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コールセンターのKPI計算式と現場が疲弊しない改善ノウハウ

ヘルプパーク編集部
コールセンターのKPI計算式と現場が疲弊しない改善ノウハウ

経営層からKPIの達成を厳しく求められるものの、具体的にどの数値をどう改善すればいいか分からない。AHT(平均処理時間)の短縮を現場のオペレーターに強いた結果、対応品質が落ちてクレームが増加してしまった。システム上の数値は改善しているのに、現場の疲弊感との間に大きなギャップがある。

日々のセンター運営で、このようなジレンマにお悩みではないでしょうか。

数値は嘘をつきません。しかし、数値「だけ」を見て現場を管理しようとすると、必ず運用は破綻します。

日々お客様と最前線で向き合うオペレーターに無理な目標を押し付けるのではなく、なぜその数値が悪化しているのか、環境や導線に原因はないかを見極めることこそが管理者の本来の仕事です。

本記事では、コールセンター運営において不可欠な10のKPIについて、定義と正確な計算式を網羅的に解説します。

そして、それらの数値を「FAQの検索環境整備」や「問い合わせ導線の最適化」といった具体的な現場改善へと繋げるための、実用的なノウハウをお伝えします。

【接続品質】顧客を待たせないための指標と計算式

応答率と放棄呼率の定義と構造

コールセンターの品質を語る上で、最も基本となるのが「お客様からの電話がどれだけ確実につながっているか」を示す接続品質の指標です。

応答率とは?
コールセンターに着信したすべての電話のうち、オペレーターが実際に応答できた電話の割合を示す指標です。

放棄呼率(アバンダンレート)とは?
着信した電話のうち、オペレーターが応答する前にお客様が待ちきれずに電話を切ってしまった、あるいはシステム側で切断されてしまった割合を示します。

これらを算出する計算式は以下の通りです。
・応答率(%) = (応答呼数 ÷ 着信呼数) × 100
・放棄呼率(%) = (放棄呼数 ÷ 着信呼数) × 100

ここで注意しなければならないのが、PBX(構内交換機)上の「着信呼数」の定義です。自動音声(IVR)の途中で切断された呼を含めるか否かなど、システム上の定義を厳密に統一しておかなければ、応答率と放棄呼率を足しても100%にならないという事態が発生し、正確な検証ができません。

また、応答率が低いからといって「現場の人数を増やしてカバーする」という力技には限界があります。根本的な解決を図るためには、よくある質問をお客様自身で解決できる「FAQサイトへの導線設計」を見直し、コールセンターへの着信呼数そのものを適切にコントロールする運用ルールの定着化が必須となります。

SL(サービスレベル)による待ち時間の可視化

電話がつながったかどうか(応答率)に加えて、「どれくらい待たされたか」という時間的な品質を測るのがサービスレベルです。

SL(Service Level:サービスレベル)とは?
あらかじめ設定した「規定時間内(例:20秒以内)」に、オペレーターが応答できた着信の割合を示す品質指標です。単なる応答率よりも、顧客の体感的な満足度に近い数値となります。

計算式は以下の通りです。
・SL(%) = (規定時間内に応答した呼数 ÷ 着信呼数) × 100

一般的に「20秒以内に80%応答」といった目標値が掲げられることが多いですが、これをすべてのコールセンターがそのまま鵜呑みにするのは危険です。

取り扱う商材の緊急度や、業界水準によって、求められる待機時間の許容範囲は大きく変動する傾向があります。

自社のサービスにおいて、お客様がどの程度の待ち時間であればストレスを感じないのかを適正に見極め、独自の目標値を設定することが重要です。

【生産性・効率】現場の対応工数を分解する指標

AHT(平均処理時間)とATT・ACWの関係

コールセンターの生産性を測る上で最も注視されるのが、1件の電話対応にかかる全体の時間です。課題を特定するためには、これを「通話」と「後処理」に分解して考える必要があります。

AHT(Average Handling Time:平均処理時間)とは?
お客様との通話開始から、電話を切った後のデータ入力などの処理が終わるまでにかかった、1件あたりの平均トータル時間です。

ATT(Average Talk Time:平均通話時間)とは?
保留時間を含めた、お客様と実際に通話している平均時間のことです。

ACW(After Call Work:平均後処理時間)とは?
通話終了後に行う、対応履歴の入力や関連部署への連絡など、事務処理にかかる平均時間のことです。

これらの関係は「AHT = ATT + ACW」という計算式で表されます。ここで管理者が陥りがちな間違いが、現場のオペレーターに「ATT(通話時間)を短くしろ」と指示を出してしまうことです。

お客様との対話を無理に切り上げようとすることは、顧客満足度の著しい低下やクレームを招くため厳禁です。改善すべきターゲットは常にACW(後処理)です。

社内向けFAQやナレッジベースの「検索環境」を整備し、オペレーターが保留中や通話後に情報を探す手間を省く仕組みを作ること。これが、最も効果的かつ現場の負担を減らすAHT短縮のアプローチです。

CPH(1時間あたりの対応件数)によるスキル評価

個々のオペレーターの対応スキルや、センター全体の処理能力を客観的に評価するための指標がCPHです。

CPH(Calls Per Hour)とは?
オペレーター1人が、1時間あたりに処理(応答から後処理まで完了)できる平均コール数のことです。

CPH = 総対応件数 ÷ 稼働時間(時間)の計算式で算出します。

CPHは高ければ高いほど効率的であると言えますが、これを個人の評価だけに留めておくのはもったいない使い方です。

現場のマネジメントにおいては、CPHが常に高い優秀なオペレーターの対応履歴や業務フローを徹底的に分析することが重要です。

彼らが「どの社内FAQを素早く参照しているのか」「お客様から情報を引き出すために、どのようなヒアリングフローを使っているのか」を洗い出します。

そして、その暗黙知をテンプレート化し、チーム全体に共有する運用ルールを作ることで、特定の個人に依存せずセンター全体の生産性を底上げすることが可能になります。

【マネジメント・コスト】センターの健全性を測る指標

稼働率によるオペレーターの疲労度チェック

コールセンターが適正な人員配置で運営されているか、オペレーターに無理がかかっていないかを確認するための重要な指標が稼働率です。

稼働率(Occupancy Rate)とは?
オペレーターが給与の発生する勤務時間(ログイン時間)のうち、実際に顧客対応(通話、保留、後処理)に直接費やしている時間の割合を示す指標です。

稼働率は以下の式で算出します。
稼働率(%) = (通話時間 + 保留時間 + 後処理時間) ÷ (ログイン時間 – 離席・休憩時間) × 100 

この数値を見る際、経営視点では「100%に近いほど無駄がない」と勘違いされがちですが、それは大きな間違いです。人間が息つく暇もなく電話を取り続けることは不可能です。

一般的に、稼働率が80〜85%を継続的に超えると、オペレーターの精神的・肉体的疲労が急速に蓄積し、ミスが増加するだけでなく離職率の跳ね上がりに直結します。

高すぎる稼働率は「現場の悲鳴」と捉え、人員の補充や自己解決チャネルへの誘導強化を直ちに行うシグナルとして機能させるべきです。

CPC(1件あたりのコスト)とコスト削減の罠

センターの運営効率を財務的な視点から評価する指標がCPCです。コストセンターと見なされがちなサポート部門において、厳しくチェックされる項目です。

CPC(Cost Per Call:1件あたりのコスト)とは?
電話1件の対応を処理するために、コールセンター全体でいくらの費用がかかっているかを示す指標です。

計算式は以下の通りです。

CPC = センター運営の総コスト(人件費+システム費+通信費・賃料等) ÷ 総対応件数

利益に直結するためCPCを下げる努力は必要ですが、その手法を間違えると運用が崩壊します。CPCを下げるためにオペレーターの時給を抑えたり、業務に必要な支援ツールを解約したりするのは本末転倒です。

モチベーションの低下や業務効率の悪化を招き、結果的にFCR(初回解決率)の低下などより深刻な問題を引き起こします。

健全にCPCを適正化する唯一の道は、チャットボットや充実したFAQサイトを構築し、パスワード忘れなどの単純な問い合わせをシステムに吸収させる「チャネルの最適化」です。

人が対応すべき複雑な問い合わせにのみ人的リソースを集中させることが重要です。

FCR(初回解決率)が示す真の顧客満足度

数あるKPIの中でも、顧客満足度や企業の信頼維持に最も直結する究極の指標とも言えるのがFCRです。

FCR(First Call Resolution:初回解決率)とは?
お客様からの問い合わせに対し、折り返しや別部署への転送、再度の入電を発生させることなく、最初の1回の電話対応で疑問や問題を完全に解決できた割合のことです。

コールセンターの運用において、前述のAHT(平均処理時間)とこのFCRは、しばしばトレードオフの関係に陥ります。

AHTを無理に短縮しようとすると、確認不足による誤案内や、説明不足によるお客様の理解不足が生じ、結果としてFCRが悪化(再入電が増加)するという内部矛盾が生じます。

現場の運用ルールとしては、一時的にAHTが延びたとしても「少しお待ちいただいてでも正確な回答をFAQから探し出し、1回の電話で確実に解決しきる」ことを推奨すべきです。

1回で解決できれば再入電が防げるため、長期的に見ればセンター全体の総対応工数とコストの削減に繋がります。

コールセンター現場で利用されるKPIの一覧表

分類KPI名(略称)どのような指標か(計算式)現場を守るための優しいポイント
接続品質応答率お客様の電話にどれだけ出られたかの割合です。

(応答呼数 ÷ 着信呼数) × 100
人を増やすだけでなく、FAQへの誘導など「お電話を減らす工夫」も一緒に考えたい指標です。
放棄呼率
(アバンダンレート)
お客様が待ちきれずに切ってしまった割合です。

(放棄呼数 ÷ 着信呼数) × 100
システムの都合で切れた電話が含まれていないか、定義を優しく見直してあげることが大切です。
SL
(サービスレベル)
「20秒以内」など、目標時間内に出られた割合です。

(規定時間内に応答した呼数 ÷ 着信呼数) × 100
窓口の緊急度に合わせて、お客様もオペレーターも焦らない「適正な目標値」を設定しましょう。
生産性・
効率
AHT
(平均処理時間)
1件の対応にかかるトータルの時間です。

ATT(通話) + ACW(後処理)
無理に短縮を求めると現場が苦しみます。まずは「後処理(ACW)」を楽にする仕組み作りからです。
ATT
(平均通話時間)
保留も含めた、お客様と直接お話ししている時間です。ここの時間を無理に削ろうとすると、お客様の不満やクレームに繋がりやすいため要注意です。
ACW
(平均後処理時間)
対応履歴の入力など、通話後の事務処理の時間です。検索しやすいマニュアルを用意するなど、管理者が一番サポートしてあげたいポイントです。
CPH1人が1時間に対応できる件数です。

総対応件数 ÷ 稼働時間
成績で評価するだけでなく、優秀な方の「上手な対応のコツ」をチームに共有する材料にしましょう。
マネジメント・
コスト
稼働率勤務時間のうち、実際にお客様対応に追われている割合です。

対応時間 ÷ 実際の勤務時間 × 100
80〜85%を超えると現場の疲労が限界に近づきます。高すぎる数値は「現場のSOS」として受け止めます。
CPC電話1件あたりにいくら費用がかかっているかの指標です。

センター総コスト ÷ 総対応件数
ツール代や時給を削るのではなく、簡単な質問はFAQサイト、AIチャットボットに任せるなど、賢い適正化が推奨されます。
FCR
(初回解決率)
最初の1回のお電話で、お客様の疑問を完全に解決できた割合です。多少通話時間が延びてでも、焦らず1回で丁寧にお悩みを解決していただくことが、一番の貢献に繋がります。

まとめ

コールセンターのKPIは、「接続品質」「生産性」「マネジメント」という3つの軸から多角的に検証して初めて、現場の真の課題が浮き彫りになります。

また、これらの数値を算出するための定義をシステム上で厳密に統一しておかなければ、正しい現状分析はスタートできません。

最も注意すべきは、AHTの短縮やCPCの削減といった目標を「現場スタッフの個人の努力や我慢」に依存してはならないということです。通話時間を削るよう急かすのではなく、社内FAQの検索環境を整備して後処理の時間を減らすこと。応答率を人員の数だけでカバーするのではなく、お客様が自己解決できるWeb上の導線を設計すること。こうした「仕組みの改善」こそが、KPI達成の鍵となります。

KPIの数値が悪化しているとき、現場のオペレーターはすでに限界まで頑張っていることがほとんどです。管理者の役割は、彼らのお尻を叩くことではなく、足枷となっている業務フローやシステムの不備を取り除くことです。

まずは「AHTが長い上位の問い合わせ内容」を特定し、それが既存のFAQでより早く解決できる形に書き直せないか、現場のスタッフと一緒に検証することから始めてみてください。

現場に寄り添い、仕組みを変えれば、必ず数字は後からついてきます。

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FAQ・よくある質問

Q1

AHTとFCRがトレードオフになる原因と対処法は?

A

AHTを短くしようとすると確認や説明が不十分になり、再入電が増えてFCRが悪化するという矛盾が生まれます。一時的にAHTが延びても、FAQから正確な回答を探して1回の電話で解決しきることを優先する運用ルールを設けると、長期的には再入電が減り、センター全体の総対応工数とコストの削減につながります。

Q2

稼働率80〜85%超えが危険とされる理由は?

A

稼働率がこの水準を継続的に上回ると、オペレーターの精神的・肉体的疲労が急速に蓄積し、対応ミスの増加や離職率の上昇に直結するためです。経営視点では100%に近い方が効率的に見えますが、人が息つく暇なく電話を取り続けることは不可能です。高すぎる稼働率は現場のSOSと捉え、人員補充や自己解決チャネルへの誘導強化のシグナルとして機能させることが重要です。

Q3

応答率と放棄呼率を足しても100%にならない場合の確認ポイントは?

A

PBX上の「着信呼数」の定義がずれている可能性があります。具体的には、IVR(自動音声)の途中で切断された呼を着信呼数に含めるかどうかなど、システム上の集計ルールが統一されていないケースが典型的です。両指標の計算に使う着信呼数の定義を厳密に揃えることで、正確な検証ができるようになります。

ヘルプドッグ編集部
筆者

ヘルプドッグ編集部

セルフサポートやカスタマーサポート運用に関する知見をもとに、現場で役立つ情報をわかりやすく発信しています。 実際の運用課題や改善事例を踏まえながら、自己解決率向上とサポート業務の効率化につながるヒントをお届けします。