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カスタマーサポートの自動化で工数が減らない6つの原因と対処法

ヘルプドッグ編集部
カスタマーサポートの自動化で工数が減らない原因とは?

チャットボットやFAQサイトを導入したのに、問い合わせ対応の工数がいっこうに減らない。原因の多くは、回答のもとになる情報の不足か、導入後に運用が続いていないことにあります。

ツールの性能が原因である例は、実はそれほど多くありません。にもかかわらず、原因を切り分けないまま別のツールへ乗り換えてしまうと、費用と時間を使って同じ結果を繰り返します。まずは、自動化で何が減り、何が減らないのかを正しく見きわめるところから始めましょう。

カスタマーサポートの自動化で削減できる工数の範囲

自動化で減らせるのは、答えが決まっている定型の問い合わせにかかる工数です。個別の事情を確認しないと答えられない問い合わせは、導入後も変わらず人が対応します。

加えて、FAQやナレッジの作成・更新という新しい作業が加わるため、実際の削減分は、減る工数からこの作業分を差し引いた残りになります。この差し引きを導入前に見込めていたかどうかが、導入後の評価を左右します。

AIと人が連携してカスタマーサポートを自動化・効率化するしくみ

自動化で減らせる工数

チャットボットやFAQサイトが得意とするのは、誰が答えても同じ回答になる問い合わせです。返品の手順や送料、営業時間、パスワードの再設定方法などが当てはまります。答えが1つに決まっているため、あらかじめ用意した回答をそのまま返せます。

こうした定型の問い合わせは、1件の対応こそ短いものの、件数が多く、合計すると業務時間のかなりの部分を占めます。だからこそ、お客様が自分で答えを見つけられるようになると、対応時間はまとまって減ります。

営業時間外にも同じ効果が及びます。夜間や休日に寄せられた質問にFAQサイトやチャットボットが答えるため、翌営業日にたまった問い合わせを処理する時間も短くなります。

自動化しても残る工数

では、注文内容の変更や契約条件の相談、不具合の切り分けはどうでしょうか。いずれも、お客様ごとに状況を確認しなければ答えが決まらないため、自動化の対象にはなりません。強い不満を伴うご連絡も同じで、人が言葉を選びながら対応する必要があります。

残念ですが、自動化をどれだけ進めても、問い合わせがゼロになることはありません。定型の問い合わせが減った分、人の対応は個別性の高い問い合わせに集中していきます。その結果、1件あたりの対応時間はむしろ以前より長くなる場合があります。工数の合計を評価するときは、この変化まで見込んでおきましょう。

自動化で新しく加わる作業

見落とされがちなのが、自動化そのものにかかる工数です。FAQ記事やナレッジには、公開前に書く時間に加えて、公開後に内容を追加・見直しする時間が毎月かかり続けます。

とくに注意したいのが、AIが回答を生成するタイプのチャットボットです。回答の質は、もとになる情報の鮮度と正確さに左右されます。古い情報や矛盾した情報が残っていると、もっともらしい誤答(ハルシネーション)が起きることがあるため、回答内容を定期的に確認する時間も、運用の一部として確保しておく必要があります。

この作業分を見込まずに導入すると、どうなるでしょうか。問い合わせの件数は減ったのに、担当者の労働時間は変わらない、という結果になりかねません。導入前に思い描いた効果と導入後の実感が食い違う原因の多くは、この見込み漏れにあります。

工数削減に失敗する6つの原因

失敗の原因は、回答のもとになる情報、自動化する業務の選び方、導入後の運用のどこかに集中しています。しかも実際の現場では、複数の原因が重なっている場合がほとんどです。ツールを入れ替える前に、自社がどれに当てはまるかを下の表で確かめてください。

原因導入後に起きること
① FAQ・ナレッジの中身が不足している調べても答えがなく、問い合わせが減らない
② 答えが1つに決まらない問い合わせから始めている的外れな回答が返り、結局電話につながる
③ FAQを最新に保つ担当者がいないFAQが古くなり、誤案内の訂正で工数が増える
④ お客様が途中であきらめている調べたのに解決せず、不満を抱えて問い合わせが来る
⑤ お客様の目に入る導線が以前のまま存在に気づかれず、利用されない
⑥ 削減の効果を測定していない成果を判断できず、改善が止まる

原因1:FAQ・ナレッジの中身が不足している

チャットボットもFAQサイトも、あらかじめ用意された情報の範囲でしか答えられません。ところが導入時には、思いつきで挙げた10問ほどのFAQだけを載せて公開してしまう例が少なくありません。お客様は調べても答えが見つからないため、これまでどおり問い合わせます。件数は減らず、「せっかく導入したのに使われない」という結果だけが残ります。

対処は、実際の問い合わせから逆算することです。直近3〜6か月分の問い合わせ履歴を内容ごとに分類し、件数の多い順にFAQ記事にしていきます。頭の中の想像で書くと、お客様が本当に知りたいことと必ずずれます。履歴という事実から始めれば、公開した初月から効果が出ます。

原因2:答えが1つに決まらない問い合わせから自動化を始めている

契約内容の相談や不具合の切り分けのような、お客様ごとに答えが変わる問い合わせをチャットボットに担わせると、的外れな回答が返ります。お客様は同じ質問を言い換えながら何度もやり取りしたあげく、結局電話をかけてきます。この時点で、自動化する前より手数が増えています。

自動化は、答えが1つに決まる定型の問い合わせから始めましょう。前の章でご説明した「減らせる工数」の範囲です。定型で成果を確かめてから対象を少しずつ広げる順序であれば、お客様の体験を損なわずに済みます。

原因3:FAQを最新に保つ担当者がいない

導入した時点で仕事が終わったことになり、FAQもナレッジも公開時のまま放置される。これが、私がご相談を受ける中でもっとも多く目にする状態です。製品仕様や規約が変わっているのにFAQが古いままだと、誤った案内がお客様に表示されます。すると担当者は回答の確認と訂正に追われ、工数はかえって増えます。

防ぐには、導入を決めた時点で、更新の担当者と毎月の作業時間をセットで確保することです。ツール選定の段階で更新のしやすさを確かめておくと、この負担はさらに小さくなります。FAQサイトとAIチャットボットを一体で管理できる仕組みなら、それぞれを別のツールで更新する二度手間がありません。

AIチャットボット障害でサポート業務が混乱する様子

原因4:お客様が途中であきらめ、人の対応に流れている

FAQ記事を用意しても、お客様が答えを見つけられなければ、自己解決は成立しません。海外の調査会社が消費者5,728名を対象に実施した調査では、お客様の73%が、問題解決の過程でセルフサービス(自分で調べて解決する仕組み)を利用していました(出典:Gartner「Gartner Survey Finds Only 14% of Customer Service Issues Are Fully Resolved in Self-Service」2024年)。

問い合わせをしてくるお客様の多くは、その前に一度、自分で調べています。調べたのに見つからなかったという体験を経て、連絡してきているのです。

見つけられない理由は主に2つあります。1つは、お客様の使う言葉とFAQ記事の言葉がずれていて、検索しても該当記事が表示されないこと。もう1つは、記事は見つかるのに、内容が説明不足で最後まで解決できないことです。

対処として、FAQサイト内でお客様が検索したキーワードと、検索後に問い合わせに進んだ質問を記録してください。「検索されたのに記事がなかった言葉」と「読まれたのに解決しなかった記事」が分かれば、追加・修正すべき箇所は自動的に決まります。

原因5:お客様の目に入る導線が以前のままになっている

チャットボットやFAQサイトを設置しても、お客様のよく見るページに電話番号や問い合わせフォームが以前と同じ場所・同じ大きさで表示されていれば、お客様は今までどおりそちらから連絡します。存在に気づかれない自動化は、なかった場合と同じ結果になります。

問い合わせフォームの手前にFAQの検索窓を置く、フォームの入力内容に応じて関連するFAQ記事を表示する、といった順序の組み替えが有効です。ただし、電話やフォームを見つけにくくして無理に自己解決へ誘導すると、お客様の不満が募ります。自己解決の選択肢を先に見せつつ、人の窓口にもすぐ移れる状態を保ってください。

原因6:削減の効果を測定していない

「何を、どれだけ減らすか」を決めずに導入すると、成果が出ているのかどうかを誰も判断できません。判断できなければ、FAQ記事の追加も、検索キーワードの見直しも始まりません。FAQは放置され、効果は先細ります。測定しないことは、それ自体が失敗の原因になります。

指標は、月あたりの問い合わせ件数、FAQサイトの閲覧数、記事を読んだあとに問い合わせへ進んだ割合の3つで十分です。毎月同じ条件で測定を続ければ、改善すべき箇所は見えます。数値が動かない月があっても、どの記事を修正すべきかという次の行動につながるため、測定の時間は無駄になりません。

失敗を防ぐ進め方

6つの原因への対処は、導入前・公開時・公開後の3つの時期に分けると、抜けなく実行できます。作業の大半は導入前に集中しており、この段階の準備で原因1・2・3・6の4つを防げます。時期ごとのやることは次のとおりです。

時期やること防げる原因
導入前問い合わせ履歴の分類、担当者と作業時間の確保、指標の決定FAQの中身不足、対象の選び間違い、公開後の放置
公開時お客様の目に入る導線の組み替え気づかれず利用されない
公開後毎月の測定、検索の記録にもとづく記事の追加・修正お客様の途中離脱、改善の停止

導入前:問い合わせを分類し、担当者と指標を決める

最初の作業は、直近3〜6か月分の問い合わせ履歴の分類です。内容ごとに分け、答えが1つに決まる定型と、個別の確認が要るものに仕分けます。定型を件数の多い順にFAQ記事にしていけば、公開した初月から効果が出ます。自動化の対象も、この定型の範囲に絞って始めてください。

並行して、FAQを更新する担当者と、毎月の作業時間を決めます。担当者は兼任で構いません。担当者が決まらないまま公開だけが先行すると、FAQは公開時のまま放置され、原因3がそのまま再現されます。ツールを選ぶ段階であれば、FAQサイトとAIチャットボットを一体で管理できる仕組みを選んでおくと、別々のツールを更新する二度手間がなく、担当者の負担を小さくできます。

最後に、指標を決めます。月あたりの問い合わせ件数、FAQサイトの閲覧数、記事を読んだあとに問い合わせへ進んだ割合の3つで十分です。導入前の数値を控えておけば、公開後の変化をそのまま効果として測定できます。

公開時:お客様の導線を組み替える

公開のタイミングで、問い合わせフォームの手前にFAQの検索窓を置く、フォームの入力内容に応じて関連するFAQ記事を表示する、といった順序の組み替えを行います。設置とあわせて導線を変えることで、お客様が自然にFAQへ触れる流れができます。

ただし、電話やフォームを見つけにくくして無理に自己解決へ誘導すると、お客様の不満が募ります。自己解決の選択肢を先に見せつつ、人の窓口にもすぐ移れる状態を保ってください。

公開後:測定と更新を毎月続ける

公開後は、導入前に決めた3つの指標を、毎月同じ条件で測定します。あわせて、FAQサイト内でお客様が検索したキーワードと、検索後に問い合わせに進んだ質問を記録してください。「検索されたのに記事がなかった言葉」と「読まれたのに解決しなかった記事」が分かれば、追加・修正すべき箇所は自動的に決まります。

見直しは月1回の定期作業とし、製品仕様・料金・規約が変わったときは随時更新します。数値が動かない月があっても、どの記事を修正すべきかという次の行動につながるため、測定の時間は無駄になりません。

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まとめ

私が支援してきた企業様の典型的な失敗例を、1つご紹介します。検索型のFAQツールを導入した企業様でした。導入実績は豊富で、料金は月額30万円。「これだけのツールだから、きっと効果が出るはずだ」と信じて任せきりにした結果、半年後、そのツールは解約されていました。

適切な設定と運用をすれば、よくある質問への問い合わせは確実に減らせます。ただし、ツールは導入しただけでは働いてくれません。どんな名道具・名器でも、使う人が設定を誤ったり、日々のケアを怠ったりすれば、期待された性能は発揮されないものです。ご自身の体と同じで、メンテナンスをやめれば、パフォーマンスは落ちていきます。

そこで、ツールを導入する前に、まず担当者を決めてください。専任でなくて構いません。兼任で十分です。その担当者を中心に、どう利用し、どう運用していくかを決めていく。この順序が重要です。

ツールの選び方にも、1つ助言があります。

1人の担当者が複数のツールを使い続けると、負担がどうしても大きくなります。AIカスタマーサポートシステム「ヘルプドッグ」のような、FAQサイト・AIチャットボット・メール問い合わせ管理・フォーム作成などがオールインワンでそろったシステムを選んでおくと、覚えることが少なく、データも1か所に集まるため、少人数でも効果的に運用できます。月額の利用料を抑えて始められる分、費用対効果も出しやすくなります。

最初の1本に月額10万円を超えるツールを選ぶ前に、小さく、速く始める。そして、担当者を早く決める。工数削減の成否は、ツールの性能はもちろんですが、いかにクイックにトライアルできるかです。

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FAQ・よくある質問

Q1

自動化で問い合わせは何割くらい減りますか?

A

一律の目安はありません。減らせる上限は、自社の問い合わせに占める定型の割合で決まるためです。直近3〜6か月分の履歴を定型と個別対応に分類すれば、導入前におおよその上限を見積もれます。実例として、AIカスタマーサポートシステム「ヘルプドッグ」の導入企業には、問い合わせを60%削減した実績があります。定型の問い合わせが多い事業ほど、削減の余地は大きくなります。

Q2

ツールを乗り換えれば工数は減りますか?

A

原因がツール側にある場合に限って、乗り換えは有効です。FAQの中身・担当者・導線・測定を変えないまま乗り換えると、新しいツールでも同じ結果を繰り返します。まず本記事の6つの原因に自社を照らし、運用側の原因を取り除いてから判断してください。FAQの情報を最新にしても誤答が続く場合は、ツール側を疑う目安になります。

Q3

少人数のCS体制でも、自動化の運用は続けられますか?

A

続けられます。件数の多い定型の問い合わせに絞って小さく始めれば、作成も更新も少ない時間で回ります。対象を広げるのは、最初の範囲で効果を確かめてからで十分です。人数の少なさよりも、毎月の作業時間を決めているかどうかが継続を左右します。

堀辺 憲
筆者

堀辺 憲 noco株式会社 代表取締役

クボタ、住友スリーエム、DeNAなどを経て2017年にnoco株式会社を創業。AIサポートシステム「ヘルプドッグ」等の開発プロデューサーを務める。数多くの企業のサポート部門・現場業務のDXを支援してきた実績から得た、カスタマーサポート領域およびナレッジマネジメントに関する深い知見をもとに、CS基盤の構築・改善に直結するノウハウを解説する。