料作成を始めます。
方法1 目的を明確化
採用ピッチ資料の作成にあたってはじめに行うことは、目的の明確化です。「採用ピッチ資料を作成することで何を目指すのか」「採用ピッチ資料に何を期待するのか」という目的を明確にし、作成メンバーで共有する必要があります。
目的が明確に定まっていない場合や手順を進める中で目的がないがしろになっている場合には、内容の方向性がぶれてしまう恐れがあります。目的は誰でも同じ理解ができるわかりやすく明確に設定し、常に目的を踏まえて作成手順を進めていくことが大切です。
方法2 メンバー選定
目的が定まったら、作成メンバーの選定に入ります。
メンバーは、役職や職種、年齢、性別などが偏らないよう、バランスよく選定するようにしてください。人数は6〜10人程度が一般的です。
また、エンゲージメントの高さは重要視した方がいいでしょう。エンゲージメントの高いメンバーを集めることで、採用ピッチ資料作成における積極性や課題が明らかになった場合の改善活動が期待できます。
方法3 企業の魅力や課題を抽出
メンバーが決まれば、いよいよ採用ピッチ資料の内容の詰めに入ります。
まずは、メンバーから意見を聞き、企業の魅力と課題を抽出していきます。ワークショップを開いてメンバー内でブレストを行い、抽出したアイディアをまとめましょう。具体的な手順は以下のようになります。
②①で挙がった魅力や課題をグルーピング(課題は短期的課題と中長期的課題に分ける)
ここで把握した課題については、解決・改善へと動き、そのまま放置しないようにしてください。
方法4 コンセプト設定
採用ピッチ資料作成の目的や前手順でまとめた会社の魅力をもとに、作成する採用ピッチ資料のコンセプトを設定します。
コンセプトは明確に、人の気持ちを一言で掴むようなキャッチコピーで表すといいでしょう。このキャッチコピーは、実際の資料にも使用していくため、読む人の目線を意識することが重要です。
方法5 資料の制作
コンセプトや抽出した魅力や課題をもとに、採用ピッチ資料の作成作業に入っていきます。
まずはページ数と構成を固めてから、具体的な内容を詰め、作成していきます。
優れた採用ピッチ資料にするには、読む人の立場に立って内容を作ることが大切です。コンセプトや伝えたいメッセージが読み手に伝わるよう、一貫性のある内容で作成を行っていきます。
方法6 運用、アップデート
採用ピッチ資料ができあがれば、運用を開始します。自社ホームページで公開したり面接前の求職者に送付したりと、効果的な方法で運用を行います。
ただし、採用ピッチ資料は一回作成すれば終わりではありません。状況の変化などにともない、定期的なアップデートが必要です。
改善を重ねることで、資料はよりよいものへと変化していきます。
採用ピッチ資料作成のポイント
採用ピッチ資料は、ポイントを意識して作成することで、企業のニーズが伝わりやすい内容、求職者の心に残る内容になります。
ここでは、採用ピッチ資料作成にあたって意識したい4つのポイントをご紹介します。
ポイント1 メンバー構成に偏りが生まれないようにする
メンバー選定は、採用ピッチ資料の作成における最初の課題です。どんなメンバーを選定するかによって、採用ピッチ資料の出来は変わります。
メンバー選定で特に気をつけたいのは、メンバー構成に偏りを持たせないことです。役職や業種に偏りがあっては、その役職や業種からの視点が主になってしまいます。メンバーの偏りがあると、意見にも偏りが生まれ、客観的な内容の資料は作れません。
ポイント2 コンセプトや採用者像は明確に
コンセプトや企業として採用したい人物像、および採用ピッチ資料作成の目的は、明確にしておく必要があります。明確な基準があることで、採用ピッチ資料の方向性は決めやすく、また資料内容の一貫性も保ちやすくなります。
また、「企業はどんな人材を求めているか」が読み手にも伝わるよう、資料の内容にコンセプトや採用者像をうまく盛り込むことも重要です。
ポイント3 読み手の印象に残る内容を意識する
求職者は、複数の企業を比較検討していると予想されます。複数の採用ピッチ資料を目にしている可能性も高いでしょう。
人材不足が深刻な中、企業が求める人材を得るためには、まず採用ピッチ資料を求職者の印象に残さなくてはなりません。
心を掴むキャッチフレーズや自社らしさを押し出した構成など、読み手の読後感を意識して作成を行いましょう。
ポイント4 ビジュアルを活用する
ビジュアルを活用するのも、優れた採用ピッチ資料を作るためのポイントです。
文字ばかりの資料は読みにくく、読み手にしっかりと内容が伝わりません。写真やイラスト、グラフなどを用いれば、資料は読みやすく、興味も持ってもらいやすくなります。
ビジュアルでの表現を意識すれば、コンセプトやリアルな仕事内容も伝えやすくなるでしょう。
採用ピッチ資料の事例
採用ピッチ資料は、多くの会社が作成し公開しています。その具体事例を2つご紹介します。
株式会社SmartHR
ソフトウェア開発を行う株式会社SmartHRの採用ピッチ資料はビジュアル表現に力を入れているのが特徴的です。全体的にカジュアルな印象で、企業が伝えたいこと、求職者が知りたいことが明確にわかる内容になっています。求職者が知りたい給与制度や手当が詳細に記載されている点も高ポイントでしょう。
課題を応募意欲にうまく結びつけており、求職者のやる気を促すような点も好感が持てます。実際に、この資料の公開によって採用効率は上がり、応募者数も数倍になったと言われています。
https://smarthr.co.jp/recruit
https://hello-world.smarthr.co.jp
株式会社ミラティブ
ライブ配信サービスの開発運営を行う株式会社ミラティブの採用ピッチ資料のテーマは、採用チームからの「採用候補者さまへの手紙」です。最初のページに記載されたこのテーマにより、親しみやすさを持って読み進められます。
デザインにはキャラクターやイラストが盛り込まれ、ポップでカラフル。会社の事業内容や社風が反映され、「わかりあうこと」をコンセプトに、一貫性のある内容で作成されています。
https://www.mirrativ.co.jp/recruit/
まとめ
採用ピッチ資料は、企業にとっても求職者にとってもメリットのある資料です。資料を通して企業と求職者お互いのニーズを事前に擦り合わせできることにより、採用活動は効率的になります。
「求める人材が集まらない」「採用活動に手間がかかる」などといった課題を抱える企業は、採用ピッチ資料の導入で改善できるかもしれません。
また、採用ピッチ資料をはじめとした資料管理には、セールスイネーブルメントツールが役立ちます。資料管理機能のあるセールスイネーブルメントツールは、莫大な数があり管理がしにくい資料をコンパクトで簡潔に管理します。いつでもどこでも必要な資料をすぐ取り出せれば、資料探しの手間も省けます。
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