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ノンボイスとは?企業がノンボイス化を進める3つのメリット

ヘルプドッグ編集部
ノンボイスとは?企業がノンボイス化を進める3つのメリット

「上層部からは『電話を減らしてコストを下げろ』と連呼されるが、具体的になくして良いものか不安」「チャットやSNS窓口を導入したものの、結局電話の数は減らず、現場の業務量が増えただけだった」「テキスト対応だとお客様の本当のニュアンスが掴めず、解決までに余計な時間がかかってしまう」

CS(カスタマーサポート)の現場責任者の方々から、このような切実な声をよく耳にします。「これからはノンボイスの時代だ」などと言われますが、現場からすれば「そう簡単に電話はなくせないよ!」と言いたくなるのが本音ではないでしょうか。確かに、複雑なクレーム対応や高齢者の方へのサポートをテキストだけで完結させるのは至難の業です。

しかし、電話を全廃止する必要はありません。重要なのは「電話が得意な領域」と「テキストが得意な領域」を正しく理解し、それらを最適なバランスで組み合わせることです。

本記事では、ノンボイス(テキスト対応)の正しい定義とコスト削減効果を解説し、電話(ボイス)と共存させるための「使い分けルール」と導入のポイントについて、現場視点で紐解いていきます。

ノンボイスとは?ボイス対応との決定的な違い

テキストコミュニケーション(チャット・メール・SNS)の総称

CS業務における顧客接点は、大きく「ボイス」と「ノンボイス」の2つに分類されます。

ノンボイス(Non-Voice)とは?
電話(音声)を使わず、文字情報(テキスト)で顧客とやり取りするチャネルの総称。メール、有人チャット、AIチャットボット、LINEなどのメッセージングアプリ、SMSなどがこれに含まれます。

ボイスチャネルとは?
電話対応のこと。オペレーターと顧客がリアルタイムで音声通話を行う従来のサポート形態。

ノンボイスの最大の特徴は、情報の伝達手段が「文字」であることです。これにより、音声では聞き逃してしまうような複雑な型番やURLなども正確に伝えることが可能になります。近年では、企業のWebサイト右下に表示されるチャットウィンドウや、LINE公式アカウントを通じた問い合わせが急速に普及しており、これらすべてがノンボイス運用の範疇に含まれます。

世代別に見る「電話離れ」と問い合わせ手段の利用傾向

ノンボイス化が進む背景には、消費者のライフスタイルとコミュニケーション手段の変化があります。特に20代〜30代の若年層は、電話よりもLINEやチャットなどのテキストコミュニケーションを好む傾向が顕著です。「電話をかけると拘束される」「自分のタイミングで返信したい」という心理が強いため、電話しかない窓口は敬遠されることすらあります。

一方で、シニア層は依然として「電話で直接話したい」というニーズが根強いのも事実です。しかし、ここで注意が必要なのは「高齢者=電話しかできない」と決めつけないことです。スマートフォンの普及により、60代以上でもLINEを日常的に使いこなす層は激増しています。

彼らにとって、使い慣れたLINEでの問い合わせは、電話をかけて自動音声ガイダンス(IVR)の操作を強いられるよりも、はるかにハードルが低い場合があります。つまり、ノンボイスは若者だけのものではなく、幅広い世代にとっての「便利な選択肢」になりつつあるのです。

企業がノンボイス化を進める3つのメリット

1対N対応による生産性向上とコスト削減

経営層がノンボイス化を推進する最大の理由は、圧倒的なコストパフォーマンスにあります。電話対応は、基本的にオペレーター1名につき顧客1名(1対1)の対応しかできません。保留中や後処理中も、そのオペレーターは他の電話を取ることができません。

これに対し、チャットやメールなどのノンボイス対応は「マルチタスク」が可能です。熟練したオペレーターであれば、3〜5件のチャット画面を同時に開き、並行して対応(コンカレント対応)することができます。

CPC(Cost Per Contact)とは?
問い合わせ1件あたりにかかる対応コストのこと。人件費、通信費、システム利用料などを総問い合わせ件数で割って算出する。

コンカレント(同時対応)とは?
チャット対応において、1人のオペレーターが複数の顧客と同時にやり取りを行うこと。

1人のスタッフが同時に複数の顧客を捌けるようになれば、当然ながら1件あたりの処理単価(CPC)は大幅に下がります。電話対応の人員を維持しつつ、溢れた呼量を低コストなノンボイスで吸収する体制が作れれば、センター全体の生産性は劇的に向上します。

言った言わないをなくす「ログのデータ化」とVOC活用

電話対応の課題の一つに、「言った言わない」のトラブルがあります。通話録音装置はあっても、それを聞き返すには通話時間と同じだけの時間がかかりますし、テキスト化(書き起こし)するには高額なツールや工数が必要です。

一方、ノンボイス対応は最初からすべてが「テキストデータ」として記録されます。

対応履歴(ログ)がそのままテキストとして残るため、検索や分析が非常に容易です。「どの製品で」「どんなキーワードで」問い合わせが多いのかを瞬時に抽出し、VOCとして製品開発部やマーケティング部にフィードバックすることができます。

情報の鮮度と正確さを保ったまま社内共有できる点は、企業の競争力を高める上で大きな武器となります。

VOC(Voice of Customer)とは?
顧客の声。問い合わせ内容、要望、クレーム、アンケート回答など、顧客から寄せられる意見の総称。

URLや画像共有による「解決スピード」の向上

現場レベルで最も実感できるメリットは、資料共有の容易さです。例えば、Webサイトの操作方法を案内する際、電話では「画面右上の三本線のメニューを押して、上から3番目の項目を選んで……」と言葉で説明しなければなりません。これには時間がかかる上、顧客側の画面が見えないため認識の齟齬が起きがちです。

しかし、チャットやメールであれば、操作マニュアルのURLや、該当箇所のスクリーンショット(画像)を1枚送るだけで済みます。「ここを押してください」と視覚的に伝えることは、10分間の口頭説明よりもはるかに正確で、数秒で解決します。

これはオペレーターの手抜きではなく、お客様の貴重な時間を奪わないための「時短サービス」です。相互の理解度が上がり、解決スピード(AHTの短縮)に直結することこそが、ノンボイスの真価と言えるでしょう。

失敗しない!ボイスとノンボイスの「バランス設計」

すべてをノンボイスにしない「オムニチャネル」の考え方

コスト削減を急ぐあまり、「電話窓口を廃止して、すべてチャットボットに誘導しよう」とする極端な施策は必ず失敗します。目指すべきは、それぞれのチャネルの特性を活かした「使い分け」です。

オムニチャネルとは?
電話、メール、チャット、SNS、店舗など、あらゆる顧客接点(チャネル)を連携させ、顧客がどの手段を選んでも一貫したサービスを受けられる状態のこと。

マルチチャネルとは?
複数の接点があるだけの状態。各チャネルが独立しており、情報連携がされていない場合が多い。

成功するセンターは、以下のような役割分担(棲み分け)を明確にしています。

  • 電話(ボイス): 緊急のトラブル、複雑な相談、謝罪が必要なクレーム、ITリテラシーが低く文字入力が苦手な顧客向け。
  • ノンボイス: 住所変更などの事務手続き、資料請求、FAQで解決できる定型的な質問、若年層や移動中の顧客向け。

このように、内容や顧客属性に応じて最適なチャネルを用意する戦略こそが、CS満足度と効率化を両立させる「黄金比」となります。

導線設計で「電話を最後の砦」にする方法

電話の呼量を減らすためには、Webサイト上の「問い合わせ導線」の設計が鍵を握ります。いきなり電話番号を大きく表示するのではなく、まずは「よくある質問(FAQ)」を見てもらい、次に「自動応答(チャットボット)」、それでも解決しない場合に「有人チャット」、そして最後の手段として「電話番号」を表示するというフィルタリングを行います。

ここでやってはいけないのが、電話番号を完全に隠蔽してしまうことです。何をやっても電話番号が見つからないWebサイトは、お客様に強いストレスを与えます。ようやく見つけた番号にかけた時、お客様の怒りは頂点に達しており、通常の問い合わせがクレーム化してしまいます。

「電話窓口もご用意していますが、チャットの方が待ち時間なく解決できますよ」というように、選択肢を提示しつつ、メリット(早さや利便性)を訴求して自然にノンボイスへ誘導するのがプロの設計です。

サポート現場が直面する課題と運用ルールの定着

テキストならではの「冷たさ」を消すライティング

電話には「声のトーン」がありますが、ノンボイスには文字しかありません。そのため、丁寧に書いたつもりでも、受け手には「事務的」「冷たい」「突き放された」と感じられるリスクがあります。これを防ぐためには、テキストコミュニケーション特有のライティング技術が必要です。

具体的には、「恐れ入りますが」「お手数ですが」といったクッション言葉を多用し、文章に柔らかさを出します。また、企業のブランドルールで許容されるのであれば、「!」(感嘆符)や絵文字を活用するのも一つの手です。

「承知いたしました。」と句点で終わるよりも、「承知いたしました!」とするだけで、前向きな温度感が伝わります。また、回答の末尾に「他にもご不明な点はございませんか?」と一言添えるだけでも、寄り添う姿勢を示すことができます。

オペレーターのスキルセット転換(話す力から書く力へ)

ノンボイス導入時に見落としがちなのが、オペレーターの適性です。「電話対応が上手なベテラン」が、必ずしも「チャット対応が得意」とは限りません。

ノンボイス対応には、正確で速いタイピングスキルはもちろん、顧客の長文から要点を読み取る「読解力」、そして簡潔に回答をまとめる「要約力(ライティング力)」が求められます。

話す力と書く力は別物です。導入にあたっては、これまでの電話対応の評価基準とは別に、テキスト対応専用の研修プログラムと評価指標(KPI)を設ける必要があります。個々の適性を見極め、電話専任、チャット専任、あるいはハイブリッド対応可能なスタッフへと配置を最適化することが、運用定着への近道です。

まとめ

ノンボイス化の推進は、単なるコスト削減策ではありません。顧客のログを資産として活用し、顧客自身の「時間を奪わない」ためのサービス進化です。しかし、すべてをテキストに置き換えることは不可能ですし、そうすべきでもありません。

重要なのは、電話対応の良さ(温かみ、複雑な解決力)を残しつつ、ノンボイスの利便性(早さ、正確さ)を取り入れる「ハイブリッド運用」です。ノンボイス導入はゴールではなく手段に過ぎません。目指すべきは、お客様が「その時の状況に合わせて好きな手段を選び、最短で解決できる」環境を作ることです。

まずは自社の問い合わせ内容を分析し、「これはチャットの方が早い」「これは電話で聞くべき」という仕分けを行うことから始めてみてください。その分析こそが、チャネルの最適なバランスを見つける第一歩となります。

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FAQ・よくある質問

Q1

ノンボイス対応でオペレーターに求められるスキルとは?

A

電話対応とは異なり、正確で速いタイピング、顧客の長文から要点を読み取る読解力、そして簡潔にまとめるライティング力が求められます。話す力と書く力は別物であるため、電話対応が得意なベテランが必ずしもチャット対応に向いているわけではありません。テキスト対応専用の研修プログラムと評価指標を別途設けることが、スムーズな運用定着につながります。

Q2

ノンボイス化でVOC活用がしやすくなる理由は?

A

ノンボイス対応は最初からすべてがテキストデータとして記録されるため、通話録音のように聞き返す手間が不要です。対応履歴をそのまま検索・分析できるので、どの製品にどんな問い合わせが集中しているかを素早く把握できます。この情報を製品開発部やマーケティング部にリアルタイムでフィードバックできる点が、ボイス対応との大きな違いです。

Q3

マルチチャネルとオムニチャネルの違いは?

A

マルチチャネルは電話・メール・チャットなど複数の接点を持っているだけの状態で、各チャネル間の情報連携がされていないケースが多いです。一方オムニチャネルは、どのチャネルを使っても顧客が一貫したサービスを受けられるよう、接点同士が連携している状態を指します。ノンボイス化を進める際は、チャネルを増やすだけのマルチチャネルにとどまらず、連携まで設計することが重要です。

堀辺 憲
筆者

堀辺 憲 noco株式会社 代表取締役

クボタ、住友スリーエム、DeNAなどを経て2017年にnoco株式会社を創業。AIサポートシステム「ヘルプドッグ」等の開発プロデューサーを務める。数多くの企業のサポート部門・現場業務のDXを支援してきた実績から得た、カスタマーサポート領域およびナレッジマネジメントに関する深い知見をもとに、CS基盤の構築・改善に直結するノウハウを解説する。