解説
KCS(Knowledge-Centered Success、旧称Knowledge-Centered Service)は、ナレッジの作成と更新を応対業務そのものに組み込む手法です。ナレッジの整備を別枠の作業として特定の担当者に任せるのではなく、応対した人がその場で書き、次の人が使い、使った人が更新するという循環を業務の一部として回します。KCSは、米国の非営利団体Consortium for Service Innovationが1992年から開発してきました。当初の名称はKnowledge-Centered Supportでしたが、テクニカルサポート以外にも活用が広がったことから、2016年4月にKnowledge-Centered Serviceへ変更されました。さらに、Consortium for Service Innovationは2026年4月29日、KCSの名称をKnowledge-Centered Successへ改めると発表しました。新しい名称には、ナレッジがサービス対応だけでなく、AIや部門をまたぐ業務、顧客体験全体を支えるという考え方が反映されています。ただし、新名称に合わせた認定やトレーニングは2027年にかけて段階的に展開される予定で、プラクティスの体系は現在もKCS v6が広く使われています。日本では、HDI-JapanがKCSのトレーニングやアセスメントを提供し、KCSアワードによる認定も実施しています。
仕組み
KCSでは、2つのループ(ダブルループ)が互いに支え合う構成をとります。
- ソルブループ:応対者が問題を解決する過程で実践する活動です。ナレッジの記録(Capture)、構造化(Structure)、再利用(Reuse)、改善(Improve)の4つのプラクティスで構成されます。
- エボルブループ:組織とリーダーが担う活動です。コンテンツの健全性(Content Health)、プロセスへの統合(Process Integration)、パフォーマンス評価(Performance Assessment)、リーダーシップとコミュニケーション(Leadership & Communication)の4つのプラクティスで構成されます。
実務での使われ方
KCSを実践する現場では、応対した人がその場でナレッジを書き、使った人が改善します。具体的には、次の考え方を共有します。
- ナレッジは応対の副産物として、その場で生まれる
- 完璧な記事を待つより、使える形で早く公開することを優先する
- 使った人が不足に気づいたら、気づいた人が更新する
- 検索して見つからなかったこと自体が、作成すべき記事の手がかりになる
- 顧客が使う言葉で書く
注意点
応対件数だけで評価される環境では、KCSの循環は回りません。ナレッジを書く時間が評価につながらないためです。したがって、ナレッジの作成や更新の実績を評価に組み込む、あるいは後処理時間の一部として認めるといった、業務設計側の手当てが必要になります。
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