営業活動を成功させるには、優れた営業ヒアリングが欠かせません。営業ヒアリングは営業の重要なプロセスであり、高いスキルを必要とします。
では、営業ヒアリングを成功させるには、どのようにヒアリングを進めれば良いのでしょうか。
今回は営業ヒアリングについて、基本的な流れやコツ、上達方法など、詳しくご紹介します。
営業ヒアリングとは
営業ヒアリングとは、顧客の現状や課題、ニーズなどを把握するための営業プロセスのひとつです。営業担当は、営業ヒアリングによる情報収集の内容をもとに、商品やサービスの提案を行います。
営業ヒアリングの内容は、その後の提案の良し悪しや受注を左右します。ヒアリングの中でどれだけ深く顧客の現状や課題を把握できたかによって、提案の質は変わり、また案件化率や受注率もそれに影響を受けるためです。
よって、営業の成功率を上げるためには、まずは情報収集のプロセスである営業ヒアリングの質を向上させることが大切です。
営業ヒアリングが必要な理由
営業ヒアリングは営業活動の成功を左右する重要なプロセスです。
なぜ営業ヒアリングが必要なのか、その理由を挙げていきます。
理由1 顧客の緊張を解き、信頼を持ってもらうため
営業ヒアリングは、顧客の緊張を解き、信頼を得るために必要なプロセスです。顧客は営業担当のヒアリングの進め方によって、その実力を判断し、信頼するかどうかを決めるからです。
顧客から信頼を得られるかによって、その後より深い情報を提供してもらえるかどうか、受注をもらえるかどうかが決まります。そのため、営業ヒアリングは必要であり、そのクオリティは重要なのです。
理由2 表面化していない課題やニーズを把握するため
うまいヒアリングは、会話の流れの中で顧客の頭の中を整理し、自分自身でも把握していなかった課題やニーズを顧客に気付かせることができます。営業担当はその深い課題やニーズを把握し、アプローチに繋げていきます。
また、営業担当自身が、顧客の課題と解決への道のりを頭の中で整理するためにも、ヒアリングは役立ちます。
理由3 他社との差別化を図る
巧みなヒアリングによって、顧客から信頼を得てより深い課題やニーズを把握すれば、「かゆい所に手が届く」優れた提案が可能になります。より細やかな提案によって他社との差別化が叶い、自社が受注できる可能性は高まります。
基本的な営業ヒアリングの流れ
営業ヒアリングは、以下のような流れで行うのが基本です。
②挨拶、アイスブレイク(雑談)
③有益な情報提供へと展開
④現状と課題、ニーズのヒアリング
⑤課題解決に役に立ちそうなことを明示
⑥質疑応答、次回アポイントメントの取得
このような流れで会話を繋ぎながら自然に話題を展開していくことで、会話の中にうまくヒアリングとアピールを盛り込むことができます。
それぞれの手順について詳しく見ていきましょう。
①事前準備
営業ヒアリングを成功させるには、事前準備をきっちり行っておくことが大切です。
まずは、顧客の事前情報や観察して得た情報を踏まえ、ヒアリング時に投げかける仮説を立てます。
仮説は当たるとは限りません。しかし、外れてもそこから潜在ニーズを引き出せる可能性があるため、どちらにしてもヒアリングとしてのメリットを得られます。
また、ヒアリング時に聞き忘れてしまう項目がないようヒアリングシートを作成したり、業界や競合情報について調べておいたりと、ヒアリングをスムーズに進めるための準備を行っておきましょう。
②挨拶、アイスブレイク(雑談)
実際のヒアリングでは、まずは挨拶、そしてアイスブレイクによって相手の緊張を解き、会話のテンポを掴んでいきます。
ただし、顧客によってはアイスブレイクを嫌う方もいます。また、内容や長さにも注意しましょう。
③有益な情報提供へと展開
アイスブレイクから、顧客にとって有益な情報提供へと、話題を展開していきます。
うまく話を繋げ情報提供するためには、事前準備で収集した業界や競合の情報が役立ちます。
④現状と課題、ニーズのヒアリング
事前準備しておいた仮説を投げかけたりヒアリングシートを活用したりしながら、顧客の現状と課題、ニーズを聞き出していきます。
これは営業ヒアリングにとって最も重要な部分なので、会話の中で顧客の思考を整理しながら、慎重に行いましょう。
⑤課題解決に役に立ちそうなことを明示
自社の商品やサービスが、顧客の抱える課題やニーズに役立ちそうであることを話し、興味を持ってもらいます。
そのまま商品紹介へと移る場合は、顧客の反応を見ながら、営業資料や導入事例などを用いて商品やサービスのアピールを行いましょう。
⑥質疑応答、次回アポイントメントの取得
顧客に質問や疑問があれば、それに答え、次回の訪問アポイントメントを取得します。
営業ヒアリングのコツ
コツを押さえて実行することで、営業ヒアリングのスキルは格段に向上します。ここでは、知っておきたい営業ヒアリングのコツを5つご紹介します。
コツ1 BANT情報
営業ヒアリングで聞いておくべき情報に、BANT情報というものがあります。
・A(Authority )=決裁権
・N(Needs)=必要性
・T(Timeframe)=導入時期
「予算はどのくらいか」「決裁権は誰が持っているのか」「課題解決の必要性の程度は」「いつ頃までの課題解決を目指すか」というBANT情報は営業活動にとって重要な情報で、提案やスケジュール調整の核となります。
ヒアリングでは、必ずBANT情報を引き出しておきましょう。
コツ2 SPIN話法
SPIN話法は、質の高いヒアリングに効果的な質問形式の話法のこと。4種の質問を順に行うことで、抱える問題とそれを解決する商品のメリットを顧客に気づいてもらうことができます。
例「どんなシステムを使っていますか?」
例「システムの利用に問題はありませんか?」
例「その問題で生産効率は落ちていませんか?」
例「問題を解決して生産効率が上がれば、どれくらい業務時間を削減できますか?」
スムーズな流れで、問題や問題解決のメリットを理解してもらえるSPIN話法は、営業ヒアリングを行う営業担当に知っておいてもらいたい話し方のコツのひとつです。
コツ3 3C分析
顧客企業を分析するには、3C分析という分析方法が効果的です。
・Customer(顧客、市場)
・Competitor(競合)
これら3つの観点から市場分析を行うことで、課題を導き出すのが3C分析です。
3Cについてヒアリングで聞き出して把握するとことで、「顧客企業がどのような状況にあり、どのように事業を進めていくべきか」分析することが可能です。
コツ4 ツール活用
営業ヒアリングの質と効率は、ツールを活用することで向上します。SFAツールやCRMツール、またそれらを含むセールスイネーブルメントツールなどでは、あらゆる顧客情報を取得・管理し、分析することができるからです。
事前にツールによる情報を確認した上でヒアリングに臨めば、より相手に合った内容でヒアリングを行えます。
コツ5 「聞くこと」に重点を置く
営業ヒアリングは、顧客のニーズを引き出すことが目的であるため、営業担当は「話すこと」ではなく「聞くこと」に重点を置かなくてはなりません。自社商品についてとにかくアピールしたり次から次へと質問をしたりするのではなく、顧客が考えながら話しやすい間と雰囲気を作り、ヒアリングを行いましょう。
また、自分ではなく、相手を主語にして話すことも大切です。
ヒアリング力を高める方法
ヒアリング力を高めるには、「実際に経験して実行する」ことが大切です。具体的には、以下のような方法が挙げられます。
方法1 優秀な手本を実際に見る
うまい切り返しやアピールの文言、会話の繋げ方などといった細かな会話術は、手本を見て学ぶのが効率的です。優れた営業ヒアリングを実際に目にすることは、自身のヒアリング力のスキルアップに繋がります。
ヒアリング力向上を目指すなら、まずは先輩の営業担当の商談に同行するなどして優秀な手本を実際に見て、ヒアリングのノウハウを学びましょう。
同行が難しい場合は、動画学習を取り入れるのも良いでしょう。
方法2 ロールプレイングで練習
ヒアリングのノウハウを学ぶだけでは、ヒアリング力は向上しません。頭では理解しているのに実際のヒアリングはうまく進められず、戸惑うこともあるでしょう。
ヒアリング力向上には、実践が必須です。実践練習するには、部署内でのロールプレイングが有効です。顧客相手に練習することはできませんが、ロールプレイングなら実践練習ができ、あらゆる場面に備えることもできます。
まとめ
営業ヒアリング力を上達させるには、流れやコツを押さえておくことや事前準備、実践練習が大切です。流れやコツを把握していなかったり事前準備をしていなかったり、また実践練習が足りていなかったりすれば、会話はスムーズに繋げず、顧客の課題やニーズもうまく引き出せません。
また、営業ヒアリングの事前準備には、営業活動をサポートするツールの活用が効果的です。例えば、顧客の興味や課題を可視化できるセールスイネーブルメントツールを用いれば、ベストなタイミングでベストな商品をアピールし、多様なニーズにも対応することができます。
ツールを活用すればヒアリングの事前準備はより簡単で的確になります。営業担当の負担が軽減でき、効率的な営業活動が可能になるでしょう。