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SLAとは?カスタマーサポートの応答基準を決める目的と効果を解説

ヘルプドッグ編集部
SLAとは?カスタマーサポートの応答基準

SLA(エスエルエー)とは、Service Level Agreementの略で、サービスの提供者が利用者に約束する品質の水準、およびその合意のことです。

カスタマーサポートでは、「初回応答は1営業時間以内」のように、問い合わせ対応のスピードと品質の基準を指して使われます。基準を決めて測定すると、応対のばらつきが減り、お客様との認識のずれも防げます。

SLAとは?

SLAはService Level Agreement(サービスレベルアグリーメント)の略で、日本語では「サービス品質保証」と訳されます。Agreement(合意)という語が示すとおり、サービスを提供する側と利用する側の間で取り交わす約束を指します。

約束の中身は、契約書や利用規約に明記される場合もあれば、サポート部門の運用基準として社内で定める場合もあります。

顧客とオペレーターがチャットでリアルタイムにやり取りするカスタマーサポートの流れ

サポートのSLAで決める代表的な項目

カスタマーサポートのSLAは、問い合わせ対応の品質を数値の基準で定めたものです。中心になるのは応答時間、つまり問い合わせを受けてから返信するまでの時間です。これに解決までの時間を加えた2つが、時間の基準の柱になります。

項目内容の例
初回応答時間問い合わせの受信から1営業時間以内に、最初の返信をする
解決時間優先度「高」の問い合わせを24時間以内に解決する
対応時間帯平日9時から18時まで対応する
優先度の基準サービスが利用できない問い合わせは、優先度「高」として扱う

※数値は一般的な例です。適切な水準は、事業の性質やサポートの人数によって変わります。

AIカスタマーサポートシステム「ヘルプドッグ」のような問い合わせ管理ツールの多くには、SLA機能が用意されています。問い合わせ1件ごとに応答の期限を自動で設定し、期限が近づくと担当者に知らせる機能です。基準を決めるだけで終わらせず、日々の対応で基準を守れているかを測定するために使われます。

チャネル別・優先度別のSLA設定の目安

お客様が「待てる」と感じる時間は、チャネルごとに大きく異なります。メールなら数時間待てても、チャットで同じ時間待たされれば、お客様はその場を離れてしまいます。このためSLAは、すべてのチャネルに同じ数値を使わず、チャネル別に水準を変えて設定するのが一般的です。

チャネル初回応答の設定例補足
メール・問い合わせフォーム1〜4営業時間以内大手サポートツールを提供する米Zendesk社も、平均応答時間4時間以内を目標の目安に挙げています(出典:Zendesk「First reply time: 9 tips to deliver faster customer service」
ライブチャット30秒〜2分以内待ち時間が長いほど途中離脱が増えるため、分単位で設定します
電話入電の80%に20秒以内で応答「80/20」と呼ばれる、コールセンター業界で長く使われてきた運用基準です
SNS営業時間内で1時間以内返信のやり取りが公開されるため、放置が他のお客様の目にも入ります
チャットボット・FAQサイト即時(応答時間のSLAは設けない)自動で応答する自己解決チャネルのため対象外です。SLAは有人対応の部分に設定します

※数値はいずれも一般的な設定例です。特定の調査による標準値ではありません。

数値は、達成率とセットで決めます。「1営業時間以内の返信を、全体の90%以上で達成する」のような形です。100%を約束すると、例外的に難しい問い合わせが1件あるだけで未達になり、基準そのものが形骸化するためです。初めて設定する場合は、理想の数字ではなく、現在の実測値を測定したうえで、少し余裕のある水準から始めてください。安定して達成できるようになってから、段階的に短くしていきます。

カスタマーサポートチームが応答速度の目標達成に向けて取り組む様子

解決時間は、チャネルではなく、問い合わせの影響の大きさ(優先度)で分けて設定します。

優先度状態の例解決時間の設定例
最優先サービス全体が利用できない8時間以内
主要な機能が利用できない24時間以内
一部の操作に支障がある3営業日以内
使い方の質問・要望5営業日以内

※区分の数と水準は、事業への影響度に合わせて調整してください。

KPIとの役割の違い

初回応答時間や解決時間は、KPI(Key Performance Indicatorの略、重要業績評価指標)としても使われる指標です。同じ数字でも、役割が異なります。KPIは、サポートの品質を高めていくための社内の目標値です。これに対してSLAは、お客様に対して守ると決めた基準、つまり下回ってはいけない水準を指します。KPIの未達は改善の材料になりますが、SLAの未達はお客様との約束を破ったことを意味します。

IT用語のSLAとカスタマーサポートのSLAの違い

言葉としては同じSLAですが、ITサービスの契約で使われる場合と、カスタマーサポートで使われる場合では、約束する対象が異なります。ITのSLAはシステムが止まらないことを、サポートのSLAは人の対応の速さと品質を約束します。

ITの分野でSLAは、サーバーやクラウドサービスなど、システムの稼働を保証する契約条項として広く使われてきました。代表的な基準が稼働率です。たとえば「月間稼働率99.9%以上」という保証は、1か月(30日間)のうちシステムの停止を約43分までに抑える、という約束を意味します。保証を下回った場合の扱いも契約に明記され、利用料の一部を返金する、翌月の料金から差し引くといった補償(サービスクレジット)が定められます。クラウドサービスのAmazon Web ServicesやMicrosoft Azureも、サービスごとにSLAを公開しています。

カスタマーサポートのSLAは、この考え方を人の対応に応用したものです。

保証する対象は、初回応答時間や解決時間といった、問い合わせ対応の速さと品質になります。基準を下回ったときの扱いにも違いがあります。返金などの補償を契約で定める例はきわめて少数で、多くの場合、サポート部門が守る運用基準として、またお客様に事前に示す対応の目安として使われています。

ただしBtoBの大型契約では、サポートの応答時間がITのSLAと同じように契約書へ明記され、補償の対象としてサービス提供している事例もあります。

比較項目ITのSLAカスタマーサポートのSLA
保証する対象システムの稼働問い合わせ対応の速さと品質
代表的な基準稼働率(例:月間99.9%以上)初回応答時間、解決時間
基準を下回ったときの扱い返金などの補償が契約で決まっている運用基準の見直し(契約で補償を定める場合もある)

どちらも、約束した水準を数値で示し、測定して守るという点は共通です。カスタマーサポートでSLAという言葉を目にしたときは、それが契約上の保証なのか、運用上の基準なのかを確認すると、求められる厳密さを取り違えません。

なぜSLAが必要か?設定と測定で得られる効果

SLAが必要な理由は、基準がないと、対応の品質が担当者個人の判断と頑張りに依存してしまうためです。誰が受けるかで返信の速さが変わり、お客様への約束も、部門としての改善もできません。

そしてSLAは、決めただけでは機能しません。守れているかを日々測定して初めて、お客様・サポート担当者・管理者のそれぞれに効果が現れます。

カスタマーサポートチームが時間的プレッシャーの中で対応に追われる様子

お客様:返信の見通しを持って待てる

問い合わせを送ったお客様が困るのは、返信がいつ来るのか、そもそも来るのかが分からないことです。ノルウェーのCRM企業SuperOffice社が世界の企業1,000社を対象に実施した調査では、問い合わせメールに返信しなかった企業が62%にのぼり、返信した企業でも平均応答時間は12時間10分でした(出典:SuperOffice「Customer Service Benchmark Report」2018年)。見通しのないまま半日待たされたお客様は、同じ内容を再送したり、電話をかけ直したりします。企業側にとっても、二重の対応が発生します。

「1営業時間以内に最初の返信をします」と応答時間の基準を事前に示し、それを守れば、お客様は見通しを持って待てます。再送や電話のかけ直しも起こりません。そして、示した基準と実際の対応が一致し続けること自体が、お客様からの信頼になります。

サポート担当者:対応の順番と、達成の基準が明確になる

SLAがない現場では、どの問い合わせから対応するかが担当者ごとの判断になります。受信箱の問い合わせはどれも急ぎに見えるため、判断そのものが負担になり、対応の抜けも起こります。加えて、どこまで速く返せば十分なのかという基準がないため、自分の対応が良いのか悪いのかを担当者自身が判断できません。

SLAを決めると、対応の順番は期限と優先度で決まります。問い合わせ管理ツールのSLA機能を使えば、期限の近い問い合わせから順に並び、通知も来るため、対応の抜けを仕組みで防げます。「応答時間1営業時間以内を95%達成した」のように、自分の仕事の達成度が客観的な数字で分かることは、担当者にとって働く上での安心材料にもなります。

管理者:部門の状態を数値で把握し、判断の根拠にできる

SLAがないと、管理者はサポート品質の変化を感覚でしか把握できません。「最近、返信が遅れている気がする」という印象だけでは、原因の特定も、経営層への説明もできません。

SLAを測定していれば、部門の状態は達成率という数値で把握できます。達成率が下がった時期や問い合わせの種類を確認すれば、原因の見当もつきます。特定の月に下がっていれば人員の不足、特定の製品に関する問い合わせで下がっていれば、その製品の不具合や説明不足が考えられます。達成率の推移は、増員やツール導入を経営層に求めるときの、具体的な根拠にもなります。

そして測定は、一度で終わらせず、改善のループとして回し続けることが大切です。PDCA(ピーディーシーエー)とは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の頭文字で、この4つを繰り返して仕事の質を高める手法です。SLAに当てはめると、基準を決め、対応し、達成率を確認し、水準や体制を見直す、という繰り返しになります。このループを続ける前提は、SLAの測定を手作業にしないことです。集計そのものに手間がかかる運用では、測定が続きません。

AIカスタマーサポートシステム「ヘルプドッグ」のような、問い合わせ対応の中で自動的にSLAを測定し、担当者も管理者も数値をひと目で確認できるツールを使えば、測定と改善のループを日常業務の中で回し続けられます。あわせて、FAQサイトやAIチャットボットで簡単な質問を自己解決してもらえば、担当者は期限のある問い合わせに集中でき、達成率はさらに改善します。

問い合わせ管理・チャットボット・FAQを一元管理できるカスタマーサポートツールの管理画面

まとめ

私が支援している企業の中に、ライブチャットは15秒以内、メールは30分以内という初回応答のSLAを設けている会社があります。その会社の代表にお話を聞いたところ、SLAの設定後、顧客満足度は200%以上改善したそうです。設定前は、担当者ごとに回答時間のばらつきがあり、返信の遅れに関するクレームも多く、サポート担当者がなかなか定着しなかったといいます。

この会社の特徴は、SLAを評価制度と連動させたことです。品質の高い回答とスピード感のある対応が、お客様からはもちろん営業部門からも高く評価され、担当者の給与も大きく改定されたとのことです。

SLAは、お客様との信頼関係を測るバロメーターだと私は考えています。担当者どうしで数字を比較されることがストレスを生む懸念はあります。しかし、評価制度と結びつければPDCAは回しやすくなり、対応のスピードを妨げている要因、つまりどの工程で対応が止まっているのかも数字で見えてきます。競合他社と比べてサポート品質が明確に評価されるため、解約率の低減にも寄与します。

サポートのSLAをまだ設定していない会社は、真っ先に取り組むべきだと思います。お客様にとって心地よいサポートとは、スピードと正確性、そしておもてなしの心が伝わるコミュニケーションにあります。

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FAQ・よくある質問

Q1

SLAの基準は、お客様に公開すべきですか?

A

守れる実績ができてから公開することをおすすめします。公開した基準はお客様への約束になるため、達成が不安定なうちに公開すると、かえって信頼を損ないます。まず社内の運用基準として測定を続け、安定して達成できるようになった段階で、サポートページなどに対応の目安として掲載してください。

Q2

数人の小規模なサポートチームでも、SLAを設定する意味はありますか?

A

あります。人数が少ないほど、対応の速さが担当者個人の状況に左右されるためです。1人が休むだけで応答が丸1日遅れる、といった変動を、基準と測定があれば数字で把握できます。応援を頼む・自己解決の仕組みを用意するといった判断も早くなります。まずはメールの初回応答時間の1項目だけでも、測定を始める価値があります。

Q3

SLAを達成できなかったとき、社内ではどう扱えばよいですか?

A

担当者個人の責任を問う材料ではなく、原因分析の材料として扱ってください。達成を評価やインセンティブに反映すること自体は有効です。問題は未達の責任追及に使うことです。未達を個人の評価に直結させると、期限を守ること自体が目的になり、中身の薄い一次回答で時間を稼ぐといった行動につながります。未達が続くなら、担当者ではなく、基準の水準か人員体制の見直しが必要な状態です。

堀辺 憲
筆者

堀辺 憲 noco株式会社 代表取締役

クボタ、住友スリーエム、DeNAなどを経て2017年にnoco株式会社を創業。AIサポートシステム「ヘルプドッグ」等の開発プロデューサーを務める。数多くの企業のサポート部門・現場業務のDXを支援してきた実績から得た、カスタマーサポート領域およびナレッジマネジメントに関する深い知見をもとに、CS基盤の構築・改善に直結するノウハウを解説する。