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社内用語は検索されない?辞書チューニングでヒット率を改善

ヘルプパーク編集部
社内用語は検索されない?辞書チューニングでヒット率を改善

マニュアルやFAQ記事を作成する際、製品の「正式名称」や社内で統一された「正しい用語」を使って丁寧に執筆されていることと思います。それなのに、「記事はあるのに見つからないという問い合わせが減らない」「キーワード検索でヒットしない」といったお悩みをお持ちではないでしょうか?

実は、私たち企業側が「正しい」と信じている言葉こそが、検索の壁になっていることがあります。私たちはつい正確な情報を伝えようとして専門用語や社内用語を使いたがりますが、検索対策において真に重要なのは「お客様が頭の中に思い浮かべ、検索窓に入力する言葉」です。

この記事では、お客様が実際に使う言葉と社内用語のギャップを認識し、記事本文を書き直すことなく検索ヒット率を劇的に改善する「辞書チューニング」の具体的な手法について解説します。少しの工夫で、お客様の「見つからない」を「解決できた」に変えていきましょう。

なぜ「正しい社内用語」で書くと検索されないのか?

「プロの言葉」と「お客様の言葉」の決定的なズレ

FAQやヘルプセンターの記事を作成する際、担当者や開発者はどうしても「機能名」「型番」「正式なサービス名称」といった、いわゆる「プロの言葉」を基準に文章を構成しがちです。これは情報の正確性を保つ上では非常に重要ですが、お客様がトラブルに直面したその瞬間に、同じ言葉を思い浮かべられるとは限りません。

例えば、ある機械の調子が悪いとき、私たち社内の人間は「筐体(きょうたい)のランプを確認してください」と案内するかもしれません。しかし、お客様は「筐体」という言葉をご存じでしょうか? 多くの場合、お客様は「本体」「機械」「箱」といった言葉を使います。このように、提供者側の論理ではなく、お客様が日常的に使い、検索時に入力する自然な言葉のことを「顧客言語」と呼びます。

顧客言語とは?
企業側の専門用語や社内用語ではなく、顧客が日常生活の中で使用し、直感的に理解している言葉のこと。マーケティングやカスタマーサポートにおいて、顧客視点に立つための重要な概念。

社内では当たり前に通じる「筐体」という言葉も、お客様にとっては未知の外国語のようなものです。この「プロの言葉」を「顧客言語」へと翻訳し、検索できるように橋渡しをしてあげることこそが、私たちCS担当者の腕の見せ所と言えるでしょう。記事の中身は正確な用語で書かれていても構いませんが、検索の入り口には、お客様が使う「素人の言葉」を用意しておく必要があります。

検索ヒット率を下げる「表記ゆれ」の正体

「正しい言葉」と「お客様の言葉」のズレだけでなく、同じ意味の言葉であっても、人によって入力する文字が異なる場合があります。これを「表記ゆれ」と言います。日本語は特にこのバリエーションが豊富で、検索システムによっては、これらが完全に一致しないと結果として表示してくれないことがあります。

表記ゆれとは?
同じ意味を持つ言葉について、表記の仕方が複数存在する現象のこと。例として、「見積り」「見積もり」「ミツモリ」や、「コンピューター」「コンピュータ」、「引っ越し」「引越」などが挙げられる。

例えば、お客様が「引越しの手続き」について知りたい場合、検索窓に「引越」と入力する方もいれば、「引っ越し」と送りがなを入れる方もいます。また、「iPhone」を「アイフォン」「アイフォーン」「スマホ」と入力するケースもあるでしょう。

検索エンジンが高性能であればある程度は吸収してくれますが、企業独自のFAQシステムやチャットボットでは、この表記ゆれが原因で「該当なし」と判定されてしまうケースが後を絶ちません。社内で「うちは『見積もり』で統一する」とルールを決めるのは大切ですが、検索される場面においては、お客様が入力しそうなあらゆるパターンを想定しておく優しさが求められます。

検索のカギを握る「エイリアス(別名)設定」とは?

記事本文を変えずに「入り口」だけ増やす機能

「お客様の言葉に合わせて記事を書き直さなければならないのか?」と思われるかもしれませんが、その必要はありません。記事本文は正確性を重視した「正式名称」のままで大丈夫です。その代わり、多くのFAQシステムや検索ツールには、記事に対して検索用のキーワードだけを裏側で追加登録する機能が備わっています。これを一般的に「エイリアス設定」や「類義語設定」、「検索タグ」などと呼びます。

エイリアス設定とは?
システム上で、あるデータ(記事や項目)に対して、本来の名称とは別の名前やキーワードを検索対象として紐付ける設定のこと。「別名設定」とも呼ばれる。

この機能を使えば、記事の本文中に「スマホ」という単語が一度も出てこなくても、エイリアスに「スマホ」と登録しておくだけで、「スマホ」と検索したお客様に「スマートフォンの設定方法」という記事をヒットさせることができます。つまり、記事の品質(正確さ)を保ったまま、検索の「入り口」だけを増やすことができるのです。これなら、用語統一のルールを乱すことなく、お客様の利便性だけを向上させることが可能です。

【事例】現場でよく登録すべき「言い換え」パターン

では、具体的にどのような言葉をエイリアスとして設定すればよいのでしょうか。現場で効果が出やすい、代表的な「言い換え」パターンをいくつか紹介します。これらを意識するだけで、検索ヒット率は大きく改善します。

一つ目は「専門用語から一般用語への言い換え」です。例えば、社内で「イニシャルコスト」と呼んでいるものは「初期費用」、「ランニングコスト」は「月額費用」などと登録します。「オーソリ」であれば「カード確認」や「承認」などが考えられます。

二つ目は「カタカナ語と日本語の言い換え」です。「アカウント」という言葉に対して「ID」や「会員番号」を登録したり、「ログイン」に対して「サインイン」「入室」などを登録したりするケースです。高齢のお客様が多いサービスでは特に重要になります。

三つ目は「略語と正式名称の言い換え」です。「トリセツ」と検索するお客様のために「取扱説明書」の記事に紐付けたり、「リモコン」に対して「リモートコントローラー」を紐付けたりします。逆に、記事が正式名称で書かれている場合は、一般的な略語を検索用キーワードとして登録しておくと親切です。

業界用語・略語の「検索辞書チューニング」実践法

正式名称にこだわらず「通称」も登録する

企業のブランディング担当者や品質管理担当者からすれば、「誤った用語」や「俗称」をシステムに登録することに抵抗があるかもしれません。しかし、サポートの現場においては「お客様がその言葉で検索している」という事実が何よりも優先されるべきです。

例えば、自社の製品が正式には「スマートフォン」であっても、お客様の多くが「スマホ」と呼んでいるなら、検索システム上では「スマホ」でヒットさせるべきです。これを、私たちは「検索辞書のチューニング」という作業で実現します。

検索辞書のチューニングとは?
検索エンジンの設定や登録語句(辞書)を調整し、ユーザーが意図した情報により正確にたどり着けるよう、検索精度を高める作業やプロセスのこと。

これは、「ウチではその呼び方はしない」とお客様を突っぱねるのではなく、検索システムの裏側でだけこっそりとお客様と手を握るようなイメージです。表向きのマニュアルや記事本文では凛とした正式名称を使いつつ、裏側の検索設定では、お客様がつい口にしてしまう通称や俗称、あるいは間違いやすい言い回しまで広く受け止める。この柔軟な「辞書チューニング」こそが、顧客満足度を高めるカギとなります。

「0件ヒットログ」こそが最高の教科書

では、どのようなキーワードをチューニング(登録)すればよいのでしょうか。その答えは、担当者の想像の中ではなく、実際のデータの中にあります。ぜひ活用していただきたいのが、FAQシステムなどの管理画面で見られる「0件ヒットログ(検索結果ゼロのキーワード一覧)」です。

ここには、お客様が「助けてほしい」と思って入力したけれど、答えにたどり着けなかった悲しい言葉たちが並んでいます。ログを見てみると、「そんな呼び方があったか!」「まさかこの漢字変換で検索するとは」といった発見が必ずあります。

例えば、あるサービスでは「解約」という言葉で検索しても記事が出ず、ログを見たら多くのお客様が「退会」や「辞めたい」と検索していた、というケースがありました。これらは想像だけで網羅するのは困難です。事実(ログ)に基づいて、定期的に辞書に言葉を追加していく地道な作業が、結果として最も効率的な改善につながります。

運用ルールで定着させる!担当者がやるべきルーティン

チームで共有する「言葉の変換リスト」作成

検索対策は、担当者の「気づき」に依存してしまうと、人によって登録するキーワードにバラつきが出てしまいます。Aさんは「スマホ」を登録するけれど、Bさんは登録しない、といった状況を防ぐために、チームで「言葉の変換リスト(対応表)」を作成し、共有することをおすすめします。

このリストには、「社内用語(正式名称)」と、それに対応する「登録すべきエイリアス(顧客言語)」をセットで記載します。例えば、「『アカウント』という記事を作るときは、必ず『ID』『会員登録』というタグを入れること」といったルールを可視化するのです。

ただし、最初から数百語の完璧な辞書を作ろうとすると運用が破綻します。まずは「検索数が多いキーワード」や「問い合わせが多いトップ10の用語」から始めるなど、スモールスタートを心がけてください。リストは作り込みすぎず、現場のメンバーが気づいたときにサッと追記できるような、更新しやすい運用にしておくことが定着の秘訣です。

「社内用語」から「顧客言語」への転換が大切

検索対策において大切なのは、システムの設定以上に、私たち担当者の意識を「社内用語(供給側の論理)」から「顧客言語(ユーザーの感覚)」へと転換させることです。

  • 正しい社内用語は、お客様にとっては「検索できない言葉」かもしれないと疑う。
  • 記事本文を書き直さなくても、「エイリアス設定」で検索の入り口は増やせる。
  • 「0件ヒットログ」を確認し、お客様独自の呼び方や略語を拾い上げ、辞書を育てていく。

これらを意識するだけで、FAQの解決率は確実に上がります。 まずは、今日届いた問い合わせメールを1通開いてみてください。お客様はどんな言葉を使って状況を説明していますか? もし社内用語と違う言葉、あるいは独特な表現があったら、それが最初の「エイリアス登録」の候補です。そのたった1語の登録が、未来の10人の迷えるお客様を救うことになります。ぜひ、できるところから始めてみてください。


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FAQ・よくある質問

Q1

エイリアス設定と記事の書き直しの違いは?

A

エイリアス設定は記事本文を変えずに検索キーワードだけを裏側で追加登録する機能で、書き直しとは別のアプローチです。記事の正確性や用語の統一ルールを崩さずに、顧客が使う通称・略語・表記ゆれを検索の入り口として紐付けられるため、品質管理とユーザー利便性を同時に実現できます。

Q2

辞書チューニングで登録すべきキーワードの見つけ方は?

A

FAQシステムの管理画面で確認できる「0件ヒットログ」が最も実態に即した情報源です。ここにはお客様が実際に入力したものの、結果が返ってこなかったキーワードが記録されています。担当者の想像だけで補完しようとすると抜け漏れが生じるため、このログを定期的に確認して辞書を育てていく作業が現実的かつ効果的です。

Q3

検索ヒット率が下がる「表記ゆれ」とは何か?

A

同じ意味の言葉が複数の書き方で入力される現象のことで、「引越」と「引っ越し」、「コンピューター」と「コンピュータ」などが代表例です。高性能な検索エンジンはある程度吸収しますが、企業独自のFAQシステムやチャットボットでは表記が完全一致しないと「該当なし」と判定されることがあり、これが問い合わせが減らない原因のひとつになっています。

ヘルプドッグ編集部
筆者

ヘルプドッグ編集部

セルフサポートやカスタマーサポート運用に関する知見をもとに、現場で役立つ情報をわかりやすく発信しています。 実際の運用課題や改善事例を踏まえながら、自己解決率向上とサポート業務の効率化につながるヒントをお届けします。