営業担当にとって、顧客との間にラポールを形成することは非常に重要です。これが形成されていない状態で商品やサービスを売り込んでも相手の心は動かしにくく、営業活動はスムーズに進みません。
営業を成功させるには、まずラポールの形成を意識する必要があります。
では、そのためには営業担当はどのような行動を取れば良いのでしょうか。
今回は、顧客とのラポール形成にあたって営業担当が行うべき方法やそのコツをご紹介します。
ラポールとは
ラポールとは、次のような事を指す言葉です。
人と人がお互いに信頼し合っていて、安心してコミュニケーションを取ることができる状態のこと。「心が通い合っていて、どんなことでも打ち明けられ、またそれが十分に理解される」と感じている関係性のこと。
ラポールとは、簡単に言うなら、人と人との間の信頼関係のことです。
とはいえ、一般的な信頼関係にはさまざまな形があります。
中には信頼関係とともに主従関係が確立されていたり、一方に権威が認められていたりするようなケースもあるでしょう。このような場合は、信頼関係があっても、ラポールが形成されているとは言えません。
ラポールについて重要なのは、信頼関係とともに「安心して自由にコミュニケーションが取れること」「和やかに心が通い合っていること」です。つまり、「相手に否定されるかもしれない」「受け入れてもらえないかもしれない」という不安を持つことなく、安心して本音で話せるような穏やかな信頼関係こそが、ラポールなのだと言えるでしょう。
この言葉は、もともとカウンセラーとクライアントの関係を指す心理学の専門用語として使われてきました。
しかし、ラポールは人と人とがコミュニケーションを取るための土台となることから、現在ではビジネスや家庭、恋愛などといったあらゆる対人活動に欠かせないものとして、その形成が重要視されています。
営業担当がラポールを形成するメリット
営業担当が営業活動を成功させるためには、顧客との間にラポールを形成する必要があります。
これにより、営業担当には次のようなメリットが生まれます。
・顧客から本音を聞き出すことができる
・営業担当の説得力・影響力が高まる
・提案を受け入れてもらいやすくなる
営業担当が初めて顧客と接触した時には、ラポールは形成できていません。顧客側は営業担当に対し警戒感を持ち、なかなか本音を話すことはないでしょう。
しかし、訪問や連絡を繰り返すうちにラポールが形成されてくれば、顧客は営業担当への警戒を解き、親和感を持つようになります。親和感を持つ相手であれば、本音の相談はしやすくなり、それに対する提案も受け入れやすくなります。
つまり、営業が成功しやすくなるのです。
ラポールを形成する際のコツ
では、営業担当が顧客との間にラポールを形成するためには、どのようなポイントに気をつければ良いのでしょうか。
ここからは、その4つのコツをご紹介します。
コツ1 身だしなみを整える・マナーを守る
身だしなみやマナーは、相手の第一印象を左右します。身だしなみやマナーが悪い営業担当が営業に来ても、相手は信頼関係を築こうとは思いません。第一印象で生まれた不快感を取り除くのは、困難です。
ラポール形成を目指すにあたって、身だしなみを整えたりマナーを守ったりするのは基本中の基本です。営業担当は、相手の立場に立って、不快感を与えないような身だしなみや振る舞いを心掛ける必要があります。
コツ2 相手の話を聞く・丁寧に話す
ラポール形成にあたっては、相互のコミュニケーションが重要です。営業担当が一方的に話し、顧客が聞いているだけの状態では、これは形成されません。
営業担当が顧客の話をしっかりと聞き理解する姿勢を示すことで、顧客には相手に対する信頼感が生まれます。
また、営業担当が話をする時には、落ち着いて、丁寧かつ聞き取りやすい口調で話すことが大切です。早口の聞き取りにくい口調で話されると、相手にとってはストレスになり、信頼感を損ねる恐れがあるので気をつけましょう。
コツ3 相手との共通点を見つける
人間は、自分と共通点のある人に親近感を抱きます。これは心理学の分野で「類似性の法則」として定義されているものです。
「類似性の法則」は、営業担当と顧客とのラポール形成にも効果的です。営業担当が顧客と自分との共通点を見つけ、その話題を振ることで、顧客には営業担当に対する親近感が生まれる可能性があります。
共通点を見つけるためには、まず顧客の情報を引き出す必要があるので、その意味でも先ほどご紹介した「相手の話を聞く」ことが大切になってきます。
コツ4 相手にネガティブストレスを与えない
営業担当は、営業活動の中で顧客にネガティブストレスを与えないよう注意する必要があります。
例えば、「挨拶をしない」「リアクションが薄い」「話を聞いていない・忘れている」「話を奪う」「専門用語ばかり使う」「話が聞き取りにくい」「否定ばかりする」等が具体的な例です。
会話をしていて不快になったり、つまらなかったりする相手との間に、ラポールは形成されません。営業担当は、顧客の立場に立って、不快感を与えず楽しんでもらえるような対応を心掛ける必要があります。
ラポールを形成する方法
顧客とのラポール形成には、既存の営業テクニックの活用も効果的です。ここからはその方法として、「ミラーリング」「ペーシング」「バックトラッキング」「キャリブレーション」という4つの方法をご紹介します。
【方法①】ミラーリング
ミラーリングとは、鏡のように相手と同じ動作や仕草をすることです。営業活動においては、相手と全く同じ動作をするのではなく、相手と似たトーンで話したり、ペースで動いたりすることと考えてください。
例えば、話す時には相手の声や声量に合わせたり、相手と同じワードを使ったり、相手が笑ったら自分も笑ったりといったことが、営業におけるミラーリングと言えます。
ミラーリングも、先ほどご紹介した心理学の「類似性の法則」に即したものです。人は自分と共通点のある人や似ている人に親和性を持ちます。
よって、顧客と接する際にミラーリングを意識することで、営業担当は顧客とのラポール形成を目指すことができます。
【方法②】ペーシング
コミュニケーションを取る相手と話すペースを合わせることを、ペーシングと呼びます。ペーシングの対象となるのは、話す速さやトーン、大きさ、リズム、感情の起伏等です。これらを相手の度合いに合わせてコミュニケーションを取ることで、人と人との間には一体感や安心感が生まれます。
安心して本音を話してもらえる関係になる、つまりラポールを形成するために、ペーシングは有効です。
【方法③】バックトラッキング
バックトラッキングとは、いわゆるオウム返しのことです。相手が話した事を繰り返すことで、話をきちんと聞いて理解している事を示します。
シンプルな例を挙げれば、「昨日ゴルフをしてね。」という相手に話に対し、「ゴルフをなさったんですね。」と返すようなやり取りが、バックトラッキングにあたります。
顧客とのラポール形成には、顧客が「話をちゃんと聞いてくれている」「理解して受け入れてくれている」と感じることが大切です。それをアピールするためにも、バックトラッキングは効果的です。
【方法④】キャリブレーション
キャリブレーションとは、相手の心理状態を言葉以外の要素から把握することです。空気を読むことだと考えるとわかりやすいです。
空気を読まない言動は、顧客との関係性の溝を生んでしまいます。空気を読んで顧客のして欲しいことやして欲しくないことを察知し、それを行動に反映することで、顧客は営業担当に「嫌な事をしない信頼できる人」「理解してくれている人」という印象を持ち、ラポールが形成されていきます。
まとめ
安心して本音を話せる穏やかな信頼関係を、ラポールと呼びます。ラポールはあらゆる対人関係を良好に保つために欠かせないもので、営業担当と顧客の間にもその形成が必要です。この形成により、営業担当は顧客に提案を受け入れてもらいやすくなり、顧客は営業担当に本音で相談できるようになります。
ラポールを形成するためには、相手に不快感を与えないことや親近感を持ってもらうことが重要です。そのためには、普段の身だしなみや振る舞いを見直すとともに、既存の営業テクニックも取り入れてみると良いでしょう。
また、ラポール形成には、顧客の興味関心の対象や度合いについて把握することが大切です。営業ツールを活用すれば、顧客の興味関心や購買意欲を可視化することが可能です。営業担当はその情報を顧客とのラポール形成に生かすことができます。顧客とのより良い関係性構築を目指すなら、ツール導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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