人材の流動性が高まっている昨今、安定した経営を行うためには、業務で培った経験値や優れた技能を「ナレッジ」として蓄積させ、人材育成に活用することが必要になります。
ナレッジは属人化しているケースが少なくないため、社内で効率的に共有するためには「ナレッジ共有ツール」の活用が欠かせません。
本記事では、ナレッジ共有ツールの選定ポイントやおすすめツールを紹介します。
ナレッジ共有ツールとは
ナレッジ共有ツールとは、業務効率化や人材育成に活用できるナレッジ(有益な情報・知識)を社内のメンバー全体で共有できるツールのことです。
紙やテキストファイルベースでの情報管理は、紛失や流出のリスクを増加させるだけではなく、求めている情報を誰が持っているのか把握しづらい状況を招きます。
ナレッジ共有ツールの活用は、このようなナレッジの属人化を防ぎつつ、包括的に情報を蓄積・管理できる手段として近年注目を集めています。
ナレッジ共有ツールの導入メリット
ナレッジ共有ツールを導入することで、以下の3つのメリットが得られます。
メリット1 人材育成に活用できる
ナレッジには業務のポイントや事例など、実践的な生きた情報が詰まっています。正しく整理したうえで適切に活用できれば、新人研修のマニュアルとしても機能するのです。
ツールを活用することで、点在しているナレッジを一元管理できるため、新人は目的の情報に素早くアクセスできるようになります。わからないことが出てきたときにいつでも情報を参照できるため、業務習得スピードの向上が見込めるでしょう。上司も付きっきりで指導する必要がなくなるため、研修にかかる時間的コストを削減できます。
メリット2 ナレッジの管理が容易になる
Wordや紙ベースでナレッジ管理をすると、情報の所有者が不明瞭になりがちです。異動や人員入れ替えのたびに管理が煩雑になり、やがてナレッジの紛失を招く恐れがあります。
共有ツールを活用すると、各々に管理していたナレッジが一か所に集中します。「誰もが」「どこからでも」アクセスできるため、ナレッジの属人化を防ぐことにつながるのです。ツールは有益な情報の流出を防ぎ、ナレッジの確実な蓄積に貢献します。
メリット3 業務効率化が期待できる
求めている情報に瞬時にアクセス可能になることで、業務一つひとつの時間的ロスを削減できます。蓄積するナレッジが多い組織は「検索機能」が備わっているツールを選べば、情報の引き出しが容易になるでしょう。
「人へ質問しなければ解決できない」ことが大幅に減少するため、多拠点で共同作業をする際にスムーズに業務進行できるメリットもあります。
ナレッジ共有ツールの選定ポイント
ここではナレッジ共有ツールを選ぶ際に重点的にチェックしておくべきポイントをまとめました。以下の5つを満たしているツールを選び、社内への導入をスムーズに進めましょう。
ポイント1 テンプレート機能があること
テンプレート機能は、ナレッジの作成や修正をスムーズに進めるために必要不可欠な機能です。
テンプレートがない状態で1からナレッジを作成することは、大きな業務負担になります。情報の修正やアップデートが負担になってしまうと、最新のナレッジを保つことが難しくなり、せっかくのツールが形骸化してしまいます。
ナレッジ共有ツールの選択において、テンプレート機能があることは、優先しておさえておきたい機能のひとつです。
ポイント2 セキュリティ基準を満たしていること
ナレッジ共有ツールは、情報セキュリティに関する国際規格ISO27001の取得有無を基準として選びましょう。
ナレッジには企業の機密情報が含まれているため、社外に流出した場合は多大な損害を被る可能性があるからです。
管理ツールには細心の注意を払い、上記のセキュリティ基準を満たしたものの中から選択することをおすすめします。
ポイント3 マルチデバイスに対応していること
マルチデバイス対応のツールであれば、作業効率の大幅アップが見込めます。移動中や取引先など、外出中にも使用できることは大きなアドバンテージになるでしょう。
スマートフォンやタブレットなどでも使いやすいツールを選ぶことで、社内への浸透度合いも高まります。
ポイント4 求めている情報にたどり着きやすいこと
社内には多種多様なナレッジが溢れているため、以下の機能は必須です。
・カテゴリ別に情報を整理できる機能
・求めている情報に瞬時にアクセスできる検索機能
利便性が高まると、ツールを活用する社員が増えます。活用頻度が高まると、新しいナレッジ作成や情報のアップデートも活発になります。結果として、より高クオリティのナレッジが集まる好循環が生まれるため、ツールの利便性はこだわるべきポイントです。
ポイント5 メンバー全員が活用できること
操作が煩雑なツールは、新人教育の際にも手間が増えるため使用すべきではありません。操作方法のレクチャーを最低限に抑えられるツールを選択しましょう。
導入する際は「チームの中で最もIT知識のない社員が活用できるか」を基準にすると、万人に使いやすいツールを選ぶことができます。
おすすめのナレッジ共有ツール
ここではおすすめのナレッジ共有ツールを、機能別に以下の3タイプに分けて紹介します。
・ビジネスチャットタイプ
・ファイル共有タイプ
・機能豊富タイプ
導入目的にあわせて、最適なツールを検討してみてください。
ビジネスチャットタイプ
まずは、ビジネスチャット機能がメインとなるツールを2種類紹介します。社内におけるコミュニケーション手段をお探しの方に最適です。
Microsoft Teams
Microsoft Teamsは、ビジネスチャットに加え、オンライン会議やチーム作業を行ううえで最適な機能を有しているツールです。
・Microsoft officeとの連携がスムーズなため、比較的どの企業でも使いやすい
・海外部署とのやり取りに有効活用できる翻訳機能つき
・ナレッジの蓄積に特化したツールではない
・無料プランあり
・有料プラン¥500/1ユーザー/月~
https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-teams/group-chat-software
Chatwork
Chatworkはチャット機能に加え、タスク管理やファイル管理、オンライン会議機能などを有しています。
・シンプルな機能で誰でも使いやすい
・タスク管理機能があるため、やるべきことをチーム内で共有・可視化できる
・共有したナレッジは次第に埋もれる可能性あり
・無料プランあり
・有料プラン¥500/1ユーザー/月~(2023年7月3日以降 ¥700/1ユーザー/月~)
ファイル共有タイプ
続いて、ファイル共有機能がメインとなるツールを2種類紹介します。マニュアルや文書などの管理をしたい方におすすめします。
Google Workspace
Google Workspaceは、業務に活用できる多様なツールが集約されたクラウドサービスです。
・Web会議はもちろん、スケジュールの一元管理やファイルの共有・同時編集が可能
・管理権限が細かく設定できる
・自社のニーズにあわせて選べる多様な料金プランあり
・無料プランなし(14日間の無料試用期間あり)
・有料プラン¥680/1ユーザー/月~
Microsoft365
Microsoft365は、Officeやクラウドツールを利用できるサブスクリプション型サービスです。
・常に最新のバージョンが使用できる
・ライセンス管理が容易で、メンバーの入れ替わりが激しい組織にも向いている
・クラウド型のため、データ共有や共同編集が可能
・前述のMicrosoft Teamsが含まれるプランもある
・有料プラン¥750/1ユーザー/月~
https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365
機能豊富タイプ
最後に、多様な機能が集結したナレッジ共有ツールを3種類紹介します。導入には多少の労力を伴いますが、それに見合う1ランク上のナレッジ共有が実現できます。
NotePM
NotePMは、導入実績が豊富な社内Wikiツールです。
・誰でも簡単にマニュアル作成できる高機能エディタとテンプレート機能付き
・検索機能が強力で、テキストファイルの中身も全文検索できる
・チャット連携もできるため、ビジネスチャットと併用して活用するのもおすすめ
・見るだけのユーザーは無料
・有料プラン¥4,800/月~
Notion
Notionは、社内Wiki機能をはじめとする多様な機能が統合されたナレッジ共有ツールです。
・文書の作成やタスク管理も可能
・情報量の多いコンテンツをわかりやすくまとめることに向いている
・プロジェクト管理に役立つ機能も充実
・無料プランあり
・有料プラン$8/1ユーザー/月
https://www.notion.so/ja-jp/product
kintone
kintoneは、業務に利用するさまざまなシステムを作成できる多機能ツールです。
・数値を即座にグラフ化できるため、メンバーの業務量を把握しやすい
・カスタマイズ性に優れ、ITに詳しくない人でも使いやすい
・データを参照しつつチャットでコミュニケーションがとれるため、他のツールがいらない
・無料プランなし(30日間の無料試用期間あり)
・有料プラン¥780/1ユーザー/月~
まとめ
ナレッジの作成や閲覧の敷居を低くし、ナレッジ共有を成功に導くことに役立つのが、本記事で紹介したナレッジ共有ツールです。
働き方の多様化が進む昨今、いつでもどこからでもアクセスできるナレッジ共有ツールは、組織の基盤固めにポジティブな影響を与えます。
まずは自社において「ナレッジ共有の目的」を明確にしておきましょう。その目的に合致するツールのなかから、メンバーの特性にあわせて活用しやすいものを検討してみてください。