FAQサイトの用途は、主に3つです。誰でも見られるように一般公開するもの、会員や契約企業だけがログインして見る限定公開のもの、そして社員だけが使う社内向けのものです。あとの2つは、決まった人にだけ見せるため、ログインで閲覧者を限ります。
FAQサイトの主な使い方は3つに分けられる
3つの使い方は、想定する読み手と、ログインで閲覧者を限るかどうかで分かれます。それぞれ、求められる機能や書き方が違います。順に見ていきます。

社外向け・一般公開
ログインなしで、誰でも見られるFAQです。
不特定多数のお客様が、登録なしでそのまま閲覧できます。検索エンジン(GoogleやYahoo!など、調べたい言葉を入れて探す仕組み)からの訪問も、入り口のひとつになります。商品のサポートサイトや、一般的なヘルプセンターがこれにあたります。
読む人の知識や年代の幅が広いので、専門用語を避け、誰が読んでもわかる言葉で書くことが欠かせません。
社外向け・限定公開
会員や契約企業など、特定の人だけがログインして見られるFAQです。
会員登録をした人や、契約した企業だけに見せます。検索エンジンには表示させない設定が一般的です。会員向けのマイページに用意するFAQや、契約した企業だけが入れるサポートサイトがこれにあたります。
決まった人にだけ見せるため、閲覧にはログインが必要です。とくに企業向けでは、SAMLやJWTといった仕組みで認証するのが一般的です。これは、利用する人の身元を安全に確認し、ログイン状態を各サービスへ受け渡すための仕組みです。社員が一度ログインすれば、いくつものサービスをそのまま使えるようにする、といった使い方ができます。
相手がある程度サービスを使い慣れている前提で書けるため、一般公開よりも一歩踏み込んだ内容を扱えます。
社内向け
社員や特定の部署だけが見られるFAQです。
人事・総務・情報システム部門への問い合わせを減らすためのものや、コールセンターの担当者が答えを調べるためのもの、営業部門だけが使うものなどがあります。社員だけが見られるよう、限定公開と同じくログインでアクセスを制限し、SAMLやJWTといった認証の仕組みを使うのが一般的です。
社外向けと大きく違うのは、社内用語や専門用語をそのまま使える点です。社外のお客様には言い換えが必要な言葉も、社員同士なら通じるからです。
この3つのうち、多くの企業がまず整えるのは、社外のお客様に向けたFAQです。そして社外向けのFAQは、相手が法人か個人かで性格が変わります。
社外向けのFAQは、法人向けと個人向けで中身が変わる
同じ社外向けでも、相手が法人(BtoB)か個人(BtoC)かで、寄せられる質問もFAQの書き方も変わります。BtoBとは企業どうしの取引、BtoCとは企業と個人の取引のことです。どちらのお客様がFAQを読むのかで、用語をどこまで使ってよいか、何を中心に答えるかが決まります。

法人向け(BtoB)のFAQ
仕事で使うお客様がFAQを読むため、契約や操作の質問が中心になります。
料金プランの変更方法、請求書の発行手順、管理者権限の付与方法など、業務の流れや権限の設定に関する質問が多く寄せられます。管理者権限とは、ほかの社員のアカウントを追加したり、使える機能を決めたりできる、特別な権限のことです。
FAQを読むお客様はサービスをある程度理解したうえで使っているため、ある程度の専門用語は通じます。ただし、一社の中で管理者・利用者・経理など複数の担当者が同じFAQを見ることがあります。そのため、誰が読む質問なのかがわかるように、対象者ごとに分けて整理しておくと迷わせずに済みます。
個人向け(BtoC)のFAQ
暮らしの中でサービスを使うお客様がFAQを読むため、使い方や支払いなど身近な質問が中心になります。
商品の使い方、配送、返品、支払い方法など、日々の暮らしに近い質問が多く寄せられます。FAQを読むお客様は知識や年代の幅が広いため、専門用語を避け、誰が読んでも理解できる言葉で書くことが求められます。
スマートフォンからFAQを見るお客様が多いことも、法人向けとの違いです。画面の小ささに合わせて、短く区切って読みやすく整えることが欠かせません。
法人向けと個人向けでは、このように質問の中身もFAQの書き方も変わります。さらに同じ個人向けでも、扱う商品やサービスの業種によって、よく聞かれる質問は変わってきます。
業種によって、よく聞かれる質問とFAQの形が変わる

扱う商品やサービスによって、お客様がよく検索する質問は変わります。そして、その質問に答えるのに向いたFAQの形も、業種ごとに違います。まずは代表的な15の業種で、どんな質問が多いかを整理しました。
| 業種 | よく寄せられる質問・トピック |
|---|---|
| SaaS・業務システム | 操作手順、料金プラン、管理者権限の設定、API連携 |
| EC・小売 | 注文方法、配送状況、返品・交換、支払い方法 |
| 金融・保険 | 口座開設、契約変更、各種手続き、約款の確認 |
| 通信・キャリア | 料金プラン、機種変更、サービス解約、トラブル対応 |
| 製造業・メーカー | 製品の使い方、故障診断、修理依頼、保証内容 |
| 旅行・宿泊 | 予約変更、キャンセル料金、チェックイン方法 |
| 飲食・フードデリバリー | 注文方法、配達エリア、クーポン利用、支払い方法 |
| 不動産・住宅 | 物件情報、内見申込、契約手続き、設備の使い方 |
| 人材・求人 | 応募方法、登録情報の変更、スカウト機能の使い方 |
| 医療・ヘルスケア | 予約方法、診療内容、保険適用、オンライン診療の使い方 |
| 教育・学習サービス | 受講申込、料金、教材の使い方、認定証の発行 |
| 自動車・モビリティ | 購入手続き、車検、メンテナンス、保証内容 |
| メディア・出版 | 購読申込、ログイン、アカウント管理、配信トラブル |
| ゲーム・エンタメ | アカウント連携、課金トラブル、不具合報告、利用規約 |
| 自治体・公共サービス | 住民票・各種証明書の取得、行政手続き、制度説明 |
質問の中身が業種で変わるように、その質問に答えるのに向いたFAQの形も、業種によって変わります。
たとえば、ECや小売、旅行・宿泊のように、短い質問に簡潔に答える場面が多い業種では、「Q&A型」が向いています。Q&A型とは、「返品はできますか?」といった質問に、短い答えを一つ返す形です。
製造業・メーカーやSaaS・業務システムのように、操作の手順を順を追って説明する必要がある業種では、「マニュアル/ガイド型」の比重が大きくなります。マニュアル/ガイド型とは、ひとつの作業を、手順を追って順番に説明していく形です。
金融・保険や通信・キャリアのように、契約や手続きと操作の両方を扱う業種では、この2つを組み合わせた「ハイブリッド型」が現実的です。
どの業種でも共通するのは、お客様が何に困って検索しているかを起点に、FAQを組み立てるという考え方です。社内では当たり前に使う言葉でも、お客様には通じないことがあります。お客様が実際に打ち込む言葉に合わせて質問を用意すると、FAQは見つけてもらいやすく、使われやすくなります。
おわりに
お客様から、「FAQサイトはそもそも必要なのですか。」と尋ねられることがしばしばあります。そんなとき、私は逆の立場で考えてみてほしいとお伝えしています。
「もし、ついさっき、お店で買ったものが壊れていたら、どうしますか?」
私たちは日々いろいろな製品やサービスを使う中で、これはどうしたらいいんだろう、入会したいな、解約したいな、と頭の中に小さな疑問を浮かべます。そして次に起こす行動は、調べるか、尋ねるか、のどちらかです。
お客様サポートに尋ねるには、時間も手間もかかります。だから多くのお客様は、できれば自分で解決したいと思っています。実際に調べてその場で解決できたとき、お客様が感じる納得感や満足感は、人に教えてもらったときよりも高いのではないでしょうか。
そもそもカスタマーサポートの原点は、何でしょうか? お客様から頼られて、こちらが動くことでしょうか? 私はそうは考えていません。本当に大事なのは、お客様の中に疑問が浮かんだそのときに、自ら解決へたどり着ける仕組みを用意しておくことです。
そう考えると、FAQサイトにしてもチャットボットにしても、見た目や使い勝手より先に問うべきことが見えてきます。お客様があなたのサービスで迷い、悩んだとき、何を差し出すのが一番なのか。そこを起点に考えると、自社にどのようなサポートチャネルが必要なのかが、自ずと見えてくるはずです。
そして、どのサポートチャネルの土台にも、お客様の課題にどう答えるかをまとめたナレッジ、Q&A集やマニュアル、手順書があるはずです。FAQサイトは、その土台を、お客様自身が引き出せる形にしたものなのです。
お客様が困ったときの解決法をしっかりまとめておくこと。それこそが、カスタマーサポートのはじまりであり、真っ先に取り組むべきことだと私は考えるのです。