チェックリストとは、作業内容などを一覧にしたものです。実際に完了した作業をレ点で消し込むことで、作業の抜けや漏れを防ぐことができます。
しかし、チェックリスト自体が不完全であったり、あまりにも非効率であったりする場合、現場で使用されずに形骸化してしまう問題が発生することがあります。
この記事では、使いやすいチェックリストの作成方法や、現場にチェックリストを定着させる方法を解説します。
チェックリストを活用するメリット
チェックリストの作成方法を知る前に、チェックリストがあることで得られるメリットを説明します。
1. ミスを予防する
人間は仕事を進める中でミスをしてしまう生き物であり、どんなに作業に慣れている人でも抜けや漏れが発生する可能性があります。チェックリストを使用すれば、自分が行った作業を確認しながら業務を進められるため、このような問題を大幅に防ぐことができます。
また、過去にミスが多かった作業があれば、再発防止の対策としても活用できます。
2. 業務の全体像が把握できる
チェックリストには業務の一連の流れで必要な行動が記載されるため、自分が行っている作業の全体像を視覚的に把握できます。ゴールを見据えた働き方をすることで、今行うべきことをしっかり理解した上で作業を進められるのです。
3. 業務を効率化できる
チェックリストがない会社では、細かな作業を担当者一人ひとりが判断して段取りを組んで進める場合があります。非常に効率よく優れた段取りで作業を進められる担当者もいれば、非効率な作業を続けてしまう担当者もいるでしょう。
効率の良い作業の進め方でチェックリストを作成すると、全担当者の業務効率を向上させ、組織の生産性を高めることができます。
4. 簡単に更新可能
チェックリストはマニュアルのように更新作業に時間がかかりません。そのため、業務改善時や変更時には簡単にチェックリストを最新の状態に更新できます。
5. 引き継ぎが楽になる
チェックリストがあれば、自分が行っている業務が「見える化」されます。そのため、業務が一人の担当者しか把握できていない状態である「業務の属人化」を防ぎ、担当者の変更時にも、チェックリストを主体としたスムーズな引き継ぎが可能になります。
チェックリストの基本的な作り方
ここでは具体的なチェックリストの作り方の手順を紹介します。この流れに沿ってチェック項目を作成すれば、スムーズにチェックリストを作成できるでしょう。
手順1: チェックリストの作成方法を決定する
チェックリストは紙データと電子データの2種類に分けられます。現場がデバイスを持ち込めない環境であれば紙のチェックリストを活用し、パソコンやスマホなどのデバイスを使える環境なら電子データの利用を考えましょう。
管理の面から考えると、ペーパーレスである電子データのチェックリストがおすすめです。利用者の使いやすさも考慮して、チェックリストの種類を決めてください。
手順2: 業務内容を洗い出す
時系列に沿って業務内容を洗い出します。実際に業務を行っている担当者から話を聞いて洗い出すようにしてください。担当者にしか分からない確認ポイントや注意事項がある場合が多いためです。この段階では、チェックリストの形式にこだわらず、自由に業務内容を挙げていきましょう。
また、紙データと電子データのどちらが使いやすいか、意見を聞くのも良いでしょう。手順1と手順2は同時に進めても問題ありません。
手順3: 業務内容からチェック項目を作成する
洗い出した業務内容からチェック項目を作成します。業務内容をある程度のまとまりで区切り、その単位でチェック項目を作成するようにしましょう。
手順4: ミスを予防する工夫を入れる
チェックリストの目的の一つはミスの防止です。過去に発生したトラブルやミスの中で、特にリスクが大きい業務内容にはダブルチェックができるような工夫を取り入れましょう。
該当のチェック項目を太字にしたり、カラーにしたりするなど、視覚的に注意を促す方法も効果的です。
手順5: 現場の意見を集めて改善する
完成したチェックリストはそのまま運用せず、現場の担当者に渡してフィードバックをもらいましょう。必要な改善点を修正した上で、実際の運用に進んでください。
チェックリスト作成前におさえたいポイント
チェックリストを作成する前に、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
1. チェックリストの作成目的・利用シーンを考える
作成するチェックリストが「何のために・誰が・いつ使用するのか」を明確にしましょう。この項目が不明確だと、チェックリストが業務の助けにならない可能性があります。
この3点を考慮することで、チェックリストのフォーマットや具体的な項目を決めやすくなります。
2. チェックリストを作成する業務の性質を考える
チェックリストの作成目的には、主に「作業の抜け・漏れを防ぐ」ことが挙げられます。しかし、すべての業務でミスを防ぐべきですが、その業務における「作業の抜け・漏れ」がどのような影響を与えるかを考えましょう。
例えば、一つのミスが重大な事故や大きな損失につながる業務では、他の業務よりも細かな確認項目を含むチェックリストを作成する必要があります。
チェックリストを作成する際のポイント
次に、チェックリストを作成する際に知っておくべきポイントをまとめました。
ポイント1: 簡潔な文章を心がける
チェックリストは誰が見ても短時間で内容を理解できるものでなければいけません。じっくり読み込まないと内容がわからないようなチェックリストにしないために、要点をまとめて簡潔な文章を使いましょう。
ポイント2: ワンポイントアドバイスを添える
担当者が休暇や異動で急に不在になった場合でも、チェックリストを見た代わりの担当者が問題なく作業できるように、ワンポイントアドバイスを添えておきます。特にコツが必要な作業では、このアドバイスが作業の質に大きな影響を与えるでしょう。
ポイント3: 曖昧な判断基準は避ける
チェックリストに曖昧な表現を使用すると、個人の解釈によって作業の質にばらつきが生じる恐れがあります。特に作業結果の良し悪しを判断する基準や注意が必要な事象の基準などは、可能な限り数値を使って明確に説明しましょう。誰がチェックリストを使っても同じ判断結果になるようにしてください。
チェックリストを現場に定着させるコツ
どんなに工夫してチェックリストを完成させても、現場で定着しなければ作成した意味がありません。チェックリストを現場に浸透させるには、いくつかのコツがあります。
コツ1: 手間のかかるチェックリストを作らない
チェックリストは作業中に確認・チェックを行う必要があるため、作業内容に適した量の項目を用意しましょう。項目が多すぎると、チェックリストが作業効率を落とし、現場の担当者に敬遠される可能性があります。
紙で管理する場合、毎日簡単にチェックリストを手に入れられる環境を整える、バインダーを用意して紛失しにくくするなどの工夫も有効です。
コツ2: 提出ルールを設ける
多くの従業員がいる現場ではチェックリストの管理が大変ですが、管理がきちんとできていないと適当な扱いをされがちです。
例えば、毎日終礼までにチェックリストを提出するなど、簡単なルールを設定しておくとよいでしょう。
コツ3: チェックリストの内容を最適なものにする
チェックリストの内容が実際の作業とかけ離れている、または曖昧すぎると、活用されないことがあります。
チェックリスト作成時には、業務を理解している担当者の意見を取り入れ、項目の削除や追加を行いましょう。また、曖昧な表現は避け、明確な内容のみを記載します。
コツ4: チェックリストの意味や目的を理解してもらう
チェックリストの意味・目的を理解していないと、ただチェックをするだけの作業になってしまい、その効果を得られません。
現場の担当者に「なぜチェックリストが必要なのか」「チェックリストを活用することで何が得られるのか」を研修などで伝え、トラブル事例も交えてチェックリストの重要性を理解してもらいましょう。教育後に担当者から疑問点や改善点を集めれば、より実践的なチェックリストが作成できます。
コツ5: チェックリスト機能のあるツールを活用する
チェックリストは紙で行う必要はありません。専用のツールを使えば、紙を管理する必要がなくなり、パソコンやスマホ、タブレットを使って簡単に内容確認とチェックができます。
現場の担当者だけでなく、管理に必要な労力も削減できるため、チェックリストの導入で業務が非効率になる心配もありません。
まとめ
チェックリストの作成方法や、チェックリストが現場で定着しない状態を防ぐコツについて説明しました。一つの会社でも、最適なチェックリストは業務や使用する環境によって異なります。そのため、業務ごとに使いやすいチェックリストを作成できるよう、柔軟な考え方を持つことが重要です。
また、チェックリスト機能のあるツールを導入することで、より効率的にチェックリストの管理・活用が可能になります。チェックリストの活用を検討している場合は、ツールの導入も選択肢の一つとして考えてみてください。