解説
マルチターン対話は、一問一答で終わらせず、前のやり取りの内容を保持しながら、複数回の往復を通じて回答に至る対話形式です。たとえば、ボット側から「エラー画面には何と表示されていますか」と尋ね返し、必要な情報をそろえてから回答します。顧客の最初の一言は、「ログインできない」のように情報が足りないことが多くあります。そのため、一問一答しかできないボットは、最初の一言の時点で行き詰まります。
仕組み
マルチターン対話では、回答に必要な情報を会話の中で段階的に集めます。たとえば、Microsoftの会話言語理解(CLU)では、次の3つの要素で情報を集めます。
- エンティティ:抽出する必要がある特定の情報
- スロット:抽出した情報を保持する入れ物
- 会話の継続性:会話全体を通じて、集めた情報を保持し、参照できるようにする
この方法をスロット充填(スロットフィリング)と呼びます。スロット充填を使うと、顧客に最初からすべての情報を求めるのではなく、会話の進行に合わせて情報を受け取れます。
実務での使われ方
聞き返す項目は、案内の分岐に直接影響するものだけに絞ります。たとえば、ログインの例なら、エラー画面に出ている文言と、ログイン方法(IDとパスワードか、SNS連携か)の2点が分かれば、案内先を絞り込めます。一方で、契約プランや登録メールアドレスのように、ログイン済みの顧客なら登録情報から引ける項目は尋ねません。
注意点
尋ね返す回数が増えるほど、顧客は途中で離脱しやすくなります。そのため、聞き返しの回数に上限を設け、上限までに情報がそろわなければ有人へ引き継ぎます。さらに、有人へ切り替えたときに、途中までの回答が担当者に引き継がれるかも確認しておきます。
また、LLMを使ったボットでは、会話を重ねるほど回答の精度が下がる場合があります。たとえば、論文「LLMs Get Lost in Multi-Turn Conversation」は、情報を複数回に分けて与えた場合の性能を検証しています。同論文によると、試したすべてのモデルで、一度にまとめて与えた場合より性能が低下し、6種類の生成タスクでの低下幅は平均39%でした。
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