解説
悪質クレームは、商品やサービスの改善を求める申し出ではなく、金銭や特別扱いを引き出すことを目的とした不当な要求です。ただし、悪質クレームは法令上の用語ではありません。一方で、改正労働施策総合推進法に基づく厚生労働省の指針は、顧客等の言動のうち社会通念上許容される範囲を超え、労働者の就業環境を害するものを「カスタマーハラスメント」と定義しています。さらに、2025年に改正された同法のカスタマーハラスメント対策の規定(2026年10月1日施行)は、事業主にカスタマーハラスメント対策の措置を講じる義務を課しています。
判断基準
正当な申し出と悪質クレームの線引きは、応対の途中では判断しにくい場合があります。そのため、応対担当者は次のような様子が見られるかどうかを目安にします。
- 事実確認や解決策を拒んで、要求の実現だけを繰り返す
- 被害の程度と釣り合わない補償を求める
- 担当者個人への攻撃や、長時間の拘束を伴う
- 公表や拡散をほのめかし、要求を通そうとする
- 同じ内容で繰り返し連絡してくる
また、改正労働施策総合推進法と厚生労働省のカスタマーハラスメント対策企業マニュアル(2026年9月改訂版)は、言動の内容や手段・態様が社会通念上許容される範囲を超えるかどうかを判断の観点として示しています。あわせて、労働者の就業環境が害されているかどうかも検討します。なお、マニュアルは、言動の内容と手段・態様のどちらか一方だけが許容範囲を超える場合でも、カスタマーハラスメントに該当し得るとしています。
実務での使われ方
悪質クレームかどうかは、オペレーター個人で判断するべき事柄ではありません。一定の基準に該当した時点で、オペレーターはSVや管理部門へ対応を引き上げます。さらに、企業は必要に応じて法務部門や外部の専門家へつなぐ手順を定めておきます。
通話録音や応対履歴は、後から事実を確かめる際の材料になります。加えて、担当者が精神的な負担を抱え込まないよう、交代や同席の手順もあわせて決めておきます。
注意点
対応を終了する場合も、担当者は一方的に電話やチャットを打ち切るのではなく、対応できる範囲を伝えたうえで終えます。決められた手順を踏んで終了することで、後のトラブルを抑えられます。
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