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サービスの品質を保証する「SLAの項目」の設定と運用方法

ヘルプパーク編集部
サービスの品質を保証する「SLAの項目」の設定と運用方法

「委託先の対応品質が思ったよりも低く、お客様からクレームが来てしまった」「契約時には『しっかりやります』と言っていたのに、改善を求めても『人手が足りない』とのらりくらりとかわされてしまう」。

このようなお悩みを抱えているご担当者様は、実は非常に多いものです。

顧客対応を外部に委託する際、「プロだから細かく指示しなくても大丈夫」と期待しがちです。しかし、どれほど優秀なプロでも、自社の「普通」や「早め」という感覚までは読み取れません。基準が異なる者同士、曖昧な言葉のまま任せきりにすることはトラブルの火種にしかならないのです。

この記事では、委託先との共通言語である「SLA(サービスレベルアグリーメント)」について、具体的な設定項目から、品質を担保し続けるための運用・レビューのプロセスまでを解説します。

曖昧な口約束ではなく、数字とルールの裏付けを持った対等なパートナーシップを築くための手引きとしてご活用ください。

サービスの品質を保証するSLA(サービスレベル合意)とは?

「頑張ります」を許さない「数値」の約束

業務委託契約において最も重要なのは、お互いの期待値を明確にすることです。しかし、契約書に「誠実に業務を遂行する」と書いてあっても、現場レベルでどの程度の品質が必要なのかは不透明なまま進んでしまうことがよくあります。そこで必要になるのが、SLAです。

SLA(Service Level Agreement)とは?
発注者(委託元)と受注者(ベンダー)の間で合意した「サービス品質の保証基準」のことです。「サービスレベル合意書」とも呼ばれ、業務において最低限守るべき品質や履行すべき内容を数値などで具体的に定義したものを指します。

SLAは単なる「努力目標」ではありません。ここが非常に重要なポイントなのですが、SLAは下回った場合に是正措置やペナルティが発生する「契約上の義務」としての性質を持ちます。

「頑張ります」という精神論ではなく、「月間の電話応答率が90%を下回ったら報告書を提出する」「システムダウンが24時間以上続いたら利用料を減額する」といった、具体的かつ拘束力のある約束事なのです。

これにより、発注側は一定の品質を担保でき、受注側もどこまでやれば責任を果たしたことになるのかが明確になります。

委託先と「品質の定義」をすり合わせるプロセス

SLAを策定する最大のメリットは、契約締結前の段階で「品質の定義」を徹底的にすり合わせられる点にあります。例えば「問い合わせには迅速に回答する」という仕様があったとしましょう。この「迅速」とは、発注側にとっては「1時間以内」かもしれませんが、ベンダー側は「24時間以内(翌営業日まで)」と解釈しているかもしれません。この認識のズレが、後々の大きなトラブルを生みます。

SLAを定めるプロセスでは、こうした曖昧な表現を一つひとつ排除し、「メールの一次回答は受信から4営業時間以内」といった具体的な数値に落とし込んでいきます。これは発注側が一方的に高い要求を押し付けるための作業ではありません。

実はSLAはベンダーを縛る鎖ではなく、「ここまでやってくれれば文句は言いません」という安全地帯を示すものでもあります。明確なラインがあるからこそ、現場のオペレーターや管理者は「何を優先すべきか」を迷わずに判断して動くことができます。

過剰品質で疲弊することなく、健全に業務を遂行するためのガイドラインとして機能させることこそが、SLAの本質的な役割なのです。

【保存版】SLAに盛り込むべき必須項目一覧

定量的項目(スピード・量)

カスタマーサポート(CS)業務などの委託において、SLAの中心となるのは「数値で測定可能な指標」です。これらは客観的に判断できるため、合意形成がしやすく、日々のモニタリングにも適しています。以下に代表的な項目を挙げます。

まず、電話対応において最も重視されるのが「応答率」です。

応答率とは?
着信した電話の総数に対して、オペレーターが受話(応答)できた件数の割合のことです。例えば、100回電話が鳴って90回取れたら応答率は90%となります。CSの繋がりやすさを示す最も基本的な指標です。

次に、「サービスレベル(応答時間)」も重要です。「20秒以内に80%の電話を取る」といった設定をします。単に繋がればよいだけでなく、お客様をお待たせしないスピードを管理します。

また、逆に取れなかった電話を測る指標として「放棄呼率」があります。

放棄呼率(アバンダンレート)とは?
オペレーターにつながる前に、お客様が待ちきれずに電話を切ってしまった(放棄した)割合のことです。この数値が高いと顧客満足度の低下に直結するため、厳しく管理する必要があります。

メール対応の場合は、「メール返信時間」を設定します。「受信から24時間以内の返信完了率95%以上」のように定めます。これらの定量的項目は、自動レポートなどで計測可能なため、日次・月次での管理が比較的容易です。

定性的項目(品質・満足度)

スピードや量だけでなく、「対応の中身」や「お客様の納得感」も品質の重要な要素です。これらは機械的に計測しづらいため、評価基準を明確にしておく必要があります。

代表的なのが「モニタリング評価点」です。これは、実際の通話録音やメールの文面を品質管理担当者(QA)がチェックし、採点するものです。「正しい言葉遣いができているか」「お客様の質問意図を汲み取れているか」「解決策の提示は適切か」などを5段階評価や100点満点でスコアリングします。「月間の平均スコアが85点以上であること」などをSLAに設定します。

また、お客様の手間を減らす指標として「一次解決率」も非常に重要です。

一次解決率(FCR)とは?
First Call Resolutionの略で、お客様からの問い合わせに対し、転送や折り返し対応にならず、最初の1回のコンタクト(電話やメール返信)で問題が解決した割合を指します。

一次解決率が高いほど、お客様のストレスは少なく、かつ対応コストも抑えられます。その他、「ミス発生率」として、誤った案内やシステムへの入力ミスが全対応件数のうち何%発生したかを指標にすることもあります。これら定性的な項目は、定義が曖昧になりがちなので、「何をもって解決とするか」「何がミスにカウントされるか」を事前に細かく定義書に落とし込んでおくことが成功の鍵です。

SLA設定項目一覧(CS・業務委託向け)

分類項目名定義・計算式目標設定の目安(例)
定量的
(スピード・量)
応答率入電数に対し、オペレーターが受話した割合90%以上
サービスレベル規定時間(例:20秒)以内に応答した割合20秒以内に80%
放棄呼率繋がる前に顧客が切断してしまった割合5%以下
メール返信時間受信から返信完了(一次回答)までの時間24時間以内 95%以上
定性的
(品質・満足度)
モニタリング評価通話やメール内容をQA担当が採点したスコア100点満点中85点以上
一次解決率(FCR)転送や折返しをせず、1回で解決した割合70%以上
ミス発生率誤案内やシステム入力ミスが発生した割合0.1%以下

運用ルールと違反時の取り決め

目標値と最低ライン(SLA)の使い分け

SLAを設計する際によくある間違いが、「理想的な目標値(KPI)」と「契約上の最低ライン(SLA)」を混同してしまうことです。ここを明確に区別して運用設計を行わないと、現場が疲弊し、結果として品質が低下するリスクがあります。

SLAはあくまで「Service Level Agreement(合意)」ですから、ベンダー側が通常運転で「必達できる現実的なライン」に設定する必要があります。例えば、現状の応答率の実力が80%程度であれば、SLAは「75%」や「80%」に設定し、それを下回ったら異常事態として扱います。

一方で、さらなる品質向上を目指すための目標としてKPI(重要業績評価指標)を設定します。こちらは「応答率90%」のように高い数値を掲げ、達成できた場合にはインセンティブ(報酬の上乗せや表彰など)を設ける等の工夫をすると良いでしょう。

最初からSLAを理想の高さ(例えば応答率95%など)に設定してしまうと、ベンダー側は「契約違反になるのを防ぐ」ために無理をします。その結果、通話時間を無理やり短くして強引に切る、対応記録を改ざんするといった、本末転倒な隠蔽や不正を招く恐れがあります。SLAは「最低限の安心」を担保するものであり、高望みをするためのツールではないことを理解しておきましょう。

運用のコツ:SLAは「最低ライン」に設定しましょう
SLAを最初から「理想(最高値)」に設定すると、委託先が未達を恐れて隠蔽や不正(強引に電話を切るなど)に走るリスクがあります。SLAはあくまで「これ以下は異常」という防波堤として機能させ、理想値は「KPI(目標)」として別に追いかけるのが健全な運用の秘訣です。

ペナルティと是正措置(リカバリープラン)

SLAを設定する以上、それが守られなかった場合の取り決めも必要です。これを「サービスレベル未達時の対応」と呼びます。一般的には、金銭的なペナルティ(違約金や利用料の返還)と、業務改善を求める是正措置の2段階で考えます。

実務上、いきなり金銭的なペナルティを発動することは稀です。なぜなら、ペナルティを課すことでベンダーとの関係が悪化し、かえって協力が得られなくなることが多いからです。まずは「原因分析書の提出」と「改善計画(リカバリープラン)の実施」を義務付けることを基本としましょう。

具体的には、SLA未達が発生した翌月に、「なぜ未達になったのか(要因分析)」と「再発防止のために具体的に何をするのか(アクションプラン)」を文書で提出させます。そして、その計画通りに改善が進んでいるかを定期的にチェックします。それでも改善が見られず、例えば「3ヶ月連続でSLA未達」といった深刻な状況になった場合に初めて、契約解除や金銭的ペナルティを検討するというステップを踏むのが、長期的には品質向上につながりやすい健全な運用です。

形骸化させないための「定例レビュー」と改善

月次定例会での振り返りと「数字の裏側」

SLAを運用し始めた後に陥りやすいのが、「毎月レポートを受け取って、数値だけ見て終わり」になってしまうことです。これではSLAは形骸化し、現場の緊張感も薄れていきます。生きたSLA運用にするためには、定期的な振り返りの場が不可欠です。

定例レビューとは?
月次や四半期ごとに行う、発注者とベンダーの合同ミーティングのことです。単なる報告会ではなく、数値の実績をもとに課題を洗い出し、次のアクションを決める重要な場です。QBR(Quarterly Business Review)などの形式で行われることもあります。

この定例会では、単に「達成した/未達だった」という結果確認だけでなく、「なぜその数字になったのか」というプロセスの議論に時間を割くべきです。例えば、「応答率が低下した日があったが、それは突発的なシステム障害の影響だったのか、それとも人員配置のミスだったのか」といった深掘りを行います。

数字の裏側にある現場の状況や、オペレーターの声を共有し合うことで、数値だけでは見えない課題——例えば、マニュアルの不備やツールの使いにくさなど——を発見することができます。お互いに顔を合わせて議論することで、「パートナーとして一緒に品質を作っていく」という意識が醸成されます。

ビジネスの変化に合わせたSLAの更新

ビジネスの状況は常に変化します。新商品のリリース、キャンペーンの開始、季節要因による繁忙期など、取り巻く環境が変われば、求められるサービスレベルも変わって当然です。したがって、SLAは一度決めたら変えてはいけない「石板の掟」ではなく、状況に応じて柔軟に見直すべきものです。

例えば、予想以上のヒット商品が出て問い合わせが急増している時期に、平常時と同じ「応答率90%」を厳守させようとすれば、現場は破綻します。そのような場合は、一時的にSLAの基準を緩和する代わりに、FAQの整備や自動応答の導入にリソースを割くといった合意を形成する方が建設的です。

また、定例会を単に「ベンダーを叱る場」にしてはいけません。「回答時間が遅れている」という課題に対して、「我々(発注側)からの情報共有が遅かったため、ベンダー側が回答待ちの状態になっていたのではないか?」と、自社の不備にも目を向ける姿勢が必要です。

発注側にも改善すべき点がないかを確認し、双方向で改善サイクルを回せるようになると、最強のパートナーシップが築けます。SLAの更新は、こうした相互理解の結果として行われるべきポジティブな作業なのです。

まとめ

ここまで、SLA(サービスレベル合意)の策定から運用、改善のプロセスについて解説してきました。

SLAは、ベンダーを監視して締め付けるための「ムチ」ではありません。むしろ、「ここまでは確実に守ります」という信頼の証書であり、お互いが安心して背中を預け合うための「共通言語」です。数値目標(定量的項目)と品質目標(定性的項目)のバランスを取り、現実的なラインで合意すること、そして定期的なレビューを通じて変化に対応していくことが、外部委託を成功させる鍵となります。

最初から完璧なSLAを作る必要はありません。まずは「応答率」や「ミス発生率」など、お客様への影響が大きい重要な3項目程度から小さく始め、現場の状況を見ながら徐々に項目を精査し、育てていけばよいのです。数値を味方につけて、ベンダーと共にサービスの質を高めていってください。その先には、きっとお客様からの「ありがとう」が増える未来が待っています。

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FAQ・よくある質問

Q1

SLAとKPIの違いは何か?現場での使い分け方は?

A

SLAは「これを下回ったら異常」という最低ラインであり、KPIは「これを目指す」という向上目標です。応答率を例にすると、現状の実力が80%なら、SLAは75〜80%に、KPIは90%に設定します。両者を混同してSLAを高く設定しすぎると、未達を恐れたベンダーが強引な対応や記録の改ざんに走るリスクが生まれます。

Q2

SLA未達が発生したときの是正措置の進め方は?

A

まず原因分析書と改善計画の提出を義務づけるのが基本です。いきなり金銭的ペナルティを発動するとベンダーとの関係が悪化し、協力が得られにくくなります。改善計画の実施状況を定期的に確認し、3ヶ月連続の未達など深刻な状況に至って初めて契約解除や違約金を検討するという段階的なステップが、長期的な品質向上につながります。

Q3

SLAの定性的項目で「一次解決率」が重要視される理由は?

A

お客様が転送や折り返しなしに1回のコンタクトで問題を解決できるため、顧客ストレスの軽減と対応コスト削減の両方に直結するからです。応答率などの定量指標だけでは対応の「中身」は測れません。一次解決率をSLAに組み込むことで、スピードだけでなく解決の質まで担保する仕組みを持てます。

ヘルプドッグ編集部
筆者

ヘルプドッグ編集部

セルフサポートやカスタマーサポート運用に関する知見をもとに、現場で役立つ情報をわかりやすく発信しています。 実際の運用課題や改善事例を踏まえながら、自己解決率向上とサポート業務の効率化につながるヒントをお届けします。