マニュアルといえば、少し前まではテキストや図・画像を使用した紙のマニュアルが基本でしたが、インターネットが普及した頃から、PDFファイルなどを活用した電子マニュアルが定着してきました。
電子マニュアルが多くの企業で導入されたことにより、マニュアルを動画で作ったり、マニュアルの中に動画を追加したりするなどの手法も一般的になったのです。
この記事では動画をマニュアルに取り入れるメリットと、具体的な動画マニュアルの作成方法や動画マニュアルの例をまとめました。これから動画マニュアルを作ろうと考えているのなら、ぜひ参考にしてください。
動画マニュアルのメリット
動画マニュアルを導入することで、どのようなメリットがあるのでしょうか?
動画マニュアルの作成を決める前に、そのメリットについて理解しておきましょう。
メリット1 視覚的に伝わりやすい
動画マニュアルの一番のメリットは、視覚的に方法・フローが伝えられることです。
作業内容を伝えるためのマニュアルであれば、実際の作業を映像で見られるだけで習熟度が大きく向上するでしょう。テキストだけのマニュアルでは、マニュアルを読むだけで作業を覚えることは非常に困難です。
また、業務フローを伝えるためのマニュアルであれば、動画の方がテキストのマニュアルよりも業務の流れをイメージしやすくなります。
メリット2 コスト削減ができる
動画マニュアルは電子マニュアルで活用されるため、印刷することはありません。紙のマニュアルでは必要だった、マニュアルを印刷するコストを削減できるのです。
また、動画マニュアルを導入することで理解しやすくなるため、社員に複数回教育を実施しなくてはいけないような非効率なことも避けられるでしょう。
メリット3 時間や場所に縛られずマニュアル閲覧ができる
マニュアルが紙でしか用紙されていなかった場合、会社にいる時しか閲覧できなかったり、他の人が使用していて使いたいときに使えなかったりすることがあります。
動画マニュアルはパソコンやタブレットなどの端末さえあれば、いつでも自由に閲覧できるため、時間や場所、利用人数などの制約を受けることがありません。
メリット4 教育内容が統一される
特に業務フローを身につける教育などでは、テキストのマニュアルを使用しても教育する側の力量などによって教育の内容が統一されないことがあります。伝えなければいけないことを失念したまま、教育を進めてしまうこともあるでしょう。
動画マニュアルを活用すれば、教育を受ける側に与えられる情報が平等になります。
動画マニュアルの作成手順
ここからは、具体的な動画マニュアルの作り方をお伝えしましょう。適切な順番で動画作成を進めれば、スムーズに動画が作れるようになります。
特に事前準備と言える構成・絵コンテ・台本は、動画の質を左右する重要な工程だと考えてください。
手順1 動画の構成を考える
動画を作成するには動画の設計図である構成が欠かせません。どんなに動画撮影に慣れたプロでも、必ず構成を考えています。どのようなシーンを、どの順番で動画にするのかを決めましょう。
動画マニュアルで伝えたいことや動画マニュアルを利用するユーザーを意識した上で、客観的な目線の構成を考えられるようにしましょう。
マニュアルの内容に必要な情報や理解が曖昧な点があれば、構成を考えるこの段階で明らかにしておきます。
手順2 絵コンテ・台本を作成する
絵コンテとは、どのような映像を撮影するかを絵で表現したものです。どのような場所で、どのような人が、どう動くシーンをこのような角度で撮影するということが分かるものです。
台本は、文章で作成されたもので、絵コンテで表現されるものの他に、テロップやナレーションの具体的な内容も記載します。
絵コンテか台本、どちらか作りやすい方を作成してください。
映像の撮り方と、映像に合わせるナレーション・テロップを事前に決めておかなくては撮影がスムーズに進みませんし、編集も非常に困難になります。
手順3 動画を撮影する
いよいよ動画の撮影を行います。しっかりとした絵コンテや台本があったとしても、撮影はいくつかのアングルやパターンを撮影しておいた方が良いでしょう。
手間を感じるかもれませんが、複数のアングルやパターンがあることによって動画編集時に何らかの問題に気付いても撮影をやり直すようなことになりません。
手順4 ナレーションを入れる
動画が撮影できたら、映像に合わせてナレーション収録をします。
慣れるまでは緊張してしまうと思いますが「はっきりと聞き取りやすい話し方」を意識して早口にならないようにしてください。
動画によってはナレーションなしで進められる場合もありますが、可能な限りナレーションをつけたほうが視聴者の理解が得られます。
手順5 編集をする
最後は編集作業になりますが、編集作業のコツは「客観的に見る」ことです。
構成から撮影まで行っている担当者は、そのマニュアルへの理解が深いため、客観的には必要な部分でも余分な部分に感じられ、つい内容を省きすぎてしまう傾向があります。
しかし、削除してしまった部分があった方がマニュアルの内容への知識がない方には「分かりやすい」と感じられることもあるのです。
可能であれば、最後の編集は何パターンか用意した上で担当者以外に動画を見比べてもらい、客観的な意見をもらうと良いでしょう。
動画マニュアルを作成する際のポイント
見る人に伝わりやすい動画マニュアルを作るためには、次のポイントを意識してください。
動画マニュアル作成のポイントを理解すれば、見る人に伝わりやすい動画マニュアルが作れるでしょう。
ポイント1 実際の作業現場を撮影する
動画マニュアルには、実際に作業をしている様子を視覚的に伝えられるというメリットがあります。そのメリットを最大限に活かすためにも、実際に業務を行っている現場を撮影して動画マニュアルに使いましょう。
実際の様子を見ることで、作業手順はもちろん現場の雰囲気が見る相手に伝わります。
特に商品やサービスの使用方法を紹介する動画マニュアルであれば、商品やサービスの実物を使うことが大切です。
ポイント2 動画は5分程度に収める
長時間の動画は情報が多すぎてしまうため、優れた動画であっても各作業への理解力が不足する可能性があります。
例えばコンビニエンスストアの接客の動画で、お客様の来店から商品購入だけでなく品出し・清掃・レジ締めなど全ての作業を一つの動画に収めてしまうと、何十分もの長さの動画になってしまうのです。
それぞれの作業ごとに動画マニュアルを分割すれば、5分程度の視聴しやすい長さの動画に収まるでしょう。
ポイント3 知識がない人が見ても分かる内容を意識する
普段から該当の作業に慣れている方からすれば簡単な作業でも、初めて作業をする方も同じように感じるとは限りません。
動画マニュアルは作業の知識や経験が全くない方の視聴を前提として、誰が見ても分かる内容にするべきでしょう。
特に複雑な動作は丁寧な説明を加えて、スローモーションにしたり、ズームアップしたりするなどの工夫が必要です。
ポイント4 テロップを使って情報を補足する
動画マニュアルでは、注目してほしいポイントや重要事項が他の情報に埋もれてしまうことがあります。
テロップを使って情報が埋もれないようにし、より質の高い動画マニュアルに仕上げましょう。
また、テロップがある動画は、テロップを翻訳することで外国人スタッフにも活用してもらうことが出来ます。テロップの翻訳には、自動翻訳機能がついた動画作成ツールの利用がおすすめです。
ポイント5 閲覧環境に配慮する
動画マニュアルがどのような環境で利用されるのかを考え、テロップの文字やボリュームを決めてください。
スクリーンに投影して見る動画と現場でスマホを使ってみる動画では、適切な動画の内容や装飾が変わってきます。
さまざまな環境で閲覧される可能性があるのなら、複数の種類を用意しても良いでしょう。
作成する際に参考になる動画マニュアル事例
ここでは、実際に動画マニュアルを作ろうと考えている方に向けて、参考になる動画マニュアルの例を紹介します。
自社が作成予定の動画マニュアルに近いジャンルの動画を参考にすると良いでしょう。
はじめてのGoogle Apps(チュートリアル動画)
こちらは、KDDI株式会社が作成した初めてGoogleアプリを使う方に向けて作られたチュートリアル動画です。
実際に作業を進めているパソコン画面にテロップで必要な情報が補足されており、文章のマニュアルを読むよりも簡単に操作方法が理解出来ます。
動画の速度もちょうど良く、動画を停止しながら作業を進める必要がないでしょう。また、音声が含まれていないためオフィスでも視聴しやすいです。
KRUS研修用ビデオマニュアル「誘導の仕事編」(マニュアル動画)
KURS(近畿生コン関連協議会)が作った研修用ビデオマニュアルの一つです。生コン車の荷卸しのサポートをする誘導の仕事について解説しています。
動画では実際の作業の様子を撮影するだけでなく、ナレーション・テロップ・図形やイラストを用いて、初めて誘導の仕事をする人でも安全に作業方法を学ぶ工夫がされていると言えるでしょう。
危険の伴う作業だからこそ、分かりやすい解説が重要なのです。
お茶の出し方 音声修正・日本語字幕付き
こちらはマナーを学ぶマニュアルの一つで、来客時のお茶の出し方についての理解を深める動画です。
実際にお茶を出すシーンを撮影しながら、分かりやすい解説とテロップがついており、お茶出しの順番やお茶出し前後の動作について学べます。
テキストで説明をするには難しい内容も、動画にすることで伝わりやすくなります。
動画マニュアルを効率的に作成する方法
動画マニュアルは視覚的に情報を伝える手段として最適であり、テキストのマニュアルよりもスムーズかつ分かりやすく作業内容を理解してもらえるというメリットがあります。
しかし、動画の作成経験がない状態で動画マニュアルを作るためには、多くの労力が必要になるでしょう。
ここでは、動画マニュアル作成を効率良く進める方法を紹介します。
方法1 動画制作を外注する
動画制作会社に動画マニュアルの作成を依頼すれば、プロの手でクオリティの高い動画を作ってもらえます。ただし、1本の動画で50万円以上の費用が必要になる場合もあり、複数の動画を依頼するためには非常に多くのコストがかかるでしょう。
また、組織に存在する業務は常に同じ状態とは限りません。
業務内容に変更点があれば動画マニュアルも更新することになり、再度費用が発生するのです。そのため動画マニュアルの外注は現実的な手段ではないように思えますが、顧客や取引先向けにクオリティの高い動画マニュアルを作りたいと考えているのなら、外注した方が思い通りの仕上がりになる可能性があります。
動画制作会社に動画マニュアル作成を依頼する場合は、どこの範囲まで委託するのか決めておきましょう。企画から制作まで依頼するのか・制作のみ依頼するのかによって費用にも大きな違いが出ます。
方法2 動画マニュアルのためのツールを活用する
動画マニュアル作成ツールを使えば、特別な知識がなくても動画マニュアルを作ることが可能です。
動画マニュアル作成ツールに搭載されている代表的な機能は下記のとおりです。
・テロップの自動翻訳機能
・動画への図形挿入
・多様な動画の共有方法
・動画の閲覧履歴の確認
ツールの導入には一定の費用が必要ですが、動画マニュアルを社内で作ることができれば、今後の動画マニュアルの作成や更新がスムーズに進められ、外注するよりはコストがかかりません。
また、使いやすい専用ツールが存在することで、動画でマニュアルを作るということが社員に定着しやすくなるでしょう。
まとめ
動画マニュアルを導入するメリットと動画マニュアルの作り方や優れた動画マニュアルの例をお伝えいたしました。
動画マニュアルは、複雑な作業やテキストでは表現しにくい作業を見る人に伝える最適な手段です。
効率良く動画マニュアルを作るには、動画作成ツールの導入や動画制作会社への外注がありますが、動画マニュアルの更新作業や運用のことを考えれば、自社で動画マニュアルが作れる体制を整えるべきでしょう。






