解説
労働施策総合推進法は、職場のパワーハラスメント防止措置を事業主に義務づけている法律として知られてきました。2025年6月に成立した改正法は、カスタマーハラスメント対策も事業主の措置義務の対象に加えています。
改正労働施策総合推進法のカスタマーハラスメント対策の規定(2026年10月1日施行)は、事業主にカスタマーハラスメント対策の措置を講じる義務を課しています。対象は、企業規模や業種を問わず、原則としてすべての事業主です。また、同じ改正法による男女雇用機会均等法の改正(2026年10月1日施行)は、就職活動中の学生などの求職者に対するセクシュアルハラスメントの防止対策も事業主に義務づけています。
顧客対応を担う部門にとっては、対応方針や記録の残し方を社内ルールとして持つことが、努力目標ではなく法律上の義務であるという意味を持ちます。
判断基準
改正後の第33条は、職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の事業に関係を有する者の言動を対象としています。そのうえで、次の要素をすべて満たすものに対し、事業主に雇用管理上の措置を求めています。
- 顧客等の言動であること
- 労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えたものであること
- その言動によって、労働者の就業環境が害されること
したがって、「顧客が怒っている」ことではなく、「言動が許容される範囲を超えているか」が判断の軸になります。
実務での使われ方
事業主は、2026年2月26日に告示された指針に沿って、方針の明確化から事後の対応まで、次の5つに分類される措置を講じます。
- 方針の明確化と周知・啓発:カスタマーハラスメントには毅然と対応し、労働者を保護するという方針を定め、従業員に伝える
- 相談体制の整備:相談窓口をあらかじめ定めて労働者に周知し、適切に対応できる体制をつくる
- 事後の対応:事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害を受けた従業員への配慮や再発防止を行う
- 抑止のための措置:特に悪質な行為への対処方針をあらかじめ定めて周知し、実行できる体制を用意する
- 併せて講ずべき措置:相談者のプライバシーを保護し、相談したことを理由とする不利益な取扱いをしないことを周知する
措置義務を現場で機能させるには、抽象的な方針を日々の手順に落とし込む必要があります。たとえば、通話を終了してよい基準、上位者へ引き継ぐ条件、録音と記録の残し方、法務や警察へ相談する判断基準を、あらかじめ文書にしておくことが出発点になります。
注意点
改正法の一部の規定は、2026年10月1日より前に施行されています。たとえば、治療と仕事の両立支援を事業主の努力義務とする規定(第27条の3)は、2026年4月1日に施行されました。そのため、法律全体が2026年10月1日に施行されたと読める説明は正確ではありません。また、相談したことや事実確認に協力したことを理由に、労働者を解雇するなどの不利益な取扱いをすることは、第33条第2項で禁止されています。
出典
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