解説
ピークエンドの法則は、体験の記憶に基づく評価が、最も印象の強い時点(ピーク)と最後の時点(エンド)の感情に大きく左右されるという考え方です。心理学者のダニエル・カーネマンとバーバラ・フレドリクソンらが、1990年代の研究で示しました。カーネマンらは、1993年の論文で、冷たい水に手を浸す実験を報告しています。参加者の多くは、14℃の水に60秒浸す試行よりも、60秒のあと、水温を15℃まで少しずつ上げながら30秒長く浸す試行を、もう一度受けるほうに選びました。さらに、大腸内視鏡検査などを受けた患者を対象にした研究(1996年)でも、患者の振り返りの評価は、最も痛かった時点の痛みと、最後の3分間の痛みと強く結び付いていました。どちらの研究でも、体験の長さは評価にほとんど影響しませんでした。
実務での使われ方
カスタマーサポートでは、顧客が応対を振り返って評価するときの手がかりとして、ピークエンドの法則が引き合いに出されます。たとえば、次のような場面です。
- 応対の締めくくり:用件が片付いた時点で終えず、決まった内容と今後の段取りを確認するクロージングで、終わりの印象を良くします。
- 不満が最も高まった場面:長い保留や、たらい回しのように感情が強く動く場面を減らします。
- 応対後のアンケート:CSATなどの評価が、応対の平均的な出来よりも、印象の強い場面に影響されている可能性を踏まえて結果を読みます。
注意点
ピークエンドの法則は、「最後さえ良ければ評価が上がる」ことを保証するものではありません。原典の研究は、始まりと終わりがはっきりした、苦痛を伴う短い体験を対象としています。さらに、1日単位の体験の評価には当てはまらなかったとする研究や、ピークとエンドだけでは記憶の評価をうまく予測できなかったとする研究もあります。したがって、応対の途中の品質を軽く見てよいという根拠にはなりません。
また、グッドマンの法則とは、扱う対象が異なります。グッドマンの法則は、苦情への対応と、再購入の意向や口コミとの関係を示す経験則です。ピークエンドの法則は、体験の記憶がどのように評価されるかを示す考え方です。
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