メインコンテンツへスキップ

カスタマーサポート担当者に必要な15のスキルとは?AI時代の必須スキルと磨き方

ヘルプドッグ編集部
カスタマーサポートに必要なスキルとは?

カスタマーサポートの実務で求められるスキルは、お客様と向き合う「対人対応スキル」、問い合わせを正確に処理する「業務遂行スキル」、AIやツールを使いこなす「テクノロジー・AI活用スキル」の3つに大別でき、内訳は15項目にものぼります。

AIチャットボットやFAQサイトの普及で、3つ目の比重が急速に高まっています。本記事の一覧表でご自身のスキルを棚卸しし、次に伸ばす1つを決める材料にしてください。

カスタマーサポートに必要なスキルの一覧

求められる力を思いつくまま挙げると、傾聴、文章力、商品知識、ツールの操作と15個ほどに広がり、どれから伸ばすか判断できなくなります。

そこで本記事では、性質の近い力をまとめて3つに分類しました。分類ごとの内訳と、実務で使う場面を次の表に整理しています。

分類内訳のスキル実務で使う場面
①対人対応スキルヒアリング(機微な反応の読み取りを含む)/文章力(文法・ライティング)/感情の切り分け・メンタルコントロール/語学(海外対応がある事業)問い合わせの受け答え全般
②業務遂行スキル商品知識/情報収集(競合・業界動向)/問題の切り分け/タスク・期日管理/社内調整(他部門・上司・部下)/法令知識の基礎/データ分析調査、回答の作成、引き継ぎ・報告、対応状況の測定
③テクノロジー・AI活用スキルAIリテラシー/ナレッジ作成・更新(FAQ記事・マニュアル)/AI回答の検証/ツールの管理・運用AIチャットボット・FAQサイト・問い合わせ管理ツールの運用

AIチャットボットや生成AIが問い合わせ対応で使われるようになり、担当者の仕事は「自分で答える」ことに加えて、「AIが正しく答えられる状態を保つ」ことまで広がりました。この変化を反映し、テクノロジー・AI活用スキルを独立した3つ目の分類として立てています。

複数チャネルとAIを活用したカスタマーサポート業務の全体像

対人対応スキル

電話でもメールでもライブチャットでも、対応の品質を最終的に決めるのは、お客様の話を正確に受け取り、伝わる形で返す力です。ツールが進化しても、この土台が弱いと回答の正確さが評価につながりません。

この土台の重さは、公的データでも確認できます。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)は、職業ごとに必要なスキルを7点満点で数値化しています。近接する職業であるコールセンターオペレーターのデータでは、傾聴力が4.8と全スキル項目の中で最も高く、説明力3.9、読解力3.4、文章力3.3が続きます。

お客様の反応を察する「他者の反応の理解」も3.2と上位に入っており、本章で扱う4つの力が、実際の就業者データの上位とほぼ一致します(出典:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」コールセンターオペレーター — 2026年7月時点)。ここでは4つの力を、実務での使い方と伸ばし方まで含めてご説明します。

ヒアリング(機微な反応の読み取りを含む)

お客様の説明は、順番が前後したり、感情が先に立ったりします。そのままメモするだけでは対応を誤るため、「起きている事実」と「お客様が望んでいること」を分けて聞き取ります。

たとえば「昨日から使えない、返金してほしい」という訴えなら、事実はログイン不可、要望は返金です。事実を確認すれば解決するのか、要望への回答が必要なのかで、返すべき内容が変わります。

言葉にされない反応を読み取る力も、ヒアリングに含まれます。電話なら声のトーンの変化や説明の途中の沈黙、メールなら返信文の急な短文化が、不満のサインです。サインに気づいた時点で「ご説明が分かりにくい点はありませんか」と確認を挟むと、不満が大きくなる前に軌道を修正できます。

伸ばし方としては、復唱確認を型にする方法が有効です。聞き取った内容を「〜という状況で、〜をご希望という理解で合っていますか」と毎回言葉にして返すと、聞き漏らしがその場で見つかり、確認の精度が上がっていきます。

文章力(文法・ライティング)

メール・チャット・FAQ記事と、カスタマーサポートの仕事は書く場面が大半を占めます。文章力は2段階に分けて考えます。1段階目は、主語と述語が対応し、敬語の誤りがない正しい日本語を書く基礎です。

文法の乱れた回答は、内容が正しくてもお客様に不安を与えます。2段階目は、お客様が迷わず行動できる構成で書く応用です。結論を最初に置き、手順は1文に1動作で区切り、専門用語は日常の言葉に置き換えます。

伸ばし方は、送信前の音読と、他者の添削です。声に出して引っかかる文は、お客様も読みにくい文です。また、評価の高い先輩の返信文を読み、結論の位置や言葉の選び方を自分の文と比べると、修正すべき点が具体的に見えてきます。

感情の切り分け・メンタルコントロール

厳しい言葉を受ける場面は避けられません。この職種を続けるには、2つの力を分けて身につけます。1つ目は、お客様の怒りと自分への評価を切り分ける力です。

怒りの矛先は商品の不具合や待たされた状況に向いており、担当者個人の人格に向いたものではありません。この前提に立つと、強い言葉を受けても対応の手順を保てます。

2つ目は、自分のストレスに対処する力です。感情が高ぶった直後に返信を書くと、言葉選びが荒れます。いったん席を離れる、下書きを保存して時間を置いてから見直すなど、間を置く行動を自分の型として決めておきます。なお、度を超えた要求や暴言への対応は担当者個人の力で解決する範囲を超えるため、組織としての対応ルールに従います。

伸ばし方としては、対応後の記録と共有を習慣にします。心に残った対応を「何を言われたか」「自分はどう感じたか」「次はどう返すか」の3点でメモすると、感情と事実を分けて振り返る練習になります。

あわせて、引きずりそうな内容を上司や同僚に口頭で共有する場を定例にしておくと、1人で抱える時間が短くなり、回復も早まります。

カスタマーサポート担当者が複数の顧客から感謝される対応の様子

語学(海外対応がある事業)

越境ECや訪日のお客様を受け入れる事業では、外国語での問い合わせ対応が発生します。全担当者に必須の力ではありませんが、該当する事業では採用・配置の条件になります。

実務では、機械翻訳を使って対応する企業もあります。その場合でも、翻訳の精度を保つために原文の日本語を短く区切って書く、固有名詞や製品名を統一するといった書き方の技術が必要です。語学力そのものに加えて、翻訳を介しても意味が崩れない文を書けるかが、対応品質を左右します。

伸ばし方は、対応で実際に使う表現から覚える方法が近道です。自社への問い合わせで頻出する場面(返品の依頼、配送の遅れ、操作の質問など)を10種類ほど選び、それぞれの定型文を作って使いながら修正していきます。汎用の語学学習より、自社の問い合わせに直結する範囲から広げるほうが、実務で使える力になります。

業務遂行スキル

お客様への返信の裏側では、調査、記録、引き継ぎ、期日の管理が同時に動いています。

この裏側の正確さが、解決までの時間と回答の信頼性を決めます。ここでは7つの力を、実務での使い方と伸ばし方まで含めてご説明します。

商品知識

自社の商品・サービスの仕様、料金、利用条件を正確に把握する力です。即答できる範囲が広いほど、保留や折り返しが減り、お客様を待たせる時間が短くなります。すべてを暗記する必要はありません。

どこを確認すれば正確な情報があるか、最新の変更はどこに記録されるかを知っていれば、回答の正確さは保てます。誤った記憶で答えるより、30秒確認してから答えるほうが、結果として対応は速くなります。

伸ばし方の基本は、自分で商品を使うことです。お客様と同じ画面を同じ手順で操作すると、説明書だけでは分からないつまずきの箇所が体感できます。あわせて、新機能や料金改定の社内共有を受け取ったら、お客様への説明文を1つ自分で書いてみると、理解の浅い箇所がその場で見つかります。

複数チャネルで顧客対応するカスタマーサポートの業務イメージ

情報収集(競合・業界動向)

競合他社の動きや業界の変化を継続的に追う力です。お客様から「他社では無料でできた」と言われる場面は珍しくありません。競合の実際のサービス内容を知っていれば、事実を踏まえて自社の位置づけを説明でき、誤解が含まれる比較には根拠を持って訂正できます。

また、業界の規制変更や大きなニュースは、問い合わせの急増として現場に届きます。先に知っていれば、回答の準備が間に合います。

磨くには、確認先と頻度を決めて習慣にします。たとえば主要な競合2〜3社の料金ページとお知らせ欄を月1回見る、業界団体や行政の発表を購読する、と対象を絞ると続けられます。気づいた変化をチームに共有すると、自分の理解も定着します。

問題の切り分け

原因の候補を順に絞り込み、自分で解決できる範囲か、他部門へ引き継ぐ範囲かを判断する力です。「使えない」という訴えのままでは調査が始まりません。

いつから、どの画面で、どんな操作をして、どんな表示が出たかを確認し、再現するかを確かめ、影響がそのお客様だけか全体かを見極めます。ここまで絞れていれば、自分で答えられない場合でも、開発部門は調査にすぐ入れます。

この力を伸ばすには、切り分けの質問を型として持つことです。問い合わせの種類ごとに「最初に確認する3つ」を書き出しておくと、その場で考える負担が減ります。過去の対応記録を読み返し、原因別に「どの質問で絞り込めたか」を振り返るのも有効です。

タスク・期日管理

「確認して明日までにご連絡します」という約束を、確実に守るための管理の力です。回答の内容がどれだけ正確でも、約束した期日を過ぎれば、お客様の信頼は大きく損なわれます。

同時に何件も対応する実務では、記憶に頼った管理は必ず漏れます。対応中・確認中・完了の状態を記録し、お客様に伝えた期日をすべて期限として登録する運用が前提になります。

習慣としては、約束した瞬間にタスク登録することを徹底します。「あとでまとめて登録」は漏れの原因です。始業時にその日が期限のタスクを確認し、間に合わない見込みが出た時点で、期日前にお客様へ状況をご連絡します。期日前の連絡は、遅れの連絡より何倍も信頼を保てます。

社内調整(他部門・上司・部下)

他部門への引き継ぎ、上司への報告・相談、後輩への指示・共有をまとめた力です。カスタマーサポートは1人で完結しない仕事です。開発部門へ引き継ぐ際に、確認済みの事実、未確認の点、お客様に伝えた約束の3つが漏れなく渡っていれば、お客様が同じ説明を繰り返す事態を防げます。上司への相談は、判断に迷った時点で早く仰ぐほど、対応の選択肢が残ります。

伸ばし方としては、引き継ぎと報告の型を先に作ります。引き継ぎ文のテンプレートに上の3点の欄を設けておけば、書き漏れが構造的に防げます。報告は結論を最初に置き、経緯は後に回す順で話す練習をすると、忙しい相手にも要点が伝わります。

法令知識の基礎

個人情報保護法、特定商取引法、消費者契約法など、日々の対応が触れる法令の概要を知っておく力です。ここで求められるのは、条文を解釈する専門性まで達していなくても、「この対応は法令に関わる可能性がある」と気づけることです。

たとえば、ご本人確認を経ずに契約情報を答えれば個人情報の漏えいになり、返品条件の説明を誤れば表示に関する規制に触れる可能性があります。気づけた時点で、自社のルールを確認し、判断が難しければ法務や上司へ相談する。この流れを踏めることが、担当者に必要な水準です。

学ぶ手順としては、自社の対応ルールから出発します。本人確認の手順や返金規定には、根拠となる法令があります。ルールを覚える際に「なぜこの手順なのか」まで確認すると、応用の利く知識になります。判断に迷う場面を想定し、誰に確認するかを事前に決めておくことも、知識と同じくらい重要です。

データ分析

対応件数、返信までの時間、解決までの時間、解決率といった数値を測定し、改善につなげる力です。数値があると、自分の対応の変化が確認でき、社内への報告にも説得力が生まれます。たとえば問い合わせを内容別に分類して件数を数えるだけで、FAQ記事として先に用意すべきテーマの優先順位が決まります。増員の相談も、件数と対応時間の数値を添えれば、判断材料として扱ってもらえます。

始め方は小さくて構いません。まず毎週1つ、決まった数値を記録することから着手します。問い合わせ管理ツールのレポート機能を使えば、集計の手作業は減らせます。数値が2〜3か月分たまると傾向が見え、改善の提案につながっていきます。

サポート担当者がAIチャットボットとFAQシステムを管理・整備する様子

テクノロジー・AI活用スキル

AIチャットボットやFAQサイトが問い合わせ対応の前面に立つようになり、担当者の仕事は「自分で答える」ことに加えて、「AIとツールが正しく答えられる状態を保つ」ことまで広がりました。この分類のスキルは、対応する1件1件ではなく、対応全体の品質に効きます。

お客様の期待も、AIの普及を前提に変わっています。調査資料によると、消費者の74%は24時間365日対応できるサポートを期待し、CXリーダーの85%は「未解決の問題が1件あるだけで顧客を失う」と答えています(出典:Zendesk「CX Trends Report 2026」2025年)。

営業時間外の期待に人手だけで応えることはできず、AIチャットボットが正答できる状態を保てる担当者の価値が上がっている背景がここにあります。ここでは4つの力を、実務での使い方と伸ばし方まで含めてご説明します。

AIリテラシー

AIに何ができて、何ができないかを理解し、業務で適切に使う力です。ChatGPTやGeminiのような対話型の生成AIは、返信文の下書きや文章の要約を短時間で作れます。

一方で、生成AIは事実と異なる内容をもっともらしい文章で出力することがあります。この誤答はハルシネーションと呼ばれ、AIチャットボットでも、もとになるFAQ記事やマニュアルの情報が古い・矛盾していると起きます。AIの回答は参照元の情報の鮮度と正確さに依存する、という原則を理解していることが、この力の中心です。

原則を踏まえると、実務で必要な行動は2つです。1つ目は、ハルシネーションを見抜くことです。AIの出力は文章が流暢なため、誤りが含まれていても正しそうに読めてしまいます。

見抜く手がかりは、断定されている事実の裏取りです。料金、日付、機能の有無、手順の各ステップといった確認可能な情報を、公式の資料や実際の画面と照合してから使います。とくに自社の商品に関する記述は、商品知識のある担当者が読めば違和感に気づけます。AIの文章のうまさと、内容の正しさは別物だと知っていることが、見抜く力の出発点です。

2つ目は、入力してよい情報の線引きです。お客様の氏名、連絡先、契約内容、問い合わせの本文をそのまま、会社が認めていない外部のAIサービスに入力すれば、個人情報の持ち出しになります。自社でどのAIツールが許可され、どのデータまで入力してよいかを確認し、迷う場合は入力しない側に倒します。この判断は、業務遂行スキルで挙げた法令知識の基礎とも直結します。

伸ばし方は、許可された範囲で実際に使うことです。返信文の下書きを生成AIに作らせ、事実の誤りを自分で見つけて修正する経験を重ねると、AIの得意な処理と信用してはいけない箇所が体感で分かるようになります。

ナレッジ作成・更新(FAQ記事・マニュアル)

お客様や社内が参照する文書を作り、最新に保つ力です。読み手で2つに分かれます。1つはお客様向けのナレッジで、FAQ記事や操作ガイドが該当します。1記事1質問に絞り、結論を最初に置き、手順は画面の表示に沿って書きます。もう1つは社内向けのナレッジで、対応手順のマニュアルが該当します。判断の分かれる場面の基準や、引き継ぎ先の連絡経路まで書いておくと、担当者による対応のばらつきが減ります。

AIチャットボットの普及で、この力の重要度は一段上がりました。AIはナレッジを参照して回答するため、FAQ記事の品質がそのままAIの回答品質になります。人が読んで分かる文書を書く力が、AIの正答率を左右する時代になっています。

伸ばし方は、対応のたびに「この質問に答えるFAQ記事はあるか」を確認する習慣です。なければ、その対応の内容をもとに1記事書きます。回答した直後が、最も正確で具体的な記事を書ける瞬間です。

カスタマーサポートチームが協力してFAQや対応体制を構築する様子

AI回答の検証

AIチャットボットの回答ログを確認し、誤答や未回答を見つけて修正につなげる力です。AIは導入して終わりではなく、回答の品質を人が点検し続ける必要があります。

実務では、回答ログを定期的に確認し、誤答があれば原因を特定します。原因の多くは、参照元のFAQ記事が古い、記述が矛盾している、そもそも該当する記事がない、のいずれかです。原因に応じて記事を修正・追加すれば、同じ誤答は再発しなくなります。

この作業は、前項のナレッジ作成と一体で回ります。検証で見つけた穴を、ナレッジの追加で埋める。この繰り返しがAIの正答率を上げていきます。

伸ばし方は、確認の定例化です。週に1回、回答ログから「解決に至らなかった質問」を集め、原因別に分類します。未回答の多い質問から順にFAQ記事を追加すると、検証の時間が最も効率よく正答率の改善に変わります。

ツールの管理・運用

問い合わせ管理ツール、FAQサイト、チャットボットの設定・テンプレート・権限を管理し、チームが使える状態を保つ力です。返信テンプレートの追加、問い合わせの分類ラベルの見直し、新メンバーのアカウント発行といった作業が該当します。管理が止まるとテンプレートが古いまま使われ、対応の品質が静かに下がっていきます。

FAQサイト、チャットボット、フォーム、メール管理を別々のツールでそろえると、設定や更新の管理先が分かれ、この維持の手間が倍増します。AIカスタマーサポートシステム「ヘルプドッグ」のような一体型のシステムでは、FAQサイト・AIチャットボット・フォーム・メール問い合わせ管理を1つの画面で運用できるため、管理の対象をまとめられます。

伸ばし方は、小さな設定変更を自分で担当することです。テンプレートを1つ追加する、分類ラベルを1つ見直すといった作業を実際に行うと、ツールの構造が理解でき、改善の提案もできるようになります。変更した内容と日付を記録しておくと、後から影響を確認できます。

AIと連携しながら顧客対応を行うカスタマーサポートの業務スタイル

新人・中堅・リーダー別に見るスキルの優先順位

15のスキルを同時に伸ばすことはできません。経験の段階によって、任される仕事と求められる判断が変わるため、伸ばす順番にも合理的な順序があります。段階ごとに優先するスキルと到達の目安を、次の表に整理しました。

この区分は、雇用形態を問わず当てはまります。先にご紹介した職業情報提供サイト(job tag)の就業形態データでは、コールセンターオペレーターとして実際に働く人が多いと感じる就業形態として、派遣社員36.5%、契約社員・期間従業員30.8%、パートタイマーと正社員が各25.0%と回答されており(複数回答)、多様な雇用形態で成り立つ職種であることが分かります。

アルバイトや派遣で入職した場合も、最初に身につけるのは新人の4つのスキルで変わりません。

段階優先して伸ばすスキル到達の目安
新人(〜1年目)ヒアリング/文章力/商品知識/タスク・期日管理定型的な問い合わせを1人で完結できる
中堅(2〜3年目)問題の切り分け/社内調整/ナレッジ作成・更新/AIリテラシー非定型の問い合わせを判断し、対応をナレッジに残し、新人を指導できる
リーダーデータ分析/AI回答の検証/ツールの管理・運用/法令知識の基礎チーム全体の対応品質を数値で把握し、改善を主導できる

新人はお客様との1往復を確実にする

最初の1年で身につけるべきは、1件の問い合わせをお客様との間で確実に完結させる力です。聞き取り、調べ、期日を守って返す。この1往復の品質がすべての土台になるため、ヒアリング・文章力・商品知識・タスク管理の4つに集中します。逆に、この段階でデータ分析やツール管理に手を広げても、対応の実感が伴わず、身につきません。

日々の習慣としては、対応した問い合わせの記録を1日の終わりに読み返し、確認が遅れた点、言葉に詰まった点を翌日の1件目で意識します。自分の対応ログが、最も安価で確実な教材です。

中堅は例外への判断と、対応の資産化・後輩指導を担う

定型対応が安定したら、マニュアルにない問い合わせへの判断が任されるようになります。問題の切り分けで対応範囲を見極め、社内調整で他部門を動かす力が中心になります。

あわせて、この段階からナレッジ作成を担当する意義は大きいです。自分の対応経験をFAQ記事やマニュアルとして残すと、経験がチームの資産に変わり、後輩の対応品質まで引き上げられます。生成AIを下書きに使い始めるのもこの段階が適切です。商品知識が身についているため、ハルシネーションに気づけるからです。

新人の指導とケアも、中堅から始まる役割です。対応に同席してその場で助言する、書いた返信文を送信前に確認する、厳しい対応を受けた後に声をかける。

こうした個別のフォローは、日々いちばん近くで仕事を見ている中堅にしかできません。教えるためには自分の対応を言葉にする必要があるため、指導は自分のスキルの棚卸しにもなります。感覚で処理していた判断を「最初にこの3点を確認している」と言語化できたとき、その内容はそのままマニュアルの材料になります。

カスタマーサポートチームの複数メンバーが協力して業務にあたる様子

リーダーは個人の対応からチームの数値へ移る

リーダーの仕事は、1件の対応品質からチーム全体の品質へと対象が変わります。対応件数や解決率を測定して改善点を特定するデータ分析、AI回答の検証とナレッジ改善の仕組みづくり、ツールと権限の管理が中心です。新人の個別指導は中堅に任せ、リーダーは育成の手順と評価の基準を作る側に回ります。判断の難しいクレームや法令に関わる相談は最終的にリーダーへ集まるため、法令知識の基礎もこの段階で一段深めます。

個人として優秀な担当者ほど、この移行でつまずきます。自分で対応したほうが速い場面でも、ナレッジとツールの整った環境を作るほうが、チームの合計では大きな改善になります。手を動かす対象を、目の前の1件から、対応を支える仕組み側へ移すことが、リーダーへの成長の中身です。

アルバイト・派遣で身につけたスキルは、次の仕事でも通用する

ヒアリング、文章力、問い合わせ管理ツールの操作は、職種や雇用形態が変わっても強みとして発揮できる力です。厚生労働省は、こうした持ち運びできる能力をポータブルスキルと呼んでいます。カスタマーサポートの実務は、この種の力を毎日使って磨ける場です。

正社員登用や別職種への応募では、対応の実績を数字で示せると評価につながります。月に何件対応したか、どんな種類の問い合わせを扱ったか、FAQ記事を何本書いたか。この3点を日頃から記録しておけば、身につけたスキルを裏づけとともに説明できます。雇用形態にかかわらず、日々の対応記録がそのままキャリアの証明になります。

まとめ

最後に、私からひとつだけお伝えしたいのは、スキルを磨くこと自体を目的にしない、ということです。

なぜカスタマーサポートの業務にたずさわっているのか、何を達成したいのか、何を得たいのか。カスタマーサポートの仕事で自分自身が果たせることを逆算して、言語化する作業を、一度ぜひ行ってみてください。お客様が好き、お客様とのコミュニケーションが好き、お客様の生の声を得られるから。

理由や動機は人それぞれあると思います。そこから先のキャリアを築くには、本記事で挙げたようなさまざまなスキルと経験が必要になります。ただ、それがなぜ必要なのか、なぜ求められるのかを、ご自身の動機とつなげて紐解いてほしいのです。

私が長年親交のある製造業の企業では、お客様相談室の皆さんが、非常にスキルフルな対応をされています。初見のお客様で、関係値がまったくないなかでも、感情をコントロールしながら、短い時間で適切に、ホスピタリティにあふれるサポートを行う。これは、言葉でいうほど簡単なものではありません。営業を長年経験してきた私だからこそ、そう思います。

営業は、時間をかけて関係を築いたうえで提案できます。カスタマーサポートは、初対面のお客様と、短い時間で信頼を作らなければなりません。お客様を支える、人を支えることの難易度を、私はこの仕事の尊さだと感じています。

あわせて、カスタマーサポートの仕事そのものも変わってきています。お問い合わせに1件ずつ対応する業務から、FAQサイトやAIチャットボットを用意して、お問い合わせを未然に防ぐ業務へシフトする企業が増えています。

省人化した少人数の体制でカスタマーサポートを運営しながら、お客様からのお問い合わせの内容や、自社の製品・サービスに抱く感情を数値化し、経営の判断に還元する循環を作っていく。本記事で挙げたデータ分析やAI活用のスキルは、この変化の中でいっそう求められる力です。

だからこそ、ご自身の動機を言葉にしたうえで、15のスキルの中から次の1つを選んでみてください。動機とつながったスキルは、身につく速さが変わります。

FAQサイト・AI検索・AIチャットボット・AIフォーム ─全部まとめて

「サポート対応、もっとラクに。」

3分でわかる!「ヘルプドッグ」 資料ダウンロード

FAQ・よくある質問

Q1

AIが普及すると、カスタマーサポート担当者の仕事はなくなりますか?

A

定型的な問い合わせへの回答は、AIチャットボットへの置き換えが進んでいます。一方で、AIが正答するためのナレッジを作る仕事、AIの回答を検証する仕事、非定型の相談やクレームに判断を下す仕事は、担当者にしかできません。仕事がなくなるというより、本文で挙げたテクノロジー・AI活用スキルの比重が増す方向に、仕事の中身が変わっていきます。

Q2

自分のスキルの現在地を客観的に測る方法はありますか?

A

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)にある「しごと能力プロフィール」を使うと、自分のスキルを数値化し、職業ごとの標準データと比較できます。無料で利用でき、不足しているスキルの特定にも使えます。あわせて、本記事の一覧表の15項目それぞれについて、上司や同僚に「できている・伸ばすべき」を聞くと、自己評価とのずれが分かります。

Q3

1人や少人数でカスタマーサポートを担当している場合、どのスキルから伸ばすべきですか?

A

少人数の体制では、経験年数にかかわらずナレッジ作成・更新を早めに伸ばすことを推奨します。対応をFAQ記事として残せば、お客様の自己解決が進んで問い合わせ自体が減り、少ない人数でも対応が回るようになるためです。対人対応の基礎(ヒアリング・文章力)と並行して、対応した内容を1日1記事ナレッジ化する習慣から始めてください。

Q4

スキルが身についているかは、何で判断できますか?

A

対応の結果を数値で確認します。返信までの時間、一度の回答で解決した割合、同じお客様からの再問い合わせの有無が、スキルの変化を映す代表的な数値です。感覚での自己評価は甘くも辛くもなりがちなので、月ごとに同じ数値を記録して推移で判断すると、伸びた点と課題が具体的に見えます。

堀辺 憲
筆者

堀辺 憲 noco株式会社 代表取締役

クボタ、住友スリーエム、DeNAなどを経て2017年にnoco株式会社を創業。AIサポートシステム「ヘルプドッグ」等の開発プロデューサーを務める。数多くの企業のサポート部門・現場業務のDXを支援してきた実績から得た、カスタマーサポート領域およびナレッジマネジメントに関する深い知見をもとに、CS基盤の構築・改善に直結するノウハウを解説する。