FAQサイトの公開にあたって最初にやるべきことは、よくある問い合わせの上位30問を選び、質問と答えを一組にしたQ&A形式や、手順を順番に示した手順書の形で記事にまとめて公開することです。
公開した後は、お客様がサイト内で検索したのに答えが表示されなかった言葉や、よく読まれている記事を、データで確認できます。
これらのデータを見れば、新規で追加すべき記事と改善すべき記事が分かるため、何から手をつけるか優先順位をつけられます。
FAQサイトの作成が進まない理由
カスタマーサポート部門の多くは、日々の問い合わせ対応に時間を取られ、FAQサイトの記事を作る時間を確保するのが難しいのが実情です。
今、目の前のお客様への対応に時間を取られているため、FAQサイトの記事作成になかなか優先順位を上げられません。その結果、記事の作成に着手できないまま、時間だけが過ぎていきます。
記事の作成に踏み出せない理由は、大きく三つあります。
1. 何から記事にすればよいか分からない
お客様から寄せられる質問は多岐にわたるため、どの質問から記事にすべきか判断できず、最初の1記事に着手できません。
2.記事の作成に時間がかかる
文章を書き慣れていない担当者にとって、質問への答えを一記事にまとめる作業は負担が大きく、着手をためらいます。
3.公開した後に記事の更新が続かない
記事の追加や見直しをいつ誰が行うかという運用スケジュールをあらかじめ決めていないため、更新を忘れたり後回しにしたりして、記事が放置されます。

FAQサイトの記事の作成や更新といった運用上の課題は、多くの場合、一人の担当者だけで進めていることから生じます。社内に協力する人がいないと、記事の作成も更新もすべて一人にかかり、負担が集中します。
一人に頼る限り、その担当者が忙しくなったり異動したりすれば記事作成は止まるため、作成と更新はチームで分担する形に変えるべきです。
FAQサイトの記事を用意できない理由に共通するのは、最初から完成度の高いサイトを作ろうとする前提です。すべての質問を網羅した立派なサイトを目指すほど、必要な時間も作業量も増え、着手の判断が先延ばしになります。そこで、最初の範囲をできるだけ小さくする方法をご説明します。
FAQサイトを最短で公開し、運用する方法
日々の問い合わせ対応に追われるなかで、まとまった時間を確保し、FAQサイトを公開して記事を用意するのは簡単ではありません。ここでは、限られた時間内でFAQサイトを公開し、運用していく方法をご説明します。
上位30問を、件数の多い順に選ぶ
どの質問を記事にするかは、過去の問い合わせメールや電話の対応記録から判断します。同じ内容の質問を数えて多い順に並べると、どの質問が多く寄せられているかが分かります。
多く寄せられている質問を記事にすれば、それだけ多くのお客様が自分で答えを見つけられるため、件数の多い質問から順に30問を選びます。30問をそろえてから公開する必要はありません。件数の多い10問ができた時点で公開し、その後20問、30問と増やしても構いません。
Q&A形式で記事を書く
Q&A形式とは、質問(Question)と答え(Answer)を一組にして並べる書き方です。
たとえば「解約はできますか」という質問に、「マイページの解約ボタンからお手続きいただけます」と短く答えます。決まった形にあてはめるだけで書けるため、一記事を短時間で作れます。答えに操作の手順が含まれる場合は、番号をつけて順番に並べると、お客様が読みながら操作を進められます。
過去の対応記録を素材にする
記事を一から書くと、作成の負担が大きくなります。そこで、過去にお客様へ送った返信メールや電話対応のメモを、記事の素材にしましょう。すでにお客様へ伝えた説明文があるため、その文章をQ&Aの形に整えれば記事になり、白紙から書き起こす手間がなくなります。
生成AIで下書きを作る
過去の対応記録をChatGPTやGeminiに渡すと、質問と答えの下書きを短時間で作れます。これらは生成AIと呼ばれ、文章などを自動で作るAIです。
「この内容をQ&A形式に整えてください」と指示すれば、下書きができあがります。担当者は白紙から書く代わりに、出てきた下書きを直すだけで済みます。FAQ作成機能を備えたシステムを使えば、この下書きづくりがさらに楽になります。たとえば、ヘルプドッグの「AIライティング機能」なら、対応記録のテキストを渡すだけで、FAQ記事の下書きを作成できます。

ただし、生成AIに対応記録を渡す前に、二つの点に注意してください。
一つは、お客様の個人情報を消すことです。過去の対応記録には、お客様の氏名やメールアドレス、電話番号、注文番号などが含まれています。これらをそのまま生成AIに渡すと、個人情報が外部に送られてしまいます。記録を渡す前に、お客様を特定できる情報を削除し、質問と答えの中身だけを渡しましょう。
もう一つは、出てきた下書きの内容を確認することです。
生成AIには、ハルシネーションが起こる場合があります。ハルシネーションとは、生成AIが事実とは異なる内容を、もっともらしい文章で作ってしまう現象のことです。
たとえば、実際にはない解約手順を、本当にあるかのように書くことがあります。料金や手順、解約方法を誤ったまま公開すれば、お客様に間違った案内をしてしまいます。下書きをそのまま使わず、自社の正しい情報と照らし合わせて、担当者が必ず確認してから公開しましょう。
公開後は、利用データを見て記事を追加・改善する
30問を公開したら、お客様の利用データを見ながら記事を増やします。見るべきデータは、主に二つです。
一つは、検索の「ヒット0件」です。ヒット0件とは、お客様がFAQサイト内で検索したのに、答えとなる記事が一つも表示されなかった言葉のことです。ヒット0件の言葉は、お客様が知りたいのに記事をまだ用意できていないことを示すため、新しく追加すべき記事が分かります。
もう一つは、各記事の閲覧数と、記事末尾にある「役に立った/役に立たなかった」という評価ボタンの結果です。よく読まれているのに「役に立たなかった」が多い記事は、お客様が求める答えになっていないため、書き直すべき記事が分かります。
こうしてデータを見れば、お客様が必要とする記事から優先して用意できます。
記事の更新を止めないための仕組み
FAQサイトは、公開した後に記事の更新が止まると、記事の内容がお客様の知りたいことと合わなくなります。だからこそ、記事の更新作業は欠かせません。
担当者の頑張りに更新作業を頼るのではなく、定期的に更新が続く仕組みを用意しましょう。

問い合わせ対応のたびに、記事化を判断するルールを決める
記事を増やす作業を別の時間に確保しようとすると、後回しになります。
そこで、問い合わせ対応が終わるたびに、「この質問はFAQサイトに追加すべきか」を担当者が判断するルールを決めましょう。対応の流れのなかで記事化を判断すれば、更新のための時間を別に取らなくても、記事が少しずつ増えていきます。
担当を一人に固定せず、ローテーションで回す
記事の作成と更新を一人に任せると、その担当者が忙しくなったり異動したりしたときに、更新が止まります。
そこで、担当を複数のメンバーで持ち回りにしましょう。週ごとや月ごとに担当を交代すれば、一人に負担が集中せず、特定の担当者がいなくても更新が続きます。複数のメンバーが記事を書くことで、一人では気づけなかった分かりにくい説明にも気づけます。
成果を数字で示し、上長や経営層に共有する
FAQサイトの更新を後回しにする原因の一つは、更新の成果が見えないことです。
そこで、FAQサイトの成果を数字で示しましょう。問い合わせの削減数や、お客様が自分で答えを見つけられた割合である自己解決率を記録し、上長や経営層に共有します。数字で成果が見えれば、FAQサイトの更新は事業に貢献する仕事だと社内で認められ、更新の時間を確保しやすくなります。あわせて、これらの数字を担当者の評価基準に組み込めば、更新を続ける後押しになります。
更新すべき記事を見つける手間を、ツールで減らす
更新のルールや担当を決めても、どの記事を直すべきかを毎回データから探すのは手間がかかります。
記事の状況を自動で確認し、直すべき記事を教えてくれる機能を使えば、この手間を減らせます。たとえばヘルプドッグの「AIサイト診断」は、検索データや記事の状況をAIが毎日確認し、取り組むべき改善点を優先度の高い順に提案します。担当者は、提案された記事から順に手を入れればよいため、何を直すか探す時間をかけずに更新を続けられます。
おわりに
忙しいからFAQサイトの記事作成や更新を後回しにする。これは、お客様サポートの品質悪化を招く、優先順位の誤った判断だと考えています。お客様は24時間365日、疑問や困りごとにぶつかれば、その場ですぐ調べます。
ハーバード・ビジネス・レビューの調査では、業種を問わず81%のお客様が、サポート窓口に問い合わせる前に、まず自分で解決しようとすることが分かっています(出典:Harvard Business Review「Kick-Ass Customer Service」2017年)。
ご自身で調べて解決したいというお客様のこうした行動は、海外の複数の調査でも確かめられています。このとき、お客様がFAQサイトで答えを見つけられなければ、営業時間を待って問い合わせるしかありません。お客様には、待つ時間と、自分で解決できなかったというフラストレーションが残ります。
「うちは人による問い合わせ対応が主だから、FAQサイトはいらない」という考えも、私は誤りだと思います。お客様に回答を出せないということは、社内にも十分な回答資料がないということです。
サポート担当者が参照できる、正確で素早く答えるための模範となる資料がなければ、回答は担当者ごとにばらつきます。その品質のばらつきは、サポートだけにとどまりません。会社そのものや、製品・サービスの品質の毀損につながります。
お客様の頭に浮かぶ疑問や困りごとに、あらかじめ答えを用意しておく。これはカスタマーサポートの基本であり、最優先で取り組むべき重要なタスクです。