カスタマーサポートの効果を最大化するためには、適切なKPI(重要業績評価指標)とKGI(重要目標達成指標)の設定が不可欠です。
本記事では、カスタマーサポート担当者が知っておくべき重要なKPIとKGIについて詳しく解説します。顧客満足度、対応時間、解決率などの具体的な指標を活用し、サポート業務の品質向上と効率化を図る方法を紹介します。これにより、顧客体験の向上とビジネスの成長を支援します。
カスタマーサポートとは?CSとCXの違いについて
カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせやクレームに対応する部門です。
顧客満足度を向上させることを目的として、顧客が製品やサービスについて抱える疑問や問題を解決し、スムーズな利用を支援することで、顧客との良好な関係を築き、企業の成長に貢献します。現代社会において、企業は優れたカスタマーサポートを提供することで、顧客ロイヤルティを向上させ、競争優位性を築くことが求められています。
CSとCXの違い
CS(カスタマーサポート)とCX(カスタマーエクスペリエンス)はどちらも顧客満足度の向上を目指していますが、そのアプローチは異なります。
CSは顧客からの問い合わせやクレームに直接対応することで、顧客の抱える問題を解決し、その場での満足度を高めることを重視します。一方、CXは顧客との接点全体を考慮し、顧客が製品やサービスと触れ合うすべての場面において、一貫してより良い体験を提供することを目指しています。
顧客満足向上におけるCSとCXの連携
CSは顧客接点の最前線として、顧客の声を収集し、CX戦略にフィードバックすることで、より顧客中心主義的なビジネス展開に貢献します。CSとCXが連携することで、顧客満足度を最大化し、企業の持続的な成長を実現することができます。
KPIとKGIについて
KPI(Key Performance Indicator: 重要業績評価指標)とKGI(Key Goal Indicator: 重要目標達成指標)**は、ビジネスの目標達成度を評価するための指標ですが、それぞれの役割や目的には明確な違いがあります。
KPI(重要業績評価指標)
KPIは、企業や組織が設定した目標に対する進捗状況や達成度を測定するための具体的な指標です。
これらの指標は、目標達成に向けたプロセスや活動の効果を評価するために使用されます。KPIは通常、定量的なデータで表され、特定の時間枠内で測定されます。
KGI(重要目標達成指標)
KGIは、企業や組織の最終的な目標を達成したかどうかを評価するための指標です。
KGIは通常、KPIを通じて追跡される中間目標の達成状況をまとめ、最終的な成果を測定するために使用されます。KGIは定量的な目標値として設定され、企業のビジョンや戦略目標に直接関連しています。
KPIとKGIの役割
目的
KPIはプロセスの進捗をモニターし、改善の機会を見つけるための指標であるのに対し、KGIは最終的な目標の達成度を測定するための指標です。
範囲
KPIは具体的で細かいプロセス指標であり、日常の業務パフォーマンスを評価します。一方、KGIは広範で戦略的な目標を評価します。
時間軸
KPIは短期的な指標であり、通常は月次や四半期ごとに評価されます。KGIは長期的な目標達成を評価するため、年次などの長期スパンで評価されることが多いです。
このように、KPIとKGIは異なる役割を持ちながらも、企業の目標達成に向けた重要な指標として相互に補完し合っています。
カスタマーサポートで使われるKPIとKGIの意味
カスタマーサポートにおけるKPI
カスタマーサポート部門で頻繁に使用されるKPIには、応答率、解決時間、顧客満足度、NPSなどがあります。
応答時間は、顧客からの問い合わせに初めて対応するまでの時間を指し、顧客を待たせない迅速な対応が求められます。応答率は、顧客からの問い合わせに対して、どれだけの時間で対応できたかを表す指標であり、迅速な顧客対応を測る上で重要となります。
解決時間は、問い合わせやクレームを解決するまでに要した時間を示し、サポートの効率性を評価します。顧客満足度は、顧客がサービスやサポートにどれほど満足しているかを測る指標であり、顧客ロイヤルティと密接に関係しています。
NPS(ネット・プロモーター・スコア)は、顧客が企業やサービスを他人に薦める可能性を測る指標であり、顧客ロイヤルティと口コミ効果を把握する上で重要です。
以下は「カスタマーサポートにおけるKPIの種類」をまとめた表です。
KPIの種類 | 説明 |
---|---|
平均応答時間(ART) | 顧客からの問い合わせに対する初回応答までの平均時間。 |
一次解決率(FCR) | 顧客の問題が最初の対応で解決される割合。 |
顧客満足度スコア(CSAT) | 顧客のサービス体験に対する満足度を測定するスコア。 |
対応完了率 | 全問い合わせに対して、実際に対応が完了した件数の割合。 |
対応中断率 | 対応が開始された後、中断された問い合わせの割合。 |
問い合わせ対応品質 | 提供された対応の質を評価する指標。 |
ネットプロモータースコア(NPS) | 顧客が他者に推薦する可能性を示す指標。 |
平均処理時間(AHT) | 問い合わせに対応するためにかかった平均時間。 |
問い合わせ件数 | 一定期間内に受け取った全問い合わせ件数。 |
コストパーインシデント(CPI) | 一件の問い合わせ対応にかかるコスト。 |
重要なKGI
KGI(キーゴール指標)は、主に組織全体の成果を評価する指標であり、LTVやチャーンレートが含まれます。
LTV(顧客生涯価値)は、顧客が企業と取引する期間を通じて、企業にもたらす収益の総額を表し、長期的な顧客関係の構築を重視する企業にとって重要な指標です。チャーンレートは、一定期間内に顧客がサービスや製品の利用を停止する割合を示し、顧客維持の状況を把握するために用いられます。
以下は「カスタマーサポートにおけるKGIの種類」をまとめた表です。
KGIの種類 | 説明 |
---|---|
顧客満足度の向上 | 総合的な顧客満足度を高めること。 |
顧客ロイヤルティの向上 | 顧客のブランドやサービスに対する忠誠心を強化すること。 |
問い合わせ件数の削減 | 問い合わせ数を減少させること。 |
カスタマーサポートコストの削減 | カスタマーサポートにかかる総コストを削減すること。 |
顧客保持率の向上 | 既存顧客の継続利用を促進すること。 |
リピート購入率の向上 | 既存顧客による再購入率を増加させること。 |
クレームの減少 | 顧客からのクレームを減少させること。 |
サービスレベルアグリーメント(SLA)の達成 | 約束したサービスレベルを達成すること。 |
新規顧客獲得数 | 新たに獲得した顧客の数。 |
ブランドイメージの向上 | 顧客におけるブランドのポジティブな認識を強化すること。 |
NPSと顧客ロイヤルティの関係
NPSは、顧客ロイヤルティを測る上で重要な指標です。NPSが高いほど、顧客が企業やサービスに対して愛着を持ち、積極的に口コミで推奨してくれる可能性が高まります。逆に、NPSが低い場合は、顧客満足度が低く、解約やネガティブな口コミにつながるリスクがあることを示唆しています。
NPSは、顧客ロイヤルティやブランドイメージを評価する際に広く用いられています。NPSを計算する際には、顧客を「プロモーター」(9-10点)、「パッシブ」(7-8点)、「デトラクター」(0-6点)の3つのカテゴリに分類し、NPSスコアを「プロモーターの割合 – デトラクターの割合」で算出します。
NPSの主な利用目的は、顧客ロイヤルティの測定やブランドイメージの把握にあります。この指標を通じて、企業は顧客の忠誠心を評価し、改善策を講じるための重要なインサイトを得ることができます。NPSの大きなメリットは、簡単な質問で顧客のロイヤルティを測定できる点です。他の指標と併用することで、顧客体験の向上に役立つ具体的なアクションプランを策定するための有用な情報が得られます。
しかしながら、NPSにはデメリットも存在します。主観的な評価に依存するため、具体的な改善点を特定する際には限界があります。また、文化や地域によって顧客の回答にバイアスがかかる可能性があり、結果の解釈には注意が必要です。それでも、NPSは多くの企業が顧客満足度を評価するための重要な指標として活用されています。
KPIとKGIの関係
KPIとKGIの相互関係を理解する
KPIは、日々の業務のパフォーマンスを測定するための指標であり、KGIが達成されたかどうかを確認するために使用されます。例えば、応答時間や解決時間といったKPIを改善することで、顧客満足度を高め、最終的にLTVの向上やチャーンレートの抑制といったKGI達成に貢献することができます。KPIとKGIは、互いに密接に関係しており、KPIの改善を通じてKGIの達成を目指します。
チーム全体でのKPIとKGIの共有
KPIとKGIの理解をチーム全体で共有することは、組織全体の目標達成に向けて非常に重要です。これにより、一人一人の成果が組織全体の成功にどのように寄与しているかを明確に示すことができます。チームメンバー全員が共通の目標を理解し、それぞれの役割を認識することで、より効率的かつ効果的に業務を進め、顧客満足度向上に繋げることが可能となります。
適切な指標管理がカスタマーサポートの成功の鍵
KPIとKGIの指標を正しく理解し、適切に活用することで、カスタマーサポートの品質を向上させ、顧客満足度を向上させることができます。
顧客満足度の向上は、企業の成長と顧客の信頼構築に不可欠であり、企業の長期的な成功に繋がります。顧客サポートは、企業と顧客を繋ぐ重要な役割を担っており、適切なKPIとKGIを設定し、その指標に基づいて継続的に業務改善に取り組むことが、顧客満足度の向上、ひいては企業の成長へと繋がっていくでしょう。