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VOC収集を効率化!コールセンターの負担を減らすAI活用法

ヘルプパーク編集部
VOC収集を効率化!コールセンターの負担を減らすAI活用法

「お客様の声を拾えと上層部から言われるが、電話対応後の入力時間が長くなりすぎて応答率が下がっている」。「オペレーターによって要約の質やタグの選び方がバラバラで、データとして使い物にならない」。「せっかくエスカレーションしても、他部署から『で、結局お客様は何が言いたいの?』と突き返されてしまう」。

日々の業務でこうした課題を抱えていませんか?

お客様の生の声は企業の宝と言われますが、その収集をすべて現場のマンパワーに頼るのは酷な話です。通話後の限られた後処理時間の中で、正確に要約し、適切なタグを選ぶことを個人のスキルに依存していては、現場は疲弊し、データの精度も一向に上がりません。

この記事では、オペレーターの負担を最小限に抑える分類タグの設計と音声テキスト化技術の活用法を理解し、現場の属人的な入力から脱却して、他部署やFAQ改善に直結する正確なデータを収集する仕組みを解説します。

コールセンター部門でのVOC収集が難しい理由と原因

VOC(Voice of Customer:顧客の声)とは?
企業の商品やサービスに対して顧客から寄せられる、要望、不満、意見、感謝などの生の声全般を指します。これを収集・分析することで、サービスの改善や新機能の開発に役立てます。

現場の負担を無視した「オペレーター入力」の限界

オペレーター入力(対応履歴の作成業務)とは?
顧客との通話やチャットが終了した後、対応したオペレーターが自らCRMなどのシステムへ、問い合わせの内容や結果、顧客の要望などをテキストデータとして記録・登録する業務のことです。

コールセンターの運営において、お客様との通話が終わった後の後処理時間(ACW)の短縮は常に求められる至上命題です。しかしその一方で、詳細なヒアリング内容を残そうとするあまり、現場に自由記述による長文の要約や複雑な入力フォームでの報告を強いてしまうケースが多々あります。

現場に対して「後々の分析のために、とりあえず考えられる項目は全部入力させる」という運用ルールを敷くのは、百害あって一利なしです。

現場にとって入力項目が1つ増えるということは、1日50本の電話を取るオペレーターに50回の余計な判断と操作を強いることを意味します。忙しいピーク時には適当な項目が選ばれるようになり、データの質は著しく低下します。

入力画面は直感的に1クリックで終わるUI(ユーザーインターフェース)でなければ、現場に運用ルールは定着しません。

埋もれてしまう「現場の気づき」の損失

現場の気づきとは?
顧客対応の最前線に立つオペレーターが、顧客との会話のニュアンスや声のトーン、あるいは自身の案内中のつまずきから得る、「このマニュアルの表現は分かりにくい」「この画面遷移でお客様が迷っている」といった、定量データには表れにくい直感的な発見や違和感のことです。

入力の負担を減らすために、あらかじめ用意した選択肢から選ぶだけの「定型的なタグ付け」のみに依存する運用へ切り替える企業もあります。しかし、選択肢を選ぶだけの報告システムにも大きな欠点が存在します。

定型的なタグ付けだけでは、お客様の微妙なニュアンスや怒りの温度感は表現できません。また、「お客様はこう言っていたけれど、本当の原因はFAQの導線が分かりにくいことにあるのではないか」というオペレーターの貴重な現場の気づきも、システム上にそれを書き留める自由記述の入力欄がなければ、そのまま消滅してしまいます。

効率化を重視するあまり、最も価値のある一次情報が失われてしまうこのジレンマを解消する仕組みが必要です。

データの質を決定づける「分類タグの設計」

オペレーターを迷わせない「分類タグの設計」

分類タグの設計とは?
問い合わせの要件や原因をシステムに登録する際、後から集計・分析がしやすいように、あらかじめ規則性を持たせたカテゴリやラベル(タグ)の項目と階層ルールを定義することです。

選択式の入力項目を機能させるためには、オペレーターが迷わずに正しい選択肢を選べる設計が不可欠です。大分類・中分類・小分類といったツリー状の階層構造を整理し、漏れなくダブりなく(MECE)項目を網羅しつつも、現場が直感的に3秒以内で選べる粒度にタグを絞り込むロジックが求められます。

ここで絶対に守るべき鉄則があります。それは、分類タグの項目に「その他」を作ってはいけないということです。「その他」という逃げ道を作ってしまうと、判断に迷ったオペレーターは少しでも早く処理を終わらせるために必ずそれを選びます。

結果として、何の分析もできないゴミデータが量産されることになります。タグを設計する際は、「製品の不具合起因」「顧客の操作ミス起因」「案内導線の不備」など、次にアクションを起こして改善すべき部署が明確になる単位で作成することが、プロの運用設計です。

主観を排除する事実(ファクト)ベースの記録ルール

分類タグを適切に選んだ後は、自由記述欄への要約ルールも標準化しなければなりません。属人的な入力の典型例が、オペレーターの主観や感情が混じった記録です。

例えば、「お客様が非常に怒っていた」「使い勝手が悪いと不満そうだった」といった書き方では、対応した個人の受け止め方によって内容がブレてしまい、後から読んだ他部署の人間には正確な状況が伝わりません。

必要なのは、客観的な事実のみを記録する運用ルールの徹底です。「怒っていた」ではなく、「ログイン画面でエラーコードE001が出たため、パスワードの再発行手順が分からないと不満を述べた」といったように、いつ、どこで、何が起きたのかという事実(ファクト)を簡潔に記述するフォーマットを定着させます。

事実ベースの記録であれば、誰が読んでも解釈が分かれず、開発部門も即座にエラーの調査に着手できるようになります。

AIを活用したVOC収集の効率化と限界

「音声テキスト化」による入力工数の削減

音声テキスト化とは?
顧客とオペレーターの通話音声を、音声認識AIを用いてリアルタイムまたは事後に自動でテキストデータ(文字)に変換する技術のことです。

オペレーターの入力負担を劇的に下げ、かつ詳細な対応履歴を残すための強力な解決策として、テクノロジーの導入が進んでいます。その代表が、通話内容をリアルタイムで文字起こしする音声認識システムです。

この技術を導入することで、オペレーターは通話後に一から会話の内容をタイピングする手間から解放され、後処理時間(ACW)の大幅な削減効果が期待できます。

長文のヒアリング内容もすべて自動で記録されるため、聞き漏らしや記録忘れも防げます。ただし、音声認識の精度は年々向上しているものの、周囲の雑音や専門用語、顧客特有の方言などによっては、どうしても誤変換が発生する傾向があります。

「システムが100%完璧に記録してくれる」と断定して完全に放置するのではなく、致命的な誤変換がないか、最終的な目視確認を行う手順は残しておく必要があります。

AI要約ツールとオペレーターの役割分担

音声テキスト化によって通話内容の全文が文字起こしされたとしても、数千文字に及ぶテキストを他部署の担当者がすべて読むことは不可能です。

そこで活用されるのが、生成AIを用いた要約技術です。テキスト化された長文をAIが読み込み、「事象」「原因」「顧客の要望」といったあらかじめ指定されたフォーマットに従って、自動で要約文を生成します。

この技術が導入されると、現場のオペレーターの役割は大きくシフトします。これまでのように「ゼロから文章を要約して書くこと」が仕事ではなくなり、「AIが自動出力した要約結果に間違いがないかを素早くチェックし、そこにシステムでは拾いきれなかった『現場の気づき』を1行だけ添えること」が新たなミッションとなります。

ルーチンワークをテクノロジーに任せ、人間にしかできない高度な洞察にリソースを集中させる構造が、VOC収集の理想形です。

AI活用法とオペレーターの役割分担まとめ

導入するAI技術AIが担う主な役割(効率化)オペレーターの負担軽減(メリット)人間に残される重要な役割(付加価値)
音声認識AI
(音声テキスト化)
通話音声をリアルタイム・事後に自動で文字起こしする通話後にゼロから会話をタイピングする手間(ACW)の削減、記録忘れの防止専門用語や方言など、致命的な誤変換が発生していないかの最終的な目視確認
生成AI
(AI要約ツール)
文字起こしされた長文から「事象・原因・要望」を定型フォーマットで自動要約数千文字のテキストから重要箇所を抜き出し、文章を構成する思考的負担の解放AIの要約を素早くチェックし、システムが拾えない「現場の気づき」を1行添える

収集したVOCを業務改善に繋げる

他部署を動かす「エスカレーション内容」のフォーマット化

エスカレーション内容とは?
CS部門では解決できない高度な技術的問題や、他部署の対応が必要なクレームなどが発生した際に、上位の管理者や関連部署へ引き継ぐために整理された報告データのことです。

質の高いVOCを収集できても、それがCS部門の中に留まっていては意味がありません。技術的な不具合を開発部門に報告したり、解約の兆候を営業部門に連携したりする際のエスカレーション手法を最適化する必要があります。

他部署へ連携する際、「で、結局お客様は何が言いたいの?」と突き返される原因は、報告内容が整理されていないことにあります。

「事象・影響範囲・顧客の要望・CSからの提案」という定型フォーマットを用いて情報を渡し、差し戻しを防ぐ手法が有効です。

エスカレーションは単なるクレームのパス回しではありません。VOCの報告とセットで、「FAQのこの部分が分かりにくいため、表現を〇〇に変更すべき」といった現場視点の解決策(導線設計の改善案)まで提示する運用ルール化が、他部署の壁を越えて全社的な改善を推進する鍵になります。

エスカレーション定型フォーマット

「他部署への差し戻しを防ぐエスカレーション」の定型フォーマットを、実践で使いやすいように表(テーブル)にまとめました。報告時のテンプレートとしてそのままご活用いただけます。

項目記入すべき内容(客観的事実・ファクトベース)記入例(記事内の要素から作成)
① 事象いつ・どこで・何が起きたのか(エラーコード等含む)ログイン画面にて、エラーコード「E001」が表示されてログインできない。
② 影響範囲どの範囲のお客様に影響が出ているか当該顧客だけでなく、同様の問い合わせが本日〇件発生中。
③ 顧客の要望お客様が最終的にどうしたいと求めているかパスワードの再発行手順、およびエラーの迅速な解消を知りたいとのこと。
④ CSからの提案
(現場の改善案)
現場視点での解決策や、FAQ等の導線改善案エラー解消の手配と合わせ、FAQの「パスワード再発行」の表現が分かりにくいため、表現を〇〇に変更すべきと提案します。

重要なのは「事実(ファクト)のみを簡潔に書くこと(主観や感情を入れない)」と、「CSからの提案(現場の気づき)をセットにして渡すこと」です。他部署からの「で、結局何が言いたいの?」という突き返しを劇的に減らすことができます。

検索データとVOCの統合によるFAQの即時改善

電話で収集したVOCは、鮮度が命です。月に1回の定例会議で報告するのを待つのではなく、収集したその日のうちに顧客の自己解決を促すための導線改善に活用するサイクルを構築します。

特に重要なのが、通話履歴や音声テキスト化データに含まれる「顧客の生の話し言葉」の抽出です。お客様が電話口で使っていた独自の表現やキーワードを、直ちにFAQサイトの検索用メタタグや記事のタイトルに反映させます。

顧客の言葉とFAQの言葉を一致させるこのアジャイルな更新サイクルを回すことで、「検索したけれど答えが見つからずに電話をしてくる」という事態を防ぎ、結果として明日以降の入電数を確実に減らすことができます。

VOCは集めて満足するのではなく、即座に検索環境の整備に還元して初めて価値を生みます。

まとめ

コールセンターのVOC収集を、オペレーター個人の気合と根性による入力に頼り続けていると、現場が疲弊するだけでなくデータの質も著しく低下します。

正確で価値のあるデータを集めるには、オペレーターが迷わず直感的に選べる「その他を排除した分類タグの設計」と、主観を入れずに事実のみを記録する要約ルールが不可欠です。

また、音声テキスト化やAI要約などのテクノロジーを積極的に活用して入力工数を削減しつつ、最終的な現場の気づきの追記や、FAQ改善に向けたエスカレーションといった、人間にしかできない業務にリソースを集中させる導線設計を構築することが重要です。

お客様の声を最も解像度高く理解しているのは、毎日電話口で真摯に向き合っている現場の担当者です。

まずは現状のCRMの分類タグのリストを見直し、誰も使っていない死にタグや、とりあえず選ばれている「その他」タグを削除することから始めてみませんか。

入力画面の整理という小さな一歩が、収集されるデータの質を劇的に引き上げ、ひいては組織全体の改善に繋がります。

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FAQ・よくある質問

Q1

分類タグの設計で「その他」を作ってはいけない理由は?

A

「その他」という逃げ道があると、判断に迷ったオペレーターが処理を早く終わらせるために必ずそれを選び、分析に使えないデータが大量に生まれるからです。タグは「製品の不具合起因」「案内導線の不備」など、次にアクションを起こすべき部署が明確になる単位で設計することが求められます。

Q2

音声テキスト化とAI要約ツールの使い分けは?

A

音声テキスト化は通話音声を自動で文字に変換し、タイピングの手間とACWを削減する技術です。一方、AI要約ツールはその数千文字のテキストを「事象・原因・要望」などの定型フォーマットで要約する技術で、他部署が読める形に整える役割を担います。両者は組み合わせて使うもので、目的が異なります。

Q3

VOCを他部署へエスカレーションする際の効果的な方法は?

A

「事象・影響範囲・顧客の要望・CSからの提案」という定型フォーマットで情報を渡すことが有効です。主観や感情を排除した事実ベースの記述に加え、「FAQのこの表現を変更すべき」といった現場視点の改善案をセットで提示することで、他部署からの差し戻しを大幅に減らせます。

ヘルプドッグ編集部
筆者

ヘルプドッグ編集部

セルフサポートやカスタマーサポート運用に関する知見をもとに、現場で役立つ情報をわかりやすく発信しています。 実際の運用課題や改善事例を踏まえながら、自己解決率向上とサポート業務の効率化につながるヒントをお届けします。