解説
ボット学習データは、ボットが顧客の言い回しを理解できるようにするために与える、実際の問い合わせ文や応対履歴などのデータです。机上で作った想定質問よりも、実際に寄せられた問い合わせ文のほうがはるかに役に立ちます。たとえば、顧客は「解約したい」とだけ書くこともあれば、「もう使わないので止めてほしい」と遠回しに書くこともあります。言い回しの幅は、現場のログにしか現れません。
なお、生成AIを使うボットでは、モデル自体を再学習させず、FAQや応対履歴を参照用の情報として与える方式(RAG)も使われています。
実務での使われ方
ボット学習データを集める際は、同じ意図に何通りの言い方があるかを集めます。1つの意図に対して集められる表現の多様さが、ボットの精度を大きく左右します。たとえば、GoogleのDialogflowでは、1つの意図(インテント)に対して、少なくとも10〜20件程度の多様な発話例を用意することを推奨しています。
一方で、似た文を大量に並べても効果は伸びません。言い換え、誤字、敬体と常体の違いなど、実際に起きているばらつきを拾うほうが有効です。さらに、問い合わせ件数そのものが少ない意図は例文が集まらないため、ボットに任せず有人対応へ回す設計にしておくのが無難です。
注意点
応対履歴には、氏名、連絡先、注文番号などの個人情報が含まれます。そのため、学習や参照に使う前に、個人情報を伏せるマスク処理の方針を決めます。さらに、外部の生成AIサービスへデータを送る場合は、利用目的の範囲内であることに加えて、サービスの提供事業者が入力データを機械学習に利用しないかどうかを、利用規約とデータの取り扱いで確認します。
また、古い応対履歴を混ぜると、ボットは現在と異なる案内を覚えます。たとえば、料金改定や仕様変更より前の履歴をそのまま投入すると、ボットは現在提供していない条件を案内します。したがって、データを追加するときは、いつ時点の応対かを記録し、改定のたびに該当するデータを差し替えます。差し替えの運用を決めておけば、古い条件を案内する事故を減らせます。
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