コールセンターでのAI導入事例:導入のメリット・注意点も解説

AI技術はコールセンターに人材不足解消や業務効率化、コスト削減など多様な利益をもたらします。時代のニーズに適応するコールセンターを構築するためには、もはや必要不可欠なツールといえるでしょう。

本記事では、コールセンターでのAI導入事例や活用メリット、注意ポイントなどを解説しています。自社のコールセンターに課題を抱えている方は、ぜひ参考にしてください。

目次

コールセンターが抱えている問題点

まずは、現状のコールセンターが抱えているさまざまな問題点を紹介します。
コールセンター業界全体に共通する以下のような課題は、AIの導入による抜本的な仕組み改革で解決可能です。

問題点1 人件費がかさむ

コールセンターの構造上、不要な人件費がかかりすぎてしまう問題があります。人件費の無駄が多い原因には、以下のようなものが挙げられます。

・問い合わせ対応にまつわる一連の業務が煩雑
・業務量の繁閑差が大きく人員調整が難しい
・新人教育に時間がかかる

コールセンター業務の生産性の低さを改善し、無駄なコストを削減することが求められています。

問題点2 オペレーターの応対品質にばらつきがある

人による問い合わせ対応に依存している限り、応対品質を均一化するのは限界があります。マニュアル整備や研修に多大な費用と手間をかけなければ、すべてのオペレーターの応対スキルを向上させることは難しいでしょう。

コールセンターの目的は顧客満足度を向上させることです。企業のブランディング向上のためにも、オペレーターのスキルに依存することなく、対応を均質化できる仕組み改革が必要です。

問題点3 人手不足が深刻

近年はコールセンター業界の人材不足に拍車がかかっています。オペレーターの採用難・育成難が続いていることが主な原因です。

オペレーターの高い離職率も業界が長年抱えている問題です。人手に頼らずとも安定した応対品質を保つことや、少ない人数でも業務が滞りなく進むよう業務効率を改善することが喫緊の課題だといえます。

問題点4 顧客が求める対応スピードに業務が追いつかない

近年は、日常のコミュニケーションにおいてメールやチャットなどの即時性のあるツールを活用することが一般的になりました。リアルタイムでのやり取りに慣れている顧客は、問い合わせ対応にタイムラグが生じると不満を感じやすくなります。

架電時の待ち時間が長いことや、問い合わせに24時間対応できないことが顧客満足度の低下につながり、重大なクレームを引き起こしている事例も多いです。業界全体の人手不足や採用コストの面を鑑みると、オペレーター増員以外の方法でこれらの課題を解決する必要があるでしょう。

コールセンターでのAIサービスの導入事例

コールセンター向けのAIサービスを導入した各社の事例を紹介します。自社で抱える問題に対して、最適な活用方法を模索する際にぜひ参考にしてください。

通話内容テキスト化による業務効率化(NTTネクシア)

株式会社NTTネクシアは、NTTコミュニケーションズ株式会社が開発した音声認識システム「COTOHA Voice Insight」を導入しています。
オペレーターの採用や育成が思うように進まず、人材不足が積年の課題であった株式会社NTTネクシア。通話内容を録音したデータのチェックや書き起こしに時間がかかり、人材不足が深刻なコールセンターの大きな負担になっていました。

音声認識システムを利用することで、以下の効果がありました。

・録音した通話内容の素早いテキスト化を実現し、人が文字起こしをする必要がなくなった
・テキストデータのダウンロードにインターネット通信を利用しないため、情報漏えいリスクが軽減された

AIの導入によって、録音データを聞いて応対品質をチェックする作業が1応対あたり30分短縮され、クレーム発生時の報告書作成にかかる手間がゼロになりました。人材不足をカバーする業務効率化を実現しています。

(参照 COTOHA Voice Insight導入事例 株式会社NTTネクシア

AI音声認識でVOC収集を最適化(ヤマトコンタクトサービス)

ヤマトコンタクトサービス株式会社は、株式会社アドバンスト・メディアの音声認識ソリューション「AmiVoice Communication Suite Cloud」を導入しています。
VOC(お客様の声)を生かして顧客のユーザビリティを高め、顧客体験の改善につなげたい考えがあり、AIを活用することを決定しました。
導入当初は音声の認識率が低いことが課題でしたが、原因は顧客アプローチにあることが判明しました。そのため、オペレーターのトレーニングと専門用語の辞書登録を行いながら、ヤマトコンタクトサービスに最適化したVOC収集メソッドを確立しました。

その結果、VOCの取得率は130%超、応対品質のスコアは平均して10%向上に成功しています。
音声認識を活用することで、オペレーターの顧客アプローチが改善され、問い合わせの解決速度向上にも寄与した事例です。

(参照 AmiVoice Communication Suite Cloud導入事例 ヤマトコンタクトサービス株式会社

AIによるデータ抽出でFAQ生成に費やす時間を大幅削減(キューアンドエー株式会社)

キューアンドエー株式会社は、東芝デジタルソリューションズ株式会社が開発した「RECAIUS ナレッジエディタ」を導入してFAQ生成に活用しています。
AI導入前は人の手ですべてのFAQを作成していたため、生成に膨大な時間がかかり内容も重複することが課題でした。

RECAIUS ナレッジエディタは蓄積した膨大な応対履歴から瞬時にFAQにすべき疑問を抽出、既存のFAQと突合します。結果として、最適なFAQをハイスピードで作成できるのです。
導入前と比較してFAQ生成に費やす時間の50%を削減し、顧客満足度向上も実現した事例です。

(参照 RECAIUS ナレッジエディタ導入事例 キューアンドエー株式会社

通話記録分析でアポ獲得率を短期間で改善(NTTマーケティングアクト)

株式会社NTT マーケティングアクトは、株式会社RevCommのコールセンターサポートサービス「MiiTel(ミーテル)」を導入しています。
コンタクトセンター業務を4社に委託しているNTTマーケティングアクト。オペレーターのマネジメント不足によりトークスクリプトやアポイントの質のばらつきが大きく、応対品質の均一化が喫緊の課題でした。

ミーテルを導入したことで、以下の効果がありました。

・通話記録を分析することで、実績を上げられるトークスクリプトを作成できた
・通話記録分析には文字起こし機能を活用し、オペレーターを評価する時間を削減できた
・抽出されたキーワードからアポが取れない通話の特徴を分析し、オペレーター教育に活用できた

上記の結果、コールセンター全体でのアポイント取得率を13%向上させることに成功しました。AIを活用し、企業をまたいだトーク平準化を実現しています。

(参照 MiiTel導入事例 株式会社NTT マーケティングアクト

自然言語AI検索エンジンで問い合わせ数を削減(バッファロー)

株式会社バッファローは、コールセンターシステムを提供するベルシステム24の自然言語AI検索エンジンを活用しています。
バッファローの既存FAQシステムの課題は、顧客が最適な回答にたどり着くまでに時間がかかることでした。顧客のユーザビリティを向上させるFAQを作成するために、自然言語AI検索エンジンを活用することを決定したのです。

自然言語処理AIには、以下の特徴があります。

・日常生活で使うあいまいな表現を含んだ文章でも適切な答えを導き出せる
・チャットボットよりも正答までに至るプロセスが短いため、効率的にAIのチューニングができる

最適なFAQを提供できた結果として、メールによる問い合わせ数は半分以下に減少しました。AIによりスピーディな課題解決が実現でき、顧客体験の大幅な改善に役立っています。

(参照 自然言語AI検索エンジン導入事例 株式会社バッファロー

実技試験の電話対応を自動化(一般社団法人 CSスペシャリスト検定協会)

一般社団法人 CSスペシャリスト検定協会は、ディー・キュービック株式会社のAI電話自動応答サービスを導入しています。
CSスペシャリスト検定の実技試験内容は電話応対です。事務局員が出社して一人ひとりの試験に対応しなければならず、業務負担や人件費の面で大きな課題を抱えていました。
さらに受検者が応対した内容は、後日事務局員が音声を聞きなおして評価していました。ひと月に1,000通話以上の音声を聞いてフィードバックを作成する業務に、膨大な時間をとられていたのです。

AI電話自動応答サービスを導入することで、以下の効果を得ることに成功しました。

・実技試験に対する人手が不要になった
・試験の受付時間が「平日19:00まで」から「24時間365日」になり受検者の利便性が向上した
・通話内容のテキスト化により、フィードバックにかかる時間を80%低減できた

AIにより事務局員の人件費を削減でき、受検者のユーザビリティ向上も同時に実現しました。

(参照 AI電話自動応答サービス導入事例 一般社団法人 CSスペシャリスト検定協会

AIで証明書発行業務を自動化(SBI生命)

SBI生命保険株式会社は、モビルス株式会社のAI電話自動応答システム「MOBI VOICE」を導入しています。
毎年、SBI生命保険株式会社では年末調整を控えた10月~12月に生命保険料控除証明書にかかわる問い合わせが急増していました。顧客の待ち時間が増加することや、短期間のオペレーター増員を余儀なくされることが課題でした。

MOBI VOICEを導入することで、生命保険料控除証明書の再発行受付が24時間可能になりました。RPA(反復作業自動化ロボット)と連携し、受付から発送手続きまですべて自動化することに成功しています。

導入初年度は本格的な周知を控えたトライアル期間であったにもかかわらず、問い合わせの25%の再発行手続きを全自動で完了できました。
AIの活用が、オペレーターの負担軽減と顧客満足度の向上に寄与している事例です。

(参照 MOBI VOICE導入事例 SBI生命保険株式会社

コールセンターでのAIチャットボットの導入事例

チャットボットはコールセンターでの活用が一般的になりつつあるAIです。導入を検討している方はぜひ参考にしてください。

大規模な設備投資をせずAIチャットボットで問い合わせ対応環境を構築(三井住友海上)

三井住友海上火災保険株式会社は、東芝デジタルソリューションズ株式会社のチャットボットサービス「コメンドリ」を導入しています。
新たなサービスを提供するにあたって、問い合わせ経路を構築すべくコールセンターの設置を検討していた三井住友海上。コールセンター設置にかかる金銭コストや時間コストが膨大になる点に懸念を抱えていました。
新領域のビジネス構築局面だったため、リスク回避の観点からも大規模な設備投資を避け、AIチャットボットの導入に踏み切りました。

AIチャットボット「コメンドリ」には、以下のような特徴があります。

・シナリオレスで活用できるため、FAQを取り込むと短期間で運用を開始できる
・ユーザーにも使いやすい設計で、疑問点をうまく説明できなくても的確な回答を導いてくれる

「ユーザーが使いやすいかどうか」は、AIチャットボットを比較検討するうえでこだわりを持つべきポイントです。
費用をかけずに顧客満足度の向上につなげられるのが、AIチャットボットの魅力といえるでしょう。

(参照 コメンドリ導入事例 三井住友海上火災保険株式会社

コールセンターでAIを導入するメリット

導入事例からもわかるとおり、コールセンターにAIを導入することで得られるメリットは多岐にわたります。

・顧客満足度や顧客体験の向上につながる
・顧客の声をマーケティング戦略に活用できる
・応対品質を均一化できる
・オペレーターの業務負担を軽減できる

ここでは、どのような企業でも共通して得られる上記のメリットを紹介します。

メリット1 顧客満足度・顧客体験の向上につながる

コールセンターにAIを導入することで、顧客は24時間いつでも疑問が解決できるようになります。
電話の待ち時間も最小限になるため、顧客満足度の向上を実現できるでしょう。

また、AIを活用することで企業と顧客のコンタクトが容易になる効果もあります。商品やサービス購入前後のサポートが密に提供できるため、顧客体験の向上にも寄与します。

メリット2 顧客の声をマーケティング戦略に活用できる

コールセンターに集積したVOCは、適切に分析しつつ他部署と連携を図ることで、マーケティング戦略を練るうえでの重要な経営資源として活用できます。

AIは大量のデータを扱うことに向いているため、人の手でVOCを分析するのと比較して圧倒的に手間とコストを削減できます。人件費を抑えつつリソースを最大限活用するために、AIの導入は最適な投資といえるでしょう。

メリット3 応対品質を均一化できる

顧客との通話音声は、AIを導入することで自動的にテキスト化できます。顧客の情報共有が容易になるため、対応の重複や漏れを防ぐことにつながるでしょう。

通話履歴がテキスト化されることで、応対のフィードバックも容易になります。社内FAQの作成やオペレーターの研修などに有効活用できるため、コールセンターの応対品質均一化を目指せます。

メリット4 オペレーターの業務負担を軽減できる

コールセンター業界における最大の課題は、オペレーターの業務負担が大きく、離職率が高い水準で推移していることです。AIを導入することで、よくある質問や簡単な質問へのオペレーター対応が不要になるため、業務負担の集中を防ぐことができます。

AIは高度なFAQ生成にも寄与するため、顧客の自己解決を促し問い合わせ数自体を減らす効果もあります。業務負担軽減と人件費削減を同時に実現可能なツールだといえるでしょう。

コールセンターでAIを導入する際の注意点

AIはコールセンターに多大な利益をもたらす反面、導入する際は気を付けたいポイントもあります。ここではAIを活用する前に知っておくべき3つの注意点を紹介します。

注意点1 AI導入の成果を最大化するには企業側の努力が必要

AIを導入することで、手放しに業務が効率化するわけではありません。たとえば音声認識AIは、導入当初は思ったとおりの成果を得られないケースも多く見受けられます。
企業独自の専門用語やカタカナ言葉などが多いと、認識率が下がることがあるのです。頻出単語を辞書登録することや、オペレーターの話し方を改善することなどを通じて、企業側もAIに歩み寄る必要があります。

また、AIは使えば使うほど精度が向上する性質があります。ホームページを最適化するなどして顧客に積極的に活用してもらう工夫が不可欠となるでしょう。

注意点2 「AIもミスを起こす」可能性を考慮する

AIも時に判断ミスをします。しかし現在の世の中には、AIが犯した問題の責任の所在はどこにあるのか、明確な指針がありません。
AIがより一層普及するにつれ、法的なルール制定も進むと予想できますが、現状は自社内でルールを取り決めておくしか方法がありません。

万が一の際のリスク管理について、事前に協議しておく必要があります。

注意点3 AI導入後に発生する費用もある

AIに対するコストは、導入後も発生することに注意が必要です。常に最適化されたAIのメリットを享受するためには、導入後の定期メンテナンスが欠かせません。

定期メンテナンス費用をはじめとするランニングコストをあらかじめ明確にし、費用対効果を検証したうえで導入を検討しましょう。

まとめ

本記事では、コールセンターにおけるAI導入事例やメリット、注意点を説明しました。時代の変化に伴い、顧客のニーズも多様化している昨今。新たな顧客体験を創造するために、コールセンターにも変革が求められています。

AIは、業界全体が抱えている問題を解消できる可能性を秘めています。各社の導入事例を参考に、自社の課題を解決できる活用方法を検討してみてはいかがでしょうか。

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