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コールセンターの適正人数とは?アーランC式であふれ呼を防止

ヘルプパーク編集部
コールセンターの適正人数とは?アーランC式であふれ呼を防止

「いつも『人が足りない』と感じて限界ギリギリで回しているのに、上司に相談しても『気のせいだ』『工夫で乗り切れ』と一蹴されてしまう」「苦労してシフトを作っても、予想外の電話集中であっという間に現場が回らなくなる」「応答率を改善したいが、あと何人採用すれば解決するのか具体的な数字が出せない」といった、リソース不足と説明責任の板挟みに悩んではおられませんか。

「現場が忙しいから人を増やしてほしい」という悲鳴は、残念ながら経営層にはなかなか届きません。なぜなら、そこには彼らが判断材料とする「客観的な根拠」が不足しているからです。しかし、コールセンターの世界には、適正な人員数を弾き出すための世界共通の「計算式」が存在します。それが「アーランC式」です。このロジックを使いこなせば、感情論ではなく数値を武器に、現場スタッフを守るための建設的な交渉ができるようになります。

本記事では、アーランC式の概念を理解し、目標とする応答率(サービスレベル)を達成するために必要な「適正座席数」を算出・説明できるようになるための手順を解説します。

なぜ「勘と経験」のシフト作成は破綻するのか

呼量(入電数)とAHT(処理時間)のバラつき

コールセンターの業務量は、工場のライン作業のように一定ではありません。電話が鳴るタイミングは顧客の都合に依存するため、曜日、時間帯、さらには天候や季節によって大きく変動します。この「波」を無視して、単に「昨日はこの人数で回ったから今日も大丈夫だろう」という勘と経験だけでシフトを組むことは非常に危険です。ここで理解しておくべき重要な変数が「呼量」と「AHT」です。

呼量とは?
Traffic Volumeのこと。単位時間あたりにコールセンターにかかってくる電話の総量(負荷)を示す指標。「入電数 × 平均処理時間 ÷ 単位時間」で算出され、単位には「アーラン」が用いられることが多い。

AHTとは?
Average Handling Timeの略で、平均処理時間のこと。通話時間(Talk Time)だけでなく、保留時間(Hold Time)や後処理時間(After Call Work)を含めた、1件の電話対応にかかる合計時間の平均値。

ベテランであれば3分で終わる用件も、新人であれば10分かかることがあります。つまり、同じ入電数であっても、誰が受けるかによって必要なリソース量(AHT)は変化します。これらの変動要素(変数)を考慮せずに固定的な人員配置を行うと、特定の時間帯に負荷が集中し、現場がパンクする事態を招きます。

「あふれ呼」が現場のモチベーションを削ぐ悪循環

人員計画のミスが招く最大のリスクは、単に応答率が下がることだけではありません。オペレーターの心理的な負担が増大し、現場が疲弊することです。電話を取りきれない状態が続くと「待ち呼」が発生し、システム上では「あふれ呼」として記録されます。

あふれ呼とは?
Overflowとも呼ばれる。コールセンターの回線数や配置されたオペレーターの処理能力を超えて着信があり、電話がつながらない、あるいは長時間待たされている状態のこと。

あふれ呼が常態化すると、ようやくつながった電話の第一声が「いつまで待たせるんだ!」というお叱りから始まることになります。このクレーム対応により、本来の用件以上に通話時間が長引き(AHTの悪化)、その間にまた次の電話が待ち呼になるという「負のスパイラル」に陥ります。こうなるとオペレーターは「電話を取るのが怖い」と感じ始め、モチベーションは著しく低下します。

適正な人員配置は、顧客満足度だけでなく、従業員満足度(ES)を守るための防波堤なのです。

コールセンター計算の基礎「アーランC式」とは

待ち時間と放棄呼の関係性を数式化する

「計算式」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、現場の管理者が複雑な数式を暗記する必要はありません。重要なのは、その計算式が何を意味しているかを理解することです。「アーランC式」は、100年以上前にデンマークの数学者A.K.アーランによって考案された、待ち行列理論に基づく公式です。

アーランC式とは?
Erlang C Formulaのこと。コールセンターなどの待ち行列システムにおいて、顧客からの着信が直ちにオペレーターに繋がらずに待たされる確率(待ち確率)を算出する数理モデルです。主に、目標とするサービスレベル(例:「20秒以内に80%の着信に応答する」)を達成するために必要な「適正オペレーター数」を逆算するために用いられます。

簡単に言えば、「ある量の電話がかかってくる時、何人いればお客様を待たせずに済むか」を統計学的に導き出すツールです。この計算式を使うことで、「感覚的に足りない」ではなく、「理論上、このサービスレベルを維持するには〇〇人必要である」という科学的な根拠を得ることができます。現在は無料の計算ツールやExcelの関数を利用すれば、数値を入力するだけで簡単に結果を出すことが可能です。

必要な3つの変数:呼量・AHT・目標応答率

アーランC式を用いて適正人数を算出するためには、以下の3つの変数を確定させる必要があります。

  1. 呼量(着信数):過去の実績データから予測される、特定の時間帯(通常は1時間単位)あたりの入電数。
  2. AHT(平均処理時間):その業務における平均的な1件あたりの処理時間。
  3. 目標応答率(サービスレベル):経営判断として設定する目標値。「着信の80%を20秒以内に取る」といった具体的な基準。

ここで多くの現場が陥りやすい罠が、「目標設定」の曖昧さです。「お客様を待たせたくないから応答率100%を目指す」というのは理想的ですが、それを実現するには膨大な人員が必要となり、コスト的に現実的ではありません。「あえて5%は待たせる可能性がある」あるいは「ピーク時は応答率70%でも許容する」といった、経営判断としての基準値(サービスレベル)を持つことが重要です。

この基準があって初めて、「その基準を守るためには何人必要か」という議論が可能になります。

実践!計算結果を「現場のシフト」に落とし込む調整術

机上の空論を防ぐ「シュリンケージ」の加算

アーランC式で算出された必要人数は、あくまで「その人数のオペレーターが、休みなく電話を取り続けている状態」を前提とした理論値です。

しかし、現実の人間はロボットではありません。トイレに行く時間もあれば、水分補給をする小休憩、朝礼や夕礼、研修、急なシステムトラブルへの対応など、電話を取れない時間が必ず発生します。この稼働ロスを考慮に入れずにシフトを組むと、計算上は足りているはずなのに現場が回らないという「机上の空論」になります。ここで加算すべきなのが「シュリンケージ」です。

シュリンケージとは?
Shrinkage(縮小・減耗)の意。有給休暇、研修、ミーティング、小休憩、遅刻・早退など、雇用されているが実際の生産活動(電話対応)には従事できない時間の割合を示す指標。

一般的に、コールセンターでは20%〜30%程度のシュリンッケージが発生すると言われています。つまり、アーランC式で「必要人数は10人」と出た場合、それを「1 – 0.2(シュリンケージ率)」で割り戻し、実際には「12.5人(約13人)」を配置する必要があるということです。この係数(通常1.2〜1.3倍程度)を掛け合わせる調整こそが、現場の実態に即したシフト作成の肝となります。

突発的な欠員や呼量急増への「バッファ」

シュリンッケージの考慮に加え、さらに意識したいのが「バッファ(余裕率)」です。冬場のインフルエンザ流行や、突発的な交通機関の乱れによる遅刻、あるいは製品の不具合報道による急激な入電増など、コールセンターには不測の事態がつきものです。ギリギリの人数で運営していると、たった一人の欠勤で全体のサービスレベルが崩壊します。

そのため、算出された必要人数にプラスして、予備人員を配置しておくことがリスク管理として重要です。ただし、バッファを持たせすぎると、平時に「電話が鳴らずに暇な時間」が増えてしまい、一人当たりの生産性(稼働率)が下がってしまいます。経営層からは「コストの無駄」と指摘されやすい部分ですので、「欠勤率の平均値」や「過去のスパイク(突発的な入電増)の実績」を元に、適切なバランスを見極める視点が求められます。

上層部を説得するための「数字」の伝え方

「人を増やすコスト」対「機会損失」の比較

適正人数を算出し、現場の実情に合わせて調整を行ったとしても、最終的な壁となるのが決裁権を持つ上層部の承認です。単に「人が足りなくて大変だから増やしてください」と訴えても、コスト削減をミッションとする経営層には響きません。説得のためには、人件費の増加分と、人を増やさないことで発生する「機会損失」を比較し、投資対効果(ROI)の視点でプレゼンする必要があります。

具体的には、応答率低下によって取りこぼしている注文の想定売上や、長時間待たされた顧客の解約リスク(LTVの損失)、あるいはあふれ呼による再入電が引き起こす業務量増加コストなどを試算します。「オペレーターを1人月増やすコストは30万円ですが、現状の放棄呼による機会損失は月間100万円発生しており、増員によってこれを70万円回収できます」といったロジックであれば、経営層も合理的な判断として承認しやすくなります。

サービスレベル低下による「離職リスク」の提示

もう一つ、経営層に対して強力な説得材料となるのが「見えないコスト」の可視化、すなわち離職リスクの提示です。無理なシフト体制が続けば、オペレーターは疲弊し、離職率は確実に上昇します。一人のオペレーターを採用し、一人前に教育するためには、求人広告費、面接工数、研修費、研修期間中の人件費など、数十万円から百万円規模のコストがかかっています。

経営層は現場の「肉体的な辛さ」には共感しにくい傾向がありますが、「将来的な財務リスク」には非常に敏感です。「今、適正な人員配置を行わなければ、離職の連鎖が止まらなくなり、半年後には採用・教育費として現在の3倍のコストが必要になる試算です」と伝えてみてください。目先の数万円の人件費を削ることで、将来的に莫大な損失を招くというシナリオを提示することは、コンサルタントとしての経験上、最も決裁が降りやすい強力なアプローチです。

まとめ

適正な人員配置は、管理者の「感覚」ではなく、「アーランC式」による理論値と、「シュリンケージ」による実態調整で論理的に導き出すことができます。現場の苦しみを感情で訴えるのではなく、共通言語である「数字」に翻訳して伝えることこそが、現場を守り、健全なセンター運営を実現するための第一歩です。

まずは、直近1ヶ月の「時間帯別入電数」と「AHT」のデータを洗い出すことから始めてみましょう。そして、インターネット上で無料公開されているアーラン計算ツールにその数値を入力してみてください。そこで弾き出された数字と、現在のシフト表を見比べた時、あなたの現場の課題と「あるべき姿」が明確に見えてくるはずです。

根拠ある数字を味方につけ、自信を持って人員計画を提案していきましょう。

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FAQ・よくある質問

Q1

シュリンケージをシフト計算に組み込む方法は?

A

アーランC式で出た必要人数を「1-シュリンケージ率」で割り戻すことで、実態に即した配置人数を算出できます。たとえば理論値が10人でシュリンケージ率20%なら、10÷0.8=12.5人、つまり約13人の配置が必要です。休憩・研修・会議など電話対応に充てられない時間を最初から織り込むことで、「計算上は足りているのに現場が回らない」という状況を防げます。

Q2

アーランC式の計算に必要な3つの変数とは?

A

呼量(時間帯別の入電数)、AHT(平均処理時間)、目標応答率(サービスレベル)の3つです。特に目標応答率は経営判断として明確に設定する必要があり、この基準がなければ「何人いれば十分か」という議論自体が成立しません。まず直近1ヶ月の時間帯別入電数とAHTを整理し、無料のアーラン計算ツールに入力するところから始めるのが現実的なステップです。

Q3

機会損失と採用コストでは、増員の説得にどちらが有効か?

A

どちらも有効ですが、使い分けが重要です。機会損失の試算は「放棄呼による売上ロスや再入電コスト」を数値化して投資対効果を示すもので、短期的な承認を得やすい手法です。一方、離職リスクの提示は「採用・教育コストが将来的に膨らむ」という財務リスクとして機能し、経営層が特に敏感な長期コスト問題として訴求できます。両者を組み合わせることで、現場の訴えを多角的な数字として伝えられます。

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筆者

ヘルプドッグ編集部

セルフサポートやカスタマーサポート運用に関する知見をもとに、現場で役立つ情報をわかりやすく発信しています。 実際の運用課題や改善事例を踏まえながら、自己解決率向上とサポート業務の効率化につながるヒントをお届けします。