チャットボットは、導入する目的、答えのもとになる情報の状態、運用を続けられる体制の3つを確かめて選びます。機能の多さや知名度で選ぶと、自社では使いこなせない製品や、目的に合わない製品を選んでしまうことになりかねません。
まず「何のために導入するのか」を決めます。次に、その目的に合う型を選びます。最後に、自社で運用を続けられるかを確かめます。この順番で見ていけば、数多くの製品から、自社に合う候補を絞り込めます。
はじめに決めておくこと、選ぶときに確かめる基準、契約前の見極め方の3つを、順にご説明します。
選ぶ前に決めること
チャットボットを選ぶ前に、導入の目的と、チャットボットに答えてもらう質問の範囲を決めます。この2つが決まっていないと、製品の機能を比べる基準を持てず、営業資料の印象で選ぶことになります。先に自社の要件を固めてから、製品を見ます。

導入の目的を決める
まず、チャットボットで何を実現したいのかを決めます。目的によって、選ぶべき製品が変わるからです。
問い合わせ対応での目的は、たとえば次のようなものです。問い合わせの件数を減らして、担当者の負担を軽くしたい。営業時間の外でも、お客様の質問に答えたい。購入や申し込みの途中で生まれる疑問をその場で解消して、離脱を防ぎたい。同じチャットボットでも、どれを重視するかで、必要な機能と置き場所が変わります。
目的が複数あっても構いません。ただし、最も重視するものを1つ決めます。あれもこれもと同じ重みで並べると、どの目的にも合いきらない製品を選ぶ原因になります。
答えてもらう質問の範囲を決める
次に、どの質問をチャットボットに任せるかを決めます。手がかりは、実際に届いている問い合わせです。過去の問い合わせメールや電話の記録から、よくある質問を書き出します。
書き出した質問は、2つに分けます。営業時間や送料、解約方法のように、誰に対しても答えが同じ質問。契約内容の確認のように、お客様ごとに答えが変わる質問です。前者はチャットボットに任せられます。後者と、クレームのように感情への配慮が必要な対応は、担当者が受け持つ前提で考えます。
担当者が受け持つ質問を、チャットと同じ画面で応対したい場合は、有人チャット(ライブチャット)という方法があります。担当者がお客様と文字でやり取りする仕組みで、チャットボットが答えられない質問を、そのまま担当者へ引き継げる製品もあります。この形を想定するなら、引き継ぎの機能があるかも、製品を選ぶときに確かめてください。
この分類ができると、チャットボットに任せる量と中身が見えます。任せたい質問が選択肢で誘導できる範囲に収まるのか、自由な文章での質問に答える必要があるのか。次の章でご説明する「型の選び方」は、この分類が判断のもとになります。
チャットボットを選ぶときの基準
製品を比べるときは、型が目的に合うか、答えのもとになる情報との相性、運用を続けられる体制、費用の内訳の4つを確かめます。機能の一覧を上から順に眺めるより、この4つに絞って見るほうが、自社に合うかどうかを判断できます。順にご説明します。

1.型が導入の目的に合うか
チャットボットには、大きく3つの型があります。シナリオ型は、あらかじめ登録した選択肢と答えのパターンで応対します。AI検索型は、お客様の自由な質問から、適切なFAQの記事を見つけて示します。生成AI型は、FAQやマニュアルをもとに、質問に合わせた文章をその場で作って答えます。
| 型 | 向いている場合 |
|---|---|
| シナリオ型 | 質問が決まった内容に収まり、選択肢で誘導できる |
| AI検索型 | FAQの記事がそろっていて、自由な言葉での質問を受けたい |
| 生成AI型 | 質問の言い回しが幅広く、会話に近い応対をしたい |
前の章で分類した質問を、この表に当てはめます。任せたい質問が選択肢で誘導できる範囲に収まるなら、シナリオ型で対応できます。お客様が自由な文章で質問する場面が多いなら、AI検索型か生成AI型を候補にします。なお、ヘルプドッグのAIチャットボットは、用途に合わせて、AI検索型と生成AI型の2種類から選べます。
2.答えのもとになる情報がそろっているか
AI検索型と生成AI型は、自社のFAQの記事やマニュアルをもとに答えます。そのため、もとになる記事の量と新しさが、回答の質をそのまま決めます。記事が少ないままでは、どれほど高性能な製品を選んでも、答えられる範囲は広がりません。生成AI型では、もとの情報が古かったり足りなかったりすると、もっともらしい誤った回答(ハルシネーション)を返すこともあります。
だからこそ、製品を選ぶ前に、手元のFAQやマニュアルの状態を確かめます。すでに記事がそろっているなら、その記事を取り込める製品を候補にします。記事がまだ少ないなら、記事の作成から始められる製品や、FAQサイトとチャットボットを同じ記事で運用できる製品が候補になります。
3.運用を続けられる体制か
チャットボットは、導入して終わりではありません。シナリオ型は、質問の追加やシナリオの見直しを続けます。AI検索型・生成AI型は、もとになる記事の追加と更新を続けます。この作業を誰が担うのかを、選ぶ段階で決めておきます。
製品側で確認するのは、担当者が管理画面を扱えるか、更新にどれだけ手間がかかるか、困ったときに相談できるサポート窓口があるか、です。専任の担当者を置けない場合は、少ない手間で更新できる製品を選ばないと、公開後に情報が古いまま放置され、誤った回答の原因になります。
4.費用の内訳を確かめる
料金は、金額の大小だけでなく、何に対して費用が発生するかを確かめます。確認するのは、初期費用の有無、月額料金とその中に含まれる範囲、会話数や解決数に応じた従量課金の有無、利用できる人数やサイト数の上限、契約期間と解約の条件です。
とくに従量課金は、問い合わせが増えるほど支払いが膨らみます。自社の問い合わせ件数を月単位で見積もり、その件数でいくらになるかを各社に確認します。具体的な金額は製品ごとに幅があるため、候補を絞ったうえで、各社の公式サイトと見積もりで確かめてください。
契約前の見極め方
候補を2〜3製品に絞ったら、契約する前に、実際の環境に近い条件で試します。営業資料やデモ画面だけでは、自社の質問にどこまで答えられるか、担当者が使いこなせるかを判断できないからです。多くの製品には無料トライアルや試用期間があるため、次の3点を確かめてから契約します。

自社の質問で回答を試す
トライアルでは、デモ用の想定質問ではなく、自社に実際に届いた質問を使います。過去の問い合わせから、よくある質問を10〜20件ほど選び、そのままの言葉で入力して、返ってくる答えを確かめます。
このとき、言い回しを変えて同じ内容を尋ねてみます。「解約したい」「やめるにはどうすれば」のように、聞き方が違っても正しく答えられるかは、実際のお客様対応でそのまま差になります。AI検索型・生成AI型なら、手元のFAQの記事を取り込んで、自社の情報をもとにした回答の質まで確かめます。
管理画面を実際の担当者が操作する
管理画面の操作は、導入後に運用する担当者本人が試します。検討する人と運用する人が別の場合、検討者だけがトライアルを触って決めると、導入後に「担当者が使いこなせない」というつまずきが起こります。
確かめるのは、質問や記事の追加にかかる手間、回答内容の修正のしやすさ、応対の履歴を確認できるか、です。日々の運用で繰り返す操作ほど、少ない手数でできるかを見ます。
困ったときのサポートを確かめる
導入後に設定や運用で行き詰まったとき、どこに相談できるかを契約前に確認します。確かめるのは、問い合わせの手段(メール・チャット・電話)、返答までの目安、日本語で相談できるか、導入時の設定を支援してもらえるか、です。
トライアル中に、実際に1度問い合わせてみてください。そのときの返答の速さと丁寧さが、契約後に受けるサポートの質を判断する材料になります。
まとめ
最後に、製品選びの現場で私が感じていることをお話しします。
チャットボットは、見た目がとてもシンプルなインターフェースです。そのため、ツールの画面を眺めるだけでは、良し悪しをほとんど判断できません。重要なのは、入力した質問に対してどのような返信が返ってくるか、そしてその回答が、質問を明確に解決へ導いているかどうかです。
見た目で判断できない点は、もうひとつあります。チャットボットのエンジンが、外からは見えないことです。シナリオ型とAI型では挙動がまったく違うのに、画面の見た目は似ています。それぞれの挙動を見極めないまま検討を進めると、型を混同したまま製品を比べてしまいます。実際、こうした混同は、たびたび起こっています。
さらに、チャットボットのツールは、技術の進化とともに、新しい製品が次々と生まれています。昔からあるチャットボットは、一見、導入実績が豊富に映ります。しかし、その実績が積まれた当時と今とでは、比較検討の環境がまったく異なります。導入社数の多さだけで候補を絞ることは、避けましょう。